魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜 作:味噌漬け
一連の騒動の後、ほのかは球磨川を連れて控え室にいた。
彼女は気絶してる球磨川に包帯を巻いたり、タオルを当てたりなど手当てを施しながら呟く。
「はぁ…やっちゃった…」
ほのかは自分がやってしまったことに顔を青くしている。
いくら球磨川がやらかしたとはいえ、彼女自身も多くの選手達の前で悪目立ちしてしまった。
その後悔は計り知れないものである。
「でも、スカッとはした」
ほのかが球磨川の看病をしていた時、側にいる雫が言う。
散々、友人である深雪を馬鹿にされた彼女にとっては球磨川に振り回される愛梨の顔は傑作だったのだろう。
「それに球磨川が言わなかったらほのかが突っかかってたでしょ?」
「うっ…それは…」
痛いところを突かれ、ほのかは言葉が詰まる。
その様子を見た雫はため息を吐いた。
「まぁ球磨川も言い過ぎだったけどね」
雫がそう言うと、
そんな中、控え室に深雪が入室する。
「あれ?深雪?」
突然、入ってきた深雪にほのかは困惑する。
「球磨川君は大丈夫?」
「球磨川なら大丈夫だと思うよ。どっかの誰かさんがボコボコにしたけどね」
「うっ……反省してます…」
雫の言葉にほのかは顔を逸らす。
流石にやり過ぎだと思ったようだ。
彼女達のやり取りを見た深雪は苦笑した後、ほのかに目線を向ける。
「ごめんなさいほのか…。私が不甲斐ないばかりに…」
「えっ!?別に深雪は悪くないでしょ?」
実際、ややこしくしたのは球磨川とはいえ、喧嘩を売ってきたのは第三校の連中である。
しかし、優等生で真面目な深雪からしたら自分がもっとしっかりしてれば、球磨川やほのかが出張る前に事を上手く収めることが出来たのではないかと責任を感じていたのだ。
「でも…私がしっかりしてれば球磨川君もあんなことしなかっただろうし…」
「気にする事ない。球磨川の行動を予測するなんて無理だから」
「そうだよ深雪。それにミソギくんだってこう言うよ」
そしてほのかは括弧つけるように言う。
「『そうだよ深雪ちゃん。僕らは喧嘩を買っただけなんだぜ?売る方が悪いに決まってるじゃないか!つまり僕も君も悪くない!』ってね!」
ほのかの球磨川の物真似に深雪と雫は吹き出す。
「ぷっ!ほのか、球磨川君の物真似上手…」
「………似てる…」
球磨川が気絶しているからかやりたい放題なほのか。
しかし周りの雰囲気が良くなったのは確かであった。
そしてほのかは物真似をやめると、スヤスヤと寝ている球磨川に視線を向けた。
「…それに…ミソギくんは深雪ちゃんが馬鹿にされたのが我慢出来なかったんだと思う」
ほのかの言葉に雫が頷く。
「……確かに。球磨川は自分がなんて言われても気にしないけど…仲間が貶されるのは嫌いだから…」
嫌われ者ではあるものの、今のほのか達は球磨川が誰よりも仲間想いであることを理解している。
「…みんなから嫌われても守ろうとするのがミソギくんらしいけどね」
苦笑するほのか。
そんな彼女を見て雫が言う。
「だからほのかは球磨川を止めたんでしょ?やり方はともかく」
「……うん。あのままだとミソギくんが危ないと思ったから…」
あのままでは球磨川は他高校のみならず、第一校からも
ほのかは球磨川のやらかしを制裁することで他生徒の鬱憤を晴らし、ヘイトを分散したのだ。やりすぎではあるのだが。
「(それに…私は決めたんだ。どんな手段でも、どんな形でも…もうミソギくんを独りぼっちにしないって……)」
球磨川を見ながら決意を新たにするほのか。
そんな彼女を見て、雫は静かにため息を吐く。
「(本当に不器用なんだから…)」
それは仲間のために喧嘩を買った球磨川のことなのか、球磨川を守るために汚れ役を引き受けたほのかなのか…それともその両方なのか。雫は不器用な友達に呆れながらも、暖かい目線を向けた。
その時、ドアのノックが鳴る。
「…誰ですか?」
首を傾げる深雪。
扉が開くと、そこにいたのは意外な人物だった。
「こんにちわ〜。球磨川くんがここにいるって聞いて来ました〜」
来たのは大刀洗だった。
抱き枕を抱きながらの訪問である。
深雪達は困惑するものの、突っ込んでは厄介なことになりそうで問わなかった。
「あなたは…?」
深雪が尋ねると、大刀洗はのびのびと答える。
「私は〜この大会の役員の一人〜大刀洗斬子で〜す。一応〜今大会限りの球磨川くんの上司みたいなものかな〜」
「上司?」
「太刀洗って……。確か…あのコールドスリープ研究の第一人者の…?」
雫が首を傾げる傍ら、深雪はかつて読んだ研究雑誌に小さくではあるのだが、名前があったことを思い出す。
「うん。そうだよ〜〜」
太刀洗はのほほんと頷く。
そして会話を聞いていたほのかがおずおずと口を挟んだ。
「その…上司って…?」
「あれ?知らない〜?球磨川くんは一応、ボランティアなんだよ〜」
「(そういえばミソギくん…そんなこと言っていたような……。でも…なんだろう。何かモヤモヤする…)」
大刀洗の言葉にほのかは納得はしつつも、どこか胸のなかでスッキリしないものが残る。それがなんなのか彼女はまだわからない。
そしてほのかとは対照的に深雪は納得していないようだった。
「(…でも、あくまでも大会運営のボランティアであるはずの球磨川君が何でここに……)」
深雪の疑心を他所に大刀洗はのほほんと話し続ける。。
「書類の整理とかお手伝いしてもらってるんだけどね〜。球磨川くんには助かってるよ〜」
「(球磨川って…仕事とかするんだ…。意外…)」
雫は球磨川の新たな一面に驚く。
そして大刀洗はほのかへと視線を向けた。
「あっ!そういえば聞いたよ〜。さっきの球磨川くんのモノマネ〜。すっごく上手だった〜」
「き…聞いてたんですか!!?」
大刀洗の言葉にほのかは顔を赤くする。
一体、大刀洗はいつからいたのだろうか。
「…大刀洗さん、貴方は球磨川君とお知り合いなのですか?」
球磨川に対してフランクな態度の大刀洗に深雪は疑問に思う。
それに対して大刀洗はさっくりと答えた。
「うん知ってるよ〜。腐れ縁みたいなものかな〜〜」
「(腐れ縁…?)」
太刀洗は今ではコールドスリープ研究の第一人者である。
そんな彼女と球磨川の間にどんな接点があるのだろうか。
もっと詳しく聞こうとするも、大刀洗が時計に視線を向けた。
「そういえば、そろそろ開会式だよ〜。早く向かった方が良いんじゃないのかな〜?」
大刀洗の言葉に雫も時計を見た。
「…本当だ。急がないと」
「でも…ミソギくんが…」
球磨川を気にするほのか。
そんな彼女を見て、大刀洗が笑顔で言う。
「大丈夫だよ〜。球磨川くんは私が看ておくから〜」
「で…でも…私は…」
「別にここから連れ出さないから安心して〜。これでも医学とか生物学に詳しいし〜。信用してほしいかな〜」
「…わかりました……。お願いします」
まだ聞きたいことはある深雪と球磨川が心配なほのか。
二人は雫に連れられ、部屋から退出した。
球磨川と大刀洗くらいしか居なくなった控え室。
大刀洗が球磨川に向けて話しかけた。
「球磨川く〜ん。もう行ったよ〜」
大刀洗がそう言うと、今までぐっすり寝ていた球磨川がむくりと起き上がる。
一体、いつから起きていたのだろうか。
『…やれやれ』『ほのかちゃんにはこっぴどくやられたよ』
「あはは〜こうなることわかってた癖に〜」
『…なんのことかな?』『僕はいつも通り、嫌いなエリート達に挨拶しただけだぜ?』
「そういうことにしてあげるよ〜。聞いてて面白かったし〜」
大刀洗は続ける。
「まぁ君に進行のための書類分類を手伝ってもらった時はこんなことするとは思わなかったけどね〜」
『……』『嘘だよね?』
球磨川が目を細めながら呟くも大刀洗はスルーする。
「それにしても良い友達だね〜。君が守りたくなる気持ちがわかるよ〜」
大刀洗がそう言うと球磨川は立ち上がる。
『…別に守った覚えはないよ』『彼女達は僕なんかに守られるほど弱くなんてないからね』
『僕はただあの人達にムカついただけさ』
「……相変わらず素直じゃないね〜」
球磨川はそう言って控え室から出て行く。
それを見た大刀洗は微笑みながら小さく呟いた。
あけましておめでとう御座います。味噌漬けです。年が明けてから、結構時間が経ってしまいすみません。所用により予定より、大幅に遅れてしまいました。まだやらなくちゃいけないことが残っているので、更新頻度がどうなるかはわかりませんが楽しみにしていただけると嬉しいです。次は番外編を投稿する予定です。