魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜   作:味噌漬け

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第三十話 『幸せ者(プラス)』

 午後の11時頃、バイトの仕事を一通り終えた幹比古はホテルの近くにある公園にて、一人鍛錬に励んでいた。

 

「(ここなら誰もこないだろう…)」

 

 そして幹比古は目を閉じて精神を統一する。

 彼が行っているのは【精霊】と呼ばれる独自の情報体と感覚を同調させる訓練である。

 感覚を同調させることで精霊が見聞きしたものを知ることができるのだ。

 

「(……これは?)」

 

 精霊と同調する中、幹比古は精霊が騒がしいことに気がつく。

 

「(一体、何を見つけたんだ…?)」

 

 精霊を追うと幹比古が眉間にシワを寄せる。

 彼が感じ取ったのは自然的なものではない。

 

「これは…悪(・)意(・)!」

 

 幹比古が異変に気がつく中、同じように動く者がいた。

 

「(…!この気配は……)」

 

 達也である。

 彼は自身の能力を使って、軍の管理区域内に侵入者がいることを察知する。

 そして…それだけではない…

 

「(なぜ…お前がそこにいる……?)」

 

 達也が察知したのは侵入者達以外の二人の知り合い。

 その内の一人は間違いようがなく、そして見過ごせない人物であった。

 

「(球磨川……!!)」

 

 達也は侵入者により囲まれる球磨川達に向けて走り出した。

 

◇

 

『さて…これは困ったねー』

 

 そう言いながら、変わらずヘラヘラ笑う球磨川。

 その側には何故か、美月がいた。

 

「く…球磨川くん…。笑ってる場合じゃないですよ…」

 

 美月は恐怖のあまり、顔を青くしている。

 それもそのはずである。球磨川達は銃やナイフを携えた黒服の男達によって囲まれていたのだから。

 

「(ううう…気分転換に外出たらこんなことになるなんて…)」

 

 美月が外に出たのは本当に気まぐれである。

 たまたま球磨川と出会したと思ったら、直ぐ近くに潜伏していた侵入者達に何故か囲まれる羽目となったのだ。

 

『全く物騒極まりないぜ』『ここは法治国家の日本だよ?』

『そんな武器捨ててさ、みんなでカラオケにでも行こうよ』

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!?」

 

 この状況でも不敵に笑う球磨川。

 そんな彼に美月は勢いよくツッコムものの、少しばかり心強く感じていた。しかし、希望は容易く打ち砕かれる。

 

『……っ!?』

 

「…!球磨川君!!」

 

 林にピシュン!とサイレンサーによって抑えられた銃声が鳴る。

 球磨川は複数の弾丸を身に浴びた。

 球磨川と美月の会話など、侵入者からしたら知ったこっちゃない。邪魔者がいるのなら消すだけである。

 

『ガフッ…』

 

「球磨川君!球磨川君!!」

 

 血を噴き出しながら倒れ込む球磨川。

 美月はそんな彼に顔を蒼白とさせながら、必死で声をかけた。

 侵入者はそれに構わず、美月に照準を合わせようとする。すると…

 

『痛いなぁ…』『でも駄目だぜ』

 

「「!?」」

 

 球磨川は立ち上がる。

 胸や口から血を流し、フラフラになりながらもヘラヘラ笑った。

 

『ただ撃てば良いってもんじゃない』

『撃つならちゃんとーー』

 

 球磨川は三日月の如く口角を上げながら言う。

 その痛々しく、おぞましい姿に美月は震え上がった。

 

「く…球磨川君…」

 

「「………」」

 

 普通、五発もの弾丸を浴びて平気であるはずがない。

 しかし、球磨川はヘラヘラ笑いながら侵入者達を睨みつけ、懐から螺子を取り出した。

 侵入者達は目の前いる過負荷から発せられる悪寒に身を震わせる。

 まるで、身体中にブヨブヨした冷たい何かが纏わりついたような生理的忌避感…。

 

『ちゃんと…頭(ここ)を狙わなきゃ』

 

 球磨川は取り出した螺子を頭へと突き立てる。

 骨が砕ける音と共に脳漿が噴き出した。

 

「「……なっ!?」」

 

「うっ…」

 

 美月は目の前の光景に理解出来ず、両手で自分の口を押さえ込んでしまう。

 侵入者達も同様でマスク越しでもわかるほど混乱していた。

 

『おいおい美月ちゃん』『そんな目で見るなよ』

『僕は一応、君の味方だぜ?』

 

「……えっ!?」

 

 美月が瞬きした一瞬のうちに傷が消えてしまった。まるで最初から無かったかのように。

 

「(…これが…エリカちゃん達が言ってた大嘘憑き(オールフィクション)…)」

 

 美月はブランシュの騒動の後、エリカ達から球磨川のスキルについて聞いていた。

 しかし改めてみると、とんでもない反則具合である。

 

「「…!!??」」

 

「な…なんなんだコイツ…?」

 

 侵入者達も動揺のあまり、銃を向けることを忘れるほどだった。

 そんな混乱の中、球磨川は美月から襲撃者へと視線を向けた。

 

『…まぁ良いや』『とりあえず、君達がなんで僕達を狙うのか今は問わない』

『いわれなき暴力や殺意を込めた不意打ちには慣れてるからね』

『だから…』

 

 そして球磨川は螺子を侵入者達へと向ける。 

 

『君達を螺子伏せて、じっくりと話を聞くとしよう』

 

「…くっ!!」

 

 球磨川から放たれる過負荷…。殺気も相まって今までに体験したことのないプレッシャーに侵入者たちは気圧される。

 しかしそんな時、球磨川たちに向けた声が響いた。

 

「大丈夫か!!?」

 

『…?』『ミキちゃん?』

 

 そこに立っていたのは幹比古である。

 彼は古式魔法を使うための呪符を持ち、侵入者たちに向けていた。

 しかし…それは侵入者たちにも気が付かれている。

 

「…!?危ない!」

 

 美月が幹比古に向けて叫ぶ。

 侵入者達の銃は得体の知れない球磨川ではなく、幹比古へと向いていた。

 幹比古も魔法で対抗しようとするが、銃の速度には敵わない。

 このまま幹比古が撃たれて終わると誰もが思った瞬間…突然、侵入者達の銃がバラバラに分解された。

 

「……!?銃が!?」

 

「…間に合ったな」

 

 銃を対処したのは達也であった。

 侵入者たちが混乱していると、その隙を見逃さず幹比古の魔法が彼らに炸裂した。

 

「「ギャッ!!?」」

 

 幹比古の魔法を食らった侵入者達は倒れ込む。

 しかし幹比古が油断した瞬間、一人の侵入者がナイフを持って襲いかかった。

 

「死ねぇ!!」

 

「なっ!?」

 

 再び呪符を取り出す幹比古。

 しかし間に合いそうにない。刃が幹比古に届きそうになった瞬間…侵入者に向けて螺子が襲い掛かる。

 

「ぐはっ!?」

 

『…………』

 

 あっという間に磔にされる侵入者。

 幹比古は助けられたことに安堵するも…すぐに悔しそうに歯噛みした。

 そして…球磨川もまたつまらなそうにヘラヘラ笑っていた。『また勝てなかった』…と呟いて。

 

◇

 

「大丈夫だったか?」

 

 達也が美月たちに心配そうに言う。

 美月はそれに手を振って答えた。

 

「あっ。うん。大丈夫だよ。球磨川君が……助けてくれたし。その…ありがとう」

 

『ありがとうね』『達也ちゃん』

 

 美月は達也に向けて頭を下げる。

 球磨川もお礼を言った。

 

「いや、無事なら良いんだ。……俺はこのことを警備の人たちに伝えてくる」

 

 達也はそう言うと、端末を持ってこの場を離れた。

 警備はもちろん、風間少佐あたりの事情を知っていそうな人物に連絡するつもりなのだろう。

 そして美月は幹比古に視線を向ける。

 

「幹比古君もありがとう」

 

 美月がお礼を言うも、幹比古は複雑そうな顔をする。

 そして彼は首を振った。

 

「いや…僕は何も…何もやってない…」

 

 そして彼は走り去る達也の背中と球磨川の顔を見る。

 

「さっきだって…僕の魔法は間に合っていなかった…」

 

 幹比古は俯きながら続けた。

 

「助けようとしたはずなのに…僕は逆に助けられた…」

 

 そう彼はあくまでも球磨川と美月を助けるために、この場に現れた。

 しかし現実は撃たれかけたところを達也に助けられ、ナイフを刺し向けられれば助けようとしていた球磨川に助けられてしまった。

 これらの事実は元々、自虐的な彼にとっては自身の無力さを思い知るには十分だった。

 

「本(・)来(・)な(・)ら(・)…僕はここで殺されてーー」

 

『ふーん』『本(・)来(・)ねぇ…』

 

 球磨川がヘラヘラ笑う。

 その態度が気が触ったのか、幹比古が球磨川を睨みつけた。

 

「…何が言いたいことでもあるのか?」

 

 幹比古の敵意を込めた視線。

 球磨川はそれを受けつつつも、歪んだ笑みを浮かべる。

 

『いや別に』

『ただ君がありもしない妄想に縋ってるのが面白くてね』

 

「……!!」

 

 球磨川の言葉で眉間に皺を寄せる幹比古。

 その様子を見ていた美月はハラハラしながら球磨川を止めようとする。

 

「ちょっと…く、球磨川君ーー」

 

 しかし球磨川は構わず話し続ける。

 

『だってそうだろう』

『本来なら…なんてさ』『まるで今の自分が本来の自分じゃないみたいじゃないか』

『一体、君はどんな姿を想像してるのかなぁ?』

 

 球磨川の言葉に歯を噛み締める幹比古。 

 そして彼は俯き、震えながら口を開いた。

 

「君には…わからないよ」

 

『うん。そうだね』

『君みたいな幸(・)せ(・)者(・)なプラスが過去に何があろうとも』

『その結果、君がどうなろうとも』

『僕は興味ないし、知ったこっちゃないかな』

 

「…っ!?幸せ者だと…?」

 

 カチンと来たのか、幹比古は球磨川に詰め寄る。

 しかし、彼の怒りとは裏腹に球磨川は心底どうでもよさそうにヘラヘラ笑った。

 そんな球磨川にさらに腹が立ったのか、幹比古は声を荒げた。

 

「…君が…君が、僕の…何がわかる!!!」

 

 至極真っ当な幹比古の怒り。

 だが、球磨川はヘラヘラと不気味な笑みを浮かべながら幹比古を見る。

 ただ笑っているだけなのに異様に気味が悪い。

 

『知らないよ』『でも』

『過負荷(僕)からしたら、プラスの可能性(たられば)なんてものを考えてる時点で』

『十分に幸せ者(プラス)だぜ』

 

 過負荷(マイナス)にとって、「たられば」など存在しない。

 どんな理不尽も不幸も受け入れるだけである。愛するように……。

 

『結局のところ、君はこう言いたいんでしょ?』

『「自分が弱いのは、上手くいかないのは過去が原因だ。だから僕は悪くない」ってさ』

 

「そ…それは…」

 

 球磨川の言葉に幹比古は震えながら小さく呟く。

 

『君は過去の自分を言い訳にして自分の心を守ってるわけだ』

『そうじゃなきゃ今の自分に耐えられないから』

『まっ昔の君とやらも美化してるだけで、案外大したことがないのかもしれないけどね』

 

「ち、違う…」

 

 そうは言うものの幹比古の顔がどんどんと青くなっていった。

 どんどんと球磨川の言葉が胸に刺さっていく。

 球磨川は幹比古が感じていた不安や疑念を指摘していった。

 

『でも大丈夫!』『それくらい誰にでもあるさ!』

『そうやって今の自分を否定して、ちっぽけなプライドを守るだけの人生』

『そんな人生でも楽しいと思うよ』

 

「うるさい!!」

 

 怒りのあまり、普段の冷静さから一転、別人のように幹比古は叫ぶ。

 

「君に…何がわかる!!理不尽に才能を奪われて…一族の、家族の期待を裏切る苦しみが!!」

 

 頭を抱え、自らの心の闇を吐き出す幹比古。

 一体、彼にどんなことが起きたのだろうか。

 そしてそんな彼を見て、球磨川はつまらなそうに小声で呟く。

 

『……結局…プラスの悩みじゃないか…」

 

 そして球磨川はヘラヘラと笑みを向けると、名案を思い浮かんだと両手を叩く。

 

『じゃあさ、戻(なお)してあげようか』

 

「え?」

 

 突然の意味不明な提案に幹比古は呆ける。

 美月は心当たりがあるのか、球磨川に言った。

 

「まさか…球磨川君…」

 

『君の苦悩の原因を無かったことにしてあげよう』

『まぁ色々聞くことになるだろうけどね』

 

「な…何を言ってるんだ?」

 

 幹比古は球磨川の言っていることがわからず困惑を深める。

 球磨川は三日月の如く口角を歪め話し始めた。

 

『大嘘憑き(オールフィクション)』

『現実(全て)を虚構(無かったこと)にする』

『取り返しのつかない僕の過負荷(マイナス)さ』

 

「オール…フィクション…?」

 

『あーその顔は信じてないね』『ミキちゃん』

『なら証拠を見せてあげようか…』

 

「く…球磨川k…」

 

 球磨川はそう言って螺子を取り出す。

 美月は嫌な予感がし、球磨川を止めようとするも球磨川から放たれる過負荷…その不快感と忌避感によって動けない。

 それは幹比古も同様だった。

 

「(な…何か…される…?)」

 

 そう思ったのも束の間、球磨川は容赦なく、躊躇いなく幹比古の身体へと螺子を螺(・)子(・)込(・)ん(・)だ(・)。(・)

 

「ガフッ!?」

 

 あまりの速さに幹比古は何が起きたのか分からなかった。

 分かるのは自身の喉に螺子がいつの間にか刺さっていること、そしてあまりにも苦しい激痛だった。

 しかし、それも一瞬で終わる。

 

「…はっ!!?」

 

 幹比古は困惑のあまり、わけがわからなくなっている。

 自身を貫いた螺子も痛みもいつの間にか無くなっていたからだ。

 

『これでわかったでしょ?』『君の怪我とか無かったことにしたからね』

 

 幹比古の目の前には決めポーズをとる球磨川の姿。

 そして球磨川は幹比古に語る。

 

『さてどうする?』

『君が望むなら君の悩みも解決しようじゃないか』

『まっ!その結果、これから君がどうなろうと、現実に打ちのめされようとも僕の知ったこっちゃないけどね』

『だって、君が望んだことだから』『僕は悪くない』

 

「………」

 

 幹比古は突きつけられた選択肢に苦悩する。

 何が起きたのかはわからない。しかし、球磨川が治癒に関わる能力を持っているのではないか…と推測することはできる。それもかなり特別かつ強力な…。

 だからこそ幹比古は安易に答えを出すことができない。

 彼の頭の中には先程までの球磨川との会話が反芻していた。

 そして…数秒の静寂の後、球磨川は幹比古に向けて口を開く。

 

『はい』『時間切れ』

 

「っ!?」

 

 唐突なタイムアップ宣言に幹比古は驚く。

 球磨川はそんな彼に構わずヘラヘラ笑った。

 

『…ここで即答できないあたり、君の悩みはその程度なんだろうね』

 

 球磨川は続ける。

 

『君はただ言い訳が欲しいんだよ』『失敗した時の言い訳がさ』

『だから君はありもしない、たらればにみっともなく縋ってる』

『答えられないのも、それがなくなるからでしょ?』

 

「ち、違う……」

 

 幹比古は否定するも、その顔は蒼白だった。

 

『断言するよ』『例え、君の苦悩の原因を無かったことにしても』

『君は一切変わらない』

『今までと同じように』

『苦しんで』『みっともなく』『独りぼっちで生きていくんだ』

 

「や…やめろ…」

 

 球磨川は責めるように嬲(なぶ)るように幹比古を追い込んでいく。

 先程までの球磨川への怒りが…疑心や不安、不快感へと変わっていった。

 そして、球磨川の口調はヘドロのようなものから一転、明るくなる。

 

『でも良いーんだよ』『それで』

『君がどれだけ臆病でも』『みっともなくても』『ただプライドが高いだけの人間でも』

『それが君なんだから』

『ありのままの自分を受け入れよう!』

『薄っぺらい努力で誤魔化さずに』

『過去なんて気にしないで、前を向いて生きようぜ!』

 

 ここまで歪んだ前向きな言葉はあるのだろうか。

 明るくても、その歪んだ光は…放たれる過負荷が幹比古をどんどん苦しめていく。

 

「や…め…ひっ……」

 

 幹比古の腰は砕け、殻に閉じこもるかのように頭を両手で押さえる。

 過呼吸のあまり、まともに声すら出すことができない。

 目を見開き、今まで自分が避け続けていた現実を突きつけられたことで心が病みかけていた。

 目が虚になりかけ、自分という存在が壊されそうになった時…パチンッ!と叩く音が林の中で響いた。

 

『……!』

 

「く、球磨川君…言い過ぎです…」

 

 球磨川の頬が赤く腫れる。

 彼の頬を叩いたのは顔を青くし、体が若干震えながらも、球磨川を真っ直ぐに見る美月だった。

 

「…守ってくれたのは感謝します。で…でも!それとこれとは別です!」

 

 美月は続ける。

 

「幹比古君の努力を知らない貴方が…。助けようとしてくれた幹比古君をそんな風に言わないでください!!」

 

 彼女は以前、たまたま見ていたのだ。

 幹比古が一人で放課後に必死に鍛錬している姿を。

 自身の無力さを感じながら、それでもなお努力を続けている事実を。

 

『…やれやれ』『そんな目で見ないでおくれよ』

『僕みたいな臆病者からしたら、怖くて仕方ないじゃないか』

  

 球磨川はそう言いながらもヘラヘラ笑う。

 美月は正しく、優しい。

 しかし…その優しさは思わぬ人間にダメージを与えることになる。

 

「……っ!」

 

「あっ!?幹比古君!」

 

 幹比古はその場から走り去って行った。

 顔を赤くし、涙も少し流しながら…。

 球磨川によって傷つけられた彼のプライドにとって美月の優しさは傷口に塩を塗っているようなものである。

 

『あーあ』『泣かせちゃった』

 

 そんな彼を見て、ヘラヘラ笑う球磨川。

 流石に怒った美月は球磨川に詰め寄った。

 

「球磨川君が責めるからじゃないですか!!」

 

 美月の言葉に球磨川は「心外だ!」と言わんばかりに両手を振る。

 

『おいおい』『僕は責めてなんかないよ』

『それどころか幸せ者だって言ってるだろう?』

『それを勝手に解釈して傷ついたのはミキちゃんだ』

『だから僕は悪くない』

 

「球磨川君…貴方…!!」

 

 再び球磨川の頬を叩きそうになるも、寸前で理性がその衝動を抑える。

 この男には生半可な暴力など通じない。

 そして、球磨川はこうして睨むことしか出来ない美月をつまらなそうに一瞥すると、くるりと背後を見せる。

 

『それじゃ僕はそろそろ行くね』『明日も朝からお仕事あるし』

『あっそうだ』『最後に一つだけ』

『君はミキちゃんを幸せ者って言った僕を否定し(叩い)たけど』『それじゃあ君は彼をどう思ってるんだい?』『まさか不幸者とか思ってるのかな?』

『僕と君、一体どっちが彼を貶してるんだろうね?』

 

 それだけ言うと球磨川は去って行った。

 この後すぐに警備員がやってくる。

 しかし美月は警備員が話しかけるまで、一歩も動くことが無かった。




こんばんは味噌漬けです。
 今回は読者の皆様に言わなければならないことがあります。サブタイトルなのですが、とうとうネタ切れしてしまいました。ですので、今までのような【単語+単語】のような形ではなく、もう少しちゃんとした感じのサブタイトルに変更するつもりです。しかし、それをすると読み返した方はどの話なのか迷うのではないか…とデメリットがあるのも確かですし…。ですので、予習も兼ねてアンケートをとるつもりでいます。もし良ければお答えしてくださると嬉しいです。
 いつも読んで頂きありがとうございました。
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