魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜   作:味噌漬け

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番外編3 司波兄妹の箱庭見学 ①

「あれ?ここはどこでしょう……?」

 

「わからない…。どうやら…どこかの学校みたいだな」

 

 ある日、司波兄妹は不思議なことにどこかの学校へと迷い込んでいた。

 二人はキョロキョロと見渡す。

 

「…第一高ではないな」

 

「そうですね。言っては悪いですが、設備が古いです」

 

 まるで歴史の授業に出てくるような前時代的な学校。

 いきなり、そんなところへと飛ばされた二人は警戒する。

 

「…気をつけろよ。深雪」

 

「はい…。お兄様…」

 

 二人は最大限の警戒をしながら脱出を図るべく一歩歩こうとする。

 しかし…その瞬間…側にある教室の引き戸が()()()()()

 

「ぐぇぷぅぅ!!?」

 

「「!!」」

 

 引き戸と共に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられたのは一人の男子生徒。

 頬は腫れ、制服もボロボロになっている。

 

「余計な抵抗すんなボケ!おかげで入り口ぶっ壊しちまっただろーが」

 

 そして出口から一人の白髪の少年が現れた。

 それを見た達也と深雪は身構える。

 

「…ったく。人質なんぞとってんじゃねぇぞアホが!窃盗及び、人質強要……(仕事)ばっか増やしやがってよぉ!!」

 

 彼は小学生のような見た目からは考えられないほどの暴言を浴びせ、鋭い目つきで睨みつける。

 吹き飛ばされた男子生徒はそんな少年を睨み返して殴りかかった。

 

「ふざけるなぁぁぁ!!お前みたいなガキに僕の何がわかるんだよぉぉぉぉ

 

「危ない!!」

 

 叫びを上げながら突撃する男子生徒。

 深雪はそれを見て止めようとするも、少年はそんな彼を冷徹に見抜く。

 

「テメェの事情なんざ知らねぇよ。風紀を乱した。テメェが死ぬ理由には十分だ」

 

 少年が指を弾くと、そこから何かが射出される。それらは廊下中を跳ね返り男子生徒をメッタウチにした。

 

「あがっ!!」

 

 ゴキボキガキと身体中が軋む音が響く。

 男子生徒は白目を剥いて倒れ込んだ。

 彼の身体は痣や血で塗れている。

 彼を倒した何かは再び廊下を跳ね返り、最終的には少年の手の元へと戻った。

 深雪はあまりにもやり過ぎとも言える制裁に何も言えなくなる。

 すると白髪の少年は達也たちの方へ視線を向けた。

 

「ああ?なんだネーチャン?見たところ他校の生徒みてーだが…」

 

 少年は深雪の首にかけられたプレートに注目すると、納得したように頷く。

 

「…あぁ。お前、この学校の見学者か」

 

「…見学者……?あっ」

 

「(…俺にもついている…。【ーー学園 見学許可証】?…何処の学校なんだ…?肝心な部分が読めない」」

 

 深雪はいつのまにか首にかけられたプレートに困惑した。

 達也も同様である。

 何せ、先程まで何もなかったのだから、そうなるのも仕方ない。

 しかも、肝心な学校名が頭にバグがかかったかのように読めない。

 魔法による認識阻害でもなく、なぜこのようなことになるのかわからなかった。

 しかし、一先ずそれはどうでもいい。まずは目の前の惨状が優先だ。

 理由はわからないにしろ、これは流石にやり過ぎである。

 

「……どんな事情があるかは知りませんけど…流石にやり過ぎじゃ…」

 

 深雪がそう言うと少年は鼻で笑う。

 

「ケッ!他校のやつがウチのやり方に口挟むんじゃねーよ」

 

「だけど…」

 

「二度は言わねーぞ。仕事の邪魔だ」

 

「!!」

 

 少年は深雪の話をスルーして言う。

 まるで説明する必要が無いと言わんばかりだ。

 少年からは鋭い金属片の如く鋭く、冷たい殺気が放たれる。

 子供が発していいものではない。

 しかし深雪は負けずに睨み返そうとすると、目の前に愛しの兄が現れた。

 

「お兄様…?」

 

 深雪と少年の間を挟むように達也は立つ。

 少年はそんな達也を興味深げに観察していた。

 

「(へぇ…。こいつなかなかやるな。しかも何か隠していやがる)」

 

 少年は一通り観察すると、笑みを浮かべながら話す。

 

「…で?ニーチャン、お前は何のようだ?邪魔するなら容赦はしねーぞ」

 

「……邪魔する気はありません。だが、日本国民として怪我人を見過ごすわけにはいかない」

 

「ケケケ!ならどうするよ?俺とやろうってか?」

 

 少年の挑発に達也は首を振る。

 

「挑発しても無駄ですよ。俺は他校の生徒…それに何もしていませんから。君が()()()()()である限り、俺に手を出すことが出来ない。違いますか?」

 

「…!!ケケケ…確かにそうだな」

 

 達也がそう言うと少年は目を見開く。

 すると彼は笑いながら肯定した。

 

「本当ですね…この子もお兄様と同じ……。しかも風紀委員長なんて……」

 

 深雪は少年の身につけている腕章に注目する。

 十歳ほどだろう少年が風紀委員長を務めるなど、にわかには信じ難い話ではあるのだが。

 そして彼女の言葉に反応したのは少年だった。

 

「お兄様と同じ?つまりニーチャンのことか」

 

 少年は達也に視線を向ける。

 

「確かに納得だ。見ればわかる。どうやら俺と同じ異常(アブノーマル)みたいだからな……。それにしても、よく俺が風紀委員長だってわかったな」

 

異常(アブノーマル)……?」

 

 深雪は聞き慣れない単語に首を傾げた。

 達也は目を細めながら言う。

 

「……そんな特殊な装備が許されている時点で相当な役職に就いていることくらい容易に想像できますよ。その()()()()()()()も一個人じゃ入手は難しいでしょうしね」

 

「へぇ…。あの一瞬でわかったのか。やるなぁ…ニーチャン」

 

 少年は笑みを浮かべながら達也を見る。

 まるで自分のやらかしたイタズラがバレた時の悪戯っ子のような楽しげな笑みだ。

 

「スーパーボールですか?」

 

 深雪の疑問に達也は頷く。

 

「ああ。そうだ。といってもあれほどの反射力と反発力だ。かなり特殊な素材で出来ているに違いないだろう」

 

 逆に言えば、そんな武器を入手できる時点でこの少年が特殊な立ち位置にいることは間違いないのである。

 

「お見事!正解だよ。こいつの正体を見抜いたのはお前で二人目だ」

 

 達也の言葉に少年は拍手をする。

 しかしタネを見抜いた達也の顔は晴れなかった。

 

「(…だがそれを踏まえても、あれほどの威力のある攻撃を打ち出せる筋力……。そして壁の反射を踏まえた生徒に当たってから自身の手元に戻るまでの軌道を瞬時に計算できる頭脳……。この子供…ただ者じゃない)」

 

 瞬間的な計算能力なら自身をも超えるのではないか……。

 達也は目の前の少年に警戒する。

 そして当の少年はボコボコにされた男子生徒を指差した。

 

「まっ安心しろよ。こいつの命まではとってねぇ。ちゃんと保健委員に連絡してある。ウチの保健委員長にとっちゃあ、このくらいの治療…文字通り片手間で終わるからな」

 

「(……冗談には聞こえないな。この学園にはそれほど優れた能力を持つ者がいるということか…。しかし…そんな人間がいる学園…俺の耳に入らないのは不自然だ…)」

 

 達也はこの学園の異質さ、そして自身の情報網に引っかからない不自然さに考え込む。

 少年はそんな達也を見ながら口を開いた。

 

「そういえばニーチャン…名前はーー」

 

「お待たせしました!!」

 

 少年が名前を聞こうとした時、女子の声が廊下に響き渡る。

 達也たちが視線を向けるとそこにいたのはメガネをかけ、髪を結んだ少年と同じ制服の女子生徒だった。

 

 

 今、達也の周りでは担架で運ばれる男子生徒、破壊された廊下…それに唖然する女子生徒にそんな彼女に陽気に話しかける少年と中々カオスな状況となっていた。

 

「おっ!タオル持ってきてくれたのかサンキュー!」

 

 少年は女子生徒からタオルを受け取ると顔を拭く。

 しかし女子生徒は廊下の惨状を見て、顔を赤くし声を荒げた。

 

「…って!なんでこんなことに!!?メチャクチャじゃないですか!!」

 

「しゃーねーだろ…。財布泥棒事件の参考人として話聞きに行った矢先、俺を見た途端、同じ部活のやつを人質にとってんだからよ。それをされて黙ってられるほど俺は大人じゃねーよ。まっ、元からクソガキだがな」

 

「…え!?人質ですか!?その人は?」

 

「今、室内でおねんね中だ。安心しな。傷一つついてねぇからよ」

 

「どちらにしても大変じゃないですか!!保健委員さん!お願いします!」

 

 女子生徒がそう言うと、保健委員達はガッテンダ!と言わんばかりに頷き室内へと突撃する。

 すると瞬く間に気絶した女子生徒を運んで行った。

 そんな二人の掛け合いを見た深雪は何処か既視感を覚える。

 

「(…どこかで見たような気がしたけど…わかった。この二人…球磨川くんとほのかみたい……)」

 

 方向性は違うものの、この二人は球磨川に振り回されるほのかのような関係性に見えた。

 事が終わると女子生徒は達也達に視線を向ける。

 

「そういえば、この方々は?見たところ、他校生のようですが…」

 

「ん…。ああ、こいつらは見学者みてーだな。つーかお前らなんでここにいるんだ?生徒会の連中はどうした?見学者なら案内についてると思ったんだが…」

 

「「!」」

 

 二人はどう答えるか考える。

 

「…どうしますか?お兄様?」

 

 深雪が小声で尋ねると達也は答える。

 

「…むしろ好機だな。どうやら敵意はないように見える…なら…」

 

 達也は少年に向かって口を開く。

 

「…生徒会の皆さんと逸れてしまいまして……迷っていたところです」

 

 口からの出まかせである。迷っているのは本当だが。

 達也がそう言うと少年はため息を吐く。

 

「はぁ……ったく、あいつらは…しゃーねーなー。…案内してやるか。ウロチョロされても迷惑だからな…」

 

 意外に面倒見のいい少年の言葉に二人は目を丸くする。

 案内してもらおうと期待していたが、向こうから打診してもらえると思っていなかったからだ。

 

「ですが、委員長。副委員長がお呼びですよ?何か性急にしなきゃいけない仕事があるとか」

 

 女子生徒がそう言うと少年は少しウンザリしながら言う。

 

「マジか…。んじゃあ、お前こいつらのこと案内してやれ。生徒会室にまで行けば一人くらいいるだろ。もし誰もいなかったら十三組(ジュウサン)に連れてけ。わかったな」

 

「えっ!十三組(ジュウサン)にですか!!あそこは…」

 

 女子生徒はちょっぴり嫌そうな顔する。

 彼女の顔を見た達也は眉間に皺を寄せて考える。

 

「(ジュウサン…?風紀委員が行くことを躊躇うほどか…。一体どんな場所なんだ…?)」

 

 達也が考えている最中、少年は女子生徒に言った。

 

「風紀委員長命令だ」

 

 流石に命令には逆らえないのか、女子生徒は渋々ながらも「わかりました…」と頷いた。

 

「んじゃ、後は頼んだぜ。……あっ、そうだニーチャン…」

 

 少年は背を向けると、突然達也の方に振り返る。

 

「…?」

 

 少し困惑している達也に少年は鋭い眼光を向ける。

 そして少年は先程とは比べ物にならないほどの気迫を出しながら言った。

 

「同じ風紀委員としてレクチャーしといてやるよ。()()()()()()()()()()()()()。覚えておきな」

 

 そう言い残し、少年… 雲仙冥利(うんぜんみょうり)は立ち去った。

 

 




こんにちは味噌漬けです。番外編の長編という形で書いてみました。もちろんこれは本編に影響することはありません。
やっぱり雲仙くんは好きなキャラですね。再現できてるか不安ですが。彼は魔法抜きのスペックなら魔法科に出ても普通に上位いきそうですよね。
次もメダ箱メンバーを出していきますが誰が良いですか?コメントで募集します。
平戸ロイヤルなどは、流石にチョイ役になりますけどね。
生徒会メンバーは後々出していきますので、彼らは除外しますのでご了承ください。
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