魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜   作:味噌漬け

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第二十二話 大嫌いで大好き

 球磨川の攻撃によって倒れ込んだほのか…。

 傷つき、苦しむ痛々しい姿となっても…それでも目は死んでいなかった。

 

「はぁ…はぁ…」

 

『……まだ戦うんだね』

『そういうのは僕のお家芸な気もするけど…』

 

「言ったじゃ無い…。私は…逃げないって…」

 

 覚悟を込めた目で球磨川を睨むほのか…。

 球磨川はそんな彼女を見て、それでもなおヘラヘラ笑う…。

 

『もう辞めたらどうだい?』

『そもそもさぁ…』

『君がそんな風にボロボロになってまで、戦う必要なんてないと思うんだよね』

 

「…どういう意味……?」

 

『君の代わりに誰かに戦ってもらえばいいんだよ』

『それこそ、達也ちゃんとか深雪ちゃんとかね』

『そっちの方が確実だと思うぜ?』

 

 纏わりつくように話す球磨川。

 実際、戦闘力だけで見れば達也や深雪の方がよっぽど強い。

 

『いつだってそうだ』

『君はいつでも人任せ』

『僕に雫ちゃんに深雪ちゃん…色んな人に守られてるだけの甘ちゃん』

『誰かに依存しなきゃ生きていけない弱い女の子…』

『それが君だろう?』

 

「…………」

 

 球磨川の言うことは間違っていない。

 ほのかの隣には何時でも誰かがいた。

 雫に球磨川…。色んな人に守られて生きてきた。

 森崎の時も…入学式でも…討論会の時も…ピンチになれば誰かに救われる…そんなヒロインのように生きてきた。

 

『でも、それの何が悪いんだい?』

『君はそうやって誰かに助けられていれば良いんだ』

『責任も何も感じる必要なんてない』

『だって、君は弱いんだから…』

『弱い子が守られるのは当然だろう?』

『だから君が今、無理する必要なんてないんだよ?』

 

 歪んだ優しさを持って球磨川はほのかに接する。

 そして次に何か閃いたように手を叩いた。

 

『そうだ…それじゃあ、こうしよう』

『君が誰かと交代したら、その時点で僕は降参する』

『それでどうだい?』

 

「「「!!?」」」」

 

 球磨川の突然の提案に、その場にいる殆どのは人が驚く。

 

「どういうつもりだ……?」

 

 達也は思わず、疑問の声を上げる。

 球磨川はニコリと笑いながら答えた。

 

『ん?』

『まぁ君達と戦う理由なんてないからね』

『それに学校くらい行っても別に構わないし』

 

 そして球磨川はほのかに視線を向ける。

 

『どうする?』『ほのかちゃん?』

『別に君が降参するわけじゃ無いんだ』

『それで良いじゃないか』

『そうだ!こんな喧嘩なんてやめてさ』

『これから遊園地に行こうよ』

『今行けば空いてるんじゃないかな?』

 

 球磨川からの甘美な誘い…。

 それをほのかは黙って聞いていた。

 

「(…わかってる。ここで誰かに任せれば…本当に球磨川くんは降参するんだろうな……)」

 

 ほのかは知っている。

 球磨川は嘘つきだが、こういう時は決して嘘を吐かないことを…。

 

「(学校にだって来てくれるし、遊園地で楽しく遊んでもくれるんだろう……)」

 

 それはほのかが望んでいたこと。

 以前のように球磨川が馬鹿をやらかし、それをほのかが怒って、みんなが見て笑う。

 そして何時の間にか、球磨川もほのかも一緒になって笑い合う…そんな幸せな生活。

 

「(私は弱い…たった三日で球磨川くんに勝てるわけがなかったんだ…。今だって相手にすらなってない。私がどれだけ戦っても全部、無かったことにされるんだ…。でも…今、頷けば私が望んだ通りになる。もしも嘘だったとしても司波くんや深雪…雫ならきっと何とかしてくれる…。そうよ……私がやらなくたって誰かが……)」

 

 ほのかは俯きながら過負荷の温い闇へと堕ちていく。

 深雪や雫が「ほのか!!」と声をかけても彼女の耳には届かなかった。

 そして……

 

「…………球磨川くん…」

 

 ほのかは静かに口を開く。

 球磨川はその様子を見て不気味な笑みを作る。

 

「まだ…勝負は…終わってないよ……!」

 

『!!』

 

 ほのかは立ち上がった。

 球磨川に打ちのめされても…縋りたくなるような誘いを受けても…心を折らずに立ち上がる。

 

「……確かに…球磨川くんの言う通りだよ。私は…一人じゃ何にもできない…」

 

 ほのかは続ける。

 

「誰かに甘えて…頼って…自分で戦うことをしなかった臆病者だよ……」

 

 自嘲しながら言う。

 ほのかは心のどこかで感じていたのだろう。

 自分で戦うことをしなかった、そんな自分が他の皆と一緒にいていいのか…。そんな負い目を…。

 それが球磨川との亀裂を生むキッカケになっていたのかもしれない。 

 

「でもね……それでも私はみんなと一緒にいたいの……」

 

 我儘なのはわかっている。

 都合の良いことを言っていることも分かっている。

 しかし…それでも、ほのかはみんなと一緒に居たいのだ。

 

「……雫…深雪…司波くん…エリカ…レオ…美月…壬生先輩に桐原先輩……。私にとってはみんなが大切…。誰一人欠けて欲しくない…私が大好きな人達…」

 

 一緒に遊び、学び、これからもずっと一緒に居たい大切で大事で大好きな人達…。

 壬生や桐原も今では頼りになる先輩達だ。

 

「でもね…」

 

 そしてほのかは球磨川の濁った目を真っ直ぐ見ながら言う。

 

「それは球磨川くんだって…同じなの!!」

 

『………!』

 

「私にとって球磨川くんもそんな人達の一人なの……。プラスもマイナスも関係ない!」

 

 ほのかは続ける。

 

「無意味でも、無関係でも、無価値でもない…。いつもヘラヘラ笑ってて、不気味で、不真面目で、不器用で、だらしなくて、馬鹿で、卑怯で、少し動いただけでへたばって…とってもスケベで…」

 

『あれ?僕の悪口になってない……?』

 

 悪口の連打に球磨川は少しだけ複雑そうにヘラヘラ笑う。

 しかし、ほのかはそんな彼を無視して言い続けた。

 

「でも、実は誰よりも優しくて…ジャンプが大好きで! 誰よりも弱くてカッコいい…」

 

 そしてほのかは精一杯の大声を上げる。

 

「そんな球磨川くんが……心の底で大嫌いで…大好きだから!!」

 

 ほのかは自らの本心を隠さずに吐露する。

 弱みも強みもすべてごっちゃにして叫んだ。

 

「今更、何言ってるんだ…って思うよね…。でも、そんなの関係ない。球磨川くんの意思も何も関係ない……。私の意思で我儘で身勝手で…私はあなたと向き合いたい!本音を聞きたい!!だから…弱くたっていい。愚かだっていい。他の誰かじゃない…私が戦うんだ!!」

 

 友情や絆、正義…そんな行儀の良い理由じゃない。

 むしろ、その逆…。これ以上ない愚かで醜い執着心(願望)で球磨川と向き合う。

 しかし、ほのかはもう逃げない。自分の依存性からも弱さからも…。

 

『……本当に君は愚かだ…。愚か過ぎて……返って眩しいくらいだよ』

 

 球磨川は目を細めながら言う。

 しかし、その顔はどこか楽しげだった。

 

「いくよ!球磨川くん!!」

 

『…!!』

 

 ほのかは踏み出し、片手で警棒を持って突撃する。

 左腕は使えない。

 

「(片手じゃそこまで威力は出ない…。疲れもあるけど…!)」

 

 ほのかはそれでも懸命に武器を振る。

 球磨川はそれを受け止める。

 螺子と警棒が擦り合い、音が響く。

 

 

『……弱点を僕の前でそのままにしてもらえると思うなよ』

 

 球磨川はほのかが負傷した左腕を徹底的に攻める。

 ほのかはその攻撃を……

 

「うっ!!ぐぅぅぅぅ…」

 

『…!避けないのかい!?』

 

 避けなかった。

 左腕から血を流しても……その痛みを気にせずに右手で警棒を振り下ろす。

 

『ぐっ……ガッ』

『……でも、僕には大嘘憑き(オールフィクション)が…。……っ!?』

 

 ほのかの振った警棒が球磨川の脳を揺らす。

 しかし、片腕だったために意識を奪うまでにはいかなかった。

 球磨川が大嘘憑きで怪我を直すも……目の前にほのかの警棒が映る。

 

『ガハッ!!』

 

 ほのかの攻撃が再び球磨川にヒットする。

 彼女はそれに構わず、次の攻撃に移った。

 

「あなたがどれだけ無かったことにしても構わない!!」

 

 身体中の怪我が軋む。

 その痛みは尋常じゃないはずだ。

 しかし、ほのかはそれを受け入れて武器を振るう。

 

「その分、私が球磨川くんと戦う(向き合う)から…。あなたを理解できるまで!!」

 

『ぐっ!!?』

 

 ほのかの攻撃は止まらない。

 無かったことにしようとも…いつまでも球磨川に付き合いつづけことを示すかのように…。

 だが、球磨川も黙って受け続けるわけではない。

 

『調子乗らない方が良いよ!』

 

 球磨川が反撃する。

 螺子と警棒…いや、マイナスとプラスがぶつかり合う。

 二人の戦いはもはや意地の張り合いと化していた。

 その様子を達也たちが見守っている。

 そして、深雪が緊迫しながら言った。

 

「お兄様…!ほのかはもう限界です!止めないと……」

 

 ほのかの姿はもう顔も身体も傷まみれのズタボロだ。

 勝ったとしても、ちゃんと治療出来るかも怪しい。

 後遺症すら残る可能性がある。

 

「深雪ーー」

 

 そんな深雪に対して達也が何か言おうとするが、そこに雫が口を挟む。

 

「……ごめん。深雪、二人を止めないであげて」

 

「雫!!?」

 

 ほのかの親友である雫からの言葉に深雪は驚く。

 

「雫は…心配じゃないの!?」

 

「……うん…心配。でも……今はほのかの気が済むまでやらせてほしい」

 

 雫だって心配なのだ。

 今すぐ球磨川をぶん殴って、ほのかを助けたいくらいに…。

 しかし、傷つきながらも…どこか楽しそうに戦うほのかを止められるとは思えない。

 そして、あの、他人に依存していた親友が…ようやく自分で決断し、自分のために行動した。

 人として成長したのだ。

 雫はほのかの側で誰よりも彼女の頑張りと苦悩を見てきた。そんなほのかがようやく見つけた答え。

 親友として…それを貫き通すのを見届けなければならないと雫は感じていた。

 

「でもーー」

 

 それでも何か言おうとする深雪。

 それを達也が止めた。

 

「……今は北山さんの言う通りにしよう」

 

「お兄様……!」

 

 深雪は驚くものの、愛しの兄の言葉に唇を噛み締める。

 そして雫はほのか達に視線を向ける。親友が傷ついていく様など、雫だって見たくない。

 しかし…親友が決死に戦ってる中、自分が逃げ出すわけにはいかない。

 

「(決着をつけられるのは今しかない。ほのかがただ球磨川を倒したって意味がない。ほのかが本心を吐き出した今がチャンス…。)」

 

 そう…。この勝負はただほのかが球磨川を殴り倒しては意味がない。

 球磨川がふざけ混じりに降参しても意味がないのだ。

 ほのかの目的はほんの少しでも球磨川の本心に触れること。

 そして、それが一番出来るのは、ほのかが覚悟した今しかない。

 もしも先程、ほのかが球磨川の誘いに乗り、彼が降参することになったのなら…ほのかは事実上の敗北になっていただろう。……それはもはや球磨川から逃げたことと同義だからだ。

 

「はぁ……はぁ…。ぐっ……」

 

 しかし限界は訪れる。

 腕だけじゃない。あらゆる箇所に傷を負ったほのかの身体はまともに動くことが出来なくなっていた。

 それを突かない球磨川ではない。

 

「キャッ!!?」

 

 容赦なく貫こうとする球磨川の螺子。

 ほのかはそれを寸前で何とか防ぐも、それを見計らったように球磨川が螺子を振り上げ、警棒を弾き飛ばす。

 

「……っ!?」

 

 武器を失ったほのかは後退して球磨川の追撃をかわす。

 そしてCADを起動すると……それを見た球磨川はニヤリと笑みを浮かべた。

 

『もうその動きは見たよ』

 

「……!!」

 

 球磨川の視線の先には、後退するのを読んだかのように無数の螺子で囲まれたほのかの姿……。

 一本一本が鋭く尖り、先端がほのかを向いている。

 これでは先程のように球磨川の地面を揺らしても意味がない。

 

『君ならそうすると思ったよ』

『これでお終いだ』

 

「「ほのか!!!」」

 

 雫と深雪が声を上げる。

 球磨川が三日月の如く口角を上げ、勝ちを確信するも…突然、ほのかの足元が輝きだした。

 

『?』

 

 球磨川はほのかが今更何をするのか戸惑う。

 しかし…その瞬間…ほのかは足腰を下げ、思いっきり踏み出した。大きな振動と共に!

 

『なっ!?』

 

 思い切り踏み出し、飛び出したほのか。

 彼女がしたことは至極単純。

 自身が出した振動を魔法で大きくし、その振動を足元に発生させただけ。

 それによって生まれた推進力は、ほのかの身体を球磨川へと目掛けて吹っ飛ばした。

 

「ヤァァァァァァァァァァ!!」

 

『………………』

 

 球磨川の胸元に向けてほのかは叫びながら突っ込んでいく。

 ガードも間に合わない。

 そして球磨川とほのかが激突する瞬間…球磨川が今までで一番の…優しい笑みを浮かべた。

 

 

 

「……本当に…強くなったね。ほのかちゃん…」

 

「……え?」

 

 ほのかは確かに聞いた。球磨川のカッコつけない本音を…。

 ほんの一瞬だが、触れたのだ。球磨川の本心に…。

 

『ガハッ!!』

 

 ほのかの渾身のタックルが球磨川へと当たる。

 球磨川の身体はその勢いに押され、後ろへと勢いよく倒れ込んだ。

 

「あぐっ」

 

 ほのかもまた地面へと倒れ込んでしまう。

 とんでもない無茶をやらかしたせいで脚から血が滲み、骨が変な方向へと曲がっていた。

 

「ほのか!!」

 

「光井さん!」

 

「………!!」

 

 深雪、達也、雫の三人がほのかへと駆け寄る。

 

「お兄様!救急車を!!」

 

 深雪が大慌てで言う。

 達也が頷き連絡しようとするも、ほのかが止める。

 

「待って…。まだ終わってない…から……」

 

「ほのか!」

 

 雫が声絶え絶えとするほのかへと声をかける。

 次に深雪が必死な声で言った。

 

「でも!!ほのかの身体が!!」

 

 悲痛な顔でほのかを見る深雪…。

 そんな彼女をほのかが睨む。

 

「お願い…。この勝負だけは……辞めたくないの。止めたら…一生恨むから……」

 

「ほのか……」

 

 ボロボロなのにも関わらず修羅の如きオーラを出して睨むほのか。

 その目に深雪は何も言えなくなる。

 雫もまた俯き…一回だけ頷くと、球磨川の元へと向かった。

 

「……球磨川…まだ戦るつもり……?さっきは深雪にああ言ったけど…。これ以上するなら私が戦う」

 

 雫もまた我慢の限界だったのだ。

 例え絶交されたとしても、あの状態のほのかに戦わせるわけにはいかない。

 今まで無表情だった雫が眉間に皺を思い切り寄せて球磨川を睨む。

 そしてその球磨川はため息を吐いて雫を無視して言う。

 

『ホントに無茶するよ…ほのかちゃんは…』

『人のこと言えないじゃないか…』

『なんでそこまでして僕に構うんだい?』

 

「球磨川…!」

 

 呑気に話しかける球磨川に雫は睨みつけるも、彼はスルーする。

 そして…ほのかは…痛みを堪えながらも必死に言った。

 

「そんなの…決まってるじゃん。球磨川くんを理解したい…それだけだよ」

 

『……やれやれ…だからどこまでも幸せ者(プラス)なんだよ。君は…』

『君みたいな幸せ者に僕みたいな不幸者は似合わない。僕がいれば…君は絶対に不幸になる』

『僕は…不幸のままでも良いけど…。君はそうじゃないだろう……?』

 

「関係ないよ…。はぁ…はぁ……。私にとっての幸せは……いつも通り、みんなで過ごす時間だから……。球磨川くんと笑い合う時間だから…。不幸なんかじゃない…だから…」

 

 ほのかは小さく…息が絶え絶えの状態で声を振り絞って叫んだ。

 

「私の幸せを……あなたが決めつけないで!!」

 

『!!』

 

 その叫びはあまりにも小さく…弱々しい。

 しかし…それは確かに球磨川へと届いていた。

 

『はぁ……本当に君は強情だなぁ…』

 

 ため息を吐いて言う球磨川。

 その顔はどこか安らかだった。

 一方、ほのかの方はというと、彼女に異変が起きる。

 

「ガハッ……」

 

 無理をした代償に吐血するほのか…。

 それを見た深雪はほのかに無理をしないように言う。

 

「もう喋らないで…ほのか…。お兄様!!お願いします……」

 

「………ああ」

 

 深雪は達也に視線を向けた。

 達也もまたこのままでは死ぬだろうほのかの治療のために能力を使うことを決心した。

 ほのかのためだけではない。必死に叫ぶ深雪のためでもある。

 その時…

 

『負けたよ…。僕の完敗だ。あーあ…また勝てなかった……』

 

 球磨川の声が静かに響き渡る…。

 球磨川の敗北の言葉……必死になってほのかを助けようとする深雪達には聞こえなかったが……一人の少女へと届いた。

 

「(……ふふっ…私…勝ったんだ…。これで…みんなで学校に行けるんだ……。良かったぁ……嬉しいなぁ……。みんなで…何して………あそbーー)」

 

 球磨川の敗北宣言が聞こえたのか意識を失いかけながらも幸せそうな表情を浮かべるほのか……。

 そんな彼女を見て、死なせまいとする深雪と達也。

 達也が自身の能力を行使しようとした瞬間……ほのかの傷が綺麗さっぱり消えた。

 

「「「……!!?」」」

 

 達也は何もしていない。

 しかし、折れた脚も、傷ついた腕も、ボロボロになった背中も…全ての傷が綺麗になる。

 そしてそんな彼女の元に球磨川が歩いてきた。

 

『大嘘憑き』

『ほのかちゃんの傷を無かったことにした』

『……立てるかい?ほのかちゃん?』

『勝者が這いつくばったままなんて格好つかないぜ』

 

 球磨川もまた傷が綺麗に消えている。

 どうやら大嘘憑きを使ったようだ。

 球磨川が手を差し出すと、ほのかはそれを掴む。

 

「…うん…立てるよ……。ありがとう」

 

 ほのかは立ち上がる。

 

「球磨川君…あなた……」

 

 深雪は複雑そうな顔で球磨川を見る。

 そして雫が球磨川には頭を下げた。

 

「ありがとう」

 

『……このまま死なれても嫌だからね』

『君達のためじゃないさ』

 

「それだけじゃない。ほのかの声を…聴いてくれたから……」

 

『……ほのかちゃんは頑固だからね』

 

 球磨川の憎まれ口に苦笑する雫。

 達也はそんな彼らを腕を組んで微笑ましげに見ていた。

 そして球磨川は審判をしていた九重に視線を向ける。

 

『九重さん』『僕は負けを認めました』

『お願いします』

 

「うん…わかったよ」

 

 九重は優しい笑顔で言う。

 そして腕を大きく広げて宣言する。

 

「勝者!!光井ほのか!!」

 

 こうして…二人の対決は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 こんにちは味噌漬けです。
 この話は戦挙編のVS善吉を参考にしました。個人的一番好きな戦いでしたので。ただ、善吉が球磨川を拒否し、欠点を埋める(大嘘憑きを使わせない)道を選んだのに対して、ほのかは球磨川を受け入れて大嘘憑きで無かったことにしても、その分付き合っていくという道を選びました。
 次話で入学編最終回です。あのキャラが登場する予定です。
 
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