魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜   作:味噌漬け

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第十一話 体育館の事件

『しかし、とんでもない人の数だね。』

『まるで人がゴミのようだぜ。』

 

「その例えはアレだが、人が多いのは同感だな。」

 

 校内を見て回る球磨川と達也、彼らは勧誘しようとする生徒たちの群れの中歩いていた。

 

「…球磨川は何処か部活に入るつもりなのか?」

 

 達也は球磨川に聞くと、球磨川は顎に手を当てる。

 

『うーん。』『どうしよう。』

『面白そうなとこがあったら、考えてみようかな。』

 

「…そうか。」

 

 球磨川の答えに達也は考える。

 

「(…球磨川がもし部活に入るとなると、それも会長達に報告しなければいけないな。)」 

 

 球磨川が部活でトラブルでも起こされたら、二科生で部活に入る気のない達也には止めることが難しい。

 もし、球磨川が部活動に参加することになったなら、対策を考えなければならないだろう。

 そんな感じで二人が歩いていると広場にて騒ぎ声が聞こえてきた。

 

『…何か騒いでるね。』

 

「行ってみるぞ。」

 

『あれ?僕も?』

 

 球磨川にそう言い残し、騒ぎが起きた方へと向かう達也。

 球磨川も一応ついて行った。

 

「あの…もう離してください!チョッ、どこ触ってるのっ?やっやめて…!」

 

 トラブルの中心にいたのはエリカだった。

 見た目も良いエリカはどうやら非魔法系の部活を中心に勧誘されているようである。

 何やら本格的にとんでもない目にあっているようだ。

 

『あれはエリカちゃんかな?』

 

「…あのままじゃシャレにならないな。」

 

 達也と球磨川はそんな彼女の元に飛び込むと、達也はCADを起動して、地面を勢いよく踏む。すると、魔法により増福された振動波がエリカ達を囲む生徒達の姿勢を崩し、その隙に達也がエリカの手を掴んで走り去っていった。ちなみに球磨川は何もしてない。

 しばらく走っていると、人通りの薄い校舎裏へと着く。

 彼らはそこで息を吐いた。

 

『やれやれ、大丈夫だったかい?……!?』

 

「大丈夫か?……!?」

 

「はぁ…はぁ…。えぇ。大丈夫……って、球磨川君……!?」

 

 エリカもまた前の球磨川の凶行により、彼を不気味がって避けていた。

 エリカが球磨川の姿に驚いている中、エリカの胸元の方に男性陣の視線が集まる。

 無理もない。なんせ、エリカの見た目が髪は乱れ、制服には皺、ブレザーははだけ、顔は息切れにより赤くなり異様な色気を出している。そして、何よりも制服の胸元のボタンが外れ、下着やら何やらが丸見えだったのだから。

 すぐに達也は目を逸らしたが…。

 

「え?ちょっと…何?……っ!?」

 

 エリカはそこでようやく気がつく。

 自分があられもない姿になっていることを。そして、彼女は急いで服を直す。

 身だしなみを整えた彼女は球磨川達を睨んだ。

 

「一応確認するけど…見た?」

 

「(…流石に見たとは言えないな。どうするか…)」

 

 顔を赤くするエリカを見た達也が否定するか悩んでいると、球磨川が手を伸ばして制する。

 

「(…球磨川、何のつもりだ?)」

 

 達也が困惑しながら球磨川を見ると、彼はフッ…と微笑しエリカにサムズアップを向けた。

 

『ご馳走様でした!!』

 

 それを聞いたエリカの顔が更に真っ赤になる。

 そして次の瞬間、大声を上げた。

 

「こんっ…の……馬鹿ァァァァ!」

 

『ぶけふっ!!』

 

 大声と同時に球磨川に目掛けて放たれる鋭い蹴り。

 それは球磨川の顎にクリーンヒットする。

 空気抵抗より無抵抗と呼ばれた男、球磨川禊。文字通り紙切れの如く思いっきり吹っ飛んでいった。

 

『ま…また勝てなかった…。ガクッ…。』

 

 球磨川はそう言い遺し、気絶した。

 

 

「あーもう信じらんない!」

 

 球磨川が起き上がった後、三人は第二体育館、通称【闘技場】へと向かっていた。

 エリカはまだ怒って声を荒げており、その後ろを球磨川と達也が歩いている。

 

『いやはや。』『素晴らしい経験だったぜ。』

『今の僕のトレンドのスカートつまみが、はだけワイシャツに変わりそうなくらいの衝撃だよ。』

『蹴られたかいがあるってものさ。』

 

「〜〜〜!?」

 

 球磨川の言葉にエリカはダルマの如く顔を赤くして、鬼神のような怒りの形相で球磨川を睨む。

 その様子を見た達也は額に手を当て球磨川を嗜めた。

 

「球磨川…。頼むから今の彼女を刺激するようなことを言うのは辞めてくれ…。」

 

『悪いのはエリカちゃんに(たむろ)っていたアイツらだろ。』

『僕が見たのは事故さ。』

『僕は悪くない。』

 

 それはその通りだが、その後の対応が問題なのである。

 達也は球磨川に何を言っても無駄だと判断して、大きなため息を吐いた。

 そうして歩いていると、三人は第二体育館へと着く。

 中に入ると、そこでは剣道部による演舞を披露していた。

 

「ふーん。魔法科高校にも()()()剣道部があるんだ。」

 

 エリカは客席にて興味深そうに見ている。

 

『…ただの?』『どこの学校にも剣道部ぐらいあるんじゃないのかい?』

 

 球磨川がそう尋ねるとエリカは苦い顔しながら仕方なく教える。

 

「……魔法に携わる人のほとんどは剣術の方を選ぶの。剣術は魔法が使用できて、剣道は使えないから。」

 

『ふーん。』『なるほど。』

『…終わったら教えてね。」

 

 球磨川はそう言うと飽きたのか、ジャンプを読み始めた。

 その自由奔放っぷりを見たエリカは怒りを通り越して呆れる。

 

「…本当、あんたって自由人よね……。」

 

「エリカ、球磨川に何言っても意味ないぞ。」

 

 達也も球磨川の扱いに多少慣れてきたのか、エリカと同じように呆れながら言う。

 しばらくそのまま見学していると、エリカが異変に気がついた。

 

「なんか揉めてない?」

 

「…何かあったみたいだな。」

 

 どうやら、誰かが言い争っているようである。

 二人はトラブルが起きている方へと向かった。

 現場にたどりついた二人の目線の先には一組の男女がいた。

 

「剣術部の順番まで、まだ一時間以上あるわよ、桐原君!どうしてそれまで待てないのっ?」

 

「心外だな、壬生(みぶ)。演舞に協力してやっただけだぜ?」

 

 二人の言い争いを見たエリカは興奮して言う。

 

「これは面白いことになってるわね!」

 

 エリカの言葉が気になった達也は尋ねる。

 

「あの二人を知っているのか?」

 

「面識はないけどね。」

 

 エリカはそのまま解説する。

 

「女子の方は壬生紗耶香。一昨年の中等部剣道大会女子部の全国二位よ。男の方が桐原武明。こっちは一昨年の関東剣術大会中等部のチャンピオンよ。」

 

「詳しいな。」

 

「そう?……おっと、そろそろ始まるみたいよ。」

 

 二人が会話していると、壬生達も話が纏まったようである。

 彼らは竹刀を向き合っていた。どうやら試合で話を決めるようである。

 

「心配するなよ、壬生。魔法は使わないでおいてやるよ。」

 

「剣技だけであたしに敵うと思っているの?魔法に頼りきった剣術部の桐原君が、ただ剣技のみに磨きをかける剣道部の…このあたしに。」

 

「言うねぇ壬生。だが、その強がりがいつまで持つかな!」

 

 桐原の言葉を皮切りに勝負が始まった。

 両者はお互いの剥き出しの頭に向け、竹刀を振り下ろす。

 床を擦るすり足の音と、弾き合う竹刀の音が体育館内に響き渡っていた。

 それを見た達也は呟く。

 

「女子の剣道ってレベル高かったんだな。」

 

 達也の言葉をエリカは否定する。

 

「違う。中学時代に見た彼女とはまるで別人。……たった二年で、こんなに腕を上げるなんて…。」

 

 桐原の竹刀は壬生の左腕に向け振り下ろすも、それは浅く、壬生の突きが勢いよく桐原の右肩にヒットする。誰が見ても勝者は明らかだった。

 しかし、達也は桐原の剣に違和感を覚える。

 

「(…桐原先輩の剣の動きが途中から鈍っていた……。彼女に当てるのを躊躇ったのか?)」

 

 剣を下ろした壬生は桐原に向かって言う。

 

「勝負はこれまでよ。素直に敗北を認めなさい。真剣ならその右腕は使い物にならないわ。」

 

 壬生の言葉に桐原は笑う。

 

「…へっ。真剣なら?壬生、お前、真剣勝負が望みか?だったら……お望み通り!真剣で相手をしてやるよ!」

 

 桐原は左手首につけたCADを操作する。

すると、竹刀が輝いた。

 それを見た達也は桐原が使用した魔法をいち早く看破する。

 

「(振動系・近接戦闘用魔法【高周波ブレード】…。)」

 

 桐原は壬生に向かって言う。

 

「どうだ壬生。これが真剣だ。…そして、これが…剣術と剣道の差だ!!」

 

 桐原は壬生の方に踏み出す。

 達也はそれを見て動き出そうとするも、その前に桐原の前に立ちはだかった者がいた。

 

「なに…!?」

 

 球磨川である。

 

『よっと…!』

 

 球磨川は螺子を桐原の剣の側面に当て、床の方へと受け流した。

 

「お前は……!」

 

 桐原は突如現れた球磨川に驚き、後方へ飛び退いた。

 

『大丈夫かい?壬生先輩?』

 

「…君は…?」

 

「何だ、お前は!?関係ないだろう!!」

 桐原は球磨川に吠えるも、球磨川は壬生に視線を向けてヘラヘラ笑う。

 

『僕はね。決めてるんだ。」

『争いが起こった時、善悪問わず、一番弱い子の味方をするってね。』

『だから、僕は君の味方だ。』『頼ってくれていいよ。壬生先輩。』

 

 球磨川の言葉に壬生は大声で反論する。

 

「待って!あたしは弱くなんか…!!」

 

 壬生はそう言うも球磨川は目を鋭くして彼女を見る。

 彼女は深淵をも思わせる球磨川の濁った瞳に震えてしまった。

 

『いいや。』『君は弱い。』『過負荷(僕たち)ほどじゃないけどね。』

『とてもじゃないけど、哀れで見てられない。』

 

 球磨川から溢れる過負荷…。それに当てられた壬生は身体を震わせ、反論することができない。

 

「そんな……」

 

 球磨川の言葉に壬生は力が抜けたのか座り込む。

 

『まぁ、さっきの勝負に思うところがないわけじゃないけど…』

『それは置いておこうか。』

『とりあえず、今はこの切り裂き魔を螺子伏せないとね。』

 

 球磨川が螺子を持ちながら桐原に向き合う。

 桐原もまた球磨川から放たれる過負荷に微かながら震えていた。

 

「(な…なんだ…?コイツは…?隙だらけなのに、仕掛けたら…ただでは済まない…!)」

 

 剣術部の中でも猛者である桐原は球磨川のアンバランスさを感じ取っていた。

 戦おうとしているのに、自分の隙や弱点を本来隠すべきところを、これでもかと晒すところが気持ち悪い。

 間違いなく戦えば自分が勝つ…それはわかっているのに、戦う行為そのものが自分自身の何かを壊してしまうと本能が訴えている。

 しかし、球磨川が相手が攻撃してくるのを待つわけがない。

 球磨川が突撃しようとすると、それに気がついた桐原は再び魔法を発動させる。

 

「くっ…くっそぉぉぉ!」

 

 球磨川の攻撃に合わせ、迎撃しようとする。

 しかし、次の瞬間、桐原が発動した魔法が突然解除された。

 

「…っ!?」

 

『……?』

 

 突然のことに困惑する二人、それも束の間、彼らの間に達也が飛び込み、二人同時に床へと押さえ込んだ。

 

『…ぐはっ!』

 

「ぐふっ!」

 

 桐原の竹刀を没収し、球磨川たちを無理矢理、押さえ込む。

 流石に二人は厳しいのか、達也は急いで通信端末で連絡する。

 

「こちら第二体育館。逮捕者二名、そのうち一名は魔法の不適正使用。負傷していますので、念のために担架を。」

 

 それを聞いた他の剣術部員が達也に吠える。

 

「ふざけるな!魔法の使用なら壬生もそこにいる気持ち悪いやつも同罪だろうが!」

 

 その言葉に球磨川が立ち上がり、ヘラヘラ笑いながら答える。

 

『僕は魔法なんて使ってないよ。』『使う気もないし。』

『そこはどうなの?』『達也ちゃん?』

 

「え……?」

 

 球磨川の言葉に驚いたのは壬生だった。

 球磨川からの質問に達也は冷静に答える。

 

「壬生先輩は自己防衛の範囲。球磨川に関しては魔法は使っていないが、襲いかかった時点で問題だ。大人しくしてもらうぞ。」

 

 達也の真剣な目を見た球磨川は、それでもヘラヘラ笑う。

 

『やれやれ』『達也ちゃんの頼みなら仕方ないね。』

『あーあ。また勝てなかった。』

 

 第二体育館で起きた騒動。それは球磨川の手によってメチャクチャにされ、達也の手によって終息を迎えた。

 しかし、これは序章に過ぎない。これから、球磨川と学園を巻き込む事件の……。




こんばんは味噌漬けです。達也くんファインプレーですね。あのまま球磨川を放置してたら、取り返しのつかないことになっていたでしょう。球磨川先輩を主軸としつつ、魔法科キャラも立てて、なおかつストーリーを出来る限り壊さないようにしなきゃいけないので、思ったより構成が大変です。じっくり考えながら書いていくので、更新したら読んでいただけると嬉しいです。今回は読んで頂きありがとうございました。
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