魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜   作:味噌漬け

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第十話 過負荷(マイナス)への警戒

 球磨川のやらかしから後日、あのようなことをしでかした球磨川は何も気にせず、いつもどおりヘラヘラ笑いながら登校していた。

 

『やぁ!ほのかちゃん。』『おはよう!』

『今日はいい天気だね。』『この鉛みたいに濁ってて、どんよりとした空が心地良いぜ。』

 

「く…球磨川くん……。」

 

 ほのかは球磨川を見て怯える。

 無理もない。自分を助けてくれたヒーローのような存在だった球磨川があのような凶行に及んだのだから…。

 彼女は理解することができなかった。あれほどのことをしでかした球磨川が何故、平気そうにヘラヘラ笑って自分に接しようとするのか。

 友人の狂気の一面を見たほのかはもはや球磨川とどう接すれば良いのかわからなくなっている。

 

「わ…私急いでるから…。」

 

 ほのかは震えながら球磨川から逃げてしまった。

 それを見た球磨川は…

 

『あれ?』『トイレにでも行きたかったのかな?』

 

 そんな検討外れのことを考えていた。

 ほのかに避けられた球磨川は教室に向かう。

 

『おはよう!』

 

 球磨川が元気に挨拶するも、ほかのクラスメイト達は彼と言葉も顔も合わせようとしない。

 球磨川のやらかしは悪い噂として学校に流れ、彼から出る過負荷も相まってほとんどの生徒が彼を避けていた。

 要は球磨川は元の時代と変わらず嫌われ者として暮らしている。

 本人は気にしていないが。

 

『やれやれ。』

『挨拶しても無視なんてこれって完全にいじめだよねぇ~。』

『週刊少年ジャンプだったら規制されかねない描写だよ。』

『そうは思わないかい。達也ちゃん。』

 

「…球磨川か。」

 

 教室に入った球磨川が達也に話しかけると、達也は無表情ながら返事をする。

  唯一、達也だけが球磨川と接している。

 

『そういえば聞いたぜ。』『達也ちゃん風紀委員になったんだって?』

 

「ああ。まあな。」

 

 達也は頷く。

 そう達也は生徒会長、七草真由美と風紀委員長、渡辺摩利にスカウトされ、それに反対した学園きっての猛者である服部刑部副会長を相手に模擬戦にて圧勝。その実力を知らしめ、風紀委員として就任したのだった。

 

『へぇ。』『よくそんなエリートの蠱毒みてーなとこに入ったね。』

『理解出来ないぜ。』

 

 球磨川にとって風紀委員会などエリートの中のエリートのようなイメージだ。

 はっきり言えば嫌いな部類である。

 目的によっては利用しようとすることもあるが、基本的に仲良くしようとは思わない。

 

「…お前は本当にエリートが嫌いなんだな。」

 

 達也は呆れた顔で球磨川に言う。

 正直、達也も球磨川とあまり仲良くしたいとは思っていない。

 しかし、深雪も守るためにも、真由美と摩利からの指令もあり、仕方なく球磨川と接している。

 達也は模擬戦の後に摩利に言われたことを思い出していた。

 

 

 前日の放課後、摩利と達也は風紀委員会の本部にて話していた。

 

「…実を言うと、君をスカウトした理由はもう一つある。」

 

 摩利は真剣な眼差しで言う。

 達也をスカウトした理由として、達也の起動式を読み取る能力を活かし、未遂犯に対する罰則の適正化と強化。そして、二科生に対するイメージの対等を挙げた。

 しかし、もう一つあったのだ。達也をスカウトした理由が…

 

「もう一つ…ですか?」

 

「ああ。君にも予想はついているだろう…?」

 

 達也は顎に手を当て考え込む。

 確かに達也には一つ…いや一人だけ心当たりがあった。

 

「……球磨川のことですか?」

 

 摩利は腕を組んで頷く。

 

「そうだ。君も気づいているだろう?球磨川禊の危険性を…」

 

「…球磨川は問題を起こしていなかったはずですが?」

 

 達也は別に球磨川を庇うつもりはない。

 しかし達也にとっては球磨川と森崎の事件を掘り下げられることは不都合なのだ。

 達也の言葉に摩利は首を振る。

 

「別に誤魔化さなくて良い。私としてももう蒸し返すことはしないさ。だが、あの件の中心に球磨川がいるのは間違いないのだろう?」

 

「………」

 

「沈黙は肯定と受け取るぞ。」

 

 摩利がそう言うと、話続ける。

 

「単刀直入に言おう。君には球磨川禊の監視をしてもらいたい。」

 

「監視?」

 

 達也がそう言うと風紀委員会本部の扉が開く。

 

「ええ。そうです。」

 

 中に入ってきたのは真由美だった。

 

「司波くん。あなたには球磨川くんの動向を私たちに伝えてほしいのです。出来る限りの範囲で構いません。」

 

 真由美の目は真剣そのものだった。

 真由美の言葉に達也は顎に手を当て、しばらく考え込む。

 すると、手を下ろし真由美に話しかけた。

 

「…球磨川を監視することは構いません。ですが、教えて頂きませんか?何故あなた方がそこまでして球磨川を警戒をするのか…。」

 

 達也が考えたのは球磨川の情報収集である。

 自分にさえ集めきれなかった球磨川の情報について二人は何か知っている。

 それは球磨川への対策に繋がると考えたからだ。

 真由美と摩利は顔を合わせ悩む。すると決心したのか真由美が口を開いた。

 

「……確かに球磨川くんの監視を頼むなら言うべきでしょうね。貴方の人間性を信じてお伝えします。」

 

 真由美な一呼吸置くと再び口を開く。

 

「球磨川禊…。実を言うと彼についての情報がほとんどありませんでした。それだけで十分に異常なことです。しかし…もう一つあります。」

 

 真由美は達也を見て言う。

 

「彼はこの学校に歴代最低成績で入学したのですよ。」

 

「歴代最低成績?」

 

 達也は首を傾げる。

 最低と言うだけなら別におかしいことではない。達也自身も実技の成績が悪い。合格ラインに届いてさえいれば成績自体が悪くても、そこまで異常ではないからだ。

 

「…合格者の中だけではありません。()()()()も含めて……です。」

 

「…!それはつまり……」

 

「ええ。彼には何か裏があります。情けない話、私にも正体が掴めませんでしたが…。」

 

 数字付きである七草真由美にでさえ球磨川の正体が掴めない事実に達也は悩む。

 

「(…どういうことだ…?球磨川には合格結果を操作できるほどの権力があるというのか…?さらに七草会長にでさえ、正体がわからないとは…。)」

 

「そして昨日の件もあり確信しました。球磨川禊はこの学校において脅威となると。私は生徒会長としてこの学校を守らればなりません。しかし…」

 

 真由美は摩利を向く。

 

「私も彼女も要職についている身。球磨川くんを私たちで監視することは難しいでしょう。だから、貴方に白羽の矢が立ったのです。同じクラスで球磨川くんの放っている不気味…とも言える重圧に耐えることができる貴方を…」

 

 真由美がそう言って口を閉じると達也と向き合う。

 達也は真由美の真剣な眼差しを見ると少しばかり考えこむ。

 

「(…確かに球磨川は得体が知れない。しかし、これはチャンスかもしれない。球磨川の正体と対策を掴むための…。)」

 

 達也はそう考えると頷いた。

 

「…わかりました。引き受けましょう。」

 

 

 そして、時間は現在に戻る。

 

「…お前は何故、そこまでエリートを敵視するんだ?」

 

 達也は球磨川に問う。

 森崎との一件もそうだし、先程の風紀委員会に対する印象には球磨川のエリートに対する敵意が見え隠れしている。

 異常なまでのエリートへの敵視。それが球磨川の正体を掴む糸口かもしれない。

 しかし球磨川は達也の言葉にヘラヘラ笑いながら答える。

 

『敵視?』『うーん』

『エリートに親が殺されたとか?』『隠していたプリンを食べられたとか?』

『とりあえず後で文章にまとめて送っておくよ。』

 

「(…理由なんてないのか?)」

 

 その適当なまでの球磨川の反応に達也は唖然とする。

 そして球磨川はそんなことどうでもいいとばかりに話題を変える。

 

『確か、これから部活動勧誘?』

『みたいなことがあるらしいね。』

『折角だから、時間になったら行ってみないかい?』

 

 正式は新入部員勧誘期間である。

 九校戦という大会のために各部活がこぞって新入生を勧誘しているのだ。

 

「(何が目的だ…?)」

 

 達也は球磨川の言葉に警戒する。

 明らかに好き勝手するのが好きそうな球磨川が風紀委員である達也と行くメリットがない。

 

「…光井さんや北山さんはどうした?誘わないのか?」

 

『あー。』『ほのかちゃんは恥ずかしがっているのか、すぐ逃げられちゃってね。』

『雫ちゃんとはそもそも会ってないし。』

『だから、偶々いた達也ちゃんを誘ったってわけ。』

 

 どうやら本当に偶然の気まぐれらしい。

 ほのかに関しては恥ずかしがっているわけではなく、完全に避けられているのだが。

 しかし、球磨川のその歪んだポジティブはどこから湧いてでるのか。

 

「(…いずれにせよ、球磨川は見張らないといけない…か。)」

 

 球磨川の監視が必要な以上、むしろ彼からの申し出は好都合である。

 そう考えた達也は頷く。

 

「わかった。だが、風紀委員会の仕事をしながらでも構わないか?」

 

 達也が了承すると球磨川も手を振りながら頷く。

 

『うん。』『それで良いよ。』

『じゃあ、また後でね。』

 

 球磨川はそう言って席に戻った。




七草真由美にさえ掴むことが出来なかった球磨川先輩のバックボーン…。一体、何心院さんなんだ…?
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