「近所の公認大会に出場するって?おっとノーガードだ」
「ツインドライブ。はい、そのほうがいろんな人とファイトができるってダンジさんが。僕はヴァンガードを始めてから日が浅いですから、経験を積まないと…、ゲットクリティカルトリガー。」
「なっ!…ダメージチェック。まあ、お前もかなり実力をつけたから、なかなかいいところまで行けるんじゃないか?…、だーっ!また負けた!!」
ファイトをしながら、僕はカツジさんと話をする。この廃墟の遊園地でファイトすることですこしずつ自信がついてきた。だから、以前ダンジさんに言われたように、いろんな人とファイトするためにそういう場に行こうと思った。
「なぜだ!なぜ俺はお前に勝てんのだ!?」
「残念だったね、もうあきらめたほうがいいじゃない?マケジ?」
「カツジだ!お前わざとやってるだろ!!」
ファイトを見ていてくれたメグミさんはいつものようにカツジさんをからかう。もうすっかりおなじみの光景になっていた。
そんなときカツジさんの子分がメグミさんにこんなことを聞いた。
「メグミさんもユウユについていくんすか~?」
「え?」
「ちょ、ちょっと!?」
どうも、僕はメグミさんといつも一緒にいると思われているみたいだ。
おまけにカツジさんまで同調しはじめる
「まあ、ユウユの気の小ささは相変わらずだからな、ついていってやらないと、ちゃんと大会に参加できるか、受付の人と話ができるかどうか怪しいもんだぜ。」
「カツジさんまで!そんなことありませんよ!!」
どうやら、本当に僕はダメな奴だと思われていたらしい。断じてそんなことはない。多分、きっと。
「ははは、まあ、ついていってあげたいのはやまやまなんだけどさ~」
「ええっ!?メグミさんまで!?!?」
「その日はどうしても外せない大事な用事があるんだよね。」
そう話すメグミさんは少し不安そうな顔をしていた。
「だってさ、残念だったな。俺がついていってやろうか?ユウユ?」
「だから、大丈夫ですって!」
「それより、その大会勧めたのってアニキなんだよね?」
すぐに切り替えたメグミさん。確かに近所で大会があることを教えてくれたのはダンジさんだ。
「なら、気を付けたほうがいいよ?アニキが勧めてきた大会って、なぜかとんでもなく強いファイターが来たりするから…。」
「は、はあ…。」
その時、別の場所では
prrrrr…。ピッ
「どうしたダンジ?お前から電話してくるなんて珍しいじゃないか。」
ある人物がダンジさんと電話で話をしていた。
ー
「あ、ああああああのっ!」
公認大会が開かれるショップ。僕は受付のお姉さんに話しかけていた。
受付くらいは自分でできる。そう思っていたが、実際に一人で店に入るとどうしても緊張してしまう。
話しかけるだけで、めちゃくちゃ噛んでしまった。
受付のお姉さんもかなり困惑していている。
「はい?」
「た、大会のえ、えええエントリーを!お願いしまひゅ!!」
「ああ!では、こちらにお名前を記入してください。公認大会は初めてですか?」
「は、はい!」
「では、こちらをどうぞ。」
大会のエントリーシートを記入した後、お姉さんから1枚のカードを渡された。
お姉さんから渡されたのはヴァンガードとは違うカード。“ヴァンガード・メンバーズカード”と書かれている。
「そのカードの裏面のQRコードから会員登録をすれば、ショップでの公認大会での戦績が記録されます。また、将軍決定戦などの大きな大会に出場するときには必要になりますので覚えておいてくださいね。」
重要事項を説明される。ヴァンガード関係のイベントに行くときは必ず持っておくようにしよう。
「では、大会開始は20分後ですのでしばらくお待ちください。」
そうして、受付を済ませた僕はファイトスペースに座る。
周りには大会に参加する予定であろうファイターたちが楽しそうに話をしている。
大会開始まで僕もそこに混じって話ができればいいのだが、知らないファイターに話しかけるような度胸は僕にはない。とりあえず、受付で言われたメンバーズカードの会員登録をして待つことにした。
そんなとき、メグミさんが言っていたことを思い出す。
『アニキが勧めてきた大会って、なぜかとんでもなく強いファイターが来たりするから…』
とんでもなく強いファイター…。この中にいるんだろうか…。
そう思い、周りを見渡す。なんだか、周りのファイターみんなが強そうに見えてきた。
しかし、本命はこのあとすぐに現れた。
チリンリン
「いらっしゃいま…、きゃあ!?」
鳴る来店ベル。なぜか上がる店員のお姉さんの悲鳴。
僕を含めたファイターたちは一斉に入口を見た。そこにいたのは
「こんにちわ、公認大会の出場枠はまだ空いているかな?」
加賀の国トップファイター、江端トウヤだった。
「は、はい!ま、まだ参加可能です!こちらに名前を!!」
今度はお姉さんがさっきの僕のように緊張していた。
「ありがとう。それじゃあ、よろしくお願いします。」
キラキラした笑顔で受付表を渡すトウヤさんに、お姉さんは顔を赤くしてふらふらしている。
トウヤさんの登場で騒がしくなる店内。いつしかファイターたちもトウヤの話題で持ち切りになっていた。
そんなトウヤさんがこちらにやってくる。そして、なんの偶然か、僕はトウヤさんと目があってしまった。
「あれ、君、ダンジのところにいた!」
「え、あ、はいっ!」
「君も公認大会に参加するのかい?」
「え、ええと、そうです…。」
自然にトウヤさんは僕の隣の席に座る。突然有名ファイターと話をすることになって、緊張のあまり固まってしまう。
僕の様子はさすがにトウヤさんにもわかってしまったようだ。
「そんなに、緊張しなくてもいいよ。と言っても、初めての大会なら、無理もないか。思い出すな、初めて大会に出たときは俺もそんな感じだったよ。」
そうしてトウヤさんは優しく僕を見る。
「え、トウヤさんも?」
「そうさ、周りの人たちみんなが強そうに見えて、帰りたくなっちゃうんだよな。」
カードファイトを始めたばかりのトウヤさん。デッキを持ってファイトスペースの隅で黙って座る。
「でもさ、大会が始まるとそんな不安なんて吹き飛んでしまうんだ。」
大会が始まると幼いトウヤさんは全力でファイトを楽しむ。不安だったことも忘れて、全力で戦って笑ってた。
「今は不安だろうけどさ。ファイトは楽しもう。せっかくいろんな人とファイトできる機会なんだからさ、硬くなっていたらもったいないよ。」
トップファイターであるトウヤさんの励まし、その言葉で肩の力が抜けていくのを感じた。
「そう、ですよね…。ファイトは楽しいものですもんね。」
「わかってくれたかな?」
「はい、ありがとうございます。」
大会では全力で戦おうと、覚悟を決める。ところで、どうしてトウヤさんは僕が初めての大会だって、知っているんだろう?
「ヴァンガード公認大会開催します。参加者は集合してください。」
その疑問は解消されることなく、大会が始まったのだった。
ー
大会組み合わせの抽選後。一回戦の対戦相手の名前を見て、僕は拳を握りしめる。
その名前は“江端トウヤ”。加賀国トップファイターと一回戦から当たってしまった。
「早速君とファイトすることになったね。」
トウヤさんが声をかける。
さっきとは違う緊張が僕の中に走る。
「そんなに緊張しなくても…。」
「はい、緊張はしています。でも」
それは強敵にぶつかることへの恐怖、そして、興奮だ。
「それ以上に、楽しみです。」
「…、そうか。お互い全力で戦おう。」
「はい!」
こうして、僕たちのファイトが始まった。
「スタンドアップ・ヴァンガード!」
「スタンドアップ・ヴァンガード!」
「《サンライズ・エッグ》!」
《サンライズ・エッグ》
G0 パワー6000
「《天弓の騎士ベイス》!」
《天弓の騎士ベイス》
G0 パワー6000
卵の姿になった僕に相対するのは翼と弓を持った小さな騎士。天空の聖域を守るクラウドナイツの騎士が今回の相手だ。
「《天剣の騎士フォート》にライド!」
「《焔の巫女リノ》にライド。ヴァンガードにアタック!」
「ノーガード」
「ドライブチェック、トリガーはなし。」
「ダメージチェック」
ダメージゾーンに置かれたのは《唱導の騎士レフェルソス》
あ互いに手のうちを見せずに進む序盤の展開。だが、なぜか僕はわずかに違和感を感じていた。
「《天槍の騎士ルクス》にライド!ルクスにライドされたフォートのスキル、手札のグレード3のユニットを2体公開することでカードを1枚ドローする。」
こちらに公開したのは《豪儀の騎士オールデン》《頂の天帝バスティオン》。
最初に感じた違和感の正体を探るため、相手のプレイングに集中する。
「ルクスでヴァンガードにアタック!」
「ノーガードです。」
「ドライブチェック、トリガーはなしだ。」
ドライブチェックで出たのは《聖裁の刻、来たれり》
(これもグレード3、偶然なのかな?)
「《焔の巫女レイユ》にライド!レイユにライドされたリノのスキルでトリクスタをコールします。《焔の巫女ヒメナ》をコール。ヒメナのスキルで発動!オーバードレスを持つユニット、《ヴェルリーナ》を手札に加えます。」
僕は相手の状況からある仮説を立てた。それを確かめるため、少し強気に攻める。
「炎の精霊よ、祈りを叶えるため進化せよ!オーバードレス!希望の守護者《ヴェルリーナ》!!」
リノによって呼び出されたトリクスタが炎に包まれ、精悍な炎の精霊へとその姿を変える。
「バトル!レイユでヴァンガードにアタック!」
「《天槌の騎士グルガント》でガード!」
《天槌の騎士グルガント》シールド15000
「ドライブチェック!ゲット、ドロートリガー!パワーはヴェルリーナに。ヴェルリーナでヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック。」
そうしてトウヤさんのダメージゾーンに置かれたカードは…。
《唱導の騎士レフェルソス》
「やっぱりグレード3!」
「へえ、もう気付いたのか。」
相手のファイト、カードの情報を見て、相手がどんなファイトをするのかイメージする。それは、以前ダンジさんに教わったことだ。トウヤさんの公開したカードはグレード3のユニットが多かった。そこから考えられるトウヤさんのファイトは…。
「グレード3を中心に構成されたパワーデッキ…。」
「その通り、つまり、ここからが本番ということだ!行くぞ!」
そう、グレード3が多いゆえに使えなかった手札がここからはフルに使えるようになる。ここからがまさに本番だ。
「今こそ立ち上がれ!共に頂を目指す俺の分身!ライド!」
トウヤさんが天から降り注いだ光に包まれる。光が収まるとそこにいたのは聖剣を掲げた、光の騎士。
「《頂の天帝バスティオン》!」
《頂の天帝バスティオン》
G3 パワー13000
「《豪儀の天剣オールデン》をコール。そして、スキルを発動。手札から《唱導の騎士レフェルソス》をコール。このスキルでグレード3をコールしたため手札を2枚ドロー。」
《豪儀の天剣オールデン》
G3 パワー13000
《唱導の騎士レフェルソス》
G3 パワー13000
「さらに《斧鉞の騎士ラフルク》をコールし、スキル発動、このユニットをソウルに入れ、バスティオンにパワー+10000」
《頂の天帝バスティオン》
パワー23000
「それだけじゃない、バスティオンがいることで、自分のターン、グレード3のユニットすべてにパワー+2000だ!」
《豪儀の騎士オールデン》
パワー15000
《頂の天帝バスティオン》
パワー25000
《唱導の騎士レフェルソス》
パワー15000
単体で相手のヴァンガードに攻撃を通すことができるグレード3のユニットが並ぶ。さらにバスティオンがいることで、ただでさえパワーが高いのユニットがさらにパワーアップしていく。
「行くぞ!オールデンでリアガードのヴェルリーナにアタック!自分の場にグレード3のユニットが3体以上いるため、パワー+5000」
《豪儀の騎士オールデン》パワー20000
ブーストもなしに15000ものシールドを要求してくる攻撃。さすがにガードできない。ニルヴァーナが退却してしまう。
「バスティオンでヴァンガードにアタック!」
「《ツインバックラードラゴン》!手札を1枚捨てて完全ガード!」
「ツインドライブ!」
《アイジスメア・ドラゴン》トリガーなし
《天槌の騎士グルカント》クリティカルトリガー
「クリティカルトリガー!効果はすべてレフェルソスに!」
《唱導の騎士レフェルソス》パワー25000
騎馬で斬りこんできたバスティオンの体剣をドラゴンが受け止める。
だが、そのすぐ横ではすでにもう一人の騎士が弓を引き絞っていた。
「レフェルソスでヴァンガードにアタック!」
「ノーガード!」
光の弓矢がニルヴァーナの体を貫いた。
これでダメージは3。ここからも激しい攻撃が続くだろう。
「スタンド&ドロー…。」
だが、相手のデッキにはグレード3のユニットが多く入っているという情報を得た。グレード3のユニットはパワーが高くスキルも強力なものが多い。だが…、
(グレード3のユニットはシールドを持たない。パワーラインを整えて攻撃すれば、手札があっても守れないはずだ!!)
「目覚めろ!新しい自分!熱き炎とともに生まれ変われ!ライド・ザ・ヴァンガード!《天輪聖竜ニルヴァーナ》!」
殻を破り現れる、ニルヴァーナ。こちらも本番はここからだ。
「ニルヴァーナにライドされたレイユのスキルでヴェルリーナを手札に加える。さらにニルヴァーナのスキル。手札を1枚捨ててトリクスタをスペリオルコール!」
再びよみがえる炎の精霊。そしてここから攻撃を通しやすくするために、陣形を整える必要がある。そのために、僕が呼び出すのは新しい仲間だ。
「炎の精霊よ、新たな姿で未来へ続く架け橋となれ!オーバードレス!」
再びトリクスタは炎に包まれる。だが、今度は大きな翼を広げて、自ら炎を振り払った。そして、現れたのは人型だったヴェルリーナとは違う。ワイバーンの姿をした精霊だった。
「祈りの翼《ヴェルリーナ・アルクス》!」
《ヴェルリーナ・アルクス》
G2 パワー10000
「ドレス先を変えることで、様々な戦い方ができる。これがニルヴァーナとトリクスタの力か!」
「《ヴェルリーナ・アルクス》のカウンターブラスト!手札を2枚ドロー!」
これで手札は六枚。これなら十分に陣形を整えられる。
「《焔の巫女トレッサ》と《焔の巫女アルーナ》さらに《焔の巫女ミリン》をコール!」
《焔の巫女トレッサ》
G2パワー10000
《焔の巫女の巫女アルーナ》
G1パワー8000
《焔の巫女ミリン》
G1パワー6000
「これは!」
僕が手札を使って埋めたリアガードサークルを見てトウヤさんは驚く。そう、この3回の攻撃は全てパワー18000以上のライン。そこからさらにスキルでのパワーアップが発生する。ガードしようと思えば手札の消費は免れない。だが、相手の手札は殆どがグレード3。ならばこの攻撃はどこかで受けるしかないはずだ。
「ニルヴァーナのスキル発動!ニルヴァーナとヴェルリーナ・アルクスにパワー10000!バトル!!」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》
パワー23000
《ヴェルリーナ・アルクス》
パワー25000
「ミリンのブースト、ニルヴァーナでヴァンガードにアタック!」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》パワー23000+《焔の巫女ミリン》パワー6000
「ノーガード。ツインドライブ!」
《焔の巫女ゾンネ》クリティカルトリガー
「ゲット!クリティカルトリガー!パワーはヴェルリーナ・アルクスにクリティカルはヴァンガードに!」
《焔の巫女ゾンネ》クリティカルトリガー
「ゲット!クリティカルトリガー!!パワーはトレッサに!クリティカルはヴァンガードに!!」
《ヴェルリーナ・アルクス》
パワー35000
《焔の巫女トレッサ》
パワー20000
《天輪聖竜ニルヴァーナ》
パワー23000 ☆3
「希望の炎で世界を照らせ!!リンカーネイションフレアッ!!」
クリティカルトリガー2枚分のパワーが乗った巨大な火球が、バスティオンに降り注ぐ、バスティオンは剣で受け止めようとするがニルヴァーナがさらに力を込めると火球はさらに大きくなる。耐えきれなくなったバスティオンはそのまま押し込まれてしまった。
「くっ!ダメージチェック」
《アイジスメアドラゴン》トリガーなし
《聖裁の刻、来たれり》トリガーなし
《天貫の騎士ガルス》ドロートリガー
「ゲット、ドロートリガー。パワーはバスティオンに!」
《頂の天帝バスティオン》パワー23000
これで一気に3ダメージ。5ダメージまで追い込んだ。そして、リアガードのパワーも十分だ。
(一気に押し込む!)
「アルーナのブーストしたトレッサでヴァンガードにアタック!」
《焔の巫女トレッサ》パワー20000+《焔の巫女アルーナ》パワー8000
「ガード!《天杖の癒し手アーシェス》」
《天杖の癒し手アーシェス》シールド15000
武闘派巫女、トレッサの回し蹴りはバスティオンにヒットする前にアーシェスの魔術障壁によって止められてしまった。
ここでヒールトリガーでガード。さっきのドローで引き当てたようだ。
「ヒメナのブーストしたヴェルリーナ・アルクスでヴァンガードにアタック!ミリンのスキル!このカードをソウルに入れることでヴェルリーナ・アルクスにパワー+5000。」
《ヴェルリーナ・アルクス》
パワー40000
パワーは合計48000、でも
「《アイジスメア・ドラゴン》!手札を1枚捨てて完全ガード!」
「くっ、ターンエンドです。」
決めきれなかった。この後も強力な攻撃が来る。なんとか守りきるしかない。さっきのダブルトリガーのおかげでガード値は十分にある。ドローで完全ガードを引き込むこともできた。ダメージは3、一部の攻撃を受けることもできる。
(防ぎきって見せる!)
そんな僕を見たトウヤさんは静かに笑っていた。
(なるほど、これは…。)
ー
先日、トウヤさんにダンジさんからの電話があった。その内容は…。
「俺の後輩が初めてショップ大会に出るんだが、そこで一つ、お前の胸を貸してやっちゃくれないか?」
「大会初参加の初心者と戦えって?」
江端トウヤは加賀のトップファイターとうたわれる実力者だ。そんな彼が大会初参加の初心者と戦えば、その子の心を追ってしまう可能性がある。そんなお願いを簡単に聞くことはできない。
でも、そんなことは…
「お前だってわかってるだろう?もし、そのせいでその子がヴァンガードをやめる可能性だって…。」
「いや、その心配はねえ。」
言い切るダンジ。一見すると軽率ともとれる発言だが、桃山ダンジがそんな無責任な男でないことはトウヤも理解している。
「あいつは本気だ。そんな程度で折れるタマじゃねえ。それにな、やつは初心者だが強い。気を抜けば、お前でも負けるかもしれねえぞ?」
こうして、トウヤはこのショップ大会に参加することになったのだった。
ー
(さすが、ダンジがいうだけのことはある。本当にいいファイターだ。)
江端トウヤが対戦相手となれば、ファイトだけで満足だというファイターも多い。そういうファイターはみな、最初から勝つつもりなんてないのだ。だが、このユウユは最初から最後まで勝つつもりで全力でファイトを挑んできた。そして、今も諦めていない。本気の目をしている。気を抜けば負ける可能性もあるというのもまんざら嘘ではないようだ。
「スタンド&ドロー。ここまで素晴らしいファイトをしてくれたんだ。俺も本気で答えないとね。」
トウヤさんが僕を見て笑った。何か来る!
「今こそその魂を昇華させ、さらなる高みへ!ペルソナライド!!」
バスティオンが光に包まれる。その光がバスティオンの剣に収束した。
「これは!?」
「ペルソナライド。同じ名前のヴァンガードにライドすることで発動する新しい力だ。その効果でカードを1枚ドローし、このターン前列すべてにパワー+10000!」
ただでさえ、高いパワーを持つグレード3のユニットがさらに力を増してしまった。
「ペルソナライドをしたターンレフェルソスはブーストを獲得する。レフェルソスを後列に下げ《豪儀の騎士オールデン》と《斧鉞の騎士ラフルク》をコール。ラフルクのスキル発動、このユニットをソウルに入れてバスティオンにパワー+10000。さらにバスティオンのスキルでグレード3のユニットすべてにパワー+2000だ!」
《豪儀の騎士オールデン》パワー25000
《唱導の騎士レフェルソス》パワー15000
《頂の天帝バスティオン》パワー35000
《豪儀の騎士オールデン》パワー25000
次々にパワーを上げていくユニットたち。精悍な騎士たちが僕に立ちはだかる。
「バトル!レフェルソスのブースト、オールデンでヴァンガードにアタック!オールデンはスキルでパワー+5000!」
《豪儀の騎士オールデン》パワー30000+《唱導の騎士レフェルソス》パワー15000
「ガード!さらにインターセプト!」
《焔の巫女ゾンネ》シールド15000
《焔の巫女ゾンネ》シールド15000
《焔の巫女トレッサ》シールド5000
「バスティオンでヴァンガードにアタック!」
ここで僕は自分の手札とダメージを見る。ダメージは3、残りの手札は3枚、《焔の巫女ローナ》《トリクスタ》《焔の巫女ヒメナ》15000が1枚と5000が2枚、さらに《ヴェルリーナ・アルクス》のインターセプトが使える。
次のオールデンはスキルでパワーを上げてくるのでパワー30000。トリガー1枚分ならパワーが上がっても防ぎきれる。ならばここは…
「ノーガードです!」
「ツインドライブ!」
《天貫の騎士ガルス》クリティカルトリガー
「ゲット、クリティカルトリガー!パワーはオールデンに、クリティカルはヴァンガードに!」
ここが勝負を分ける分水嶺。ヴァンガードの攻撃でダメージが5までたまるのが確定している。手札とフィールドのガード値は30000、オールデンのパワーは現在40000。
トリガーがなければ、防ぎきれるが、トリガーがでれば負けだ。
「セカンドチェック」
トウヤさんが2枚目をめくる。僕はそれを固唾をのんで見つめた。
そして、出たカードは…。
《斧鉞の騎士ラフルク》
「ノーマルユニット…、やった!トリガーじゃない!!」
これなら、ダメージチェックでトリガーが出なくても、手札とフィールドのカードをすべて使えばオールデンの攻撃は防げる。次のターンにつながった。僕が、そう思ったその時だった。
「トリガーじゃない…、そう、普通ならね!」
勝ちが見えた。そう思った僕にトウヤさんがつきつけたのは非情な現実だった。
「バスティオンのドライブチェックでグレード3のユニットが出たとき!手札を1枚捨てることで、自分のグレード3のユニットをスタンドし、パワー+10000を与える!!」
「なっ!?」
「オールデンよ、光輝の輝きを受けて、もう一度立ち上がれ!アウェイクニング・ホーリネス!!」
《豪儀の騎士オールデン》
パワー35000
「さらに、レフェルソスは他のユニットがスタンドしたときに自身もスタンドする!」
ここでパワー50000での追加攻撃。一縷の望みをかけたダメージチェックでもトリガーは出なかった。
「イメージしろ」
オールデンがこちら側に切り込む。それを阻む三人の焔の巫女とヴェルリーナ・アルクス
「これが神聖国家ケトルサンクチュアリの正規軍」
オールデンは自分の剣を犠牲にして巫女と精霊を薙ぎ払った。それを見たそれを見たバスティオンは自らが持つ光輝の天剣をオールデンに投げ渡す。それを受け取ったオールデンは剣を構えてニルヴァーナへと走った。
「クライドナイツの光輝の天剣の威力だ!!」
光輝の天剣がニルヴァーナの体を切り裂いた。
「うわああああああああああああ!!!!」
最後のダメージチェックでもトリガーはなし。こうしてトウヤさんとのファイトは幕を閉じた。
トウヤさんは立ち上がり、店員さんに結果の報告に行く
(さて…。)
トウヤの全力の攻撃を受けて敗北したユウユ。立ち直るには時間が必要だろうと彼は考えていた。あるいはダンジがフォローするだろうか?
「あ、あの」
だが、そんな心配をよそにユウユはトウヤと呼び止めた。そして
「ありがとうございました。」
楽しそうにそう答えた。どうやらトウヤの心配は杞憂だったようだ。
(お前の見込んだファイターはお前の想像以上に強い男みたいだな。ダンジ…。)
ー
「じゃあ、結局一回戦で負けちまったのかよ。情けねえな。」
「ははは、すみません。」
再び廃墟の遊園地で大会の結果をカツジさんやみんなに報告するユウユ。結果こそ一回戦負けという残念なものだったが、ユウユの表情は晴れやかだった。
「その割にはそんなに落ち込んでないなお前。」
「はい、その、もう一つ新しい目標ができたから…。」
桃山ダンジを越える。そう決めたばかりだったが、あのファイトでもう一人越えたいというファイターに出会えた。
(江端トウヤさん、僕はあなたに勝ちたい!)
きっと、これからもヴァンガードを続けていけば、たくさんの強いファイターに出会うのだろう。そして、戦って負けて、勝ちたいと願って。それを繰り返していくんだろう。ヴァンガードの道に終わりはないのかもしれない。でも、だからこそ、ヴァンガードは面白いんだ。
その様子を見たダンジも、静かに笑っていた。
「あれ、そういえばメグミさんは?」
「ああ、あいつ昨日から来てねえんだよ。前に言ってた用事ってのが終わってないじゃね?」
「そうなんですか…。」
この時の僕は想像していなかった。これがこの廃墟の遊園地にとって、大きな事件につながるだなんて…。
メグミはある人物と対面していた。
渡される1枚の書類。そして男はメグミに告げた。
「あきらめろ、これはもう決まったことだ。」
次回「裏切りのメグミ…?」