GBNサイドメモリーズver.M   作:麻婆炒飯

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まだバレンタインなので初投稿です。





Side:「栄光」のフォース
何年目かのバレンタイン


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〜感情暴走少女→愛しのお姉様〜

 

 

「お姉様!私の愛の証、受け取ってください!」

 

 

このやり取り、もう何年目だろうか。

毎年この日になると、毎回決まってほとんど同じような時間に、彼女は”アレ”を手渡しに来る。

 

今日は2月14日のバレンタイン・デイ。

そう、チョコレートである。

 

フォースメンバーの1人であるズィーベンは、それはもう365日毎日本気でアプローチを仕掛けてくるのだが、やはりバレンタインともなると、普段から熱烈なアプローチもより一層気合いが入ったモノになる。

 

GBN内でバレンタイン前後に限定で配信されるカカオ採集…という名の鬼畜ソロレイドを鬼の如く周回し、集めたカカオで手作りチョコレートを製作、意中の異性、または同性にプレゼントする、というのが今やGBNバレンタインの定番行事になっていた。

 

そして今日もその日がやってきた、という訳だ。

案の定ズィーベンは手作りチョコレート…1年目こそ拙い出来だったものの、もう何度も作ってきた事でプロ一歩手前並の出来栄えへと至った一品を袋から取り出し……自らの口に咥えて差し出してきた。

 

 

「──────、はぁ。」

 

 

成程、今年はそう来たか。

 

ズィーベンは毎年何かしらの一策を講じてプレゼントと同時に己の欲望…主に色欲を叶えようとしてくる。どうやら今回は、そのまま口に咥えて受け取って貰う事で、所謂ポッキーゲーム的なアレか或いはそのままキスでも出来れば、などと目論んでいるのだろう。

 

そうは問屋が卸すものか。

 

 

「ん、ありがと。」

 

「あっ…そんなお姉様…!」

 

 

幸いにもチョコレートを咥えたズィーベンの顎の力は、手で摘んで奪い取れないという程強く無い。

なので普通に手で受け取り、そのまま口に運んで食べた。うん、今年のチョコレートもいい出来だ。私好みの甘さがどれくらいなのかを熟知している。

 

だが……

 

 

「お姉様…自分から関節キスだなんて…はぅ…♡」

 

 

おのれ謀ったなズィーベン。

どうやら今年は私よりも彼女の方が上手だったようだ。ズィーベンは満足そうに微笑み、そしてそのまま仰向けに卒倒し、強制ログアウトしていった。

 

急速に顔が熱くなる。

顔が紅潮しているのが、鏡を見なくても解る。

 

定例通りなら、この後リアルでもチョコレートを渡されるはずなのだが、どんな顔をして受け取れというのか。そもそもいつも通り平静を装ったままチョコを受け取れるか、だんだん不安になってきた。

 

 

「この……少しずつ小賢しくなって…!」

 

 

この気恥しさは、まだ暫く治まってくれなさそうだ。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

〜感情暴走少女→お姉様を誑かす不埒者〜

 

 

 

「オズマ、今年も貴方に義理チョコをあげましょう」

 

「毎年の事だけど今年は何でそんな離れてんの?」

 

「これが適切な距離だからです。」

 

 

うーん、意味がわからん。

 

毎年μに渡すチョコレートのついでと称して失敗作のクッソ苦いチョコだったり異常な程アルコール臭いチョコだったりを無理やり喰わされ…もといプレゼントされて来たが、どうやら今年は趣旨が異なるらしい。

 

謎に距離を…およそ4m程空けた先で見せてきたチョコレートを包んだと思しき箱。今年は珍しくラッピングまで施す徹底ぶりだ。やっとマトモに渡してくれる気になったのか、とも一瞬思ったりしたが、その有り得ない希望は刹那の隙に打ち砕かれる。

 

ズィーベンが笑顔で箱のラッピングを解き、包み紙を外し、箱を開けるとそこには…刃物が入っていた。

 

 

「いやお前、それは流石にどうかと思うぞ」

 

「何を言ってるのですかオズマ、これは紛うことなきチョコです。ヒートダートチョコです。」

 

 

そう言ってこの暴走特急娘はヒートダートを手に取り…危ねぇッ!?投げてきやがったコイツ。ちゃんと壁に刺さってる…何で殺傷力まで再現されてんのさ。

 

 

「ちょっと、避け無いでくださいオズマ、そんな事をされたら上手く眉間に刺せないでしょう。」

 

「いや刺されたく無いから避けたんだがッ!??」

 

 

コイツ、殺る気だ。

いや殺意満々なのはいつもの事だが、今回はチョコにかこつけて硬さと鋭さを巧みに細工しほぼガチモンのヒートダートをチョコで作って挑んできた。

 

 

「おま、危なッ、やめ…うぉあぁ刺さったァッ!?」

 

マジで眉間に刺さった。

幸いにも手刀を喰らってもいいように感覚共有の感度を最低値にしていたから痛くは無かったが、アバターのバイタルポイント…俗に言うHPがゴリゴリ削れていく。あ、胸と喉にも刺さった。……これは誰がどう見てももう紛うことなき致命傷だな。

 

 

「お前ェ、年々手が込んで来てんなこの…解ってるとは思うがリアルでもリアルじゃなくても他所様にこんなチョコ作ったり渡したりすんなよー!」

 

 

そう言って断末魔のお説教と共に、バイタルポイントが尽きてエントランスに強制転送(デスルーラ)されていく。

アイツの事だから俺以外にこんな態度を取ったりはしないと思うが、年長者の性かズィーベン…ナナカの将来が少しばかり心配になった。しかし……

 

 

「────貴方だけです、こんな事が出来るのは。」

 

 

どうやらこの心配は杞憂で終わってくれそうだ。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

〜ドMフィジカル侍 ━ 拙を初めて満たした漢〜

 

 

「────オズマ、オズマよ、今年は拙も皆に倣ってちょこれいとを拵えてみたのだが。」

 

「へぇ、また珍しい事をするじゃねぇか。」

 

「うむ、今年のれいどぼすはかなりの強敵と聞いてな。刀が疼き戦線に身を投じていたら自然と素材が溢れた。このまま蔵の肥やしにも出来んであろうし、ここは久方ぶりに腕を奮ってみようかと、な。」

 

 

 

俺達のフォース、「Gloria」内において、ヒバリの立ち位置は所謂「遊撃担当」である。バトルにおいての連携力では目を覆いたくなる有様だが、自由に行動させとけばこれ程心強い侍はいないだろう。

またネット上での異名(?)も「肝心な時にしか役に立たない侍」、「×戦闘狂 ◎戦いしか出来ない」などと散々な言われようだ。隙あらば何処かで居眠りをキメているし、バトル以外のイベントも気付けば観客席に回って居眠りをキメていたりと全体を通してバトル以外の行為に対する適正が全くと言っていい程無い。

 

なのだが……どうやら今年は珍しく、他の誰かに触発でもされたのか、バレンタインチョコを拵えたと。

彼女にしては非常に珍しい事であり、思わずその通り口に出てしまう。…まぁ、ヒバリはそんな事を気にする程小さな器はしていないだろう。

 

 

「見てくれ、中々良い出来だと思うのだが」

 

「ほぉー…初めて作った…ってもここはVRだから勝手はある程度違ってくるんだろうが…それでもこれは結構いい出来栄えをしてるんじゃないか?」

 

「くふ、そうだろう。拙も寝るか戦に明け暮れるばかりの女では無いと、その証になるな?」

 

 

前言撤回しよう、どうやらヒバリでもその辺は気にしていたらしい。案外可愛いとこもあるじゃないか。

 

 

「……で、このチョコは誰に渡し」

 

「あむ。……んむ、んまい」

 

 

え。

 

………えっ?

 

食った。チョコを、1人で全部。

 

……さてはコイツ、バレンタインチョコを誰かにプレゼントするものだってところを理解していないな?

 

 

「あー……ヒバリ、ちょっといいか」

 

「んむ?はんはほふあ(なんだオズマ)

 

「バレンタインチョコってのはな、想い人や家族、世話になった奴は友達に渡す物だ。」

 

「────ッッッ!!?」

 

 

その時ヒバリに電流走る。

いや閃きって言うかショックの電撃なんだが。

折角なのでトドメを刺しておく事にしよう。

 

 

「ついでに言うと、チョコを作った証もスクショとか撮る前に食っちまったから残せて無いぞ」

 

「────ッッッ!!?」

 

 

おっと電撃2発目だ。

少し可哀想になってきたな、これ程ダメージを受けるヒバリは初めて見る気がする。

 

 

「もう一度、狩りに出る…ッ!」

 

「ヒバリ…カカオ集めミッションは昨日までだ。」

 

「あぁ…ッ!」

 

 

ついに膝から崩れ落ちた。

まぁ、こんな事もあるさと慰めだけはしておいてやろう。まだ初挑戦なんだし、来年に乞うご期待だな。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

〜世界を赦した亡霊→全ての始まりになった彼〜

 

 

 

「……オズマ」

 

「……っと?どうしたμ、今日はやる事があるからって早めに解散するんじゃ無かったのか?」

 

「ん……それはもういい、ハイこれ」

 

 

そう言って少女は、照明の落とされたフォースネストのブリーフィングルームに残って後片付けを済ませたばかりの男に赤い包み紙と金のラッピングリボンで飾られた箱を手渡す。その中身は今日という日を鑑みれば、大地を走るブリッツガンダムを見つけるよりもずっと簡単に理解する事が出来た。

 

 

「リアルはともかく、こっちじゃ上手く作れそうになかったから、買ったやつになるんだけど…」

 

「………おう、ありがとなミユ。」

 

 

そう言って男は、少女から差し出されたバレンタインチョコを受け取り、二カリと笑って見せる。

その様子を見て、少し表情が強ばっていた少女はそれが緩むのを感じ……そして間もなくふいと背を向け、扉を潜り抜けて廊下へと駆け出して行ってしまう。

 

 

「……そうだ。オズマ、リアルでもちゃんと渡すから、次のオフ会やる時、ちゃんと来て!」

 

「はいはい、リーダーの御招待とあらば、謹んでお受け致しますよ、我等がお姫様。」

 

 

そう言って返事をした男の言葉に、少女は呆れたような笑顔を見せ……閉まっていく扉が2人の間を隔てていく中……少女は男にも聞こえないような声で、そっと呟きログアウトする。

 

 

「これでも、本命のつもりなんだからね」

 

 

そんな小さな言葉を残して。

 

 

 

 






という訳で久々にGloriaのお話。

特に本編とは関係無い。この後μはパパにもチョコをあげたそうですが、そのチョコはオズマに買ったチョコよりもちょっと休めのやつだったみたいです。


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