インフィニット・ストラトス クレイジージーニアス 作:グ・ラン
◆
アランが未確認機との戦闘を始めた一方、
第2アリーナ内では…
『イヒヒヒ…わ、ワタシがツイニ凰の馬鹿ヲタオシェルトキガがガガ…き、キキ、キタァァ!!』
「鈴、あいつさっきより言葉の呂律と様子がおかしくなってきてないか?」
「見れば分かるわよ。それに訓練機も完全にチューブで覆われて見えなくなってるし…」
俺と鈴は敵機の足止めをしつつ、まだ避難できていない生徒達が避難するまでの時間稼ぎをしていたが結構ダメージを与えてきたにもかかわらず敵機が消耗する姿を一向に見せないどころか全身を覆うチューブが更に膨張してまるで不気味な巨人のような姿へと変貌した。
『シネェーーー!!!』
巨人と化した敵機は両腕からチューブの束を触手のように生やして俺達に伸ばして襲いかかって来た。俺は雪片で切り捌いていたが切っても直ぐに別のチューブが生えて捌き切れず全身を拘束され、高圧電流が襲い掛かる。
「ぐああぁぁぁぁーーー!!」
「一夏!放しなさいよ、このゲテモノ…キャっ!?」
鈴もチューブを捌いていたが俺が拘束された姿を見た一瞬の隙を突かれて全身の身動きが封じられて捕まってしまった。敵機はニヤリと笑みを浮かべるとチューブの締め付けが強まり、ジワジワとシールドエネルギーが消耗していく。絶対絶命のピンチに陥っていたその時…
ズバンっ!!
何者かの一閃により、チューブは一瞬で切り伏せられて敵機は痛みに悶える様子でジタバタと踠きだした。
「一夏!助けに来たぞ」
「箒!」
一閃でチューブを切り捨てたのは打鉄に搭乗した箒だった。箒は近接ブレードでチューブを切り捨てた後、一夏と鈴を抱えて距離を取るが背後からチューブの束が死角から迫るが…
キュインっ!!
5つの閃光によってチューブは撃ち抜かれて爆散するだった。
「油断大敵ですわよ箒さん。一夏さん、救援が遅くなりましたがこのセシリア・オルコットが来たからにはもう安心して下さいな」
「おい、何をお前の手柄の様に言っているんだ。一夏を助けたのはこの私だ!」
「背後を取られそうになったマヌケさんに言われたくありませんわ。それよりも…あの得体の知れない元訓練機、ダメージを負ってる気配が微塵もありませんわね」
セシリアの言う通りだ。今まで俺と鈴で攻撃してもシールドエネルギーが減るどころかチューブで全身を覆い尽くしてどんどん強くなってきてるようだ。何とかしないと箒とセシリアが増援で来てもジリ貧だ…俺は何か策が無いか考えていたその時、箒とセシリアが増援で来るまで敵機と戦っていた様子を振り返る。確かあの時…両腕のチューブを切り捨てた後、胴体を斬ろうとしたら顔を徹底的にガードしていたな。もしかしたら…
「皆聞いてくれ!アイツの弱点が分かったかも知れない」
「本当か一夏!?」
「アイツ、俺と鈴が2人掛かりで攻撃してもあの仮面だけ矢鱈とガードしていたんだ。その時は偶々だったと思ってたけど何回も同じ箇所をチューブや両腕でガードしていたから間違いない」
「なら決まりね!あのゲテモノを倒して仮面をひっぺがしてやるんだから」
「では地面に生やしたチューブの束はわたくしが抑えますわ、皆さんは本体へ」
セシリアは俺が言葉を口にする前にビットを展開してチューブを攻撃し始めると敵機はセシリアに意識を向けて攻撃を開始する。
「箒は敵機の意識を逸らすよう、近接戦を仕掛けてくれ!」
「任せろ!」
箒は敵機へ接近して剣戟の手数を増やして意識を逸らせる。箒の気迫もあってか、敵機は地面に生やしたチューブで全身を絡め取ろうとするがそうはさせじとセシリアの狙撃によりチューブは撃ち落とされていた。
敵機はそんな様子に腹を立てたのか癇癪を起こして両腕を地面に突き刺すと大量のチューブが生え始め、先端からは元々訓練機のラファールに搭載されていたアサルトライフルの銃口が現れて見境なく発砲するのだった。
「くっ、早く決めてしまえ一夏!」
「流石にこれ以上、長く保ちませんわ」
箒とセシリアがオープン・チャンネルで俺に状況を伝えると俺はこのタイミングを見て鈴に合図を出した。
「今だ鈴!最大威力の衝撃砲を撃つんだ!!」
「分かったわ!」
鈴は非固定浮遊部位に内蔵された砲門を開くと最大威力の衝撃砲を放つ為、体制を前のめりにしてチャージしていたが…俺はそんな鈴の前に立つ。
「退きなさいよ一夏!このままじゃあんたが直撃を喰らうじゃない!!」
「これで良いんだ、このまま撃てぇ!!」
「あー、どうなっても知らないわよ!」
鈴はヤケになった様子で最大威力の衝撃砲を俺に向けて発射する。背後から最大威力の衝撃砲を一身に受けた俺は絶対防御で身を守られているとはいえ全身が軋むほどの痛みに苦悶の表情を浮かべるが、これが俺の真の狙いだった。
ここで瞬時加速の仕組みを再度説明する。瞬時加速はスラスターから放出したエネルギーを再び取り込み、都合2回分のエネルギーで直線加速を行ういわゆる【溜めダッシュ】と言って良い技術だ。スラスターから放出したエネルギーつまり、最大威力で発射された衝撃砲を取り込み放出する事で通常以上の速度を誇る瞬時加速を可能としたのだ。
俺は全身に襲い掛かる痛みを耐え切ると零落白夜を発動させ雪片の形状を変化させ、衝撃砲を取り込んでエネルギーに変換した白式は全身が黄金に輝き、ハイパーセンサーでも探知できない速度で一直線に向かう。
「これで終わりだぁぁぁぁ!!」
この一撃に全てを賭けた俺は立ちはだかるチューブの束も全て切り伏せて進路を変えず真っ直ぐ標的とした敵機の顔に一点集中して上段の面打ちを仮面に叩きつけた。
ピシッと罅が割れて真っ二つに両断された仮面が地面に落ちると敵機は悶え苦しみ、チューブを地面一帯に叩きつける。
『ギ…ギャァァァァーーーー!!!ゾンな、コノ、ワタシガァァァ!!グァァァァァァ!!!』
悍ましい叫び声を上げてジタバタと暴れ回っていると全身を覆い尽くしていたチューブがドロドロに溶け出して訓練機の装甲も溶けていたが中から敵機に搭乗していた人物が姿を現す。訓練機に搭乗していたのは学園の制服を着た生徒で全身の精気が抜け落ちて干物のようになっていて、目も虚な様子で視界の焦点が全く合ってなかった。
「これが敵機の正体…ちょっと待て!うちの制服を着ているぞ」
「!?この方は確か、凰さんがクラス代表に就任される前に2組の代表だったグエン・アム・フオンさんですわ」
「何だと?」
「ええ、間違いありませんわ。八乙女さんから頂いた情報リストに彼女の事が記されてましたから」
セシリアは情報通のクラスメイトから貰った情報リストを熟読していた為、直ぐにフオンの事を思い出していた。
「確かにいたわね教室に。あたしに負けてからは目立った事はして来なかったけど…そんなにクラス代表にしがみ付きたいなら何度でも勝負してくれば良いじゃない」
「鈴…」
鈴は自分へ殺意を向けて襲い掛かって来た犯人がクラスメイトだと知ると、自分に対して憎んでいた事よりも直接挑んで来なかったことへ落胆した様子でいた。俺は白式を展開解除して意識を失ったグエンの元へ近づこうとしたその時…
「一夏さん、危ない!」
ズドォォォォォンン!!
セシリアが咄嗟に俺の前に立った直後、耳を劈く音が聞こえた途端セシリアは俺を庇ってアリーナの壁に激突した。あまりにも凄まじい衝撃だったのかセシリアは専用機が強制排除されて気絶する。俺はセシリアが倒された衝撃を放った場所を振り返るとそこには、天使の翼を生やして黄色の装甲が目立つISに搭乗した蛇のマスカレードマスクにボンテージスーツに身を包んだ人物が俺達を見下ろすように立っていた。
◆
時は一夏達が敵機ことフオンと対峙している時まで遡る…
訓練機の格納庫を突き破って学園の地下施設まで未確認機を引き摺り下ろした俺は今、未確認機をボコボコにしていた。棍と鉤爪の攻撃で全身は既にズタボロになり身体からはショートしているのかスパークを上げていたが搭乗者自体はゾンビのように起き上がった。
(ホンマになんやこいつは…シールドエネルギーは底を尽いとる筈やのに、搭乗者本人は至ってピンピンしとる。まさかコイツ…)
俺は未確認機の正体に気付くと残った左腕のビーム砲で撃ち抜こうとした腕を明後日の方向にへし折って棍で吹き飛ばすと痛みで悶える様子も見せず撃ち続けようとしたが、残った左腕は鉤爪で切り飛ばした。
「やっぱりな…お前、人やなくて機械やったか。そりゃ痛いもクソも無いよな」
未確認機は俺の問いに対して右腕で殴り掛かるが…その拳が当たる前に俺は拡張領域から呼び出した片手剣で関節部ごと右腕を切り飛ばす。
「痛みを感じへんってのはある意味不憫やなぁ…何せ今からお前をバラバラのスクラップにしてもこっちは良心が痛まんからなぁ!」
両腕を失った未確認機は自分の負けを悟ったのか体内に蓄積させていたエネルギーを逆流させて俺を道連れにしてこのまま自爆しようとしていたが、そんな無粋な真似俺がさせると思っとんのか?俺は未確認機の首を捻じ曲げて鉤爪を深々と差し込み脊髄ごとコアを抉り出して捻り潰した。抉り取られた未確認機は糸が切れた人形のように崩れ落ちてその活動を完全に停止させたのだった。
「コイツのせいで無駄な時間を喰ったわ。にしても無人機のISを作れるのは、世界中探してもたった1人しかおらんやろ…」
俺は未確認機こと無人機を学園に差し向けた人物に心当たりがあり、その人物の企みや意図を考えていたが今はええわ。それよりも今は一夏ちゃん達の増援に行かなあかんしな!俺は拡張領域内にある回収ボックスへ無人機のコアを入れて地上に戻ろうとしたその時…ハイパーセンサーがまた新たな未確認機を捉えた。
場所は第2アリーナやと!それにこの反応、第二移行に入った軍用機、マズいな今のアイツらでは敵わん相手や早よ行かんと!!俺は地下施設を後にして急いで第2アリーナへと向かうのだった。
◆
俺はセシリアを一撃で倒した新たな未確認機を見ていると視線を向けられた事に気付いた未確認機の搭乗者は苛立ちを隠し切れない様子で舌打ちをした。
「フン、せっかく私が力を貸してやったと言うのに役立たずめ。だが仮面の力を確認できただけでも御の字としてやるか」
今の発言を聞いた俺はこの人物がグエンをあんな怪物へと変貌させた黒幕だと確信した。
「お前何者だよ。何でこんな真似をした!!」
「こんな真似だと?決まっているだろう、貴様と言う害獣を駆除する為だ織斑一夏」
「何?俺を狙う為に大勢の生徒まで巻き込んだのか」
「無論だ。目的を達する為なら犠牲はつきもの…寧ろ光栄に思うべきだ」
「ふっざけんなよ…何が光栄だ。笑わせんな!」
俺は黒幕の言葉に怒りが込みあがり、白式を再度展開する。すると黒幕は両翼を広げて羽根をダーツのように俺に向けて一斉に放つ。しかし羽は俺に当たる事はなかった。
「一夏はやらせん!」
近接ブレードで全ての羽根を弾き飛ばした箒が黒幕の前に立ちはだかる。
「篠ノ之箒…その害獣を庇い立てるか。篠ノ之束の妹はこんなにも愚かだったか」
「あの人は関係ない!その前に聞きたい事がある。教員部隊を壊滅させたのはお前だな?」
「ほう…気付いていたか。ああ、その通りだ。褒美に私の名を教えてやろう。私の名はセイレーン、女聖教最高幹部【4幹部】の一角だ」
黒幕ことセイレーンは芝居かかった口調で喋り出すと浮上して両手を後ろに広げ出す。
「見せてやろう、聖母の威光に満ちた我が力を…」
「ふざけるな!お前には色々聞かせてもらうぞ、箒!挟み撃ちで斬るぞ」
「承知した!」
俺と箒はセイレーンの左右を挟んで一太刀浴びせるが…その攻撃は当たる事無く空振りとなった。
「馬鹿な!ハイパーセンサーでも奴を認知していた筈だ」
「こうなったらもう一度だ!行くぞ箒」
俺はもう一度箒と挟み撃ちにしてセイレーンに攻撃したが結果はまた空振りとなった。
「もう終わりか?なら今度はこちらから行かせてもらうぞ」
セイレーンは拡張領域内からレイピアを呼び出すと箒に向けて一突き繰り出す。だがその突きはどう見ても遅すぎる突きで余裕で回避できるものだった。
「当たるかそんな攻撃!……っ何!?」
箒は確実に避け切ったがその直後、打鉄は3本の剣筋が入ってダメージを負っていた。
【打鉄シールドエネルギー残量 420/600】
「ぐっ、いつの間に…」
「気をつけろ箒!次が来るぞ!!」
箒は完全に見切っていた攻撃を避けた筈がいつの間にかダメージを負っていた事に驚いていたがセイレーンは考えさせる余裕を与えず次の攻撃を仕掛けて来た。
まただ、さっきの攻撃と同じで箒は正確にセイレーンの攻撃を避けた筈なのに攻撃を受けていた。その間にも箒のシールドエネルギーが尽きそうになっていた。
「これ以上アンタの好きにはさせないわよ!」
鈴が双天牙月を連結させてセイレーンに向けて投擲するとセイレーンはレイピアで弾いたが、威力を殺し切れず体制が崩れた。今がチャンスだ!俺は瞬時加速を使って一撃を喰らわせようとしたその時…
「そろそろだな…聖母の威光の前に平伏せ」
セイレーンが呟くように言い放つと俺の視界が急にぼやけ出し、瞬時加速が緩んで地面に転がる。しかもそれだけじゃない、激しい頭痛と眩暈、吐き気が襲い掛かって体制も保てなくなっていた。
「ぐぁぁぁぁ!!あ、頭が痛い…」
「な、何なのよコレ…うぷっ……」
この異常に襲われているのは俺だけじゃなかった。箒と鈴もこの得体の知れない現象に襲われており、武器を杖代わりにして立つので精一杯だった。
「これこそ我が聖母マザー・イブ様のご加護で護られた私の力だ。害獣とそれに与する淫売風情では何も出来ない」
セイレーンはレイピアを構えると箒にその切先を胴体へ躊躇なく突き刺した。
「うあぁぁぁぁぁ!!」
絶対防御が発動しているとはいえ、シールドエネルギーも無限じゃない。俺は箒へレイピアを突き刺すセイレーンに向かって再度切り掛かるがまたも身体が思うように動かずその場で崩れ落ちる。
「さて、私の計画を邪魔してくれた憂さ晴らしはこの辺にして…そろそろメインディッシュと行こうか」
セイレーンは箒のシールドエネルギーが尽きてISが強制解除されると標的を俺へと移す。俺は身体の身動きが不充分の中、雪片を構え直すがセイレーンが先に瞬時加速で動いて俺にレイピアを突き刺す。
【白式シールドエネルギー残量 0/600】
白式のシールドエネルギーが底を尽き、強制排除されると俺はそのまま地面に転がり落ちて意識を失った。意識が失う前に見た光景は俺のやられた姿を見てセイレーンは鼻で笑い侮蔑の目線を向けた様子だった…畜生、俺は何もできなかった…そこから俺の意識は暗闇へと落ちていった。
「無様なものだな。所詮は偶々ISに搭乗できた半端者か…私の敵では無いな」
セイレーンはレイピアを拡張領域内へ戻し、戦闘不能にした一夏へ侮蔑の視線を向けていた。
しかし…
ドカァァァン!!
鈴が苦し紛れに放った衝撃砲が掠り、微量のシールドエネルギーが減るのだった。
【ローレライシールドエネルギー残量 1480/1500】
セイレーンは自身の専用機である【ローレライ】が微量ではあるが戦闘ダメージを負うと先程まで冷静だった様子から一変して怒り狂った視線を鈴へと向けてすぐさま反撃を仕掛けるのだった。
「この…ガキがぁぁぁぁぁぁ!!よくも、よくもマザーから授かった私の【ローレライ】に傷を付けてくれたなぁ!この実験機風情が!!」
セイレーンは怒り狂った様子で鈴へ容赦の無い猛攻を仕掛けると反撃する術が無い鈴は瞬く間にシールドエネルギーが0となり、ISを強制解除されるのだった。
「あぁっ!?」
鈴はそのまま地面に転がり落ちるとアリーナの壁へと身体をぶつけるが怒り狂ったセイレーンは鈴の首元を掴んで、見えない何かで四肢を拘束して容赦の無い追い討ちを掛け始める。
「苦しいか?だが私が受けた恥辱に比べればお前程度の命など軽すぎるわ」
「知らないわよバーカ、ごふっ!」
鈴は苦し紛れにセイレーンの顔に向けて血反吐を吐き付けると血反吐を浴びたセイレーンは無表情のまま、鈴の拘束を強める。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「生意気な小娘が無駄な足掻きを…このままお前を一捻りに殺してはつまらないからな…そうだ!お前の目の前で地面に這いつくばっている害獣1匹とそれに与する淫売2匹をバラバラにしてやろう」
セイレーンは悪魔のような笑みを浮かべて、戦闘不能に陥り気絶した一夏達を拘束すると鈴の目の前に並べて拡張領域内からレイピアを呼び寄せる。
「さぁーて、先ずはどいつから仕留めてやろうか…楽しみだなぁ」
「止めなさいよ!やるなら、あたしからにしなさい」
セイレーンはレイピアの切先を一夏達に向けていると鈴が覚悟を決めた表情でセイレーンに呼び掛ける。
「その生意気な態度が気に食わんな。人に頼むのであればそれ相応の言葉遣いがあるだろう?」
セイレーンは鈴を見下した口調で喋り、到底出来そうにない様子で鈴に問い掛けるが…
「わ、分かりました…お願いします。一夏達を殺すのは止めて下さい…私があいつらの身代わりになりますから……」
鈴は地面に頭を擦り付けて土下座をし始め、セイレーンに自分の命を引き替えに一夏達の命を見逃すようプライドを捨てて懇願をする。しかしその様子を見ていたセイレーンは……
「プッ…キャハハハハハ!!お前本物の馬鹿か?お前程度の小娘の懇願、私が聞いて『はい、止めます』と言うとでも思っていたのか?キャハハハハハハハハ!!」
そんな鈴の懇願に対してセイレーンは腹の底から笑い、鈴の懇願を平然と踏み躙るのであった。セイレーンは笑い飽きると鈴の身動きを封じて身体を一夏達の方に向けて固定する。
「そこで見ておくのだな。私の手でこの害獣が血の花を咲かせる瞬間をな…嗚呼、我らが聖母たるマザー・イブよ!今貴方様の理想郷を踏み躙る害獣を駆除致します!!」
セイレーンは高揚した口調で空に向かって高らかと宣言するとレイピアを握り締めて、今まさに一夏の心臓を一突きに貫こうとしていた。その様子を見た鈴は……
(なんで、なんでよ!?これ以上あたしから大事な人を奪わないでよ…やめて、やめて、やめてよ!!誰でも良い!鬼や悪魔でも良いから、あたしの大事な人を…一夏を助けてよ!!)
鈴は自身の無力さや大事な人の死を見るしか出来なかった自分へ絶望し涙を流してこの状況を打破できる存在に向けて祈るしかできなかった。しかしその祈りとは別に、今まさにセイレーンの手によって一夏の命が奪われようとしていた。
「一夏ぁぁぁぁぁぁ!!」
鈴は涙を流して思い人の名前を叫ぶしか出来ずにいたが……
ガキンっ!!
その祈りは届いていた。
一夏の前に突如、緑色の膜で覆われたタワーシールドが立ちはだかりセイレーンの刺突を防いでいた。セイレーンは突如として現れたタワーシールドを突き破ろうと連続で突きを繰り出すもシールドの防御を突き破れずにいた。
「えぇい!何なんだこの盾は!?」
セイレーンが声を荒げて目の前のタワーシールドへ苛立ちをぶつけていると…
「その盾の名前は【ガートルード】世界最硬の守りを誇る盾や」
背後から声が聞こえて後ろを振り返ると見知らぬISを纏ったアランが目の前に現れて、セイレーンはレイピアで突きを繰り出そうとしたが…
突きは空を切って隙だらけになった体制へ棍の薙ぎ払いがセイレーンの顔面にクリーンヒットするとセイレーンはアリーナの壁際まで身体を吹き飛ばされる。
セイレーンの専用機【ローレライ】の両翼に生える羽根が散らばり、幻想的な登場を向かえるアランは鈴の元へ近付き、拘束を解除するのだった。
「遅なってすまんな凰、こっからは全部俺に任せてゆっくり休むんや」
「スミス…あんたその機体は…」
「ああ、これが俺アラン・スミスにしか動かせへん世界で唯一つの専用機【
アランが見に纏う専用機は全身を白金に染めた装甲に通常のISに比べてより身体にフィットしたスタイルをした設計になっている為、一回り小さく小回りが利きやすい姿をしていた。頭部には獅子の鬣を彷彿させるハイパーセンサー、両腕には鉤爪が付いたガントレットを装備し、後ろには尻尾を模したウィップが搭載されておりその見た目は正に両脚で立つ獅子の姿をしていた。
吹き飛ばされたセイレーンは直ぐ様起き上がり、アランへ殺意に満ちた視線を向ける。
「アラン・スミスゥゥゥゥゥ!!よくも私の【ローレライ】に傷を付けてくれたなぁ!!許さん!貴様とここにいる馬鹿共は血祭りにあげてくれるわぁ!!」
「なーんや、まだくたばってなかったんかい。まっ、その程度でくたばられたらコッチも不完全燃焼やったからな…さて、よくもまあ、痛めつけてくれたのう…このドさんピンが…」
アランは主武装である棍を振り回すとそのまま勢いよく地面に突きつけて自身の顔をフルフェイスマスクで覆い尽くす。その姿は正に獅子の姿をした白金の騎士そのものであった。鈴はその姿を見届けているとアランからタワーシールド内に一夏達を匿っているから自分もそこへ避難するよう伝えるのだった。鈴はそんなアランへ近付き一言アランに告げる。
「お願い、あたし達の代わりにあいつを…あいつをやっつけて!」
鈴は悔しさに満ちた表情を浮かべて悔し涙を流しているとアランはそんな鈴に一言告げる。
「お前の悔しさと無念、ちゃんと受け止めたわ。せやから後は俺にぜーんぶ任せろや!鈴!!」
鈴は悔し涙でぐちゃぐちゃになった顔を腕で拭き取ると小さく「ありがとう」と呟きタワーシールド内に身を隠すのであった。アランはそんな鈴の様子を見届けると目の前の敵へと獰猛な視線を向けて一言告げる。
「お前にもう次は無いわ…こっから先は…ずっと俺のターンや!!」
戦場を駆ける獅子と化したアランは咆哮を挙げるようにセイレーンへと宣言するのであった。
【次回予告】
織斑千冬だ。女聖教幹部セイレーンが操る専用機【ローレライ】に手も足も出せず戦闘不能に陥った一夏達を救ったのは完成したばかりの専用機【白金の獅子王】に搭乗するスミスだ。遂にスミスが己の実力を見せる時が来た。果たしてこの勝負は誰に勝利の女神が微笑むか?
次回、第8話
【獅子王降臨!】
怒りの一撃を叩きつけろ!スミス!!