フルカラー大激突!最初からクライマックスなヒーロー見参! 作:星野エグゼ
一階にペットショップが設けられた雑居ビル。その脇から入りて、こつ、こつと靴を鳴らしながら階段を上る真面目そうな少女がいた。
少女の名は風野灯織。283プロダクションに所属し、櫻木真乃、八宮めぐると共にユニット『illumination STARS』を組んでいるアイドルだ。
灯織は事務所の玄関を開け、床のマットで靴底の泥を丁寧に落とす。そして廊下を歩いていると、居間へ繋がる扉の向こうから賑やかな声が聞こえてきた。
(みんな、もう来てるんだ・・・・・・!)
事務所で仲間たちが談笑している光景が目に浮かび、灯織の頬が自然と緩む。
そしてドアノブに手をかけ、回し――
「『へぇ・・・・・・やっぱりアイドルなだけあってどの娘も粒ぞろいだね。先輩もそう思わない?』」
「『何聞いてやがんだエロ亀! んなもん興味あっかよ!!』」
「『わーい! 広ーい!』」
「『こら小僧! 勝手に走り回るんじゃねぇ!!』」
「『んごおぉぉぉぉぉ』」
「『熊! 冬眠ならそっちでやってろ! 邪魔なんだよ!!』」
「『苦しゅうないぞ。茶を持てい』」
「『俺は苦しんでんだよ!!!』」
そっと閉めた。
荒れ模様の事務所を隠すように扉を背中全体で支えるようにもたれかかりながら、灯織は思考を巡らせる。
(あれは、放課後クライマックスガールズの皆さん。けど、様子がおかしかったような・・・・・・喧嘩もしていたし。まさか、ユニット内で仲違いが!? 止めたいけど・・・・・・また余計なことまで言ってしまったらどうしよう・・・・・・真乃、めぐる・・・・・・!)
普段と様子が違う彼女らを目にしてしまった事で、灯織の脳は軽い混乱状態に陥る。
風野灯織という少女は一見淡白そうだが決して薄情ではなく、むしろこの状況を解決したいと思っている。しかし少々コミュニケーションに難ありと自覚している灯織自身では、彼女らの仲を取りまとめる事などできないかも知れない。
力不足を嘆く灯織だったが、ユニットのメンバー来訪によって表情が晴れやかに変わる
「灯織、おはよう!」
「お、おはよう、めぐる・・・・・・」
八宮めぐる。後ろで二つに結った金髪が特徴の、元気いっぱいな女の子だ。
めぐるは勢いよく灯織へ抱きつき、天真爛漫な笑みを浮かべる。
「どうしたの? 中、入らないの?」
「その、私が今中に入るのはまずいんじゃないかって思って・・・・・・」
扉の鍵が開いているのに気が付いためぐるは事務所へ入ろうとしない灯織を不思議に思い、にこやかに尋ねると、返ってきたのはいまいち要領を得ない答え。
灯織の不安を見抜いためぐるは、彼女の不安を払拭したいと思いドアノブに手をかけた。
「そんな事ないよ! 試しにわたしが入ってみるから! すぅ・・・・・・おはよーっ!!」
「待って、めぐる・・・・・・!」
灯織が制止する間もなく、めぐるが勢いよく扉を開ける。
「あ! 灯織さんにめぐるさん! おはようございますっ!」
「うんっ! おはよう果穂!」
「お、おはよう・・・・・・」
そこに待っていたのは、先程とはまるっきり違った光景。あまりにも己が目を疑うだった為、灯織の脳機能が一瞬停止した。
「・・・・・・? 灯織さん、どうかしたんですか?」
「い、いや、何でもないよ」
(さっきのは幻覚? 私、疲れているのかも・・・・・・。プロデューサーさんに頼んで、今週のスケジュールはお休みにしてもらおう)
283プロダクション事務所の広間に、所属している全アイドル25名が集められた。
「お前達、今日はよく集まってくれたな」
ダンディズムを溢れさせながらそう語りだす中年男性が、このプロダクションの社長、天井努だ。その傍らには、アルバイトの事務員、七草はづきが佇んでいる。
「今日の要件だが、手短に行こう。来春に行われるミュージックフェスへの全ユニット出演が決まった」
社長からの発表に、果穂たちのみならず全員が沸き立つ。
「収録予定日は来年の4月12日。なんと! 生放送なんですよ~」
はづきから齎された追加の情報に、アイドル達の表情が引き締まった。
生放送は、本番一回きりの勝負。やり直しが許されないからだ。
「各自、ライブへ向けて研鑽を怠らないように。ミーティングは以上で終了だ。勿論、お前の働きにも期待しているからな」
「はい! 全身全霊をもって、アイドル達を輝かせてみせます!」
事務所に緊張が走る中、天井社長がプロデューサーの肩に手を当ててそういうと、はきはきとした答えが返ってくる。
社長の話が終わるとユニット毎に集まり、ライブに向けての話し合いが行われる。放課後クライマックスガールズも、事務所の物置部屋に場所を移して作戦会議だ。
「まずは、みなさんに見せたいものがあります!」
そう切り出した果穂は自宅から持ってきたバッグの中から、五枚の画用紙を取り出す。白色と黒色が裏表でのり付けされている、手作りの工作だ。白い面にクレヨンで“お家⇔じむしょ”と書かれた文字の周りに、星やマメ丸のイラストが描かれている。
「それは切符で、ございましょう?」
「確かに! 新幹線の切符ってああなってるよね~」
「そして・・・・・・なんと! このパスにも入れる事ができちゃうんです!」
果穂はライダーパスに、自作のチケットを入れてみせる。サイズをしっかり定規で測った為か、チケットは折れ曲がる事なく挿入された。
「すごいわ! よく出来てるじゃない!」
「みなさんの分も作りました!」
夏葉に褒められた果穂は、同じ工作をした画用紙を一枚づつ手渡す。一番最初に受け取った樹里が果穂に尋ねた。
「これ、何も書かれてないけど・・・・・・いいのか?」
「はい! あたしたちで、オリジナルの切符を作るんです!」
続いて果穂がバッグから取り出したのは、クレヨンや色鉛筆といった画材。果穂以外の四人が思い思いに筆を走らせる中、彼女の脳内ににモモタロスが語りかけてきた。
『よう果穂! 面白そうな事やってるじゃねぇか』
『モモタロスさんっ! はい! 今は、皆さんといっしょに切符を作ってるんです!』
『切符? デンライナーのチケットみたいなもんか?』
『チケット・・・・・・? デンライナーに入るためにも、チケットが必要なんですか?』
『本来ならそうだな。他にも時を超えたイマジンを追いかけたり、使い道はいろいろってやつだ』
『時を超えて、悪を追いかける・・・・・・! スゴい、スッゴくカッコいいです!!』
『それで、合ってんのか?』
『はい、そうですよ! 切符も、電車に乗るために必要なんです』
使う必要が無い為見た事が無いのかはたまた単に覚えていないだけなのか。電車の切符を知らないモモタロスが身近にある物に当てはめた解釈で問えば、果穂が問い返してくる。
モモタロスの言う、本来のデンライナーの仕様は、果穂にとっては初耳だ。脳内でデンライナーが走っている光景を思い浮かべ、その姿に胸を躍らせる。
テンションが落ち着いた頃合いを見計らって、モモタロスが問い直す。果穂からのの返事に納得すると、新たな話題を口にした。
『ところでよ、果穂ってアイドルなんだろ?』
『はいっ! モモタロスさんは、アイドルに興味はありますか?』
『沢山の人達の前で、歌ったりすんだろ? なんだか懐かしいぜ』
『モモタロスさんも、歌った事があるんですか?』
『おう。あいつらと一緒によ』
『えへへ! おんなじですね、あたしたち!』
そう昔を顧みるモモタロスの声は弾んでおり、最高の時間だった事が窺える。果穂も体験している感覚だ。
ステージの上でパフォーマンスを披露し、音楽に合わせて揺れる幾つもの光と一体になり盛り上がる感覚。果穂の脳内にしっかりと焼き付いており、時間が経っても昨日のように思い出せる。
果穂とモモタロスが交信を行う中、四人が切符の絵柄を描きながらライブについての相談を行う。
「プロデューサーさんが来るまで、伝えたい事をまとめておかなくちゃだね」
「ライブのセットリスト、それに今年にリリースされた曲も歌えるように仕上げておかないといけないわね。・・・・・・果穂は何かやりたいことは無いかしら?」
「あたしですか?」
モモタロスとの会話を行い上の空でいた果穂は夏葉にそう問われると、目を瞑り顎に手を当てて考え出す。暫し悩んだ後、果穂は自身の望みを口にした。
「イマジンのみなさんやオーナーさんにナオミさんにも、あたしたちのライブを見に来て欲しいです!」
出会ってから一月程度しか経過していないが、果穂の中でモモタロスを始めとするイマジンらやオーナーやナオミの存在の大きさは、家族やアイドル仲間、プロデューサーやクラスメイトに迫る程になっていた。彼らにもライブへ来て、盛り上がって欲しいというのが、果穂の願いだ。
「アイツらにはイマジン退治で世話になってるし、いいんじゃねーか?」
「そうだね! オーナーもナオミさんも来て欲しいよね!」
「見た目が問題かもしれないけど、この間のように着ぐるみを着せるという手もあるわ。早速プロデューサーに話しに行きましょう!」
招待する理由や手段のアイデアを盛り上がりながら出す中、足音が部屋へ近づいてくる。足音の主は息を切らしながら、物置部屋の扉を開けた。
「すまん! つい話し込んでしまった!」
「プロデューサーさま・・・・・・!」
「よかった! 丁度いい所に!」
「・・・・・・?」
確かに待たせたがここまで歓迎される覚えはあっただろうかと、プロデューサーは頭の上に疑問符を浮かべる。
「あの、プロデューサーさんに話したい事があります!」
「どうした、果穂」
やって来たばかりでいまいち状況が呑み込めないプロデューサーに、果穂が体を揺らしながら先程の願いを伝える。プロデューサーは腰に手を当てて、果穂の言葉に耳を傾けた。
「・・・・・・わかった。考えてみるよ」
「いいんですか!?」
「果穂の願いは、なるべく叶えてやりたいからな。とは言え社長の許可が無いといけないから、駄目になる可能性もある」
「それでもありがとうございます! えへへ・・・・・・嬉しいです!」
願いが聞き入れられた果穂は、無邪気に跳ねながら喜ぶ。
「果穂さん・・・・・・ふふ。凛世まで、跳ね上がってしまいそうです・・・・・・」
「そうね。完璧なライブに向けて邁進していきましょう!」
「セットリストも考えなきゃだよね。『ビーチブレイバー』、『五ツ座流星群』、『一閃は君が導く』・・・・・・どれもいい曲だから悩んじゃうよ~!」
「『太陽キッス』とかいいんじゃねーか? アレ歌う時、いっつも盛り上がるからな」
巻きに火が燃え移るように、果穂から熱意が全員に伝わってゆき、ユニットの士気が高まる。
これまでに何度もライブをこなし、その度にプロデューサーがどう動くかを間近で見てきた。そんな彼女らが一丸となれば、話が弾んで意見がどんどん湧いて出てくる。
「みんな頼もしいな。俺は社長の所に行くから、意見がまとまったらまた聞かせてくれ」
「わかりました! プロデューサーさんが戻って来るまで、ちゃんとノートに書いておきます!」
「行ってらっしゃいませ・・・・・・」
プロデューサーは、残りのユニットの様子を見るべく物置部屋を後にする。果穂からの頼みごとを伝えに社長室へ向かう。
物々しい雰囲気を放っているのが、283プロダクションの社長室だ。
「なっ・・・・・・何者だ!? 何処から入ってきた!?」
社長室の中から物々しげな声が聞こえてきたため、プロデューサーは急いで社長室の扉を開けた。
「社長!? どうかしました、か・・・・・・!」
地面から上半身が、空中から下半身が出現している異形が社長室の真ん中にいた。
。異形は長い頭と幾つもの吸盤を備えたタコのような姿を模っており、不気味な笑い声を発しながら天井へ詰め寄っている。
「お前の願いを言えぇ・・・・・・どんな願いでも叶えてやるぅ・・・・・・」
「す、すまんが勧誘なら余所を当たってくれ。今は忙しいんだ」
癖のある喋りをするタコの異形――オクトイマジンを前に、流石の社長もたじろいでいる。
「早く契約内容を言えぇ・・・・・・! 言わないならこっちで勝手に決めるぞぉ・・・・・・! あれかぁ? あれが良いのかぁ?」
「!」
イマジンの言葉に、天井の顔が強張る。このままのらりくらりと要求を躱す事も彼にとって不可能ではないが、その場合、叶える願いを化物相手に委ねる事になってしまうのだ。
誰にだって、秘密にしておきたい事はある。社長という立場の人間もまた、例外ではない。
「そうだな・・・・・・・・・・・・では、我が事務所のアイドルがどうすればもっと輝けるのか。その答えを探し出して欲しい」
「社長、それは・・・・・・!」
「契約成立だぁ」
やがて観念した天井は、イマジンと契約を結んだ。社長と契約を果たしたイマジンは、上半身と下半身が重なるように実体化。流れるように拳で天井を叩き落すと社長室の扉へ歩く。
「社長、あんなのと契約しちゃって本当に大丈夫なんですか!?」
「ある程度目的をはっきりさせた方が、御しやすい場合もある」
プロデューサーに起こされながらも、いつもと変わらぬ調子を保つよう努めてそう語る天井。彼らを尻目に部屋を出ようとしたオクトイマジンだったが、社長室の扉が開くと同時に蹴られて押し戻された。
「『俺、参上!』」
電王・ソードフォームが、デンガッシャーを担いで見得を切る。
「『げっ・・・・・・コイツかよぉ~!』」
『モモタロスさん、知り合いなんですか?』
「『前にちょっとな・・・・・・』」
電王の脳裏に記憶がよぎる。オクトイマジンの持つ特殊能力に翻弄され、愛機を失い、その挙句に逃げられた苦い記憶だ。
「今、小宮の声が聞こえたようだが」
「き、きっとどこかに隠れてるんですよ。最後に会ったのが果穂でしたし、ついてきたんだと思います」
この場に姿が見えない果穂の声が聞こえた事を訝しむ社長だったが、プロデューサーが取り繕う。
「『はぁ~・・・・・・』」
気怠そうにオクトイマジンへ近づいた電王は、すれ違いざまに横薙ぎ一閃。繋がる後ろ回し蹴りで飛ばされたオクトイマジンはパーテーションへぶつかり、パーテーション共々倒れる。オクトイマジンが起き上がりながら伸ばした触手を、電王は半ば反射的に切り裂いてしまった。
攻防が繰り広げられる中、電王によって斬り飛ばされた触手が、社長室の観葉植物やトロフィーに潜り込んだ。するとトロフィーが、ポルターガイストめいてひとりでに動き出す。オクトイマジンには、触手を無機物と同化させ操る能力があるのだ。
「一体何がどうなっている・・・・・・! 特に赤い仮面の者・・・・・・あれは何者だ!?」
「社長を襲ってきた奴と戦っているんですから、味方だと思います」
「・・・・・・今はお前の言葉を信じよう。しかし、社長室で暴れ回るのはいただけないな。物に当たったらどうする・・・・・・!」
「『え。・・・・・・うわっとぉ!』」
天井に釘を刺された電王は、デンガッシャーが高そうなトロフィーに当たる寸前で軌道を逸らす。大目玉を食らわずに済み安堵する電王に、オクトイマジンの拳が振り下ろされた。
うつ伏せにダウンする電王。その上から操られている観葉植物と資料ファイルが覆い被さる。無理やり抜け出そうとして植物の葉を引きちぎったり、資料を破いてしまうなどしたら確実に大目玉を食ってしまう。電王は中々動けずにいた。
「『あぁ、せまっ苦しい!!』」
雁字搦めの現状に、電王がついに吠える。
「だったら、俺が!」
プロデューサーは壁伝いに社長の机まで歩き、その後ろの窓のロックを解除し全開にする。
「電王、こっちに!」
「『中々気が利くじゃねーか。オラ、ついて来い!』」
「なんだよもおおおおお! 放せよおおおおおお!」
電王は時間をかけて備品の包囲網から抜け出しオクトイマジンの触手を掴むと、イマジンを窓の外へ放り投げた。それを追って電王も窓から飛び降りる。
『そういえば、なんだかあのイマジンの声、社長さんに似てるような・・・・・・』
「『気のせいだ気のせい! そう何人も同じ声の奴が居て堪るかよ!』」
果穂が抱いた疑問を一蹴するモモタロス。
声はともかく、路地で第二ラウンドの開幕を告げるゴングが鳴る。
デンガッシャーの先端をオクトイマジンへ向け、挑発を続ける電王。その姿勢は自然体を保ち、一見隙だらけなようだがその実隙が無い。イマジンも数々の修羅場を乗り切った電王を警戒しているのか、自分からは動こうとしていない。
睨み合いが続く中、しびれを切らした電王が動く。
大きく前方へ跳躍しながらデンガッシャーで切りかかる。二体の影が重なろうとする瞬間、オクトイマジンが触手を振るいカウンター。成功すれば電王へのダメージ、失敗しても切り離された触手で物を操れる。損は少なく大きいリターンを得られる、オクトイマジンにとっては最良の選択だ。触手に胴を打たれた電王はふらつきながらも着地し、イマジンへ振り向きながら切りつける。それと同時にオクトイマジンも、触手を振り下ろした。攻撃によりよろめき、両者の間に距離が生まれる。風を切るような勢いで振り上げられた触手をモロに食らった電王。そのまま浮き上がり、やがて重力に従って背中から地へ落ちた。
「『マズいぞ・・・・・・』」
『モモタロスさんっ! あたし、思いついた事があります!』
「『何だ何だ? 聞くだけ聞いてやっから、言ってみろ』」
果穂の言葉に興味を示した電王は寝転がってうつ伏せになると、仮面の横に手を当てて耳を澄ませる。
『! ひそひそひそひそ・・・・・・』
「『なるほどね。早速試してみるか!』」
その行動に合わせて果穂は声を潜め、モモタロスに作戦を伝えた。
作戦の内容を起き上がった電王が余裕満々に構え直す。視線はオクトイマジンから外さず、一挙一動にすぐ対応できるようにしている。
やられても尚不敵な態度を保つ電王は、オクトイマジンの目に不気味に映った。思わず半歩後ずさり、呼吸も上がってゆく。どうすればあれを組み伏せられるのか。様々な選択肢がオクトイマジンの脳裏を駆け巡る。
その末に出した解答は、己の武器を最大限まで発揮する事。無数の触手を蠢かせながら一斉に伸ばし、物量で潰しにかかる。先端が触れる寸前で電王は横を向くと、カニ歩きをしながらその蠢きに合わせて全身をくねらせ僅かな隙間を潜り抜けた。
『必殺奥義! クネクネにはクネクネ、ですっ!!』
「『あ~らよっと!』」
「なんじゃそりゃっ!? 気持ち悪っ!!」
「『隙ありィ!』」
奇抜な行動にドン引いている間に、電王が胴へ一太刀浴びせる。切り口から火花が飛び、ふらつくオクトイマジン。この好機に電王は貪欲に漬け込み、デンガッシャーで斬り捌いてゆく。
何度も、何度も、何度も、何度も。
〆と言わんばかりに前蹴りで蹴飛ばすと、余裕をたっぷり含んだ動きでライダーパスをバックルに翳す。
「『行くぜ、必殺!』」
《Full charge》
「『俺の必殺技・・・・・・何にしようかな?』」
『必殺技がいっぱいあるんですね・・・・・・スゴイです!』
「『え~と、今日はパート5ダッシュにするか!』」
ベルトからデンガッシャーにエネルギーが転送され、赤い刃が身を離れる。
「こんなとこでやられてたまるかっての! 契約の遂行が先だ!」
よろめきから踏み止まったオクトイマジンは、己が死期を悟るや赤いボールを取り出しその手から転がす。ボールが道の中央でその動きを止めると、四方八方から黒い煙幕が噴き出てくる。刃がオクトイマジンに届こうとする刹那で周囲を闇に包み、視界を遮った上で逃走。結果、刃は空を斬るだけに留まり、デンガッシャーの先端に戻る。
『逃げちゃいました!』
「『待ちやがれ!』」
電王がデンガッシャーで扇ぐように振るい煙を晴らした時には、周囲にオクトイマジンの姿は無かった。
二度も苦い汁を舐めさせられた挙句、イマジンを取り逃した電王。その苛立ちをぶつけるかのように、デンガッシャーの刃先を地面に叩きつけた。