ドラゴンボール()   作:yosui

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あってよかった新ナメック星


ドラゴンボール

 ブルマとトランクスとの談笑を続けている悟天。さてどうやってタイムマシンの事を切り出そうかと考えていると、ブルマの方から先に話が出て来た。

 

「ふふふ、でもそっかぁ、人造人間が倒されちゃったならもうタイムマシンは要らないのかな」

「ブルマさんその事なんですが、タイムマシンの製造はそのまま続けてもらえないでしょうか? もし過去を変えることが出来て、そもそも人造人間が暴れていない状態に戻せるのならその方が良いでしょうから」

 

 過去のブルマなら作りかけのタイムマシンの製造を止めることは無いだろうが、この時代のブルマは年を取ってそれなりに落ち着きを持っている。身近な人の死と人造人間の恐怖にさらされていたことが影響したのだろう。

 

 悟天はそんなブルマを見て、人造人間が居なくなった今ブルマはタイムマシンの製造よりも世界の復興に力を注ぐようになりそうな気がしていた。もちろん復興は大事だ。だがここでタイムマシンの製造が遅れるかもしくは中止になれば、救われるはずの過去がこの世界と同じ道を歩んでしまう。

 

「破壊された地球の町や村については僕に考えがあるので任せてください」

「うーん、何か考えがあるようだけど、地球は広いのよ? 具体的なプランがあるなら聞かせてちょうだい」

「プランってほどの物じゃないんですが、ドラゴンボールを使おうと思ってます」

「ドラゴンボールって、ピッコロはもういないのよ? 地球のドラゴンボールはとっくの昔にただの石ころになってるわ」

「はい、なので地球のドラゴンボールではなくて、新ナメック星のドラゴンボールを使わせてもらおうかと」

 

 悟天が新ナメック星という単語を口にした瞬間、ブルマの目が大きく見開かれた。実は彼女もこの数十年の間新ナメック星の位置を探っていた。しかし、タイムマシンの製造や人造人間の破壊行為の影響で宇宙まで意識を回す余力が無く、結局見つけられていなかったのだ。

 

「し、新ナメック星って、悟天君もしかしてナメック星の場所が分かるの?」

「はい、ズノー様に教えていただいたので新ナメック星の座標は分かりますよ。僕が乗ってた宇宙船に座標登録してあります。あ、けど新ナメック星に行くのには別に宇宙船は使いませんよ?」

「宇宙船は使わないって、じゃあどうやって行くつもりなのよ?」

「実は僕、お父さんと同じようにヤードラット星で修業して瞬間移動が出来るようになったんです。なのでナメック星人たちの気を感じることが出来ればすぐにでも行けます」

 

 それを聞いたブルマは大きく見開いた目を輝かせて満面の笑みを浮かべた。ドラゴンボールがあれば死んでしまった者たちを生き返らせることが出来る。夢にまで見た光景がまた見られるかもしれないのだ。絶望の中でも希望を持って生きていたブルマの目はこれまでも誰より輝いていたが、さらなる希望が見えてくれば輝きを増すのは当然の事だった。

 

 ちなみに、神龍にタイムマシンを作ってもらうというのは論外だ。ここですぐにタイムマシンが出来上がってしまうと、トランクスが過去に行く時期が早くなってしまう。というより今の時点なら悟飯に過去に行ってもらった方がいいのではという事になりかねない。悟天としては万が一のことを考えてなるべく過去にはトランクスに行ってほしいと思っていた。

 

 その後タイムマシンの製造の件をブルマに了承してもらい、瞬間移動でパオズ山の皆をカプセルコーポレーションに連れて来た悟天は、ブルマとトランクスに説明した内容と同じことを悟飯たちにも伝えた。その際、ナメック星のドラゴンボールで叶えられる3つの願いで何を願うのかという話になり、多少揉めた末に1つ目の願いで地球を人造人間に破壊される前の状態まで戻し、2つ目の願いで悟飯の腕を元に戻し、3つ目の願いは無理を言って悟天が使わせてもらうことになった。もし悟天の願いが叶わない物ならばピッコロを生き返らせるという条件付きでだが。

 

「それじゃあ行ってくるけど、誰か一緒に来る?」

「私はタイムマシンの製造があるし今回は止めておくわ」

「俺も気にはなるんですが、今回は母さんの手伝いをしようと思います」

「悟飯はどうする?」

「俺もまだ本調子じゃないし、いい機会だから休んでおくよ」

「オラとおっとうは悟飯ちゃんについてるべ。悟天ちゃんなら大丈夫だと思うけんど、気を付けるだよ」

「分かった、気を付けるよ。それじゃ行ってきます!」

 

 悟天は地球からナメック星人の気を探る。だが、どうにも弱々しくてハッキリしない。どうやら地球から新ナメック星までは相当な距離があるようだ。この状態で移動することは可能だが、万が一近くの宇宙空間にでも飛んでしまったら死んでしまうので、まずはここからでもハッキリわかる人物の気を感知して飛ぶことにした。その人物とは悟天が以前新ナメック星の座標を聞いたズノー様だ。

 

「うわっ、な、何者だ!」

「あ、ごめんなさい急に現れちゃって」

「お前の顔には見覚えがあるぞ。確か以前ナメック星の場所をズノー様に質問した子供だな? また質問しに来たのか?」

「覚えててくださったんですね。あ、今回は別に質問をしに来たというわけではなくてですね、ちょっと中継地点に使わせてもらったと言いますか、とにかくすぐに去りますので」

 

 以前この惑星ズノーから新ナメック星に旅立った時、壊れかけの宇宙船のマップ機能に座標を入力した際にマップ上に星の位置が表示されていたのを悟天は覚えていた。半分壊れていたマップの表示範囲でちゃんと星の位置が分かったという事は、この惑星ズノーから新ナメック星までの距離はそこまで遠くないという事になる。それぐらいの距離ならば今の悟天には感知するのは簡単だ。

 

「よし、捕らえた。それじゃ僕はもう行きますね。次来る時はお土産持ってきます!」

 

 そう言って悟天は新ナメック星へと飛んだ。本当にものの数分だけしか居ないですぐ何処かに消えてしまった悟天に、ズノーの側近は随分と忙しないやつだなと思いながらも、ブラックホールに飲み込まれていなくて良かったと安堵の笑みを浮かべたのだった。

 

 

 新ナメック星、ここはかつてフリーザとの戦いで故郷の星を破壊されてしまったナメック星人達が新たに移り住んだ星だ。以前のナメック星より水も緑も少ないが、それゆえに悪しき者達からも狙われにくく、水さえあれば生きていけるナメック星人達にとってはとても住み良い環境の星である。

 

 今日も今日とて植樹を行っていた一人のナメック星人の青年。彼はこれから自分がどうなっていくのか知るはずもなく、今日も作業に勤しんでいた。

 

「ふう、これを植えたら少し休憩にするかな」

「へー、いったい何を植えてるんだ?」

「何って、以前のナメック星に生えていた植物ですよ。随分緑が多くなってきましたけど、まだまだ以前のナメック星に比べれば地面の茶色が多いですからね」

 

 と、そこでナメック星人の青年は自分が今一人で作業していたことを思い出した。では今話しかけてきたのは一体誰なのか。慌てて振り向くとそこに居たのは随分と懐かしい人だった。

 

「も、もしかして、悟天さんですか!?」

「おー! よくわかったねデンデ。皆んな僕を見たら悟空って言うのに」

「一瞬僕も悟空さんかと思いましたけど、雰囲気が違いましたからすぐに分かりましたよ。それより急に話しかけられてびっくりしました」

「はは、ごめんごめん」

「それにしてもお久しぶりです、悟天さん! また会えるなんて、嬉しいです!」

「僕もデンデにまた会えて嬉しいよ! 他のみんなにも挨拶したいんだけど、今大丈夫かな?」

「もちろんです! 悟天さんたちならいつでも大歓迎ですよ!」

 

 デンデに案内してもらって今の最長老様の居る村へと向かう悟天。道中重要な事は伏せて、たわいも無い冒険話と昔話に花を咲かせた。2度同じ説明をするのを避けたかったからだ。

 そうこうしているうちに村へとたどり着いた悟天とデンデ。2人が最長老様の元へと向かうと、最長老様はすぐに近くのナメック星人達を集めてくれた。

 

「それで悟天さん。久しぶりにお会い出来て嬉しいのですが、今回はどの様な用事があって来られたのですかな?」

「はい、実は……」

 

 悟天はこれまでに地球で起こった出来事を最長老様とナメック星人たちに伝えた。ナメック星人たちは、あの時自分達を助けてくれた者達のほとんどが殺されてしまった事に驚き、そして悲しんだ。

 

「そんな、僕たちが知らない間に地球がそんな事になっていただなんて……」

「ふむ、今の話から察するに、この星に来られた目的はドラゴンボールですな?」

「はい、その通りです。何度も頼ってしまってすみません」

「いえいえ、良いのです。我々もあなた方には随分と助けてもらいました。今度は我々が皆さんをお助けする番です。ドラゴンボールは既に揃えてあります。遠慮なく使ってください」

 

 最長老様は有事の時のために集めてあったドラゴンボールを持ってくると、村の広場ですぐに神龍を呼び出してくれた。叶えられる願いは3つ、そのうちの2つである地球を破壊前の状態に戻してもらうのと、悟飯の腕を戻してもらうのを終えて、残りは悟天が無理を言って譲ってもらった一回分の願いのみとなった。

 

「悟天さん、最後の願いをどうぞ」

「うん。最後の願いは、人造人間セルをこの場所に呼び出して下さい。で、頼むよ」

「ええ!? じ、人造人間ってまだ居たんですか!?」

「ああ、こいつが厄介な奴で気をゼロにして隠れてるからどこに居るのかさっぱりわからなかったんだ。大丈夫、皆んなに危害は加えさせないから。はあぁぁああっ!」

 

 悟天はいつでもセルを倒せるように、スーパーサイヤ人2になって身構える。

 

「す、すごい気だ。分かりました、それじゃあ願いを言います!」

「頼む」

 

 デンデがナメック語で神龍に願いを伝える。これが上手くいけば人造人間の問題は片付くのだが。

 

「駄目だ、連れてこようとしたが断られてしまった」

「やっぱりか」

 

 神龍の力を上回っている者を連れてくる場合、同意を取らなければ連れてくる事はできない。これは悟空の時に分かっていた事ではあったが、ダメ元でやってみたのだ。しかしこれでセルにこちらが感づいている事は伝わった。迂闊に行動を起こせば直ぐに見つかると分かった以上、虐殺などを起こしにくくなったとも言える。

 

「ど、どうしましょうか悟天さん。他に何か願いはありますか?」

「ああ、ごめん。それじゃあピッコロさんを生き返らせる事は出来るかな?」

「はい、多分大丈夫だと思います」

「それじゃあ頼むよ」

「はい」

 

 ナメック星のドラゴンボールはフリーザとの戦い以降改良されたようで、随分とパワーアップしていた。以前までは一つの願いにつき1人までしか生き返らせることが出来なかったが、今は時間をかければ複数の人間を生き返らせることができるようになっている。ただし複数人を生き返らせる場合は一年以内に死んだ者のみと言う制約がついてしまうので、人造人間に殺された地球人全てを生き返らせる事は出来ない。この制約、裏を返せば1人のみ生き返らせる場合は一年以内に死んだ者という制約を外せるということでもあった。

 

「悟天さん、ピッコロさんは生き返ったそうです」

「そうか! 良かった! これで地球のドラゴンボールもまた使えるようになる。最長老様、ドラゴンボールを使わせていただいてありがとうございました! デンデや他のみんなもありがとう!」

「いえいえ、また何かありましたらいつでも来てください。歓迎しますぞ」

「はい! また来させてもらいます! あ、それと少しの間デンデを連れていってもいいでしょうか? 悟飯にもデンデと会わせてやりたくて」

「構いませんよ。デンデも良いですか?」

「は、はい! 悟飯さんに会えるなら僕も行きたいです!」

 

 こうして、地球復興の第一歩が踏み出された。まだまだ以前のような平和を取り戻すにはほど遠いが、生き残った者たちの目には希望の光がともった事だろう。

 




書いていくと、段々と文字数が増えていくのなんなの?
やれやれだわ

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