テイルズオブジアビスーReplicasDiaryー   作:さいころ丸

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セレニアの花の園で

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■■day,■■■■■,■■■■ Redecan ND■■■■ − ■■■■/■■/■■(■■■)

 

しんしんと、白雪が降り積もる。夜は深く、星と月は暗雲の遥か向こう。

その下で、「私」の腕は「彼女」の胸を深く深く貫いていた。

夥しい赤が足元の白を染めていくにも構わず、「彼女」は「私」を優しく抱き締める。

出会ってまだ数分程度の、「私」と同じ顔をした「彼女」。

真面に言葉だって交わしていないのに、「私」を抱き締める腕は暖かく、慈愛に満ちている。

 

「プレゼント・・・あげなくちゃね。今日は貴女の誕生日なんだから。そうね・・・」

 

息も絶え絶えに言葉が続く。「私」は呆と暗い空を見上げてばかりいる。

 

「名前、なんてどうかしら。今思いつく名前なんて、一つしかないけれど・・・今日から貴女はーーー」

 

告げられた、一つの名前。直後、「私」の口から獣そのもの咆哮が響きーーー

 

 

 

§ § § § § § §

 

 

 

マルクト領、タタル渓谷

23day,Rem,Rem Decan ND2018 − 2018/01/23(Tue)

 

 

「ーーーっ!」

 

 

夢からは、そこで醒めることができた。

空は冴え冴えと輝く月。周囲はセレニアの花で埋め尽くされている。

離れた絶壁の向こうからは潮の音が聞こえてくる。

当て所ない一人旅で見えた、美しい原風景。つい物思いに耽っているうちに眠ってしまっていたか。

手持ちの譜業懐中時計を見ると、ここにきて数十分と経っていない。

こんなところで舟を漕いでいたら風邪をひくか魔物の餌になってしまう。

もう少し眺めていたいけれど、やはりここを離れよう。

そう思い、女は立ち上がってその場を後にしようとする。

 

一見、美しい女だった。

薄香色の髪に、鳶色の瞳。

肩を惜しげも無く晒した上衣に、ゆったりとした羽織り状の外衣。

20代半ばに見えるが、何処か憂いを帯びた瞳はそれ以上の年季を感じさせる。

 

女の思考を占めるのは、今し方の夢。否、記憶。

「自分」が生まれ、「彼女」から「誕生日プレゼント」を貰った時の事。

 

(なんで今更あの時のことを・・・最近は、昔のことを夢に見るなんてあまりなかったのに)

 

未だ自分には重すぎる、「誕生日プレゼント」を貰った時の記憶。

忘れることなど許されず、さりとて常に意識しているには苦過ぎる過去。

この白い花の園でそれを夢に見たのは、何かの啓示なのだろうか。

 

益体もない考えを無理矢理打ち切り、花園を背に一歩足を足を踏み出す。

 

 

 

直後、背後から正体不明の衝撃が響いた。

 

 

 

反射的に振り返り、体は譜術戦の構えを取ろうとする。

何処からか猛禽型の魔物でも現れたか。だが、予想に反して視線の先には一人の少年が倒れ伏していただけだった。

不自然極まりない状況だが、訝しんでんばかりもいられない。

 

急いで傍に膝をつき、意識、脈拍、呼吸を確認する。どうやら気絶しているだけのようだが、ここに放っておくわけにもいかない。

彼女は大の男を抱えられる膂力はない。酷かもしれないがすぐに起きてもらって、野営地まで移動してもらわなければならない。

 

「君、起きて。こんなところで寝ていると危ないわよ」

 

肩を揺すりながら、少年の面貌と様相を確認する。

腰から提げた剣と白衣。身なりからして、高貴な身分を感じさせる。

 

何より特徴的なのは、その赤く、長い髪。

その赤が、自分の知るそれとは違って温もりに満ちていそうで、我知らず手を伸ばし、

 

「・・・ん、ああ?」

 

触れる直前で少年は意識を取り戻した。

慌てて手を引っ込めつつも、表情には穏やかな仮面を貼り付けて語り掛ける。

 

「よかった。怪我はなさそうね」

「え・・・な、何だ、どうなったんだ!?」

 

少年は跳ね起きて辺りを見回す。いかにも混乱しているという態度。

どうやら、彼にとってもこの状況は不可解らしい。

 

「落ち着いて。私も、何故貴方が今ここにいることが解らないし、貴方が誰かも知らないの。貴方は、何処の誰?」

 

嫋やかな微笑みを浮かべて、少年が落ち着くよう促す。

それは功を奏したようで、混乱の極みにあった少年は漸く冷静になれたようだ。

 

「お、俺はーーーいや、それよりアンタこそ誰だよっ。人に名前を訊くときは自分からなんじゃねーの」

 

・・・こんな風に、いささか口悪く初対面の人間に噛み付いてくるくらいには。

だが頬に差した朱を見ると、照れ隠しもあったのかもしれない。

そんな初々しい態度を見ると苛立ちよりも微笑ましさが勝る。

 

しかし、名を名乗れときたか。あんな夢の後にこの状況。やはり何か因縁を感じてしまう。

これも、この惑星「オールドラント」を巡る預言(スコア)の思し召しだとでも言うのだろうか。

 

 

 

「確かに、そうね。私はーーー」

 

 

 

《今日から貴方はーーー》

 

 

 

記憶の彼方から、その名前を引き出す。その重みに心を潰されないよう、はっきりと。

 

 

 

「私は、ゲルダ・ネビリム」




と言うわけでネビリムルートです。糖度は原作と負けず劣らずの予定。

【登場人物紹介・その1】
ゲルダ・ネビリム:本作ヒロイン。勿論「あっち」の。「参考までに」アニメの公式サイトとか見ると、結構美人です。衣装はトップが黒のノースリーブのタートルネックにストール、ボトムはスリット付きのロングスカート。どうせ文字だけなのに衣装の設定が必要かって?当然です(真顔)。「年齢」の概念がややこしい人。武器はナイフと譜術。

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