魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜   作:味噌漬け

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鬱注意


第十二話 少女は苦悩する

 騒動が終わり、部活連会頭にして十師族のうちの一つ、十文字家の嫡男である十文字克人、風紀委員長の渡辺摩利と生徒会長の七草真由美の三人に報告を終えた達也は深雪達の元へ戻っていた。

 報告した内容には勿論、球磨川についても混ざっている。

 

「お兄様!」

 

 校門前には深雪以外にもほのかと雫といった深雪のクラスメイト、レオとエリカに美月といった達也のクラスメイト達も待っていた。

 

「お疲れ!」

 

「お疲れ〜」

 

 レオやエリカが苦労を労うと深雪もまた達也の元へと駆け寄る。

 

「お疲れ様です!」

 

 深雪がそう言うと、達也は彼女の頭を撫でる。

 

「大したことはないさ。深雪の方こそご苦労様。」

 

「あっ…。」

 

 達也の行為に深雪は顔を赤くする。

 他の面々も二人が放つ桃色の雰囲気に頬を熱くしていた。

 そして彼らはことの顛末について聞くために喫茶店へと向かった。

 

「いらっしゃいませ。」

 

 店員に案内された彼らは席につくと適当に注文する。

 

「…それで、どうなったんですか?」

 

 ほのかが達也に聞く。

 その顔は何か焦っているようであった。

 

「桐原先輩は非を認めていたし、渡辺委員長も大事にはしないそうだ。」

 

 達也がそう言うと、ほのかは身を乗り出し声を荒げる。

 

「そうじゃありません!球磨川くんのことです!」

 

「ほのか、落ち着いて。」

 

 雫に嗜められたほのかは我に返ると「すみません…」と頭を下げて座る。

 ほのかの顔は青白くなっており、憔悴していた。

 しかし彼女は震えながらも必死に口を開く。

 

「……球磨川くんも騒動に巻き込まれたって聞きました…。球磨川くんは…無事なんですか?」

 

「(…これは正直に言うべきだろうか……。)」

 

 はっきりと球磨川も逮捕したといえば彼女にかかる心労もとてつもないことになるだろう。

 球磨川自身は壬生を守ったとはいえ、暴力を振ろうとしたのも確かである。

 達也はほのかに言うべきか迷っていた。

 しかし、そのほのかが言う。

 

「お願いします…。正直に言ってください…。」

 

 身体は震えていても、その目は真剣そのものだった。

 ほのかの目を見た達也は仕方ないとばかりに口を開く。

 

「…球磨川は暴力未遂で俺が逮捕した。だが、魔法を使用していない点と壬生先輩の救出の功績もあって、()()()厳重注意に済ませるようだ。」

 

 それを聞いたほのかは力が抜けたのかソファの背もたれに身を預けてしまう。

 

「……ほのか!」

 

「ほのか、大丈夫!?」

 

 雫と深雪が心配そうに見るも、ほのかは少しだけ安心したような顔になっていた。

 

「良かった…。球磨川くんは無事なんだ……。良かった…。」

 

「ほのか……。」

 

 そう呟くほのかに何とも言えない目を向ける他の面々。

 しばらくすると落ち着いたのか、ほのかは皆の前で頭を下げる。

 

「ごめんなさい。心配かけちゃって…。」

 

「ほのか大丈夫?」

 

 雫が心配するとほのかは頷く。

 

「うん。もう大丈夫。」

 

 ほのかが元の調子に戻ると美月が恐る恐る尋ねる。

 

「…ほのか、何でそこまで球磨川くんのことを……?私にはあの人が怖い人にしか見えません…。」

 

 美月は球磨川と森崎のやり取りを思い出したのか、顔を青くしていた。

 ほのかもまた少し震えながらも話す。

 

「私…前にね、球磨川くんに助けてもらったの…。」

 

 ほのかは球磨川との出会いを話しだす。

 自分が不良達に襲われた時に球磨川によって助けてもらったこと。

 ジャンプが廃刊した事実に落胆した球磨川のこと、球磨川や雫と一緒に喫茶店でお茶したこと。

 せっかく勉強会を開いたのに、球磨川はやっと見つけたジャンプに夢中で全く勉強しようとしなかったこと。

 入学式に自分達に絡む一科生を追い返したこと。

 自分が怒っても、ヘラヘラ笑う球磨川につられて自分も笑ったこと。

 全部語ったほのかは涙を流しながら言う。

 

「私…わからなくなったの。私にとって球磨川くんは誰よりもヒーローみたいな人だった。でも…あんな風に人を追い詰めて……笑顔で自分を傷つけて…。危険に首を突っ込んで…。いつか本当に人を殺しちゃうんじゃないかって…、彼自身が死んじゃうんじゃないかって……。それでも、ヘラヘラ笑いそうな彼が理解できなくて…怖くて仕方ないの。」

 

 ほのかは嗚咽しながらも話し続ける。

 

「今でも思い出すの。あの時に…胸を自分で貫いた球磨川くんの血が…私の身体にかかった感触…。球磨川くんを見るたびに、あの生暖かくて、冷たくて、黒くて赤くて、柔らかくて硬くて、辛くて苦しくて…そんな感覚が……」

 

 ほのかはぶつぶつと自分の両手を見ながら呟く。

 その姿はあまりにも痛々しいものだった。

 ほのかは両手を下ろすと、自嘲するように言う。

 

「私…本当に馬鹿みたい…。今回の事も球磨川くんに直接聞けば良かったのに…。彼が怖くて逃げちゃって…。しかも、司波くんにまで八つ当たりしちゃって…。ごめんね。司波くん。」

 

「光井さん…」

 

「ほのか…」

 

 その哀れな姿に達也とエリカ達は何も言えなかった。

 

「私、もう帰るね…。雰囲気悪くしちゃってごめん。お金置いていくから…」

 

「…ほのか……!」

 

 ほのかは力なく立ち上がり、フラフラと歩きだす。

 雫はそんな彼女を放ってはおけないと、後を追って行った。

 その場に残された面々は気まずさのあまり黙ってしまう。

 そんな中、レオが口を開いた。

 

「球磨川は…一体、何がしたいんだ…?」

 

 レオの呟きにエリカが返す。

 

「…球磨川君が何を考えているかは分からないけど……壬生先輩を助けたのは確かよ。私だってアイツが気味悪く見えるわ。でも、やり方は別として人を助ける優しさだけはあるのかもね。」

 

 深雪が神妙な顔で言う。

 

「…球磨川君のこともそうですけど、今はほのかが心配です。……今のほのかと球磨川君を会わせてはいけないかもしれません。」

 

 その言葉に、他の面々も頷いた。




こんばんは味噌漬けです。
これまでの騒動を合わせて一番マインドクラッシュしたのは、達也でも森崎でもなく、ほのかという。依存性があるプラスが球磨川先輩と関わるとどうなるのかって感じで書いてみました。でも、このままだと初期怒江ちゃん化しそうなのが怖いところ……。これから先、ほのかはどうなるんでしょうね?
 今回は読んでいただきありがとうございました。
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