ヴァンガードoverDress 新訳版   作:ふぁみゆ

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第三話「オーバードレス」

その日、僕が遊園地に行くと、すでにファイトが繰り広げられていた。

 

「一気呵成により、ブルースはスキルを獲得だ!」

「くっ!ディアブロスの一気呵成による怒涛の連続攻撃、やはり来るか!!」

 

対戦しているのはダンジさんと、金髪の男の人だ。

 

「レナードでヴァンガードにアタック!」

「その攻撃を通すわけにはいかない!ガード!」

 

手札は残り少ないが、対戦相手はガードを宣言した。

 

「へえ、こいつの攻撃を通さないってことはまだこの状況でも諦めてないってことか…。」

「ああ、まだわずかでも勝機があるなら、俺はそれを手放さない。この光輝の天剣に誓って!」

「その意気やよし!ブルースでヴァンガードにアタックだ!」

「ノーガード!!」

 

ダンジさんのヴァンガードの攻撃。さっきのリアガードのアタックで手札の足りない相手の人はノーガードを宣言。

お互いにトリガーはなかったが、相手の男の人は6ダメージになり、ファイトはダンジさんの勝ちで終わった。

ファイトを終えた二人は硬い握手を交わす。

 

「さすがは伝説のファイター桃山ダンジだ、完敗だよ。」

「いや、あそこでヒールトリガーを引いてなきゃ負けていたのは俺のほうだった。ずいぶん腕を上げたなトウヤ!」

 

「だが、あいつに勝つつもりなら、こんなもんじゃ足りねえぞ。」

「もちろん、このままで終わるつもりはない。」

「その意気だぜ。」

 

激闘を終えた二人の姿を見る僕にメグミさんが声をかけてきた。

 

「すごいよね。兄貴もトウヤさんも。」

「トウヤさん?」

「そう」

 

降りてくるトウヤさんを僕も見る。

 

「加賀の国将軍決定戦、前年度優勝者にして、関ヶ原チャンピオンシップベスト4の実力者。ケトルサンクチュアリの天帝の剣の使い手、江端トウヤだよ。」

「え、そんな強い人にダンジさん勝ったんですか!?」

「まあ、兄貴は特別だからね。前に聞いたでしょ?表舞台から姿を消した伝説のファイターだって。」

 

以前カツジさんとファイトしていた時、ダンジさんを見たカツジさんの子分は言っていた。

 

『公式戦20連勝の記録を持ちながら、表舞台から姿を消した伝説のファイター!桃山ダンジ本人だよ!!』

 

(どうして、そんなすごい記録を持っているのに表舞台から姿を消したんだろう。)

「でも、ユウユくんの気持ちもわかるよ。ユウユ君もやってみたくなったんでしょう?あんなファイトを」

「え、ええっと…。」

 

今考えていたのは別のことだったが、あの二人みたいなファイトをしてみたい。そういう思いがあったのも事実だ。後半しか見ていないにも関わらず、僕はあのファイトに魅せられていた。

 

「僕にできるんでしょうか?あんなファイトが」

「今のままじゃ無理だね。」

 

メグミさんは僕を容赦なくバッサリ切り捨てる。そこまで言わなくてもいいのに。

 

「強くなりたいのなら、せめてこのカードは使いこなせるようにならないとね!」

 

そういってメグミさんは一枚のカードを僕に渡した。

それは、高いパワーも強力なスキルもない、グレード0のユニットだった。

 

「トリクスタ…?。」

 

 

 

 

「おっ、なんだデッキ調整か?」

「うん、兄貴をぶっ倒すためにね」

「はっはっは、やる気満々だな、ユウユ!」

「い、いや、その…。」

 

ダンジさんが、カードを並べている僕とメグミさんに声をかける。そして、僕の持っているカードを見たダンジさんはおおよそ僕たちの考えていることを察したようだ。

 

「トリクスタ、これからもお前がニルヴァーナで戦うのなら必要なカードだな」

「ね、私の言う通りでしょ?」

 

僕にはすぐに理解できないが、ダンジさんまでそういうならこのカードは必要なんだろう。それに、このカードと一緒に戦うニルヴァーナの姿はとてもイメージしやすかった。

 

「よし、それじゃあ、お前がそのトリクスタを使いこなせるようになったら、俺が相手になってやるよ!」

「本当ですか!」

「おお!かわいい後輩が頑張ってるんだ!ここは先輩として胸を貸してやらないとな!」

 

思わぬところでダンジさんとファイトができることになり、喜ぶ僕。

 

「よかったねユウユくん!」

「はい!」

「それじゃ、頑張れよ!ユウユ!」

 

こうして、僕のデッキ調整が始まった。

 

「そうか!このカードを使えば焔の巫女のスキルも使えるんだ。」

「ちなみに、瞬間的なパワーが欲しいなら、このカード、デッキを回したいならこのカードがおすすめだよ。」

 

「枚数を増やしすぎるとガードに使えるカードが少なくなっちゃうな~。」

「そのカードはデッキやドロップゾーンから手札に加えられるから少なくてもいいかもしれないわね。」

 

そして、いったん僕の新しいデッキは形になった。

 

「できた!けど、これで本当にダンジさんと戦えるのかな?」

 

そう、新しいデッキは一旦形になっただけ、これで本当にあのトリクスタを使いこなせるようになったとは思えない。完成とは言い切れない。

そんな僕の不安は、メグミさんにとっては予想通りだったらしい。

 

「そう、そのデッキはまだ完成とは言えない。まだ実戦で試していないからね!そこで!」

 

メグミさんはこの遊園地に集まってファイトしている人たちを指さした。

 

「そのデッキでここにいる人たちとファイトしまくるのよ!」

「さ、さっそくファイトを!?」

 

相変わらず、僕のほうからはなかなかファイトを言い出せなかったけど、メグミさんが間に入ってくれたおかげで、僕もファイトすることができた。

そうして、ファイトすると、自分のデッキに必要なもの、不要なものが自然と見えてくる

 

「ここでクリティカルトリガーが来れば勝ててたんですよね」

「なら、フロントトリガーを減らしてみよっか。…、だんだんわかってきたみたいだね」

「はい!こうやってファイトして、反省して、自分のデッキとプレイングの問題を見つけたらそれを改善していく。」

「それを繰り返してすこしずつデッキを自分のものにしていくんだよ。さ、あと少し、頑張ろうか」

「わかりました!」

 

こうやって、ファイトとデッキ構築を繰り返すことで、僕は少しずつ力をつけていくのを感じた。

そんな僕をメグミさんは嬉しそうに見つめる。

 

(ユウユ君もこの短期間でかなり力をつけた。こうして、強いファイターが増えていけば、お兄様もきっと考えなおしてくれる…。)

 

何かを考えるメグミさん。そうして、あと一歩で僕のデッキが完成しそうなところで、僕にある人物がファイトを申し込んできた。

 

「順調そうだな、近導ユウユ。今度は俺が相手をしてやる!」

「あんたは!前にユウユくんが倒した……、マケジ!!」

「カツジだ!!!」

 

前に戦ったことのあるカツジさんだ。

 

「この俺様がファイトしてやるよ!今度こそ、この《バロウマグネス》の本当の恐ろしさを教えてやるぜ!」

「はい、よろしくお願いします!」

 

こうして、カツジさんの協力もあって、僕のデッキはついに完成したのだった。

 

 

 

 

翌日

 

「おおっ!今日もやってるな」

「あの!ダンジさん!!」

 

ついに、この日がやってきた。

 

「僕とファイトしてください。」

 

意を決してファイトを申し込んだ僕。ダンジさんは静かに僕を見つめる。

 

「ほう、いい目だ。勝負をする男の目だな。いいぜ、ファイトだ!近導ユウユ!」

 

そして、僕とダンジさんはファイトテーブルに着く。周りに集まったギャラリーの中にいるメグミさんも応援してくれていた。

 

「頑張って、ユウユくん…。」

 

「スタンドアップ・ヴァンガード!」

「スタンドアップ・ザ・ヴァンガード!」

 

「《サンライズ・エッグ》!」

 

《サンライズ・エッグ》

G0 パワー6000

 

「《ディアブロス“無垢”マット》」

 

《ディアブロス“無垢”マット》

G0 パワー6000

 

ダンジさんがライドしたのはやや暴力的だが、スポーツマンといった風貌の少年だった。

 

「あらゆる暴力が許される、超過激スポーツ、ギャロウズボールのスターチーム、ディアブロスだ。半端な覚悟で挑めば、怪我じゃすまないぜ。ライド!《ディアブロス“悪童”スティーブ》!」

 

《ディアブロス“悪童”スティーブ》

G1 パワー8000

 

「スティーブのスキル。ソウルのマットをスペリオルコールしてソウルチャージ!」

 

初動でいきなり、リアガードを呼び出し、盤面を整えるダンジさん。僕も負けてはいられない。

 

「《焔の巫女リノ》にライド!」

 

《焔の巫女リノ》

G1 パワー8000

 

「サンライズエッグのスキルで1枚ドロー。リノでヴァンガードにアタック!」

「ノーガード」

「ドライブチェック、ノートリガー。」

「ダメージチェック。こっちもノートリガーだ」

 

「ライド!《ディアブロス“憤怒”リチャード》!」

 

《ディアブロス“憤怒”リチャード》

G2 パワー10000

 

「リチャードのスキル!マットをソウルに戻し、1枚ドロー!バトル!リチャードでヴァンガードにアタックだ!」

「ノーガード!」

「ドライブチェック!ゲットドロートリガー!カードを1枚ドローだ」

「ダメージチェック、トリガーはなし。」

 

ファイトは順調に進んでいく。でも、ここからは以前の僕とは違う。新しいデッキの真価を発揮するときだ。

 

「《焔の巫女レイユ》にライド!」

 

《焔の巫女レイユ》

G2 パワー10000

 

「レイユにライドされたことでリノのスキルが発動!デッキから《トリクスタ》をコール!」

 

《トリクスタ》

G0 パワー5000

 

「よし!トリクスタ!」

「来たか、ニルヴァーナデッキのキーカード」

 

でも、トリクスタはこのままでは力を発揮できない。そのために

 

「《焔の巫女》ヒメナをコールし、スキル発動。山札の上から7枚を確認し、オーバードレスを持つユニットを1枚手札に加える。そして…。」

 

イメージの中、小さな炎の精霊、トリクスタが炎に包まれる。その炎は収束していき、トリクスタに力を与えた。

 

「炎の精霊よ、祈りを叶えるために進化せよ!オーバードレス!希望の守護者!《ヴェルリーナ》!」

 

《ヴェルリーナ》

G2 パワー10000

 

炎が消えるとそこには強い力を持った人型の炎の精霊がいた。これが、リアガードを進化させるオーバードレス。

その強いイメージを見たダンジさんとメグミさんは嬉しそうにわらった。

 

「バトル!焔の巫女レイユでヴァンガードにアタック!」

「《ディアブロスガールズ・マイマイ》でガード!」

「ドライブチェック!トリガーはなし。」

 

レイユが撃ちだした炎を受け止めるリチャード。そのリチャードをチアリーダーたちが応援し始める。

すると応援により力をもらったリチャードは見事にその炎を受け止めた。

でも、そこに狙いを定めていたのは進化した炎の精霊だ。

 

「ヒメナでブーストしたヴェルリーナでヴァンガードにアタック!オーバードレスしたヴェルリーナがアタックするとき、パワー+10000!」

 

《ヴェルリーナ》パワー20000+《焔の巫女ヒメナ》

 

「ノーガードだ」

「行け!ヴェルリーナ!!」

 

ヴェルリーナが炎を灯した拳でリチャードを殴りつける。リチャードは大きく吹き飛ばされてしまった。

これでダンジさんはダメージ2だ。

でも、ダンジさんはグレード3になる。ここから激しい攻撃が来ると僕は構えた。

 

「まあ、そう焦るなよ。お楽しみはこれからってな。ライド!《ディアブロス・暴虐・ブルース》」

 

《ディアブロス・暴虐・ブルース》

G3 パワー13000

 

「《ディアブロスボーイズ イーデン》と《スチームバトラーグングヌラーム》をコール!グングムラームのスキルでソウルチャージ!」

 

《ディアブロスボーイズ イーデン》

G2 パワー10000

《スチームバトラーグンヌラーム》

G1 パワー8000

 

「グンヌラームのスキル、ソウルブラスト3を支払うことで1枚ドロー。バトルだ!」

 

意外なことに、控えめな展開と手札増強のみでバトルを仕掛けてきた。

 

「ブルースでヴァンガードにアタック!」

「ノーガードです。」

「ツインドライブ」

 

《ディアブロス・ジェットパッカー レナード》トリガーなし

《ディアブロスガールズ マイマイ》クリティカルトリガー

 

「クリティカルトリガーだな。クリティカルはブルースに、パワーはイーデンに」

 

ブルースの強烈なタックルがレイユに命中。さらにボールを持ってイーデンが迫る。

 

「ダメージチェック、トリガーなし。」

「アタックがヒットしたことでイーデンのスキルが発動。ヴェルリーナを退却。」

 

イーデンが投げたボールがニルヴァーナに命中。そして、ニルヴァーナを吹き飛ばしたボールは宙に浮かび上がる。イーデンは大ジャンプでボールに追いつくと空中で身を翻し、ヴェルリーナに向かってそのボールを蹴りだした。ヴェルリーナもボールをかわそうと動いたが、ヴェルリーナの目の前で突如ボールが爆発。ヴェルリーナは巻き込まれて、試合続行不可能になってしまった。

しかし、もうダンジさんに攻撃できるユニットはいない。ヴェルリーナを退却させられたのは痛かったが、今の攻撃で発生したダメージはトリガー込みで3、手札も消費していない。

 

「なんだ、意外だって顔だな。言ったろ?焦るなって。手堅くいくさ、今はまだな…。」

 

僕の気持ちを察したダンジさんは静かに語る。

正直ダンジさんが何を考えてるのか分からないが、今は考えても仕方ない。今は自分のファイトに集中しよう。

 

「目覚めろ!新しい自分!熱き炎とともに生まれ変われ!ライド・ザ・ヴァンガード!!」

 

自ら殻を破り、新たな姿を現す。

ついに僕もグレード3のユニットへとライドした。

 

「《天輪聖竜ニルヴァーナ》!」

 

《天輪聖竜ニルヴァーナ》

G3 パワー13000

 

さらに僕が覚えたデッキの動きが始まる。

 

「ニルヴァーナにライドされたレイユのスキル!デッキから、ヴェルリーナを手札に!今加えたヴェルリーナをドロップゾーンに送り、ニルヴァーナのスキル発動!ドロップゾーンのトリクスタをスペリオルコール!」

 

ニルヴァーナが咆哮を上げるとそれに答えた小さな炎の精霊、トリクスタが姿を現した。

 

「さらにオーダーカード《サンバースト・エヴォリューション》を発動!カウンターブラストを1支払い、ニルヴァーナにパワー+5000ドロップゾーンのヴェルリーナを手札に加える!そのままオーバードレス!」

 

《天輪聖竜ニルヴァーナ》

パワー18000

 

再び、炎に包まれたトリクスタがヴェルリーナに姿を変えた。

 

「希望の守護者!《ヴェルリーナ》!」

 

《ヴェルリーナ》

G2 パワー10000

 

「さらに、《ヴェルリーナ》をノーマルコール!そして、《焔の巫女ヒメナ》をコールしてバトル!」

 

横にはオーバードレスをせずに現れたヴェルリーナともう一体のヒメナ。これで、3回の攻撃が可能だ。

 

「ニルヴァーナでヴァンガードにアタック!この瞬間、ニルヴァーナのスキル発動!このターン、ニルヴァーナとオーバードレスの能力を持つ、ユニットすべてに、パワー+10000」

 

《天輪聖竜ニルヴァーナ》

パワー28000

 

《ヴェルリーナ》

パワー20000

 

《ヴェルリーナ》

パワー20000

 

輝く炎を灯すニルヴァーナ。そして、両側のヴェルリーナも同じ炎に包まれ、力を増していく。

以前のファイトではオーバードレスの能力が使えておらず、十分に力を発揮できなかったニルヴァーナ。だが、今はニルヴァーナのスキルをフルに活用できている。メグミさんたちとの特訓の成果が表れていた。

その盤面を見てダンジさんもうれしそうに笑った。

 

「理解できたみたいだな。メグミがなぜ、《トリクスタ》のカードを勧めたのか。」

「はい。」

 

僕が見つけた答え、それが今の盤面だ。

 

「ユニットにはそれぞれ得意とする戦いかたがある。カツジさんのバロウマグネスがソウルを溜めることで力を発揮するように、僕のニルヴァーナもオーバードレスの能力を持つユニットで戦うことで、その力を最大限発揮することができる。そのためにもオーバードレスのキーカードとなる、《トリクスタ》を使いこなせるようになる必要があった。」

「ああ、その通りだ。自分のユニットの特性を理解して、その正しい戦い方をイメージする。それができるようになれば、もう初心者は卒業だな。」

「へへへ…。」

 

ダンジさんに認められてうれしくなってしまう僕。しかし、ファイトはまだ続いている。

 

「《リキューザルヘイト・ドラゴン》!手札を1枚捨てて完全ガード!」

「ツインドライブ!」

 

《ツインバックラー・ドラゴン》トリガーなし

《焔の巫女ゾンネ》クリティカルトリガー

 

「ゲット、クリティカルトリガー!効果はすべて、オーバードレスしたヴェルリーナに!」

 

ニルヴァーナの放った火炎は魔術を操るドラゴンに阻まれてしまう。

だが、その隣のヴェルリーナのベール、拳、両足に炎を灯し、力をため込んでいく。

 

「ヒメナのブーストした、ニルヴァーナでヴァンガードにアタック!オーバードレスしたヴェルリーナがアタックするときパワー+10000!さらにスキル発動!ソウルブラスト2を支払い、イーデンを退却!」

 

ニルヴァーナが地面を踏みしめる。すると、イーデンの足元から炎が噴き出した。炎に焼かれ、たまらずイーデンは退却。

そのまま、踏み込んで炎の拳でブルースに襲い掛かる。

 

《ヴェルリーナ》パワー35000クリティカル2+《焔の巫女》パワー8000

 

合計パワーは43000、だがダンジさんはまだ2ダメージだ、前のターンにガードしていたために受けるダメージに余裕がある。

 

「ノーガード」

「いけ!ヴェルリーナ!バーニング・フィスト!!」

 

右拳でブルースを殴りつける。体制が崩れたブルースに左の拳でもう一撃。フィジカル自慢のブルースもさすがに強力な二連打によろめいてしまった。

 

「ヒメナのブースト、もう一体のヴェルリーナでヴァンガードにアタック!」

「ノーガードだ!来い!!」

 

すでにふらふらになりながらも、気合いを入れなおして踏ん張り、もう一体のヴェルリーナの追撃も受け止めて見せた。

ダンジさんはダメージ5。決めることはできなかったが追い詰めた。

 

「ターンエンドです。」

「スタンド&ドロー」

 

(もう少し、このターンをしのぎ切れば)

そう考えていたその時、ダンジさんが口を開く。

 

「ユニットにはそれぞれ得意な戦い方がある。」

 

それはさっき、僕が言った言葉だった。

 

「それはもちろん、俺のブルースにも言えることだぜ!」

 

途端、相手の場の雰囲気が変わった。本番はこれからだと言わんばかりのブルースの目。沸き立つ観客の歓声が戦場に響き渡る。

 

「司令塔のブルースがフィールドにいるライドフェイズ開始時、チームディアブロスの必殺戦術!一気呵成が発動する!!」

「一気呵成!?」

「一気呵成が発動したことで俺のディアブロスのユニットたちは新たなスキルを獲得することができる!まずは、《スチームバトラーグンヌラーム》2体をコールし、ソウルチャージ!」

 

《スチームバトラーグンヌラーム》

G1 パワー8000

 

「オーダーカード、《パンデモニウム・タクティクス》を発動!ソウルチャージ4!ソウル6枚を超えたことで1枚ドロー!さらにソウル8枚を超えたことでこのターン前列すべてにパワー+10000!」

 

さっきのターンのおとなしさが嘘のように手札を次々と使い、豪快の盤面を整えていく。

 

「さあ、お前の出番だぜ!《ディアブロスジェットパッカーレナード》!出陣だ!!」

 

《ディアブロスジェットパッカーレナード》

G2 パワー10000

 

大歓声の中、現れたのはディアブロスのスター選手。観客に手を振りながら、スタジアムに入場する。

 

「さあ、待たせたな!バトル!」

 

さっきとは違う豪快な掛け声に、思わずにひるんでしまう。

 

「ブーストはせずにレナードでオーバードレスしたヴェルリーナにアタック!そして、レナードの一気呵成のスキルが発動!!パワー+5000!」

 

《ディアブロスジェットパッカーレナード》

パワー25000

 

「さらにこのユニットがアタックするとき、相手の縦列一つのユニットすべてとバトルする!」

「なっ!それじゃあ!」

「そう、このアタックのターゲットは、《ヴェルリーナ》と《焔の巫女ヒメナ》の2体だ!」

 

ブーストがなくてもオーダーカードとスキル込みでパワー25000、さらに2体同時攻撃、ガードする手札はない。

背負ったジェットパックを噴かせて、ヴェルリーナをタックルで撃破。そのまま後ろに控えるヒメナにも突撃する。

一気に2体の選手が退場。観客のボルテージも上がる。

 

「レナードのアタックがヒットしたことで、さらなるスキルを発動!ソウルブラスト1を払い、ソウルのリアガードを、ユニットのいないサークルにコールする!チームの点取り屋の再登場だ!行け!《ディアブロスボーイズイーデン》!」

 

《ディアブロスボーイズイーデン》

G2 パワー10000

 

満を持して再登場してきた、イーデン。さきほどとは違いアーマーを展開し、完全戦闘態勢だ。

 

「一気呵成によりイーデンもパワー+5000。イーデンでヴァンガードにアタック!」

 

《ディアブロスボーイズイーデン》

パワー25000

 

僕はすでにダメージ4。相手はまだ、ヴァンガードの攻撃を残している。ここで追い込まれるわけにはいかない。

 

「《焔の巫女ゾンネ》でガード!」

 

《焔の巫女ゾンネ》シールド15000

 

「いい判断だ。だが、まだまだ終わりじゃねえ、グンヌラームでブーストしたブルースでヴァンガードにアタック!」

 

《ディアブロス“暴虐”ブルース》パワー23000+《スチームバトラーグンヌラーム》パワー8000

 

「《ツインバックラー・ドラゴン》!手札を1枚捨てて完全ガード!」

「さっきのドライブチェックで握ってたな、当然ここで使ってくるか。だが、ここでブルースの一気呵成のスキルが発動!ソウルブラスト5を支払うことにより、前列のユニットすべてをスタンドする!!」

「そんな!?」

 

ブルースのアタックはツインバックラードラゴンが防いだ。しかし、ブルースは体制を崩したままパスを出す。そのボールを受け取ったのは《ディアブロスジェットパッカーレナード》、その隣には《ディアブロスボーイズイーデン》がいる。

 

「ツインドライブ」

 

《ディアブロス“暴虐”ブルース》トリガーなし

《ディアブロスガールズマイマイ》クリティカルトリガー

 

「ゲット!クリティカルトリガー!効果はすべてレナードに!それだけじゃねえ、イーデンもブルースのスキルでスタンドしたことによりクリティカル+1だ!」

 

《ディアブロスジェットパッカーレナード》

パワー30000 クリティカル2

 

《ディアブロスボーイズイーデン》

パワー25000 クリティカル2

 

こちらのダメージは4。どちらの攻撃も受けることはできない。さらに次の攻撃はブーストつきだ残り3枚の手札では防ぎきれない。

 

「イメージしろ」

 

グンヌラームのブーストを受けたレナードの攻撃。手札からアルーナとローナ、シャクネ、フィールドからヴェルリーナが飛び出し、レナードの進路をふさぐ。しかし、すでにレナードの手にボールはなかった。

 

「これが最強軍団、ディアブロスによる」

 

ボールはまたしても上空に、そして、空中でイーデンがシュートの体制に入る。

 

「一気呵成の暴虐のビートだ!!!!」

 

撃ちだされたボールが、今度はニルヴァーナに迫った。

 

「うわああああああああああああ!!!!」

 

ボールは大爆発を起こし。ゲームセット。

現実でも、2回のダメージチェックでトリガーはなく、そのままダンジさんの勝利でファイトは幕を閉じた。

 

「ま、負けた」

 

がっくりと膝をつく僕。おとなしいと思っていた3ターン目から一転しての果敢な攻撃。僕の知らない一気呵成というスキル。自分のファイトがようやくできるようになっただけではまだまだ勝てないみたいだ。

 

「顔を上げろよ。本当にいいファイトだったぜ。」

 

ダンジさんに促されて立ち上がると、観衆から拍手が起こった。よく見ると周りにいるのは僕がデッキを調整する時にファイトしてくれた人たちだった。トウヤさんの時のような感動では無かったが、僕のファイトもちゃんとみんなに届いたようだ。

 

「本当に短期間でよくここまで来たもんだ。凄い成長速度だよ。」

「でも、まだまだみたいです。」

「そうだな。自分のファイトがイメージできるようになったんだ。次は相手のファイトをイメージできるようにならないとな。」

 

ダンジさんから短いながらも的確なアドバイスが送られる。

 

「強くなりたいんだってな。なら、これからお前はいろんなやつと戦って色んな戦い方、考え方、感じ方を知るんだ。そうすれば自然に見えてくる、勝利へのイメージがな。」

「勝利へのイメージ…」

 

また一つ、道が開けた気がした。思い出の少女からもらったカードをきっかけにヴァンガードと出会い、メグミさんに自分の戦い方のイメージを教えてもらい、ダンジさんからは勝利へのイメージを教えてもらった。みんなに導かれて強くなった自分のイメージが出来上がっていく。これからもヴァンガード共に歩んでいけばきっと、弱い自分を変えられる、そんな気がした。

 

「ありがとうございます。僕、いつかダンジさんみたいに強く!」

「みたいにじゃ駄目だ。」

 

ダンジさんは楽しそうに笑っていた。

 

「俺を越えてみろ!」

 

そういって笑うダンジさんの背中はとても大きく見えた。

 

「まあ、簡単には越えさせないがな」

「…、ふふっ、はい!」

 

そうして、僕はダンジさんと感想戦を始める。

でも、このファイトでもらったのは強さだけじゃなかった。ダンジさんを越える、そんな大きな目標を、僕はこのファイトでもらったんだ。

 

 

 

(しかし、《天輪聖竜ニルヴァーナ》か…。)

 

僕を見るダンジさんの脳裏に、とある人物の姿が浮かんだのだが

 

(…、いや、まさかな)

 

この時の僕に、それを知る由はなかった。




次回「トップファイター江端トウヤ」
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