IS〈インフィニット・ストラトス〉-IaI   作:SDデバイス

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 神様はいない。

 

 機構はあっても意思がない。

 

 中途半端に進んでしまって、わたしはそれがわかってしまった。

 

 わたしの願いは届かない、叶わない、おこりえない、ありえない、

 

 

 

 

 

 

 ゆるせない

 

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 授業の再開日、朝のHR。

 事情を知らない大半の生徒にとってはただの連休明け。

 その緩みきっていた空気が、転校生(またか)の登場でもってぶち壊される。

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

 壇上のシャルがぺこりと頭を下げた。

 女子の制服を纏う今のシャルを、男性に見間違う輩は間違いなく居ないだろう。

 

「ええと、デュノア君はデュノアさん、ということでした。はぁぁ……また寮の部屋割を組み立て直す作業が始まりますぅ……」

 

 横の山田先生がめっちゃげっそりしてる。

 もしかして知らされてなかった上に素で気付いてなかったんじゃねーのかこの先生。

 

「え? デュノア君って女……?」

「美少年じゃなくて美少女だったってこと!?」

「待って待って待って! 事態についていけないんだけど!」

「誰か説明してくれよぉ!!」

「あっ織斑君の反応が薄いぞ! 野郎知ってやがったな!!」

 

 教室は一斉に喧騒に包まれ、騒がしさで溢れかえった。

 俺としてはシャルに関してはもう驚きポイントを底抜ける勢いで使い切っているのだ。今更フリですら驚く気にならない。ぼけーっとして騒ぎが収まるのを待つばかりである。

 どうでもいいけどオルコットの顔がマジで面白い。フレーメン反応した時の猫みたいな顔になってる。

 とにかく騒ぎは一向に止む気配がなく。

 教室はシャルの正体への驚き一色に染め上げられているのだっ、

 

「ッッッシャオラァッ!!」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 いや一色じゃねえな。

 なんかちょいちょいノイズ混じっ、

 

「私もうシャルル×一夏でネーム切っちゃったのに!?」

 

 ノイズどころか音爆弾!

 

「おい待て今の誰だァ!!」

 

 反射的に立ち上がって教室を見渡すも――今はクラスのほぼ全員が騒いでいるのだ。そこから一人を絞り込むなど、森の中で落ち葉を一枚探すに等しい。

 

「まあまあ落ち着いて織斑くん。女子あるところにね、それは()()()しまうものなんだよ……」

 

 隣の席からなだめるような声。突っ立っていても発言者が見つかる気配はなし、これ以上探す術もなし。不本意ながらも諦めて腰を下ろした。

 

「毎回俺が受けなの超納得がいかねえ……!」

「えっキレてるのそこ?」

 

 

 ▽▼▽

 

 

「………………」

 

 授業の再開から数日。

 学園は施設的にもスケジュール的にもほぼ元の姿に戻りつつある。寮の部屋割りも新しく組み直され、俺は一人部屋に。女子にクラスチェンジしたシャルはラウラと一緒の部屋になったらしい。

 

「返事は無し、か」

 

 視線の先には『戻ってきたもの』がある。

 それは俺の右腕にあるガントレット――白式の待機形態。

 白式という機体はすっかり元に戻っている。スクラップ同然までぶっ壊れたとは信じられないくらい、完全に元の形に戻っている。

 けれどもその内側に居た筈の存在が、戻っていない。

 

 ――シロは、未だに何も応えない。

 

 振ったりつついたり電波が入りやすいように高い位置に上げてみたりしてみた。

 ダメだった。

 そりゃそうだ。

 

「あ、いたいた。一夏ー」

 

 廊下の曲がり角の向こうから、シャルがひょっこりと顔を出す。

 シャルは特例揃いの今年の中でもトップクラスに捻じくれた入学をした訳だが、クラスにもうほぼ打ち解けている。シャル自身の社交力なのか、それとも一組が細かいこと気にしない猛者揃いなのか。

 両方だ。たぶん。

 

「今度の週末空いてるかな?」

「生きるのに忙しい」

「はいはい。それでさ今度臨海学校があるでしょ。水着買いに行きたいんだけど、僕はこの辺のお店とか知らないからさ。付いてきてくれない?」

 

 シャルの言う臨海学校とは――正確には校外特別なんとかかんとか。まあ要するに校外実習。んでその三日間の日程のうち初日は完全に自由時間。海のそばで自由時間となれば、泳ぐ以外の発想をする方が難しい。

 持参する水着には一切の指定が無いので、絶対に新調する必要はない。だがシャルはまず『男性』として入学している。女性用の水着はそりゃ買わねえとねえわな。

 

「えー、そーゆーのは鈴とかに頼めよ。俺服の良し悪しとか全然わかんねーもん」

「は? 一夏にセンスを求めるほど自棄にはなってないよ」

 

 何を当たり前な事をみたいな顔が目の前にある。

 もしかして俺は今ケンカを売られているのか。

 

「いや一夏と一緒に行くと交通費とか経費で落ちるんだよね」

「リアクションに困る理由やめろマジでおまえ」

 

 ここまで露骨な財布扱いはさすがに生まれて初めてされた。

 その切り出し方で承諾がもらえると思ったのかこいつは。

 

「後で請求できるから好きなだけゴハンおごったげるって言っても?」

「オッケー今週の土曜でいいよな!」

 

 

 ▽▽▽

 

 ショッピングモール『レゾナンス』。

 

 駅前を含んだ周囲の地下街すべてと繋がっているショッピングモールである。

 食べ物は和洋中を問わず揃っており、衣服も量販店から海外の一流ブランドまで網羅。その他にも各種レジャーも抜かりなく、あらゆる客層のニーズに応えられる。

 

 要するに『大体何でもある』のだ。

 

 更には交通網の中心でもあるここは地下鉄、バス、タクシーとあらゆる移動手段も備えている。市の何処からでもアクセス可能であり、市の何処へでもアクセス可能。ここに来れば大抵の用事は済み、更に遠出するための中継地点としても優秀な施設である。

 IS学園からも直で来ることができるため、ここを利用する生徒は多い。休日に出かける上で最も手頃で堅実な選択肢といえよう。

 

「わたくしではなく、箒さんを誘えばよかったのでは?」

「誘ったんだけど断られたのよ。最近元気ないっていうかぼんやりしてるから、気晴らしになると思ったんだけどねー」

「先日の襲撃がまだ尾を引いているのかもしれませんわね。鈴さんと違って繊細なのでしょう」

明日アリーナ空いてるらしいわよ(そのケンカ買った)

「返り討ちにしてさしあげますわ」

 

 そのショッピングモール内を、並んで歩くのは鈴とセシリア。事前に計画しての外出ではない。暇を持て余した鈴が偶然通りかかったセシリアを引っ張ってきた突発的な外出である。

 

「………………ん、あれ? なんか近くに一夏居ない? 居る感じするんだけど」

「何を突然言い出すかと思えば」

 

 脈絡の無さすぎる鈴の発言に、セシリアは呆れ顔になる。はあやれやれ、みたいな感じで頭を振る――と。動かした視線が向こうの通りの織斑一夏をばっちり捉えてしまった。

 

「都合よく居るわけがな嘘でしょう!?」

「ほら居たじゃん。あ、デュノアと一緒だ。おーい………………」

 

 思わず2度見するセシリアの横で、鈴は居て当たり前みたいな顔である。

 鈴はそのまま一夏とシャルの方に駆け寄ろうと走り出――さない。やや前傾な姿勢のままでぴたりと停止した。

 

「どうかしまして?」

「面白そうだから後をつけよう!」

「普通に合流しなさいな!」

 

 噴き出す好奇心を制御する気0の鈴が、すこぶる邪悪な笑みを浮かべている。

 

「いやデュノアって男のフリしてたでしょ。んでそれを一夏は多分知ってたんでしょ」

「そう、らしいですわね」

「秘密を共有した男女が同じ部屋でしばらく生活してたのよ? ――何かあるでしょ、あの二人」

「なにか」

「下手したら付き合っててもおかしくないんじゃないかなーって。休日に二人で出かけてるとか怪しくない?」

「つっ……!?」

 

 言葉を盛大につんのめらせて顔を赤く染め上げるセシリア。

 セシリア・オルコットはISの操縦技術に関しても、オルコット家の当主としても年齢にそぐわぬ実力を持つ。だが色恋とかの領域では絶対的に経験値が足りていない、慣れていない、免疫がない。悪意や策略が混ざった男女関係では話が変わるが――同年代と語り合うような、ありふれた色恋に関してはすこぶる初心者(ビギナー)である。

 

「むっ見失う! ほら行くわよセシリア!!」

「え、ちょ、ちょっと待……わ、わたくしはどうすれば……!?」

 

 シュバーと駆けていく鈴。

 おろおろするセシリア。

 

 別に織斑一夏とシャルロット・デュノアがどうなっていようと、セシリア・オルコットの知ったことでは無い。セシリアが織斑一夏へ抱く感情は戦友であり宿敵である。プライベートを詮索する理由も必要も欠片も無い。

 だが、待て。

 ここで知ったことではないと踵を返すのは簡単だ。しかしそれではあの好奇心の化身みたいな感じの小悪魔(凰鈴音)を野放しにする事になりはしないか。

 鈴の馬力をセシリアは嫌というほど知っている。誰かが暴走しないよう監視し、有事の際には止めねばならないのではないか。その責任から逃げていいのか、セシリア・オルコットが。否。断じて否である。なのでセシリアは鈴を追うべきだ。

 いや追わねばならないのだ!

 

「ま、待ちなさい鈴さん――!」

 

 たっぷり数十秒かけて好奇心に屈したセシリアは、鈴の後を追って走り出した。

 

 

 ▽▼▽

 

 このショッピングモール、野生動物(ウリ坊)の気配がする。

 口には出さない。だが注意はしておく。いつ背中に突撃(チャージ)が突き刺さってきてもおかしくない。いわばここはすでに山中なのだ。

 

「一夏は水着買わないの?」

「必要がねえんだよな。元々持ってるのあるし。学校指定のも買ってるし」

 

 直近の目的は水着だが、今後を考えると必要になる生活雑貨類もレゾナンス(ここ)なら一気に揃う。ここさえ教えとけば物資で困ることはまずないだろう。店全体の大まかな売り場の配置を教えながら進んでいく。

 

「もし買うんだったら私が選んだげよっか?」

「いーよ別に、そんくらい自分で選ぶ。ああ着いた着いた」

 

 当初の目的の水着売り場に到着。

 ここから先は男性用と女性用で売り場が分かれている。俺は買う気がないので、その場で待機。シャルは売り場に向かって歩き出――急に立ち止まった。

 

「せっかくだから一夏、私の水着選んでみる?」

「あれだけボロクソ言っといてか? 正気か?」

「どれだけセンスがボロクソなのかが地味に気になるんだよ」

「上等だてめえ!」

「じゃあ三十分後にここに集合ねー」

 

 女性用水着売り場。

 男のソロで挑む場合、無人機がみっちり詰まったアリーナよりも危険地帯であるといえよう。土の代わりに地雷が敷き詰められ、更に地雷が追い埋めされた地雷原に等しい。

 だが虎穴に入らないと虎は倒せないのだ。

 退きたくないなら進むしか無いのである……!

 

 

 

 

 

 

「だめだ酔ったもうむり超むり…………」

 

 五分と保たなかった。

 カラフル過ぎて目がチカチカする。前に口に出したら鈴にアッパーされたから二度と言わないけどぶっちゃけ下着と何が違うんだよ水着って。種類が多い色が多い、そしてそこまで無駄に多くなる理由が何よりもわからねえ……俺には、何もわからねえ…………

 

「あれ、織斑くんじゃないですか」

「山田先生? どうしたんですこんな所――いや女性が居てもおかしくない場所だった」

 

 売り場の端っこにそそくさと避難してぐったりとしていると、棚の向こうから山田先生に声をかけられた。

 学校ではほぼ毎日顔を合わせているが、外で出会うのは地味に初めてである。

 

「どうして女性用の水着売り場に……?」

「ちょうどよかった。この売場でバツゲームみたいな水着ってどこに置いてあるか知ってます?」

「!?」

 

 青ざめてふらつくように後ずさった山田先生を、後ろからやってきた別の人間が受け止める。今度もよく見知った人、恐らくプライベートであるのにサマースーツ姿の千冬さん。

 

「千冬さんも来てたんですか」

「…………こんな所で何をしている? 理由によっては休日だが指導になるぞ」

「いやちょっとケンカ売られて」

「解るように言え」

「あっはい」

 

 かくかくしかじか。

 しっちゃかめっちゃか。

 

「バカ者」

 

 めちゃくちゃ呆れられている。

 乗るなそんな安い挑発にみたいな目をされている。

 

「まあ、休日だ。咎めはしないが羽目を外すのも程々にな。私はさっさと退散するが――」

 

 言葉を途中で止めた千冬さんが手にした水着をじっと見ている。タイミング的に、千冬さんも山田先生も臨海学校用の水着を買いに来たのだろうか。

 格好こそ普段と変わらないが、中身は割と休日モードだった千冬さんが珍しい表情をする。悪戯っぽい笑みというか、挑発するような表情。

 

「何だったら私の水着もお前が選ぶか?」

「え゛っ」

「真に受けるな、冗談――」

 

 俺の間抜け顔に満足したのか。

 くくくと笑って、レジの方に向かおうとする千冬さん。

 

「ラウラ! ラーウラー!! 行くぞ! この店ひっくり返して吟味するぞ!!」

「応ッ!!」

 

 突然呼ばれたにも関わらず棚2つを飛び越えて出て来たのがラウラ(学園からずっと付いてきてた)

 飛んできたラウラをキャッチしてそのまま店の奥へ駆け出したのが俺。

 

「あたしもやるー!」

「ちょっ鈴さ……!」

 

 実は居ましたーのカミングアウトなく当たり前みたいな顔して突っ込んでくる鈴。

 正気かこいつらみたいな顔をしているのがオルコット。

 

 

「…………………………………………」

 

 

 軽い悪戯が極大の混沌を招いてしまい、無表情になってるのが千冬ちゃん。

 

 

 

 ▽▽▽

 

 織斑千冬が無造作に一つの水着(黒のビキニ)を掴む。

 その瞬間に、勝敗が決した。

 

「「イェ――――イ!!」」

 

 一夏と鈴がハイジャンプからのハイタッチ。我らが勝利者であると叫んでいる。

 唐突に始まった織斑千冬水着セレクト大会であるが、そこにルールはない。()()()()()()()()などと、決められていないのだ。

 千冬と付き合いの長い一夏と、純粋に女子力の高い鈴は勝つために速攻でタッグを組んだ。勝てばよかろうなのだ。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!!」

 

 シングル敗者、ラウラ・ボーデヴィッヒ。床に崩れ落ちながらの、振り絞るような慟哭だった。悔しみを練り込みに練り込んだ、血が流れているような慟哭だった。

 

「オルコットさんは参加しなくてよかったの?」

「……するわけがないでしょう。デュノアさんは今までどこに?」

 

 観客に落ち着いていたセシリア。

 その横にやってきたシャルは、返事代わりに持っていた買い物袋を掲げた。

 

「僕は水着の他にも色々買うものがあるからね。ほら、最初男扱いで来てるから女性用の物はほとんど持ち込めてないんだ。だから一夏に一式揃えられる場所の案内を頼んだんだよ」

「ああ、なるほどそういう……」

「どうかしたの?」

「なんでもありませんわ……」

 

 勘違いに踊らされていたことを知り、セシリアは消え入りそうな声で呟いた。

 

「ああでも、そもそもデュノアさんが水着を選んでもらうはずだったのでは?」

「ふふふ。元々冗談半分だったし……選んでって言って素直に選ぶような人でもないでしょ。それに、()()()()()()から」

 

 一夏と別れてからしばらく、シャルは水着を見ていなかった。見てはいたが、それは自分の視線の先にあるものではない。一夏が無意識に()()()()()()()()()()()()()()を診ていた。

 自分の意思がなければいけない。

 相手の嗜好に合わせ切るだけではいけない。

 自分が着て嬉しく、かつ相手が無意識にいいなと思える一着。

 相手の嗜好と自分の趣味を一番上手く両立する水着が、今シャルの手元にあった。

 

 

 ▽▽▽

 

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒは挫けない。

 

 分身寸前の高速反復横跳びをしながらさんっっざん煽ってきた一夏と鈴に、渾身の捨てセリフと共に敗走してから数十分。ラウラは水着売り場に舞い戻っていた。

 自分が水着を持っていない事を思い出したのである。

 

『私だ』

 

 ラウラが通信を飛ばした先は、ドイツ国内軍施設のIS配備特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』――通称『黒ウサギ隊』。

 眼帯をした黒ウサギが部隊章であるこの隊は、隊長のラウラを始め全員が肉眼へのIS用補佐ナノマシン移植者である。元々は劣等の証であったラウラの眼帯だが、現在では部隊の誇りとして隊の全員が装着するようになっていた。

 何も知らない人間が見ればラウラ・ファンクラブに間違われるかもしれない。

 

『――受諾。クラリッサ・ハルフォーフ大尉です。ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長、なにか問題が起きたのですか?』

 

 ラウラの通信に応えたのは部隊の副隊長。

 部隊内で最高齢である彼女は、厳しくも部隊を面倒見よく牽引しており全員から頼られている。隊長のラウラでさえ例外ではなく、何かを相談するならばまず彼女が真っ先に候補に上がる程だ。

 

『そうだ。極めて重大な問題が発生している』

『部隊を向かわせますか?』

『いや部隊は必要ない。軍事的な問題ではない』

 

 ラウラの真剣な声にクラリッサは通信の向こうで背を正した。

 通信の相手がラウラだと分かった他の隊員達も、作業の手を止めて事態を伺っている。

 

『実は今度臨海学校というものに行くことになったのだが……どのような水着を選べば良いか選択基準がわからん。そちらの指示を仰ぎたいのだ』

『了解しました。この黒ウサギ部隊は常に隊長と共にあります。ちなみに現在隊長が所有しておられる装備は?』

 

 すっかり全隊員がやり取りに集中している。

 本当にファンクラブなのかもしれない。

 

『学校指定の水着が一着のみだ』

『何をバカなことを!』

()()()。私は今()()()()を痛感している』

『!?』

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒは自身の戦闘機能に自信を持っている。

 だがそれ以外の何もかもが未発達なのだと、思い知らされたばかりである。故にラウラ一人では可愛さのジャンルにおいて、絶対に正解に辿り着けない。

 ならば最も女子力の高い(と思っている)クラリッサに総てを託す事こそが、最善であると判断した。

 

『クラリッサ、嫁というすばらしい概念を私に教えてくれたお前の知恵が頼りだ。今の私に相応しい最カワな水着を提示してもらいたい……!』

 

 単純な容姿では決してラウラは劣っていない。

 けれども、織斑一夏の周りには色とりどりに輝く心が在るのだ。今のラウラにはそれが判る。戦闘機能を抜いてしまえば、ラウラは()()()()()()()といっても過言ではない。

 己が遅れを取っているという自覚はある。だが心が直ぐに育つかといえば否。だからといって諦める、負けるというのはさらに否!

 

()()()()()()()では、()()()()…………ッ!』

『お任せください、隊長……!』

 

 鳴った……!

 戦いのゴングが……!

 

 

 






ボーさんの深刻なギャグキャラ堕ち

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