「目覚めろ!新しい自分!熱き炎とともに生まれ変われ!ライド・ザ・ヴァンガード!!《天輪聖竜ニルヴァーナ》!!」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》
G3 パワー13000
僕にとって大切なカード《天輪聖竜ニルヴァーナ》がヴァンガードサークルに現れる。
「へっ、グレード3になったくらいでいい気になるな!」
メグミさんを守るために始まったファイトも終わりを迎えようとしていた。
「…、こいつは!」
このファイトにもう一人観戦者がいたのに僕たちが気付くのはもう少し後の話だ。
ー
メインフェイズに入った僕は一旦盤面を見渡す。
僕の場にはヴァンガードのニルヴァーナと両脇にいるリアガードの《フレアストライクドラゴン》と《ブレイジングスピアドラゴン》
そして、ニルヴァーナとフレアストライクの後列にはそれぞれ《焔の巫女レイユ》と《焔の巫女ヒメナ》がいる。
一方相手の場にいるのは《エレクトロ・スパルタン》と2体の《セルフィッシュ・エングレイヴァー》
ダメージは4対3でこちらが負けているが3体で一斉攻撃ができれば戦況はひっくり返るかもしれない。
「このままバトルに入ります!レイユのブーストしたニルヴァーナでヴァンガードにアタック!ニルヴァーナのスキル!カウンターブラスト1を支払うことでパワー+10000!」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》パワー23000+《焔の巫女レイユ》パワー8000
「パワー合計31000か。ガードするには25000、まだダメージは3だ。ここで手札を消費するくらいなら!ノーガードだ」
「ついにグレード3になったヴァンガードのアタックだね。」
メグミさんはニルヴァーナの左上にあるアイコンを指さした。
「グレード3のユニットはツインドライブという能力を持っているんだ。グレード3のヴァンガードがアタックすると、ドライブチェックが二回できるんだよ。」
「それじゃあ、一気に手札を二枚増やせるんですね。」
「それだけじゃなくトリガーを引く確率も高くなる!」
強力な効果に胸を高鳴らせ、僕は山札をめくる。
「ツインドライブ!ファーストチェック!」
《焔の巫女ヒメナ》トリガーなし
「セカンドチェック!」
《焔の巫女ローナ》
次に引いたのはトリガーユニットだ。治というアイコンの描かれたカードが来た
「よし、トリガーユニットだ!」
「そのユニットはヒールトリガーユニット一体のパワーを+10000して、さらに相手よりダメージが相手以上なら、1点回復できるんだ。」
《ブレイジングスピアドラゴン》
G2 パワー20000
ダメージ4→3
これでダメージ差は逆転した。
ニルヴァーナは翼を広げて力を籠めると頭上に巨大な火球が生成される。
そして、その火球を敵のエレクトリックスパルタンに打ち出した。
「リンカーネーションフレア!!」
「ぐはあっ!」
火球が命中し、爆炎に包まれる。カツジのエレクトリックスパルタン。
ダメージが1点入る。
「ヒメナのブースト!フレアストライクドラゴンでヴァンガードにアタック!」
「ノーガードだ!」
ダメージチェック
《バイタルリーヴァー》ドロートリガー
「こちらもトリガーだ。ヴァンガードにパワー10000、そして1枚ドローだ!」
「でも、ダメージは5!パワーも足りている。ブレイジングスピアドラゴンでヴァンガードにアタックだ!」
《ブレイジングスピアドラゴン》
パワー20000
これが通れば勝てる。でも、相手は手札が4枚もあるうえに、グレード2のユニットが二体も控えている。簡単に攻撃が通るはずがなかった。
「セルフィッシュエングレイヴァーでインターセプトだ!」
《エレクトロ・スパルタン》パワー20000+《セルフィッシュエングレイヴァー》シールド10000
ブレイジングスピアの槍はセルフィッシュエングレイヴァーに止められてしまった。
これで僕に攻撃可能なユニットはいない。
「ターンエンド」
「ふん、焦らせやがって。スタンド&ドローだ。」
ここをしっかり守りきれば僕にもまだ勝機はある。しかし
「さあて、やられた分はしっかりお返ししないとな。ここからは俺もグレード3だ!」
自分が協力な技を使えたように、相手もグレード3のユニットにライドすることができる。
「手札と一枚捨てて、ライド!」
カツジの姿が光に包まれると突然体が重くなった。あまりの重さに飛んでいられなくなり、地面に落ちてしまう。だが、重くなったのは自分だけではない。周りの木々は枝が折れ落ち、岩も地面にめり込んでいく。
そして、敵のリアガードたちも笑いながらも自分にかかる重さに耐えている。
その中心に、相手のヴァンガードが姿を現した。
「重力の支配者バロウマグネス!」
《重力の支配者バロウマグネス》
G3 パワー13000
「ライドされたエレクトロ・スパルタンのスキルが発動!手札を一枚ソウルに入れ、1枚ドローさらにソウルチャージ!これでソウルは9枚だ!」
ソウルが9枚。僕はすぐに意味を理解できなかったがバロウマグネスの周りのオーラがどんどん強くなっているのを感じた。
「《セルフィッシュ・エングレイヴァー》と《サイクロン・サイクラー》をコールしてバトルだ!」
《セルフィッシュ・エングレイヴァー》
パワー10000
《サイクロン・サイクラー》
パワー8000
前のターンで僕を苦しめたユニットたちが再び現れた。
「サイクロンサイクラーのブースト、セルフィッシュエングレイヴァーでリアガードのブレイジングスピアドラゴンにアタックだ!」
「リアガードに攻撃!」
「この攻撃がヒットすれば、そいつは退却するぜ!そして、再びサイクロンサイクラーのスキルが発動。前列すべてにパワー+5000」
《セルフィッシュ・エングレイヴァー》
パワー15000
《重力の支配者バロウマグネス》
パワー18000
《セルフィッシュ・エングレイヴァー》
パワー15000
そしてパワー15000のセルフィッシュエングレイヴァーがブレイジングスピアドラゴンに迫る。ガードするには10000のシールドが必要。ヴァンガードの攻撃が控えているのに、そんなシールドは使えない。
「ノーガード!ブレイジングスピアドラゴンは退却します。」
「アタックがヒットしたセルフィッシュエングレイヴァーの効果でソウルチャージ。これでソウルは11枚、10枚を超えた!バロウマグネスでヴァンガードにアタック!」
攻撃宣言をするバロウマグネス。逃げようとして、僕は動き出すが、自分にかかる重力がさらに強くなった。
「バロウマグネスがアタックするこの瞬間、カウンターブラストを使うことでソウルの枚数に応じたスキルが順番に発動する。」
「ソウルを溜めていたのはそのためだった!?」
「その通り!まずはソウル5枚を超えたスキルで手札を一枚ドロー!」
2枚まで減っていた手札が三枚に増えてしまう。
「さらにソウル10枚を超えたことで!このユニットにパワー+10000!さらにクリティカル+1だ!」
《重力の支配者バロウマグネス》
パワー28000 ☆2
「そんな!?」
「つぶれちまいな!ニルヴァーナ!!」
バロウマグネスが力を籠めればさらに、ニルヴァーナにかから重力が強くなる。
相手のクリティカルは2に増えているため、さっきのようにクリティカルトリガーを引かれれば敗北してしまう。
「ガード!インターセプト!!」
《焔の巫女ローナ》シールド15000
《焔の杖僧チョクーシャ》シールド5000
《焔の巫女ヒメナ》シールド5000
《焔の巫女ヒメナ》シールド5000
《焔の巫女アルーナ》シールド5000
《フレアストライクドラゴン》シールド5000
パワーの合計は53000、トリガーが2枚出ても防ぎきれるが、手札をすべて使ってしまった。
「ビビってるなあ。ツインドライブ!ファーストチェック」
《ブラザーズ・ソウル》トリガーなし
「セカンドチェック」
《フリンティ・スラッシャー》クリティカルトリガー
「クリティカルトリガー!効果はすべて攻撃していないセルフィッシュエングレイヴァーだ!」
《セルフィッシュ・エングレイヴァー》
パワー25000 ☆2
ガーディアンたちが協力して、重力の強い空間から引き揚げてくれたおかげでバロウマグネスの攻撃からは逃れることができた。しかし、逃げた先には《パワーアップしたセルフィッシュ・エングレイヴァー》が待ち構えていた。
「セルフィッシュエングレイヴァーでヴァンガードにアタック!!」
ガードできる手札のない僕はまたしても、クリティカル2の攻撃をうけてしまった。
ダメージチェックでトリガーはなし。僕も5ダメージまで追い込まれる。そして、カツジはセルフィッシュエングレイヴァーでさらにソウルを増やす。
どんどんと差が開いてしまう。
「これでターンエンド。一応教えておいてやろう。俺のバロウマグネスはソウルが15枚を超えるとさらに強力なスキルを使うことができる。次のターンで決めきれなければ、お前の負けはほぼ確定だ。その手札でなんとかできるとも思えねえがな。」
「くっ、スタンド&ドロー!《焔の巫女トレッサ》をコール!」
《焔の巫女トレッサ》
G2 パワー10000
カツジの話が本当なら、とにかく攻撃して1ダメージを与えるしかない。相手の手札は5枚。攻撃回数は二回、少し心もとないがトリガーが出ればきっと届く。
「ニルヴァーナのスキルを発動してバトル!」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》パワー23000
「レイユのブースト!ニルヴァーナでヴァンガードにアタック!!」
「ガードだ!」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》パワー31000
《フリンティ・スラッシャー》シールド15000
《フリンティ・スラッシャー》シールド15000
「パワーの合計は43000、トリガーを二枚引かなきゃ突破できねえ!」
「くっ!」
相手の手札は残り3枚、うち1枚はシールドを持たないオーダーカードだが、インターセプトもできるためトリガー1枚ならリアガードの攻撃も十分に防げるように手札を残しているのだろう。ここが勝負どころ、勝敗を分ける分水嶺だ…。
「ツインドライブ!!ファーストチェック!」
震える手でめくったカード。だが、それは…。
「そ、そんな…。」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》トリガーなし
無情にも、ノーマルユニットだった。
ー
「残念だったな初心者くん。」
「ヴァンガードの攻撃はもう通らねえ、兄貴の手札は十分。これはもう、兄貴の勝ち確定じゃ~ん!はっはっは!!」
「ユウユくん…。」
勝ち誇る、対戦相手、悲しげに僕を見つめるメグミさん。僕はがっくりと肩を落とし、ファイトテーブルに両手をつく。
「ごめん、めぐみさん。やっぱり僕じゃダメみたいです…。」
必死に勇気を振り絞り、変わりたいと願い行動した。でも、僕の思いは届かなかった。このまま終わってしまうのか、僕は弱いままなのか…。
目の前が暗くなっていく。鮮明に見えていた惑星クレイの姿も、見えなくなっていく。
何もない真っ暗な世界、絶望の景色が僕の目の前に広がっていく。
「諦めるには、まだ早いんじゃねえか?」
そんな僕をその言葉が現実に引き戻した。
「兄貴!?」
驚くメグミさん、声の先を見るとそこに立っていたのはただならぬ雰囲気を放つ赤毛の大男だった。
「あ、兄貴!あいつ桃山ダンジだ!公式戦20連勝の記録を持ちながら、表舞台から姿を消した伝説のファイター!桃山ダンジ本人だよ!!」
「ああ、廃墟の遊園地で桃山ダンジが現れるって噂は本当だったらしいな。」
聞けば、今現れた、ダンジという人はとても強いファイターらしい。
そんなダンジさんは僕の隣に立つと、僕の肩をたたく。
「お前のファイト、見せてもらったぜ。初心者だってのに、勇気を出してこんな強敵に挑んで一歩も引けを取らない戦いをした。それに、どれだけ追い詰められても逃げずに戦い続けた。イメージ力だって、決して負けてねえ。」
僕を励ますようにダンジさんは優しく声をかける。だが、今の状況が絶望的なのは変わらない。
「でも、もう駄目なんです。もうどう頑張っても、あの人に勝てるイメージがわかないんです。」
弱気に呟く僕にダンジさんは笑いかけた。
「いったろ?諦めるにはまだ早いって。いいか、お前にヴァンガードの鉄則を教えてやる。」
ダンジさんは僕の盤面を指さした。
「ヴァンガードの鉄則、それは絶対にあきらめないことだ。このゲームはな、最後の最後までどうなるかわからない、どれだけ絶望的でも、勝てないって思っても、あきらめなければ必ず道は開ける。」
暗闇の中にいる僕にわずかな光が差し込んだ。
「もちろん、それは簡単なことじゃねえ、か細くて小さな希望だ。でも、諦めちまったら、可能性はゼロになる。だから、どんな時でも絶対に諦めちゃダメなのさ。」
そして、ダンジさんは今度は僕のデッキを指さす。
「さあ、まだドライブチェックが一回残ってるんだろ?自分のイメージを信じて引いてみな。そして、希望をつかむんだ!」
促されて小さな光に手を伸ばす。そして、その先にある、カードにそっと手を触れた。
「へっ、何を引こうがこの状況を変えられるわけが…、」
「…、ドライブトリガー…、チェック!」
カードをめくった瞬間、カードから炎を光があふれだし、暗闇が一気に消え去った。
「な、なに!!」
「そのカードは!!」
「ちゃんと掴めたみたいだな、希望の光を!!」
僕が引いたカードはトリガーユニット。そのアイコンは今まで見たことのない“超”というアイコンが描かれていた。
《再起の竜神王ドラグヴェーダ》
「こ、このカードは!!」
「そいつはオーバートリガー。デッキに1枚しか入れられないが、他のトリガーにはない、とてつもない力をもったトリガーユニットさ。《再起の竜神王ドラグヴェーダ》がトリガーとして出たとき、ヴァンガードをスタンド、そして、自分の好きなユニットのパワーを+することができる。」
あふれだすイメージの中で、古の竜神から力をもらったニルヴァーナがもう一度立ち上がっていた。
「その数値は…、1億だ!!」
「1億!?」
「そんなのガードできるはずがねえ!!」
あまりにも突拍子もない数字に僕自身も驚いてしまう。目の前にあった勝利が突然奪われたカツジはあまりの事態に後ずさりをしてしまっていた。
「あ、あり得ない。この俺が、こ、こんな初心者なんかに」
ダンジさんは僕に促す。
「さあ、あいつに宣言してやりな。効果を与えるユニットを」
光をつかむことができた僕。再びイメージをする。強くなった、生まれ変わった自分を。
僕、強くなれたかな?
思い出の少女が暖かく笑ってくれた気がした。
「ヴァンガードをスタンド!そして、ニルヴァーナにパワー+1億!!」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》パワー100031000
1回目の攻撃とはくらべものにならないくらい巨大な火球が生成される。とんでもない熱量に、相手のバロウマグネスは慌てて逃げだしたが、とても逃げ切れる規模じゃない。
「ニルヴァーナでヴァンガードにアタック!オーバー・リンカーネーション・フレアッ!!!!」
逃げるバロウマグネスを巻き込んで、火球は地面に着弾。巨大な火柱が立ち上がり、戦場を包み込んだ。
カツジのダメージチェック。トリガーなし。カツジのダメージゾーンに6枚目のカードが置かれた。
「そんな、おれが、こんな初心者に…。」
「あ、兄貴ー!」
がっくりと膝をつくカツジ。
そして僕も、一瞬思考が停止していた。
「僕、勝ったの…?。」
「やったよ!ユウユくん!!」
感極まったメグミさんが僕に抱き着いてきた。
「ちょっと、メグミさん!」
「すごいよ!ユウユくん!私!もう感動しちゃった!」
顔を真っ赤にする僕。そこにダンジさんが声をかける。
「ユウユか、いいファイターじゃねえか。」
その声を聴いたメグミさんは僕から今度はダンジさんのほうに歩いていく。
「なんだメグミ?俺が来たのがそんなにうれしかったのか?ほら、俺の胸に飛び込んで来い!」
メグミさんを受け止めるようにダンジさんが両手を広げる。メグミさんは両手を広げたダンジさんの胸に
ぐしゃあっ!!
「ぐはああああああっ」
強烈なハイキックをお見舞いした。
「何言ってんだ馬鹿兄貴!ユウユくんのファイトを見ていた?いつから!?見てたんなら助けなさいよ!!」
「しかたねえだろ!来た時にはファイトが始まってたんだから!!」
「うるさい!仲間のピンチに駆けつけないリーダーなんか修正してやる!歯ア食いしばれ!!」
「やめろ!リーダーに手を上げるな!!」
なんだか、仲がよさそうに喧嘩する二人。僕は対戦してくれた。カツジ、いや、カツジさんに声をかける。
「あ、あの」
顔を上げるカツジさん
「楽しかったです。また、ファイトしましょう。」
心からの笑顔でカツジさんに言った。
でも、カツジさんは慌ててデッキを手に取り
「う、うるせええええええええええ!!」
「ああ!待ってよ兄貴いいいい!!」
走り去ってしまった。
別に悪いことしたわけじゃないけど、少し悪いことをしたような気になってしまう
「まあ、そんな顔するなよ。」
メグミさんの攻撃を受けきった後のダンジさんが戻ってきた。
「それより、お前もカードファイトしに来たんだろ?もうすぐみんなが集まってくる。そしたら、今度は俺とファイトしようぜ!」
へっ!と笑うダンジさんを見て、僕も少し明るい気分になった。今日は何も考えず、このままヴァンガードに打ち込もう。そんなことを考えているときだった。
ピピーッ!
なぜか笛の音がした。
「桃山ダンジ!やっぱりあなたが何かしていたのね!」
「げっ!トマリさん!?」
笛を吹いたのは婦警さんだった。トマリさんと呼ばれたその人はダンジさんにさらに食ってかかる。
「げっ!とは何よ桃山ダンジ!警察を見てそんな反応するのは何か後ろ暗いことのある人間だけよ!」
「あ、相変わらず無茶苦茶だ。」
「と、そんなことよりも…。」
次にトマリさんは僕のほうを見た
「あなたが近導ユウユくんね。親御さんから捜索願があったわ。」
「ええっ!?」
そういわれて思い出した。僕は今家出の最中だったのだ。
「男の子なんだから、家出したくなることもあるみたいだけど、あんまり親御さんに心配かけちゃだめよ。」
「なんだ、お前家出中だったのか?」
「ああ、それで一人であんなところにいたんだ。」
トマリさんの話でダンジさんもメグミさんもおおよその事情を察したようだ。
僕も、うつむきながら、トマリさんに答えた。
「は、はいごめんなさい…。」
「きゅーん…、はっ!我慢我慢…。」
一瞬、少しおかしな反応がトマリさんから見られたような気がした。
「さ、お姉さんと一緒におうちに帰りましょう。」
そうして、僕は引きずられていってしまう。
「またね、ユウユくん!私たちはいつもここで遊んでるからね。」
「今度は親御さんの許可をもらってから来いよー」
そんなグダグダな再会の約束をして、僕たちは分かれたのだった。
ー
「行ってきまーす!」
翌日、僕は家に帰ってすぐにヴァンガードのデッキを持って、メグミさんたちがいる廃墟の遊園地にむかった。
しかし、まだ早い時間だったためか誰も来ていなかった。最初こそワクワクしてここに来たのだが、時間がたつとともにだんだんと不安な気持ちがわいてくる。
(誰も来なかったらどうしよう…。)
昨日は楽しかった。メグミさんやダンジさんと出会って、初めてのヴァンガードファイトもして。あんな楽しい時間を本当にまた過ごすことができるんだろうか…。
「あれ、ずいぶん早いじゃない。」
でも、すぐに昨日と同じ、明るい声が聞こえてきた。
「こんにちわ、ユウユくん。」
メグミさんだ。今日は、ボーイッシュな恰好をしている。
「あれ、初めて見る顔だな?」
「なんだメグミの知り合いか?」
その後、次々にいろんな人達がやってきた。さらに…、
「ユウユとかいうガキは来てるか?」
昨日ファイトしたカツジさんも現れる
「昨日のリベンジマッチだ。今度は絶対に俺が勝つ!」
「負けたままでは終わらない!さすが兄貴い~!」
その子分の人も一緒だ。
「おうおう、今日も盛り上がってるじゃねえか!」
そして、最後にやってきたのはダンジさん。
「よお、また、来てくれたんだな!ユウユ!」
「わあ!」
僕の不安は全くの杞憂だった。昨日と同じように、いや、昨日よりもずっとたくさんの人が集まっていた。これからもきっとこの楽しい時間は続くんだろう。
「よし!お前ら!今日も存分に楽しもうぜ!!」
「「おおーーーーーっ!」」
ダンジさんの号令で声を上げるみんな。弱気で言いたいことが何一つ言えなかった僕が、勇気を出して踏み出した場所には新しい世界が広がっていた。
「いい場所でしょ?ユウユくん」
「はい!」
メグミさんが来てくれる。この場所を紹介しようとしてくれていたメグミさんも、僕の表情を見てうれしそうにしていた。
「でも、これから君はいろんなファイターに出会ってたくさんの思い出を作っていくんだよ、このヴァンガードと一緒にね。」
メグミさんに言われて、自分のデッキを取り出す。そんな僕にメグミさんは歓迎の言葉をくれたのだった。
「ようこそ、ヴァンガードの世界へ!」
次回「オーバードレス」
カツジ君の苗字とその子分の名前を募集中です。