芸術家提督ー英雄列伝   作:後世の歴史家(自称)

13 / 13
梅雨イベが終わったら出そうと思っていたんですが、忙しくなりいつの間にかこんなに遅く…

今回も暖かくお付き合いください。


外伝編 沖縄撤退戦
第一話 敵艦みゆ


 

―先のルンガ沖での作戦に失敗した海軍は、東南アジア方面に戦力の空白地帯を生み出してしまった。ブルネイ、タウイタウイ両泊地は関連施設をすべて爆破し撤退。同方面に対して唯一作戦行動が可能なのは沖縄本島に司令部を置く泊艦隊のみであった。泊(とまり)泊地(はくち)は以前―東南アジアに前進基地が多数おかれていた頃―に前線に近く、かつ後方拠点だったため比較的安全であるという理由から、卒業した新人提督の実地訓練場所としても使用されることが決まった。沖縄が2度目の大規模侵攻を受けたとき、所属する訓練生の名簿には渡邉少佐の名があった…

 

 

―――

 

発 与那国島監視所 宛 大本営、泊艦隊司令部

 

監視所索敵機ガバシー海峡ニテ敵大艦隊ヲ補足。監視所ヨリ方位203距離300海里

現在敵情ハ索敵機の接触ニテ確認中。至急艦隊ノ派遣ヲ要請ス

 

―――

 

泊艦隊司令部

 

「提督、与那国島監視所より入電。与那国島より南南西およそ300海里、バシー海峡にて敵艦隊を補足、現在接触中。至急艦隊を派遣されたし、とのことです。どうされますか?」

 

「全訓練生を非常招集、これより訓練を兼ねた迎撃作戦を立案・実行する」

 

10分後、30名の訓練生に対し状況の説明と先行艦隊司令官の募集を行った。本来偵察は、敵戦力の確認を目的とするため、想定以上の戦力に鉢合わせする可能性もある危険な任務である。しかし多くの訓練生にとってはまたとないアピールチャンスだった。これまで通りだったのなら…

 

泊艦隊に与那国島の偵察機が、敵編成を空母級20以上、戦艦級15以上をつげて通信を絶った、という事実が知らされたのは、泊地から先行艦隊が出航してから30分後のことだった。

 

 

―――

 

大本営 作戦本部長室

 

「失礼いたします。溝口中将、与那国の監視所より緊急電です。与那国より南南西300海里にて接敵、規模は確認中だが大きいようです。艦隊派遣を要請しています」

 

「ご苦労、わざわざブルネイの生き残りを置いといてよかった。はは…馬鹿なやつだな。理想と現実の区別がつかなくなるからこうなるのだ。…さて、どう対応すべきか。作戦本部士官を全員緊急招集だ。今後の作戦行動を検討する。」

 

「はっ、直ちに」

 

緊急電を伝えた通信士官は退室する間際の、「島津大将(・・)…か。ふん、彼にふさわしい、素晴らしい花道になるだろう」という中将の呟きを聞かなかったことにした。大本営(ここ)で彼が生き残る術だから…

 

 

―――

 

泊艦隊司令部

 

泊地を預かる佐久間提督は楽観的だった。先行艦隊の戦力が過少ではないか、と発言したある少佐の発言を退ける程度には楽観的だった。先行偵察を主任務とする以上、発見されにくい水雷戦隊で十分、という発言を採用したのである。ついでに遠距離から油断した敵に魚雷をお見舞いしてやりましょう、という発言に大きな称賛を送った。つまるところ少数戦力で大艦隊を打ち破ることを是としたのだ。

泊艦隊にとって、シーレーンの防衛以外では久々の会敵である。“戦果”を昇進の基準とする大本営に対して、敵艦隊を少数戦力で撃破することは大変覚えが良かった。うまくすれば、出世街道の中心である作戦本部行も実現するかもしれない…。

提督と大部分の訓練生はまだ見ぬ戦果に心躍らせていたのである。

 

最初のツケは5時間後にやってきた。半田訓練生率いる水雷戦隊が通信「敵編隊確認」を最後に消息を絶ったのである。大規模な空襲を受けたことは間違いなかった。

 

 

―――

 

発 大本営 作戦本部 宛 佐世保・泊艦隊司令部、与那国監視所

 

敵艦隊発見トノ報告ニヨリ、佐世保艦隊ヲ主力、泊艦隊ヲ前衛トスル迎撃艦隊ヲ編成ス。両艦隊ハ直チニ出撃ヨウイセヨ。主力艦隊ノ作戦計画書ハ別途送付スル。

 

与那国監視所ハソノ総力ヲアゲ、迎撃艦隊到着マデノ間戦線ヲ維持、敵艦隊の本土及ビ沖縄ヘノ侵攻ヲ阻止セヨ。

 

―――

 

仲間の死を目の当たりにして、提督と訓練生達は闘志をみなぎらせていた。“戦果争い”という意味にに“弔い”が加わり、司令部は異常な熱気に包まれた。

そんな司令部が不確定事項としながらも、大本営に先行させた偵察艦隊が撃沈されたことを報告し、さらなる迎撃艦隊の編成を行っている最中に電文が届いた。

電文からは、要するに泊艦隊に求められているのは敵主力までの露払いだったのだが、彼らは敵主力までをも佐世保艦隊の到着以前に撃滅しようとした。

 

提督と候補生たちの多くは、エリート意識の塊であった。士官学校と提督研修センターを卒業した時点である程度以上の頭脳と素質を持つ“エリート”と呼べないこともないが、自負が実力と実績を大きく上回っていたのである。それぞれ得意とする戦術にこだわり、その達成を目的として他者を利用しようとした。もちろん狙いは戦果の独り占めである。

そして不毛な“作戦会議”を続けていくうちに、当初「迎撃」であったはずの戦略目標がいつの間にか「積極的攻勢」に置き換わっていった。

餓えた狐が30人も集まれば統一した作戦行動など行えるはずはない。泊艦隊は“佐久間提督を頂点とする小艦隊の集合”となって戦い以前から戦力を失い始めたのである。

 

四月にしてはやけに生暖かい風が泊地を吹き抜けていった。

 

 

―――

 

沖縄方面軍(第10師団)司令部

 

 

「さて、各旅団長・参謀に集まってもらったわけだが、先ほど大本営陸軍部より通信が入った。昨日海軍がおよそ7、800キロ先に敵艦隊を補足したそうだ。海軍によれば、対応不可能なほどではない、とのことらしいが…まあ念を入れて各旅団は部隊を招集、戦闘態勢をとってくれ。通常通り南部を重点に配置。上空警戒を厳にせよ。質問のある者は?では以上だ」

 

―――

 

いつも通り一日遅れの情報だが、まあ沖縄本島(うち)の艦隊司令部から連絡がこないということは、大した規模でないということだろう。まあ念のため明日情報共有を受けに行くとするか。

あの提督(野郎)は気に食わないが、こっちが頭を下げない限り情報は来ない。仕方ないか…

 

―師団長の日記より

 





今回もお読みいただきありがとうございました。

不思議と本編より外伝の方が書きやすいんですよね…どちらも展開と概要はまとまっているのですが…

ちなみに梅雨イベはD敗北。乙作戦で早潮さんをお迎えできませんでした…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。