魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜   作:味噌漬け

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第五話 未来人達との邂逅

「その…元気だして」

 

『…………』

 

 落ち込みながら歩く球磨川に話しかけるほのか。

 球磨川のあまりの落ち込みように、同情した二人はお礼ということでカフェでご馳走することにした。

 球磨川はジャンプが無い事実が相当ショックだったようで、『あぁ…。うん。』『もう、それで良いよ。』と半ば投げやりな状態で承諾する。

 

「いらっしゃいませ」

 

 彼らがカフェに入ると、店員が出迎える。

 テーブルについた彼らは注文しようと、店員を呼んだ。

 

「ご注文は何になさりますか?」

 

 店員がそう言うと、ほのかは球磨川に励ますように言う。

 

「ほら。何でも好きなの頼んで。私がご馳走するから」

 

 球磨川は『あーうん。』とだけ言うと注文をする。

 

『この、スペシャルハイパーゴージャスなんじゃこりゃリッチプレシャスプレミアム感漂うウルトラメガビックエンシェントクリスタルパフュームグルメヤミーマジヤベーモノスゲェイケーキのセット一つ』

 

「え!?何それ!?そんなのあるの!?」

 

 球磨川が注文した小学生が考えた最強のケーキみたいなメニューに、ほのかは思わずツッコンでしまう。

 

「はい。わかりました。スペシャルハイパーゴージャスなんじゃこりゃリッチプレシャスプレミアム感漂うウルトラメガビックエンシェントクリスタルパフュームグルメヤミーマジヤベーモノスゲェイケーキのセットをお一つですね」

 

「あるんだ!!?」

 

「ほのか…落ち着いて」

 

 ほのかのツッコミに雫が嗜める。

 ほのかは大声を上げたことに恥ずかしくなると、逃げるようにメニュー表を確認する。

 すると、たしかに存在した。

 しかも、そのお値段は名前に恥じない金額だった。

 ほのかは「お金足りるかな…」と心配になる。

 本来、このようなお礼の場合、受け取る方も自重するのだが、球磨川はそんなことはしない。

 遠慮もしないし容赦もしない。それが球磨川禊である。

 それに、彼は先程ジャンプが無いという極大なショックを受けた。

 その鬱憤は計り知れず、彼はこのカフェの全てのメニューの中で一番高いケーキを頼むことで鬱憤を晴らそうとした。

 つまり、ただの八つ当たりである。

 

「すぐにお持ち致します」

 

 全員分の注文を終えると店員は去っていく。

 ほのかはコソコソと持ち金を確認していた。

 何でも頼んでと言った手前、それは無理とは言いにくい。しかし、お金とは有限である。だからこそ、ほのかは困ったのだが…。

 そんなことは球磨川にはモロバレであり、その困った顔を見るだけで球磨川の心は少し晴れやかになっていた。

 なんとか料金が足りることに安心したほのかは改めて頭を下げる。

 

「あの…。先程は本当にありがとうございました!」

 

「…ありがとう」

 

 雫も友人を助けてくれたことに対し感謝する。

 気分を直した球磨川はいつものようにヘラヘラ笑いながら応える。

 

『いいよ』『僕は紳士だからね』

『困っている愚か者(女の子)を見たら、助けたくなるのさ』

 

「球磨川さん…」

 

 球磨川の言葉にほのかは感動する。

 先程の嫌がらせのような球磨川の注文をもう忘れたのだろうか?

 自らを紳士と呼称する男の大半は紳士ではない。

 感動している彼女に対し、球磨川に警戒心を持っている雫はため息をつく。

 

「…ほのかは人が良すぎる」

 

「え!?」

 

 意外な方向からの口撃にほのかは驚く。

 雫は無表情ながら容赦なく指摘する。

 

「だから、危険な目に遭った」

 

 もっともな指摘にほのかは落ち込む。

 

「それは…そうだけど…」

 

 そんな哀れな少女を紳士球磨川はフォローを入れようとした。

 

『そう言ってやるなよ雫ちゃん』『ほのかちゃんの』

『その小学生より幼稚で』『馬鹿みてーな警戒心の無さは』

『彼女の誇るべき、欠点(個性)さ』

 

「球磨川さん…それフォローになってないよ』

 

 言外に小学生以下と呼ばれたほのかはさらに落ち込んだ。

 そんなことをしている内に注文したものが届く。

 球磨川達はその後も会話が弾んでいった。

 

 

「へー。球磨川さんって同い年なんだ」

 

「歳下かと思ってた」

 

 しばらく話していた彼らの話題は自然と自分達についてのものとなっていた。

 

『うん。そうだよ。』『あと、同い年なわけだし、さん付けはやめて欲しいかな』

 

「えっ…。でも、助けてくれたわけだし…。それになんて呼べば…」

 

『だから、ミソギちゃんでいいよ』

 

「そ…それはちょっと…」

 

 ほのかは少し頬を赤くする。

 流石に男子の下の名前呼び+ちゃん付けはピュアなほのかには恥ずかしいようだ。

 

『あーあ。せっかく友達になれたと思ったのに』

『友達のこの程度の頼みも聞いてくれないんだ。ほのかちゃんは』

 

「え…え…その…」

 

 球磨川は顔に手を当て、わざとらしく残念がる。

 それを見たほのかは慌てるも、雫が球磨川を嗜めた。

 

「球磨川、揶揄い過ぎ」

 

 雫がそう言うと球磨川は顔から手を離しヘラヘラ笑う。

 

『ごめんね』『ほのかちゃんの反応が面白いからさ』

 

「酷いよ。球磨川さん…」

 

 ほのかが文句を言うと球磨川は相変わらずヘラヘラ笑いながら話す。

 

『でも、さん付けをやめてほしいのは本当。』

 

 球磨川の言葉にほのかが顔を赤くしながら話す。

 

「えっ…じゃ、じゃあ…球磨川くんで…」

 

『うーん。まぁ良いか』『それで』

 

 球磨川が納得するとほのかは安堵の息をつく。

 そして、ほのかは今までの恥ずかしさを打ち消すように話題を変えた。

 

「そう言えば、球磨川くんは何処の高校に行くつもりなの?」

 

『僕?』『…何処だっけ?』

 

「え?」

 

 まさかの球磨川、自分が行く高校の名前を忘れてしまう。

 ほのかはその反応に戸惑った。

 

『確か…。』『魔法科なんちゃら附属一高?…だったような…』

 

 自分が通う予定の高校の名前も忘れた球磨川であるが、彼の言葉はほのか達に心当たりがあったようで、ほのかは興奮して話す。

 

「それって!国立魔法大学附属第一高校のこと?」

 

 ほのかの言葉に球磨川は頷く。

 

『そうそう。それそれ』

 

 球磨川の返答にほのかは嬉しそうに口を開いた。

 

「やっばり!私達もそこに行くつもりなんだ!」

 

『へぇ…。そうなんだ』

 

 ほのかの言葉に球磨川は少しだけ目を鋭くする。

 ほのかは球磨川の中では愚か者としてカテゴライズされている。

 だからこそ、ここまで好意的に接してきたのだが、彼女達がエリートであるのなら少しだけ話が変わってしまうのだ。

 まぁ昔ならともかく、今の球磨川は相当温くなっている。そのため、いきなり螺子を螺子込むことは、あまりしないのだが…。

 ほのかはそんな球磨川の心境の変化を知らずに言う。

 

「ということは…あの螺子ってやっぱり魔法なのかな…?」

 

「螺子?」

 

 ほのかの言葉に雫が反応する。

 

「うん…。信じてもらえないかもしれないけど…」

 

 ほのかは球磨川の戦いについて詳しく話した。

 彼女自身も夢のように感じていたため、先程までは雫にも詳しく話していなかったのだが、球磨川が魔法師の可能性があるのなら話は変わる。

 雫は話を聞いた後、無表情ながらも考え込む。

 

「…にわかには信じられない」

 

「たしかにそうだけど…。でも、傷とか色々無くなってたの」

 

 流石に全てが無かったことになっていた…そんな馬鹿な話を容易く信じることは難しい。

 

「…でも、ほのかが言うなら本当だと思う」

 

 しかし、雫はそんな馬鹿な話も信じる。

 それほど彼女達の友情(プラス)は固いということか。

 球磨川は彼女達の話を聞いて答える。

 

『あんなのは、ただの面白手品さ。』

『そんな魔法(プラス)じゃない。』

 

「いや…でも…!」

 

 ほのかは球磨川のふざけた答えに納得がいかないようで踏み込もうとする。

 そんな彼女を雫が止めた。

 

「ほのか、そこまで」

 

「雫…。」

 

 雫はほのかを見て、首を振りながら話す。

 

「球磨川にも話したくないことはある」

 

「それは…そうだけど…」

 

「それに、他人の魔法について、あれこれ聞くのはマナー違反」

 

「うっ…。それもそうよね」

 

 痛いところを突かれたようで、ほのかはこれ以上聞くのをやめる。

 ほのかは助かったというべきだろう。雫が止めなければ、彼女は下手すれば過負荷の深淵へと嵌ることになっただろうから…。

 雫は本能というべきか何なのか、球磨川の危険性に勘づいていたのかもしれない。

 

「ごめんなさい。球磨川くん」

 

 ほのかは球磨川に頭を下げる。

 球磨川はそんなほのかにヘラヘラ笑いながら返事をした。

 

『いや、別に良いよ』

 

 球磨川の過負荷(マイナス)を喰らってもなお、球磨川の過負荷(スキル)について知ろうとするほのか…。

 彼について知る者ならば、その行為は愚かとしか言いようが無い。

 そのため、球磨川は再びほのかのことを愛すべき愚者と評価を戻していた。

 

「ありがとう。球磨川くん」

 

 ほのかは礼を言うと、この空気を払拭する様に言う。

 

「後、もう少しで試験だし互いに合格目指して頑張ろうね!」

 

『うん。』『………え?』

 

 ほのかの言葉に球磨川は一度は頷くも、最後の方に反応する。

 

「…?どうしたの?球磨川くん」

 

 ほのかがそう言うと、球磨川はぎこちない動きになりながらも口を開いた。

 

『その…今日って何月何日?』

 

 彼の不自然な質問に彼女達は困惑しながら答える。

 

「今日って…」

 

「一月十六日」

 

 雫の言葉に球磨川はフォークを落としてしまう。

 すると、突然ポケットから何やら紙を取り出した。

 

「……え?球磨川くん?」

 

「…?」

 

 流石に困惑してしまうほのかと雫。

 しかし、球磨川はそんな彼女達に構わず、もう一度、安心院が渡した資料を読み始めた。

 そう…球磨川は少し読んだだけで、グシャグシャにしてしまったが、資料にはまだ続きがある。

 

『………マジか』

 

 高校受験をした方なら知っているだろうが、高校受験は早くて一月の上旬、公立ともなれば二月の中旬あたりである。

 それは国立である国立魔法大学附属第一高校も例外ではない。

 つまり、試験まであと一か月ほどしかないのだ。

 これがそこまで偏差値の高くない高校なら、まだなんとかなるかもしれないが、球磨川が受験するのは名門中の名門である。

 しかも、球磨川はこの時代に来たばかりであり、CADもこの時代の常識も知らない。しかも、元から頭が悪く、大学受験全滅した球磨川が一ヶ月で試験範囲も常識も全て覚えるなんて無理ゲーである。…これが、黒神めだかや雲仙冥利あたりなら何とかなったかもしれないが。

 球磨川が最後までよく読むと、端のほうに小さく受験日と「受けてね♡」と丁寧に書かれていた。

 まるで球磨川が読み飛ばすのを読んだかのように…。

 

『………また勝てなかった』

 

 球磨川が天井を見上げて呟く。

 彼の脳裏には横ピースしながらドヤ顔をかます安心院が思い浮かんでいた。




こんにちは味噌漬けです。正直、温い球磨川先輩ばかり書いているので、そろそろ暴走させたくなってきてますね笑 あと数話で暴走できれば良いんですが…。次からはやっと入学式に入る予定です。よろしくお願いします。
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