if編2話です。
だんだん人を選ぶ内容になってくるかも、
※朔紗奈さんより桜野恋愛ちゃんをIFver.でお借りしています。もちろん事前に確認済みです。
とある曇天の日の廃工場街、その一角にて。
「────見つけた、」
「………ァ…?」
フードを深く被り、何処か遠くを見ている男。
不思議とその背に哀愁を感じさせる男の元に、自身の体格よりも幾ばくか大きなパーカーを纏い、眼前の彼と同じようにフードを深く被った少女が現れ、男の背中を見つめたままそう呟いた。
当然ながら、そこに2人以外の人影は無い。
かつて……GPDが流行った頃にはこの辺りはGPD筐体の部品を生産する為の工場が日夜稼働し、流行の舞台裏を支えてきた。しかし流行が過ぎ去り筐体の新規生産依頼が無くなれば当然、ソレを専門に一発立ち上げた企業主達は軒並み工場を手放し離れて……今やこの場は持ち主のいない廃墟同然の廃工場となり、そのうえこんな曇天の日ともなれば、余程の事情が無い限りそうそう人は近寄らないものだ。
そんな場所に、この日は2人もいる。
それには当然、それなりの理由がある訳で……少女は、その目的を果たすべく、男へ言葉を投げ掛けた。
「貴方でしょ、ブレイクデカールを組み上げたの。」
「知らねえな。こんなところで油売ってる暇あんなら今流行りのGBNでも遊んで来たら……」
「お願い、もっと侵食力を上げたやつが欲しい。」
「ッ…!?」
男は、思いがけない言葉に振り返る。
振り返った先に立っている少女の、フードの下から覗き見る瞳は……同じような年頃の少女からは到底見られないであろう、酷く濁った闇を湛えていた。
見る者が見れば、それは途方も無い絶望、そして憎悪から来るものであると理解が及ぶのだろう。そしてそれはフードの彼にも…明確に伝わったようだった。
男は数秒の間を置いて、少女から視線を外し1人勝手に歩き始める。しかしそれは、少女を無視してその場を去るという意図のものではなく……
「……ついて来んなら勝手にしろ」
「うん。」
特に招きはしない。
歓迎もしない、だが拒絶もしない。
本来なら、あんな事を言ったところで彼の心が乱れる事は無かっただろう。しかし、彼が見た少女の瞳の色は……彼の心をほんの少しでも動かすのに、何かしらの影響を与えてしまったのかもしれない……
その日が、男…シバ・ツカサと、少女…有栖川美優が始めて邂逅した日であり、後の世に語られるGBN最大級の危機……マスダイバー動乱の、始まりの日であった…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あ、ツカサおかえりー」
「────、あぁ。」
2人が廃倉庫に入ると、大きなドラム缶の上に座っていた小柄な人影が飛び降り駆け寄って来る。
小柄で……やたらと豊かな胸を揺らす少女は、フードの男をツカサと呼んで親しげに近寄り、当の男も無愛想にしつつも諦めたように軽く返事をしている。
フードの男の方は色恋沙汰なんて柄じゃない雰囲気だが、少女の方は…世話焼きが好きそうな感じだ。さしずめ通い妻か何か、といったところだろうか。
……と、そこで少女が後ろのもう1人に気付く。
「っ……と、その子は?」
「……客だ。」
「お客さん…え、デカールなら会いに来る必要無いし、そもそもどうやって突き止めたの…?」
「さぁな、」
少女は客と言われた相手に対し並々ならぬ興味を見せるが、男も当の客も彼女に見向きはしない。男はそのまま奥の暗がりへと進んで姿が見えなくなり…やがて、何やら機械らしきモノを弄る物音を立て始めた。
その間にも彼女の興味は尽きない。
客の周囲をぐるぐると歩き回りながら、その整った容姿を脳裏に焼き付けていく。
「えっ待っかわっ!?逸材じゃないこの娘…!?
ん……こほん…私の事はレアって呼んでくださいね。それで…えーっと…お客さんの事は何て呼んだら?」
少女…
「…………ミユ…」
「ミユちゃん!ふむ…ミユちゃんは何でブレイ…」
「オイ、」
「ん…準備、出来た?」
「クデカー、ル…に……行っちゃった…」
恋愛の言葉を途中で遮るようにツカサが言うと、ミユは其方に応えて恋愛の横を通り過ぎて行く。何だか自分だけ置いてけぼりにされたような気分になって一人しょもりとする恋愛を他所に、2人は明かりの灯された廃倉庫の一角へ移動していく。
そこには3人が……正確にはミユだけは実機では無く映像で、だが、よく見慣れた大型の機械が……前世代を大きな流行の渦に巻き込んだ、
「やるぞ」
「うん、」
当たり前の事、2人とも解りきってる、とでも言わんばかりの数少ない言葉の応酬。それを終えてツカサとミユは互いを見合うように、筐体の左右へ周り立つ。
そこまでくれば、この2人の配置が何を意味しているのかはもはや誰の目にも明らかであった。
ファイターであれば、口よりもガンプラで語れ。
誰かが言ったらしいその格言を実行するように、ツカサは左右非対称の
Please.GPbase
筐体から発せられる音声と共に筐体上を粒子の幕が包み込み、やがて一つのフィールドが生成される。
Field......Remains
システムによってランダムに決定されたのは…廃墟。重力圏内に含まれる地上戦主体のステージであり、砂漠や森林のようなファイターを選ぶようなピーキーさを殆ど持たない、一般的なフィールドの一つだ。
当人達以外からも見えるようモニターに映し出された映像には、2機のMSが映し出されている。
先程2人によって登録されたガンプラはこうして大地に降り立ち向かい合う。そして……
「先手は貰う…!」
迷いの無いウイングゼロのツインバスターライフルによる砲撃を合図に、戦いが始まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ちょっとツカサ!!」
「あ?」
筐体によるバトル決着の案内音声を待つ事無く、恋愛がツカサの元へ詰め寄って行く。その声色は怒り心頭と言った様子であり、そのままツカサへ掴み掛って行きそうな雰囲気だったが…生憎と彼女の平均よりも小柄な背丈ではそれは叶わなかったようだ。
それでもやはり気心の知れた間柄ではあるのだろう、下から見上げるようにムッとさせた顔で睨む恋愛と、扱いづらいと言わんばかりに視線を逸らすツカサの組み合わせは何処か「お似合い」といったイメージが湧き出る。
恋愛の怒りの根幹は、バトルの過程。
結果ではなく過程だ。結果そのものはツカサの
しかしその過程で、ミユのガンプラは四肢を分解されるに留まらず、重要な接続部までツカサによって粉々に打ち砕かれ、最早パーツの補修などでは到底修復しきれない状態になっていた。
……というのも、ミユ自身が何度も何度も、それこそ機体が胴体と右腕のみになってもバーニアで起き上がって戦い続けたからなのだが……恋愛にとっては、それがいくらGPDで、当人が諦めなかった結果だからとはいえ、ガンプラが半ば一方的にボコボコにされていく光景は良い気分では無かったのだろう。
「あぁ?じゃないよ!幾ら何でもやり過ぎでしょ!どう見たってミユちゃんはGPD未経験者なんだから…」
「うるせェちんちくりん、喚く前に見ろよ」
「見ろって、何を…」
不満をぶつけてくる恋愛に対し、ツカサはぶっきらぼうに返しつつも反対側にいるミユを指し示す。
そこには無惨にも破壊し尽くされたガンプラを掻き集め、持ってきたケースに詰め直していくミユの姿があった。しかしその姿は、心を折られた敗者、或いは大切なモノを壊された被害者のソレではなく…
「く…っふふ……ははっ…あははっ……うん、やっぱりこれだよ…!これが、ホンモノのガンプラバトル…!あんな、
「ミユ、ちゃん…?」
「母さんが、立っていた場所!ホンモノのガンプラバトル…!GPDは、やっぱり取り戻さなくちゃ。その為にも…GBNは、壊さなくちゃいけないんだ…!」
笑っていた。
少女は落ち込む事も、怒る事も無く、ただただ笑い、歓喜の言葉を誰にも向かない虚空へと投げている。
その姿は多くの人には「狂気」に、それを見た2人には「憎悪」に、この場にいない誰かにとっては「絶望」に見えた事だろう。その姿が人にどう映っていたにせよ、少女は既に「GBNを完膚無きまで破壊する」という覚悟を、硬く決めてしまっていた。
その姿に対し、恋愛は何も言う事が出来なかった。
否、ただ言えないだけなら、まだ良かったかも知れない。…少し、ほんの少しだけ、目の前で笑う少女に対して恐れを抱いてしまったのだ。その時点で恋愛は、自分が彼女に何かを言う資格は無いのだと思い、黙る事しか出来なかった。
「はは………はぁ。…ごめん、取り乱した。心が折れないか試されたんだと思うけど、むしろ助かったよ。これでもう、心置き無くGBNを破壊出来る。」
「そうかよ……チッ」
「資金が必要なら幾らでも用意するし、時間が必要なら少しくらい待つ。…連絡先はここに置いておくから、契約の目処が経ったら教えて」
一頻り笑い終え落ち着いたミユはその言葉と共に踵を返し、倉庫の外へと歩いていく。ツカサも恋愛も、その姿を静かに見送り……外まであと数歩、というところでミユはその足を止めた。そして、まるで思い出したかのように「あぁ、そうだ」と呟くと視線のみを後方の2人へと向けて、先程の憎悪とは異なる…聞きようによっては「その日を楽しみにしている」とも感じ取れそうな声色で言葉を紡ぎ始める……
「運営が探ってる事はとっくに解ってると思うけど、GBNの最高戦力…チャンピオンも動き始めてるよ。あの男、アレでかなり影響力あるから…他の面倒な上位ランカーも動くかもね。」
「……だろうな」
「…もし任せてくれるなら、レベルの高い戦力で、デカールとも親和性の高そうな人は何人かアテがある。…私としても、GPDを捨ててGBNにのめり込んでる裏切り者には思い知らせてやりたいし……」
「っ……」
「……考えておいて。じゃあね」
そう言って少女は倉庫を…廃工場街をあとにする。その直前、彼女の言葉にほんの小さなリアクションを示した恋愛へ鋭い視線を向けながらも何かを言う事は無く、フードを被り直して去っていった。
外にはいつから降っていたのか、雨が地面を、廃倉庫を守る金属の屋根を激しく打ち付けていた。
その翌日、自宅に…有栖川邸で1人過ごしていたミユの元に、ツカサからの連絡が入る事になる……
この時期からマスダイバーの呼称は多くのダイバーに知られて、ブレイクデカールはそれまで以上の深刻なバグをばら撒き、また運営もより警戒心を強めてGBN内外での捜査を厳重化させていく。
そして、GBNチャンピオンをはじめとした数多の上位ダイバーが追随するように動きを見せ……
ある少年達が、不思議な少女と出会ったのだった。
人物紹介(プチ)
フードの男(ツカサ)
皆さんご存知あの人。
説明するまでも無いよね。
桜野恋愛(IFバージョン)
作者様の本編とは違う未来を辿った桜野恋愛。
この世界線では、腐れ縁であるツカサの反逆に最後まで付き合う道を選んだようだ……