魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜 作:味噌漬け
勝負を終えた彼らは寺の掃除をしていた。
「それで…球磨川くんは学校に戻ってくるんだよね?退学なんてしないよね?」
掃除が終わりかけていた時、ほのかが球磨川に話しかける。
球磨川は頬をポリポリと掻きながら口を開いた。
『んー』『いや、まだ学校には行けないよ?』
「「「え?」」」
球磨川の言葉に目を丸くする皆。
そんな彼らの様子に球磨川は困惑した。
『…なんでそんなに驚いてるの?』
『つーかさ』『退学ってなに?』
『一体どこからそんな話になってるの?』
深雪もまた戸惑いながら聞いた。
「え……?ほのかは勝ちましたよね…?退学でもないのに…なんで学校に来ないんですか……?」
そしてほのかが追従する。
「そうだよ。そんなに…私たちと学校行きたくないの……?」
ほのかは悲しみのあまり、目に涙を浮かべながら言う。
球磨川は慌てて言った。
『いやいや』『そもそも僕、謹慎中だぜ?』
『行けるわけないじゃん』
『聞いてないの?』
「あっ……」
誰が言ったかはわからないが、思い出したかのような声を上げる。
そう球磨川は放送室の襲撃の件で謹慎処分となっていたのだ。
「だが…球磨川、お前の謹慎期間はとっくに終わってるんじゃなかったか?」
達也が球磨川に向けて言う。
そもそも球磨川を謹慎にしたのは討論会に球磨川を参加させないためである。
討論会が終わった以上、球磨川を謹慎させる理由はない。
『ほら』『僕、討論会の日に壬生先輩の応援に来ちゃったじゃん』
『だから』『罰で謹慎期間長くなっちゃったんだよね』
「……聞いてないぞ」
一応、球磨川は謹慎中の身で学校に来てしまったため、謹慎期間が更に伸びたのだ。
しかもその後の学校は色々大忙しだったために、球磨川のことなど皆の頭から消し飛んでいたのである。
次に雫が言う。
「…でも、連絡も通じなかった」
『連絡かい?そんなのなかったけど……』
球磨川が困惑しながら言うと、突然、どこかからピコンピコンピコンと通知音が流れた。
『あ、ごめん。僕だ』
球磨川が携帯を見ると戸惑いの表情になる。
『……え?な…なんか、通知が今来たんだけど……』
そう、不思議で不運なことに、今更ながら大量の連絡の通知が来ていた。
一見、あり得ないことも平気で起こすのが球磨川の不幸体質である。
「ちょ…ちょっと…待って…球磨川くん。つまり……謹慎期間が明けたら学校に来るつもりだったって…こと?」
一連のやり取りでほのかは戸惑いながら言う。
『そのつもりだったけど?』
『だから、言ったじゃん。無理だって』
そう最初から球磨川は言っていたのだ。
「嫌」でも行きたくないと言ったわけでもなく、『無理』…であると。
行きたくないの問題じゃなくて、校則上…行くことが不可能だったのだ。
「……つ、つまり…この勝負は…」
ほのかの言葉に対して球磨川はヘラヘラ笑って言った。
『賭け自体は全く意味ないね』
『正直、何言ってるんだろうなーって思ってたよ』
『いやはや』『謹慎が終わったら、すぐにでも会えたのに』
『こんなに僕と会いたかったなんてね』
『いやー』『モテる男は辛いぜ』
「う……うそ…」
ほのかは放心して、途切れ途切れに呟く。
そして球磨川は、やれやれと両手を振る。
『全く…ロクに事情を知らないで動くなんて』
『せっかちなほのかちゃんらしいね』
『早とちりしちゃってさー』
『あー恥ずかしい!』『「私が勝ったら学校に戻ってきて」だっけ?』
『勝負なんてしなくても、戻ったのに!』
『他にも身悶えそうなセリフばっか言っちゃって』
『後で悶え苦しむほのかちゃんが目に浮かぶよ』
負けた腹いせか、ポンポンと出てくる球磨川の煽り。
心なしか球磨川はとっても楽しそうだった。
それに対し…ほのかは俯きながら黙り込む。
「……………」
「ほ…ほのか…?」
「……これはマズイ」
黙り込むほのかから赤くてドス黒い…そんな怒りのオーラが溢れ出す。
自分の言ったことの恥ずかしさと煽る球磨川への怒り……彼が学校へと戻ってくる安心感…今まで、自分がやってきたことの虚無感…色んな複雑な感情が混じった…そんな混沌とした怒り……。
それを見た深雪と雫は顔を青くした。
『あれ?』『どうしたんだい?』
『図星で何も言えないのかな?』
『ほのかちゃ……!?』
球磨川はほのかに視線を向けると、ようやく気がつく。
自身に向けられた怒りの感情を…。
ほのかは阿修羅の如き気迫を出しながら球磨川の元へと近づいていた。
握り締められた箒の先端が球磨川に向いている。
それを見た球磨川は大慌てしながら言った。
『いやいやまってよ!』『ほのかちゃん』
『僕は悪くない!』
『早とちりしたのは君だろう?』
『僕は君とは戦う気はないんだ!』
『僕達はわかりあえる!!』
『高校生にもなって、八つ当たりなんて虚しいと思わないかい!!?』
しかし、理不尽な理由であったとしても怒りに染まったほのかの耳には届かない。
確かにロクに調べもしなかったほのかも悪いところはあるのだが…それでも人は理不尽であると自覚しながらも…怒りを発散しなければならない時もあるのだ。
……というか、球磨川が煽らなければ怒ることもなかったと思うのだが。
『達也ちゃんたちも何か言ってやってよ!』
『ほのかちゃんにs………達也ちゃん!!?』
球磨川は達也達がいた方を見るも、ほのかの怒りに身の危険を感じたのかいつの間にか居なくなっていた。
『い…いつの間に……』
球磨川は彼らの迅速な動きに驚きを隠せない。
ほのかは身体をプルプル振るわせる。
球磨川は逃れられないと悟ったのか一笑して言う。
『ふっ……』『いいだろう』
『だがほのかちゃん、これだけは言っておくね』
羞恥心と怒りに染まったほのかには聞こえない。
そして彼女は顔を真っ赤にしながら大きな声で思いっきり叫んだ。
「…ミ…ミソギくんの……馬鹿ァァァァァァァァァァ!!!」
『また勝てなかっ――』
言い切る前に球磨川の顔へと目掛けて箒が振り下ろされた。
寺にほのかの叫びが響き渡る。
それを聞いていた雫達は離れたところで顔を見合わせながら苦笑していた。
◇
場所はうって変わり、とある和風の屋敷の中……。
そこには一人の水色の髪をした小柄な少女が座っていた。
「あひゃひゃ!さっすが、球磨川先輩。
少女は黒装束の男から受け取った紙を読みながら笑う。
彼女は傍にある豪華に並べられた皿の中から食パンを一斤取り出すと齧り付く。
「モキュモキュ…。う…ん…。まぁ…モッシャモッシュ………。このくらいしてもらわないとこの…もぐもぐ…時代に来てもらった甲斐が…ごっくん…ないけどね……」
少女は食パンを飲み込みながら言う。
次に少女はケーキにフォークを突き刺して一口で食べる。
「はぐはぐはぐはぐ…ごくん。それにしても…ブランシュからの情報が取れなかったのは痛かったけど…その辺も先輩らしいか…」
そうブランシュの面々は誰も死んではいないものの情報自体は誰も話していない。
何故なら、司一を始めとしたブランシュの面々は全員、精神病院送りにされたからだ。
球磨川やマイナス…今回の事件に関する単語を聞くだけで発狂するようになっていた。
「はむっ…。これも…安心院さんの読み通りなのかな…?まぐまぐ…。それにしても、球磨川先輩を…モシモシ…第一校に通わせる…はぐはぐ…なんて……」
少女は次にステーキを食べながら話していた。
彼女がフォークとナイフを置くと甲高い音が静かに響く。
それにしても食べながら喋らないでほしいものである。
そして、茶を飲みだした。
「ゴクッゴク……ぷはぁ。最初聞いた時は頭を疑ったけど…案外、良いアイデアだったね。特に司波達也と接触出来たのが大きい…」
少女は茶飲みを置くと、次の皿に触れる。
「それは…それとして……」
少女はそう呟くと次に骨つき肉に齧り付いた。
「もぐもぐ……そろそろ連中も動く頃合いかな……。次に何かが起きるとしたら九校戦か…。にぎゅにぎゅ…こっちとしても手は打っといたけど…。まっ!あの人がどう動くかなんて、あたしにもわからないけどね!あひゃひゃ!!」
少女はあひゃひゃと笑いながら別の資料を見る。
そこにはコールドスリープに関するデータと、とある少女についてまとめられていた。
彼女は肉を飲み込むと、棚に置いてある写真立てに視線を移す。
写真には球磨川や…安心院、そして黒神めだかや喜界島もがな、阿久根高貴…そして人吉善吉といった当時の少女の仲間たちが笑顔で写っていた。
「……善吉、めだかちゃん……みんな…見ててね。あたしらしくもないけど……みんなの分も頑張るから…」
少女……
こんにちは味噌漬けです。この話で入学編は終了です。最後の最後で球磨川は空気を台無しにしました笑 不知火が見ていた写真ですが、それは最終的の最後にある集合写真ですね。
九校編ですがまだプロットが完成してないので、しばらく投稿まで時間がかかると思います。一応、考えているルートは
・球磨川が九校戦に出るルート。球磨川以外のキャラがボスと戦い、球磨川は表で動きます。
・球磨川が出ないルート。基本的に裏方で動き、ボスも球磨川が戦います。
皆さんはどちらが良いですか?
お待たせするかもしれませんが楽しみにしていただけるとうれしいです。
ご愛読ありがとうございました。