芸術家提督ー英雄列伝 作:後世の歴史家(自称)
同時刻
大洗艦隊旗艦赤城 艦橋
「提督、先程一瞬だけ通信波のようなものを受信しました。ほとんどノイズでわかりませんでしたが、宿毛艦隊からの通信でしょうか」
「あいつのことだ。時間的にやや早いが、どうせ撃破報告だろう。戦果を見せびらかすのが好きな男だ。全く。こちらの機動部隊が無ければヲ級は撃破できんだろうに」
「それよりどうだ、小笠原を迂回して隠密行動してきたが、まだ奴らは見つからんかね。何をやっとる」
「偵察に出した艦攻隊からは通信がまだありません。なにぶん雲量9です。あまり高度を下げると発見されてしまうでしょうから、もう少しかかるかと」
「フン、あいつらに遅れを取るわけにはいかんのだ。さっさとアウトレンジで決めるぞ」
鈍色の積乱雲が空を覆っていた。
格納庫
※以下漢字仮名交じり文ですが、妖精さんです
「なんだか嫌な予感がするです」
「今回は直掩隊も艦攻に載せ替えられました」
「私たちは攻撃隊の直掩のみを命じられてますです」
「偵察している仲間達もまだ帰ってこないです」
「発艦準備すらかからないです」
「ネズミが一匹もいないです」
「いたら困るです」
「この艦(ふね)は赤城なので同じようなものです」
「「「戦いの前にはご飯です」」」
…一部怪しい会話もあるが、どの艦でもある程度似たような会話がなされていた。
嫌な予感程よく当たるもの、という多くの人が半ば帰納法的に求る格言はまた一つ実例を増やしそうだった。
2時間後 艦橋
「提督、4番機より敵見ゆと入電、沖ノ鳥島よりかなり東です」
「機動部隊か?」
「わかりません。撃墜されたらしく、詳細は何も…」
「全艦へ、戦闘用意。輪形陣を維持、船幅を大きく取れ。攻撃隊発艦準備」
「攻撃隊が先ですか?」
「当たり前だ、ミッドウェーで何を学んだんだ。甲板も使ってすぐにだせ。準備が出来た機から発艦だ」
かの戦いにおいて戦局を大きく変えたミッドウェーでは、米軍は機動部隊発見後すぐに攻撃隊を発艦させた。直掩機なしの攻撃機は被撃墜を多く出したものの、先手を取ることに成功。連続的な艦爆と艦攻の攻撃により、ついに空母四隻を行動不能に追い込んだ。
先制の重要性を強調する戦訓として航空畑を歩むものにはよく知られた話である。
彼の目論んだ「大量の艦載機による先制波状攻撃」は空母戦における理想である。
が、遅すぎた。
最初に気づいたのは直掩艦隊の重巡「摩耶」だった。
「て、敵機、艦隊直上、急降下ーー!!」
……当時の戦闘詳報によると、ミッドウェー同様に
「強力な白い艦載機による急降下爆撃によって出撃準備中に被弾、航空戦隊は戦闘力を喪失。また直掩艦隊にも被害が発生」
とある。
生還した艦娘による詳報の内容は、「大本営発表」により語られることはなかった。が、のちに「青葉」によって封鎖を突破した情報は、多くの提督の空母運用論に一石を投じることになる。
航空戦において先制攻撃は基本だった。しかしCAP(戦闘空中哨戒機)すら用意せず、アウトレンジ攻撃に失敗したこの戦闘は
「航空戦術における艦載編成と運用の失敗例」
として士官学校の教科書に乗り続けることになった。
参加した大洗艦隊、2個航空戦隊、2個重巡戦隊、2個水雷戦隊のうち
空母4、重巡1、軽巡3、駆逐5の計13隻が撃沈。残りの半数以上が中大破。大洗艦隊は戦闘力の七割以上を喪失して撤退した。
旗艦赤城は炎上しつつ沈んだ。
彼のアウトレンジ戦法は未発のまま、彼と共に沈んだのであった。
ゲージ付きの海域では、通常艦隊で最低でも4-5回は出撃される方が多いと思います。
現実の戦闘では、大体において一回の出撃で決着することが多いので、このような編成にしました。
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