インフィニット・ストラトス クレイジージーニアス 作:グ・ラン
◆
「こっから先は…ずっと俺のターンや!」
「何が俺のターンだ!貴様に次などないわ」
俺は目の前のどさんピンことセイレーンに向かって宣言すると俺の態度に頭に来たのか声を荒げて俺への敵対心を更に強める。
「貴様も喰らうがいい、我が聖母の威光を!!」
「気を付けて!そいつの技にあたし達は全員やられたの」
セイレーンが専用機の翼を広げると、その様子を見た鈴は俺に警戒するように呼び掛ける。
「なるほどな…聖母の威光か、その技の正体は分かっとんねん!」
俺は両手を広げて浮上していくセイレーンを無視して後ろを振り向いて棍で突きを繰り出す。
「がはっ!?」
すると目の前で浮上していた筈のセイレーンが姿を消して、俺の背後にいきなり現れた。いや最初から後ろにおったから攻撃を当てたわけや
「な、何故私がここにいると分かった?」
「分かったも何もお前の専用機の単一使用能力はもう分かっとんねん。撒き散らした羽根から高周波音波を発生させて三半規管に異常を起こすのがお前の能力の正体やろ?」
俺の問いにセイレーンは苦虫を潰した表情を浮かべた無言を貫いた。どうやら正解やったな…それにしても何で俺には効かへんのかって?それは直ぐにネタバラシするわ。
「私の単一使用能力【
セイレーンはまだ心に余裕があるのか自分の単一使用能力を喋った途端、俺に目掛けてレイピアによる刺突攻撃を仕掛けるが…セイレーンはニヤリと邪悪な笑みを浮かべて俺の背後を別の何かで攻撃を仕掛けとった。
(何も知らない馬鹿めが!このまま切り刻まれろ!!)
とでも考えとるようやったがその顔は一瞬で崩れ去った。
ドゴォ!!
「がはっ!?」
何故なら…何かが俺の身体を切り刻む前にセイレーンの腹部に鎖で繋がって分裂した棍が腹にめり込んでたからや。
「残念やったな。【クローディアス】はただの棍やない三節棍や。これでリーチ差も補えるって寸法や、さて、ネタバラシと行こか?さっきお前が仕掛けて来たレイピアでの刺突はフェイクでホンマは左手に隠し持っとる極薄の金属繊維で作られたウルミが本物の得物やろ?」
「………」
「沈黙は正解と捉えてええな?お前の攻撃する際の算段はこうやろ?まず翼に生やした高周波音波を発生させる羽根を撒き散らした後、相手の三半規管を狂わせてウルミでジワリと痛ぶるのがお前の攻撃パターンやったが…肝心の単一使用能力で俺の身動きを封じきれんかったから攻撃も全部お見通しってわけや」
「この害獣風情がぁ、私の攻撃を短時間で見抜けたのは何故だ!?そもそもどうやって私の子守唄を防いだ!」
俺の回答にセイレーンは怒りが込み上がっとる様子やった。しゃあないな、これを読んどる読者も気になっとるからそろそろネタバラシといこか。
「お前のチンケな子守唄はな、アリーナを囲って展開させた俺のリフレクタービット【オフィーリア】で音波を中和して打ち消したからや」
俺の答えにセイレーンはアリーナの周囲を見渡すと四方を囲っている鏡で覆われた8機のドローン型兵器が展開されているのに気付くとセイレーンは地団駄を踏んで俺に鋭い視線を向けて睨みつけてきおった。そないな暇ないのにな…
俺はその隙に距離を詰めて鉤爪型ガントレット【ボルチマンド】を展開してセイレーンを殴り飛ばす。
「ぐはぁっ!?き、貴様…」
「何をチンタラしとんねん。まだ戦闘中やぞ、それにな俺相手にゲームみたいに待ってくれると思っとったら大間違いや…俺は敵と見た奴はあの手この手を使ってでも倒すで」
俺の発言にセイレーンは仮面越しに引き攣った様子を見せているが、んなもん知るかボケ!俺はお構いなしに殴りながら喋り続ける。
「卑怯上等!不意打ち上等!イカサマ上等!せやからお前が何しようが俺は文句の一つも言わんわ。それに対処しきれん俺がマヌケやった話やからなぁ…」
「舐めるなよ害獣がぁ…私の切り札はまだ残っているんだぞ!!」
セイレーンは自身の身体を震わせた途端、空中へ浮上すると両翼から劈く音を発生させたセイレーンはニヤリと笑い出して高揚した口調で喋り出す。
「ハハハ!私にこれを使わせたのは褒めてやろう。だが、この技は私自身威力が高すぎて1日に2回しか撃てん技だ…それを貴様に喰らわせてやろう…この高周波音波を一点に収束させた超破壊衝撃波【
そうはさせるか!俺はクローディアスを三節棍状態に換えて浮上しようとしたが、セイレーンは観客席からまだ逃げ遅れてる生徒を見つけると否やウルミで攻撃を仕掛けてきおった。こいつ…めんどい事してくれるわ!俺はクローディアスを棍状態にしてウルミを弾き落として逃げ遅れた生徒に「早よ逃げろや!」と叫ぶも恐怖心で腰を抜かして動けなくなっていた。
「さっきの発言返してやるぞマヌケめが!このまま逃げ遅れたノロマと共に死ねぇ!!」
セイレーンは音波の衝撃波を俺に放つと直撃を受けた俺は音波の衝撃波によって戦闘不能に陥った……と思うやろ?俺を誰やと思ってんねん。愛と平和とエロスの覇王にして漢の中の漢アラン・スミスやで、まあそのまま続きを見てや
◆
「嫌ぁぁ!!スミス、しっかりしなさいよ!スミス!」
ガードルードを展開したシールドの内側では、セイレーンの切り札を直撃で受けた様子を見ていた鈴が悲痛の声を挙げていたがその不安は直ぐに消え去るのだった……何故なら観客席の煙が上がると直撃を受けていた筈のアランは全身を緑色の闘気で作られた膜を自分の周囲に貼って逃げ遅れた生徒を巻き込まずにいたのであった。
「ば、馬鹿な!?私の切り札を受けても無傷だと……貴様、一体何をしたぁ!!」
「そいつは教えられんなぁ、何せ獅子王の能力は俺でも扱い方を間違えれば自滅しかねんからな……さて、さっきはええチャンスやったのにもう逆転の目は無くなったな……ほな、腹括れや!!」
アランは鉤爪ガントレットの爪を内側に収納すると緑色の闘気を右腕に一点集中させて、闘気で作られた獅子を拳に宿す。
(まずい、マズイマズイマズイ!歌姫の慟哭の一発目は
セイレーンは自身の切り札である歌姫の慟哭を使い切り、すぐさまこの場を離れようとしていたがアランは逃すまいと追いかけるがセイレーンはウルミで叩き切ろうしたが、獅子王の尻尾型ウィップ【レナルード】によりウルミを握っていた手を弾かれて逃すまいと左腕に絡み付く
のだった。
「私は、女聖教最高幹部セイレーンだぞ!貴様のような害獣にやられてなるものか!!」
「それがお前の最期の言葉でええな?散々引っ掻き回してくれた落とし前…キッチリ決めろやぁ!!」
アランは獅子の闘気を宿した渾身の一撃を繰り出すとセイレーンの専用機【ローレライ】は機体の内側から膨れ上がり、バキバキと機体が損傷する音が響き渡って全身に爆発四散する。しかしその直後、ローレライの両翼だけが残りコアとセイレーンを覆い尽くして忽然と姿を消すのであった。
(ちっ、ホンマ逃げ足だけは一級品やな…まあこれで大人しくなると思うが、次は逃さんぞセイレーン……)
アランはセイレーンの逃げ足の速さだけ感心していたが、すぐに切り替えてオープン・チャンネルを繋げてピット内にいる千冬と真耶に救護班と回収班を手配するように呼び掛けると自身のISを展開解除したアランは一夏の手によって両断されたマスクを回収すると拡張領域内に収めて一夏達の元へ駆けつけるのだった。
◆
IS学園 下水道
人気が完全に無い場所まで逃げ切ってセイレーンは息を荒くしてようやく逃げ切れた事に安堵の息を漏らしていた。
(はあ、はあ……アラン・スミス…あの害獣めがぁ…なんなんだやつのあの強さは、異常過ぎる。マザーから授かった専用機が赤子の手を捻るように扱われた上に最後のあの一撃は何だ……ローレライの最後の能力【
セイレーンがアランの一撃を受けても逃げ切れた理由は自身の専用機【ローレライ】最後の能力【歌姫の喪失】にあった。その能力はコアを激しく損傷させる代わり、両翼で搭乗者の身体とコアを覆い尽くして戦線を離脱できる緊急脱出に適した能力である。セイレーンは顔を隠していたマスカレードマスクを外し、壁にもたれて任務失敗の件を自身が崇拝するマザーに知られないように策を練っていたその時……
「よう!随分と派手にやられたじゃないかセイレーン」
突如、快活な声で自分を呼び掛ける人物にセイレーンは驚くとその人物は顔見知りでありながら今の自分にとって、最も会いたくない人物であったからだ。
「!?何故、お前がここにいる…タイタニア!」
「おいおい、久々に会ったってのに随分とまあつれない事言うじゃないか」
セイレーンにタイタニアと呼ばれた人物は身長が2mを越えた長身にベリーショートに切り揃えた紫色の髪、女性でありながら全身を筋肉の鎧で覆った体格を包み隠さないスポーツウェアを着た人物であった。するとタイタニアはセイレーンの元に近付き肩をポンと軽く叩く。
「あんたがボコボコに打ちのめされた所をぜーんぶ観させて貰ったよセイレーン。しっかし情けないねぇ…マザーに啖呵を切っておきながら専用機は大破、ターゲットの坊主どもは始末できないと来たもんだ……」
「わ、私を消しに来たのか…女聖教の掟に従って」
「ん?あぁ、その事なんだけどね。マザーには今回の件、あたいの口からキチンと報告させて貰ったよ。そしたら『貴重な4幹部を一度の失敗で切り捨てる様な真似は致しません、私が許しましょう』だってよ。良かったじゃないかお咎め無しで!」
セイレーンは生きた心地がしなかった表情を浮かべていたがタイタニアの話を聞いて自分の首が何とかつながった事に心の底から安堵していた。
「でもね、マザーがお許しになっても…あたいが許したとは言ってねえよ」
タイタニアは快活な口調から一気に冷酷な声色で喋るとガラ空きになったセイレーンの腹に目掛けて正拳突きを叩き込んだ。
「おぼぇぇぇぇぇ!!」
咄嗟のことでセイレーンは胃の中身を全て吐き出して血反吐が混じった吐瀉物を地面に吐き散らかす。その直後、タイタニアの暴力がセイレーンに襲い掛かる。
「任務に失敗した奴が何勝手に安心してんだい?ふざけてんのかテメェ、テメェはマザーのいや、あたい達女聖教の看板に泥を塗ったんだよ!それが何を意味するのか分かってんのか、あぁ?」
タイタニアは顔以外を殴り飛ばして全身が痣だらけになったセイレーンの胸ぐらを掴むとドスの効いた声で問い詰める。
「うぅっ…じ、女聖教を貶めた無能は…」
「そう、死をもって償えだ。と言いたいがあんたを今ここで殺っちまったらあたいがマザーからお怒りを受けちまうからねぇ、ここら辺で勘弁してやるよ」
セイレーンは虫の息に近い様子で壁に倒れ込むと何とか意識を保とうとする。タイタニアはそんなセイレーンに「顔は同じ女として避けておいたよ」と軽く呟いたが何か物足りない様子であった。
「でもよ、マザーとあたいは満足しても他の幹部と教徒達に示しがつかないからねぇ……そうだ、とりあえず腕の一本逝っとこうか?」
「な!?ま、待てタイタニア!これ以上は……」
「なーに安心しな、腕を切り飛ばすんじゃなくてただ折るだけだっての。天井のシミを数えてたらすぐに終わるさ、おいおい暴れんじゃないよ!ほら逝くよ…せーの!」
ボキィっ!!
タイタニアはセイレーンの利き腕を両手で握るとそのまま明後日の方向に捻じ曲げて腕の骨を折ると、折られたセイレーンは折られた痛みにより悶絶して声にならない声を挙げて苦悶の表情を浮かべるのだった。
「このくらいで勘弁してやるよ。まっ、まだあんたの正体はバレちゃいないんだ。引き続き学園内での潜入活動しっかりやんな、これが最後のチャンスだからね…次しくじった時が本当にあんたの最期となるからキッチリ引き締めなよ」
タイタニアは満足した表情でその場を後にすると残されたセイレーンは腕の痛みと全身の痛み、そして最後のチャンスに失敗した末路に怯えるのであった………
◆
「う……こ、ここは?」
俺は確かあのセイレーンって奴に敵わなくて意識を失ったんだよな…目を覚ました俺は見慣れない天井といつの間にか包帯が巻かれた身体とベッドに横たわっていた。
「目が覚めたか織斑?」
「千冬姉」
「ここでは織斑先生だ、と言いたいが今だけは許してやる」
意識を戻した俺を見て何処か安堵の息を漏らした千冬姉は俺が意識を失ってからの事を話してくれた。なんでもあのセイレーンって奴は女尊男卑主義を掲げるカルト教団【女聖教】の幹部らしく、アランが自分の専用機でセイレーンを倒したのは良いが逃げられたとの事だ。その後、俺は学園内にある救急病棟に搬送されてナノマシン治療で身体の傷を治療していたとの事だった。
「今回、お前達が対峙したセイレーンは何処で手に入れたかは知らんがリミッターを解除した軍用機を用いてきた。奴の実力は現役の国家代表と同レベルの相手だったがそんな相手によく耐え抜いたな」
「千冬姉…その、心配かけてごめん」
「心配などしていないさ、お前は簡単には死なない。何せお前は私の弟だからな」
千冬姉なりに俺を励まそうとしているのは分かっているのでこれ以上、自分を責めたりはしない。すると千冬姉は仕事があるからそろそろ戻ると言って部屋を後にすると「お前に客だ」と言って入れ替わりに入ってきたのは鈴だった。
「一夏!良かった無事で」
「そういうお前も無事で良かったよ鈴」
「馬鹿!あんたの方が酷い怪我を負ってたのよ!それに衝撃砲の最大威力を喰らってピンピンしてたのも有り得ないってのに……」
「そうなのか?そこは絶対防御で肉体には影響ない筈だろ」
「馬鹿ね、絶対防御も万能じゃないって試合前に言ったでしょうが!ダメージは身体にも蓄積されてるのよ」
鈴は怒りながらも俺の心配をした様子で話すと何だか安心してきたな…俺は改めて周りの人達に恵まれているなと実感しているとまた鈴の親父さんが作ってくれたチャーハンが食べたくなってきたな。俺は鈴に親父さんが今どうしているか聞くことにした。
「なあ鈴、親父さん元気にしてるか?お前が中国から日本に帰ってきたってことは親父さん達も戻ってきたんだろ?」
「ううん、父さんと母さんは中国にいるんだ。正確にはもう2人ともいないんだ…あのね一夏、父さんさ故郷に戻ってから半年後に死んじゃったんだ癌で」
「えっ?」
俺は鈴の言葉に思わず声を失った。嘘だろ、あの恰幅の良い親父さんが亡くなっただなんて…続けて鈴は中国に戻ってからの事を話し始めた。
「父さんが亡くなってからあたしと母さんで暮らしてたけど、直ぐに生活出来なくなってね。困った母さんに親戚連中は一度日本に鞍替えした裏切者が顔を見せるな!って石を投げつけて追い出してね……それから母さんが一人で朝から晩まで寝ずにあたしを養おうとしてたけど無茶が祟って身体を壊して過労で亡くなったの」
「ごめん、そうとも知らずに俺……」
「ううん、良いの!両親が亡くなった後にね、あたしを代表候補生にならないかってスカウトしにきたおじさんがいてね。その人の伝手を使って代表候補生になれた上にこうしてまた一夏に会えたんだから…あたしは気にしてないよ」
鈴は何とか明るく振る舞おうと声を出すが、声色が少し裏返っていた。何か別の話をしようとしたその時、あの時にした約束の事を思い出した。この前はタダ飯奢ってくれるって事だと思っていたが俺はもう一度鈴に約束の事を確認する事にした。
「なあ鈴、あの時の約束って正確には『料理の腕が上達したら、毎日あたしの酢豚食べてくれる?』だっけ、あれから腕上がったか?」
「へ?あ、あぁ、も、勿論!国に戻ってからも毎日料理してたし、それにおじさんからも美味しいって好評だったし…」
鈴は俺の質問に顔を赤くしてしどろもどろな様子で答えていた。
「もしかして、何か違う意味があったんじゃないのか?俺は最初、てっきりタダ飯食べさせてくれるって勘違いしてたけど…」
「ううん!勘違いじゃない、合ってるわよそれで、ほら、誰かに食べて貰えば料理って上達するじゃない、それよそれ!」
鈴は俺に深く問わせないよう捲し立てて答えると近くにあったパイプ椅子に気付かず足をぶつけて俺が寝ているベッド倒れ込むと俺は鈴の手を掴んで支える。その瞬間、俺と鈴の顔は至近距離に近付きあと数センチで顔がぶつかりそうになっていた。
「あ、ありがとう……」
「いや、大丈夫ならそれで良い…」
俺と鈴は一瞬、気まずそうな雰囲気になるが鈴が顔を紅くして眼を突然瞑り出した。俺は突如鈴が取った行動に意図を理解できずにいた。俺は一体どうしたら良いんだ?するとその沈黙は直ぐに破られる事になった……
「一夏ちゃーん!起きとるか〜?起きとったら差し入れのバナナ食おう……って何やお前ら取り込み中かいな。ほな、お邪魔虫は出直すとしましょかな〜〜」
「「出直さなくて良い(わよ)!!」」
差し入れのバナナを持って見舞いに来たアランの登場でこの空気は一瞬で消え去る。俺は完治まであと2日も掛かる為、病棟で入院する事になった。
◆
病棟を後にしたあたしはスミスに声を掛けるとそのまま病棟の近くあるベンチに座って話す事にした。
「どしたんや鈴?俺に話って…あっ、もしかして一夏ちゃんとの勝負が果たせなんで俺にアイデアを求めに来たんか?」
「違うわよ馬鹿、それにもう勝負は良いの。あたしはこれから一夏に想いを伝えるから」
「そうかぁ、一夏ちゃんを狙っとるライバルは多いからな。まあ、頑張れや」
「そうじゃない!あのね、対抗戦の時に一夏やあたし達を助けてくれてありがとう…ただあんたに礼を言いたかっただけよ」
「そやったんか、礼はええよ。お前らが無事で何よりや。無事やなかったら好きな相手に想いも伝えられんからな」
スミスは自分は大したことはしていないと言った様子で喋っていたけど、あたしの気が済まないっての!だからあたしはスミス、ううんアランに一言伝える事にした。
「今度、あたしの酢豚食べさせてあげるからその…食べなさいよね」
「プッ、アハハハハハ!そうか、そうか俺にお前の酢豚ご馳走してくれるんか。ええよ、いつにしよか?それとも今日ご馳走してもらおかな」
「き、気が早いっての!あたしから声掛けるからレインコード教えなさいよ」
「はいはい、首長くして待っとくわな」
あたしはスマホを取り出すとアランのQRコードを読み取ってチャット登録した。するとアランから早速連絡が来るとスタンプでキリンのイラストを送ってきた。
「首長くってキリンみたいに長くしてどうすんのよ」
「それくらい待ったるって意味や」
アランの言葉に思わずクスリと笑ったあたしは学園寮に戻ろうとしたその時、アランから声を掛けられて「お前に必要なものやからこれ渡しとくわ」と渡された物を確認すると小さい袋で中身を密閉されたゴムを渡された。
「俺があのまま病室に入らんかったら、お前らが何かの可能性で避
「んな訳あるかぁぁ!この頭どピンク畑がぁぁぁぁぁ!!」
「アァァァァァァーーー!!」
あたしは目の前のアホに対して部分展開した腕でアッパーを繰り出すと、飛ばされたアホはそのまま星になっていった。ったく…あいつは…少しでも感心を持ったあたしが馬鹿じゃない……と言いつつもちゃっかり貰ったものをキチンと受け取る鈴であった。
◆
IS学園 地下
そこは地下50mもある特権レベル4クラスの人間のみ入る事を許された空間であった。そこに2人の人物が目の前に鎮座されているスクラップと化した未確認機こと無人機を見ながら話していた。
「そうか。女聖教の連中が暴れていた最中、コイツが紛れ込んでいたと」
「ああ、しかもコイツは世界各国がまだ開発に成功してない遠隔操作と独立稼働を実現した機体な上にコアは未登録のもんやったわ」
話し込んでいた人物は千冬とアランで千冬はセイレーンがアリーナで暴れていた裏で襲撃に来た無人機の詳細をアランから報告を受けていた為、改めて自分の目で確かめていた。するとアランは無人機を作った人物に心当たりがあるのか千冬にその人物の名前を語る。
「しかもコイツのコアは未登録されてへん新たに製造された代物やったわ、誰も実現できてない技術を持っとるISに未登録のコア…こんなん世界中隅々まで探しても作れる人間は1人しかおらんやろ?篠ノ之束。ISの生みの親にして、あんたのマブダチや」
「………」
千冬はアランの質問に沈黙を通していたが、その表情は鋭く現役時代にブリュンヒルデと呼ばれていた頃よりも鋭くなっていた。
「顔怖なってまっせ千冬先生。まあ、あの天災様が何を考えて送り込んだかは知らんけどそれは後回しとしましょうや。問題はコイツや」
アランはアリーナで回収したフオンがセイレーンから受け取ったマスクの欠片を取り出すと鑑識結果を告げる。
「このマスクやけどな、とんでもない代物やで。こいつは装着した人間の憎悪・嫉妬をエネルギーに変換して装着者の潜在能力を強制的に引き出して暴走させよる。その代償として装着時間が長ければ長いほど麻薬を吸うた時と同等の興奮状態に陥って廃人コースまっしぐらや」
「なるほどな。あの仮面を付けたグエンがああなっていたのはそういう事か」
千冬はセイレーンから仮面を受け取り、訓練機を動かして暴れ回っていたフオンが病棟で運ばれた際の様子を思い出していた。アランはマスクの破片を防弾ガラス製のガラスケースに納めると話を戻す。
「俺はこのマスクを
「良いだろう、明日の職員会議でこの事を話しておこう。それと私よりお前の方がよっぽど顔を怖くしているぞジャック」
「当たり前やないか、俺がスポンサーをしとる学園に野糞を垂れ流しされたんやぞ……それを黙って眺める程大人しゅうできへんで」
アランはジャックとしての顔で学園に不穏な空気をもたらした女聖教や無人機を送り込んだ下手人に怒りを込み上げていると、その様子を見ていた千冬はアランのもう一つの顔であるジャック・アルフレッドを知っている様子でスクラップと化した無人機を眺めていた。
◆
夜も遅なって真っ暗になった外を歩いた俺はようやく学園寮に戻ってきた。せやけど…あのボケナス共、今度見つけたら社会的抹殺だけやなくて地上から跡形も無く根絶やしにしたろか、まあそれを今考えてもしゃあないな。こないな時はさっさと風呂入って飯食うて寝るに限るわ!俺はカードキーを取り出してドアに翳すとロックが解除されて自分の部屋に入ろうとドアノブを手にして扉を開けたその瞬間………
「お帰りなさいませご主人様。ご飯にします?お風呂にします?それともぉ……わ・た・し?」
目の前に裸エプロンを着用した水色のミディアムショートヘアに赤い瞳に人懐っこい顔をした痴女がおった。俺は直ぐ様その痴女に向かって一言言い放った。
「あっ、チェンジでお願いします」
「ちょっと!チェンジって何よ!?」
その痴女はずっこけそうになって手にした扇子からは達筆で【畜生!】と書かれた扇子を広げて抗議の声を上げた。どうやら、俺を休ませてくれへんようや……
【次回予告】
ハァーイ、謎のお姉さんXよ。
織斑一夏君と同じ時期に入ってきた2人目の男子アラン・スミス君の自室に侵に…もといマスターキーを借りて入った私は初対面でいきなりチェンジって言われて傷心状態になっちゃったわ。これは責任を持って私のお願い事を聞いてもらうんだから、えっ私が誰かだってそれは次回までのお楽しみよ♪
次回第9話、【学園最強は残念すぎる】
って何よこのタイトルは!
変更、変更を要請します!!