前より変態成分がパワーアップしてるような、そうでもないような……
お久しぶりです。ウィンターローズの騎士団長であり、ソヨゴちゃんの妻、アクアです。
「エタったと思いましたか? 変態は死なないんですよ」
「誰に言ってるんですか、団長さん……」
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いつも通りの寒い朝、アクアは執務室に足を運んでいた。暖炉に火を付け、ココアを二つ淹れる。一つは自分、もう一つは、もうすぐ出勤するはずの副団長、ソヨゴの分だ。
(そう言えば目薬を入れると媚薬になるって言いますよね……まぁそこまでクズにはなれませんが……)
そう思いながら、目薬を持った右手を必死に抑え込むのだった。
「それにしてもソヨゴちゃん遅いなぁ。いつもなら来てる時間なのに」
ソヨゴは真面目な花騎士である。8時からの勤務でも15分前には出勤し、執務の準備をしている。それが、今は8時15分。遅刻の時間である。
…………
………
……
「お、遅い! 遅すぎる! 何かあったのかも知れません!」
執務室のドアをぶち破るアクア。部屋という部屋を捜すが、ソヨゴどころか花騎士が一人も居ない。流石に異変を感じ取ったアクアは、顔を青くしながら外へ出るのだった。
「ソヨゴちゃーん! 皆ー! どこですー!?」
居ない。寮にも公園にも繁華街にも。
街中を捜し回って息を切らしたアクアの前に、ある少女が立っていた。
「無様ですね、アクア団長」
不思議な雰囲気の少女だった。雪のような美しい白銀の髪に、白い肌、先端が鋭く尖った耳。そして何より、その瞳が特徴的だった。
氷のような模様が瞳の中に入っている。人形のように可愛らしいが、どこか近寄り難さを感じさせる少女だった。
(うわ……めっちゃストライクのロリやん……って、そんな場合じゃありませんでした)
「あなたは一体……」
「わたくしはウィン。ウィンターローズの世界花の化身です」
「世界花!?」
ウィンはアクアにことの経緯を説明した。
「なるほど、擬人化って奴ですね。最近多いんですよね~。しかし何でもかんでも擬人化するのは芸がないというか何というか」
「ツッコミませんよ?」
「それで、ウィン様が私に何か用ですか? もしかして私に一目惚れしちゃいました? 寝室行きます?」
興奮するアクアを無視し、ウィンは続けた。
「あなたに報告があります……あなたの部下の花騎士はわたくしが預かりました」
「……何ですって!?」
「あなたのことは以前から監視していました。小さな少女に劣情を抱く、危険な異常性愛者だと」
「ぐへへ、それほどでも……」
「褒めてません! やはりあなたは危険です。そんな輩の下にソヨゴ達を置いておくわけにはいきません」
「ソヨゴちゃん達は何処に居るんです!?」
「安心しなさい。わたくしの管理下にある、
「いくら世界花の化身とは言え、横暴が過ぎます! ……ちなみにウィン様のスリーサイズとか聞いていいですか?」
「花騎士を守るのがウィンの使命です」
「私はウィン様と一発やりたいです」
「もう! 何なんですかこの変態は! こんな人がウィンターローズの騎士団長だなんて……」
「と、とにかく! あなたのような変態を騎士団長とは認めません! 花騎士はわたくしが必ず守ります!」
踵を返すウィン。
「その前にあなたを犯してやりますよ! ウィン様!」
背後からガバッと襲い掛かるアクア。しかし次の瞬間、
「ぐふっ……!」
アクアの腹部に、ピストルで撃ち抜かれたような激痛が走った。ウィンの強烈な肘が入ったのだった。
アクアはうずくまり、地面に、朝食べた物をぶち撒いていく。
「うげっ……げぇ~……!」
「これに懲りたら、もう少女に欲情するのは止めなさい」
「ククク……よ、幼女から殴られるって結構気持ちいいですね……」
「もうやだこの変態」
────
一方その頃、ソヨゴ達は。
「落ち着くッスね~」
暖炉のある大きな部屋でくつろいでいた。
「でもこんなゆっくりしてて良いんでしょうか? 団長さんは今頃……」
「まぁ、世界花の化身のことだから、悪いようにはならないでしょう。ここに連れて来られた時も……」
『あなた達をあんな変態の下に置いておくことは出来ません。わたくしが保護します』
『あのアクアという女は少女に欲情するロリコンの変態です。騎士団長は辞めさせて、誰も彼女を知らないような場所で、耳と目を閉じ、口を噤んだ人間にさせます』
『その方が社会のためであり、彼女のためでもあるのです』
「何も言い返せなかったわね……」
「……はい」
ソヨゴ達が保護された騎士団はウィンターローズでも屈指の規模を誇る騎士団であった。その上、ある変わった特徴がある。
「やあ皆さん、ご機嫌いかがですか?」
「あっ、ジャクソン団長」
騎士団長、ジャクソン・セトウチ。170cmを超える長身と、脂肪で丸々と肥えた腹、そして坊主頭が特徴的な女である。
「すみません、ここまで手厚くもてなして貰って……」
ソヨゴが申し訳なさそうに頭を下げるが、ジャクソンは丸い顔にしわを作って笑い飛ばした。
「いえいえ。ソヨゴさん達に来て頂いて、我々にとっても色々と収穫がありました。これもウィン様のお導きですね」
ジャクソンは数珠をじゃらじゃらと鳴らして祈りを捧げた。ジャクソンは騎士団長であると同時に、ウィンターローズ世界花を信仰する宗教、『冬薔薇創生会』の教祖でもあるのだ。
「ジャクソン団長は本当に信仰心の厚い方ですねぇ~」
「えぇ。信じる者は救われる……皆様も、ウィン様を信じる心を忘れないようにして下さい……おっと、これから仕事の約束があるんでした。私はこれで」
深くお辞儀をしながら部屋を出ていくジャクソン。花騎士達はそれを見送り、
「アクア団長とは真逆のタイプね……」
としみじみと思うのだった。
────
ろうそくが数本灯された薄暗い部屋。白いベッドがポツンと置かれ、その上に白装束を着た少女が寝かされていた。
ドアが開き、大きな女が入ってくる。騎士団長であり、『冬薔薇創生会』の教祖、ジャクソン・セトウチである。
「教祖様……これでお母さんの病気が治るんですよね?」
少女は純粋な目をジャクソンに向けた。
「えぇ、勿論です。あそこの壁に掛かっている写真を見なさい」
金に光る額縁に飾られた写真には、笑顔で握手を交わしている二人の女性が写っていた。一人はジャクソン、そしてもう一人は……
「この冬薔薇創生会は、ノヴァーリス女王陛下からも表彰を受けているのです。その他にも各国で様々な慈善事業を行い、ブロッサムヒルからは名誉国民の称号も頂いております」
自らの栄誉を語るジャクソンの顔は、まるで卑しい豚のようであった。
「だから安心しなさい。信じる者は救われるんですよ……ククク」
ジャクソンの巨体が少女に覆い被さる。その後、閉ざされた部屋の中から、ベッドの軋む音が聞こえてきたという……。
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「……さて、
背の高い本棚に、分厚い専門書何百冊と収められている書斎。その机の上で、ウィンは肘をついて考え事をしていた。その時、いつの間にか、背後にある花騎士が立っていた。
「ウィン様、ボクにお任せ下さい」
「あなたは……イオノプシジウム」
花騎士、イオノプシジウム。紫のメッシュが入った黒髪と、何よりその怪奇な瞳が特徴的な花騎士である。
つかみどころのない花騎士であった。遠くを見ているのか、近くを見ているのか。笑っているのか怒っているのか。その視線も表情も、伺い知るのは難しい。
「アクアさんを生け捕りにさえすれば、後は何をしてもいいんですよね?」
「……何をするつもりです?」
ウィンの問いに、イオノプシジウムは唇を吊り上げ犬歯を見せた。
「ボクはジェンダーレスですよ。男も女も平等に愛してあげるんです」
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません
何か意味ありげなこと言ってるけど、作者は何も考えてなかったりします
ここまで読んで頂き、ありがとうございました