ヴァンガードoverDress 新訳版   作:ふぁみゆ

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第五話「裏切りのメグミ…?」

その日僕が廃墟の遊園地に来ると、門の前にみんなが集まっていた。

どうしたのかと様子を見に行くと、みんなの視線は門に張り付けられた1枚の張り紙に集中しているのに気づく。周りの人をかき分け、その紙を見るとそこにはこう書かれていた

 

『通知書、近隣住民の皆様におかれましては、平素は格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。この度、地域再開発に伴い、「ゆめのくにワンダヒル」解体工事の視察を実施させていただくことになりました。現状確認のため、近日中に役所より担当の者が直接視察に伺います…』

 

「か、解体工事!?…、遊園地を取り壊すの!?」

 

突然の通知に僕は驚く、周りの人たちも突然のことで受け入れることができないようだ。

どうして突然…。

 

そこへ一台の車がやってきた。そこから降りてきたのは役所の視察員。そして…

 

「君たち、こんなところでたむろするのはやめてくれないかな?近所迷惑になるだろう?」

 

加賀の国の藩主、大倉タカミだ。通知書には役所の人と書かれていたが、藩主が直々に来たようだ。

 

「あ、あの藩主様…。」

「何かな?」

 

一人の女性がタカミさんに尋ねた。

 

「ここ、取り壊しちゃうって、ことですよね?どうして…。」

「そんなに不思議なことかな?地域再開発のために、老朽化した施設を取り壊そうと候補が出てね、ここはそのうちの一つなんだよ。」

 

そういって、遊園地を指さすタカミ

 

「遊園地あとなど、なんの生産性もない、空き地同然の場所。街の景観を損ね、不良のたまり場にもなる場所だ。いつまでも残していては街にとっては害にしかならない。」

「なんだと!?」

 

そのタカミの言葉に一人の男が激昂し、タカミのほうに歩いて行ってしまった。

 

「待ってください!危害を加えたりしたら!」

 

僕の制止を聞かず、その人はタカミさんの胸倉をつかんでしまった。すぐにボディーガードがその人を引きはがし、取り押さえる。

タカミさんはやれやれと服装と整えてその人を見下した。

 

「すでに不良のたまり場だったか。あいつの言っていた通りだな?」

「あいつ?」

 

タカミさんが呟いた言葉に、その人は取り押さえられながらも聞き返す。するとタカミさんは驚くべきことを口にした。

 

「なんだ、知らなかったのか?ここに来ていた大倉メグミのことだ。あいつは、俺の妹なんだよ。」

 

その言葉にみんなが凍り付いた。そして、何も言えなくなってしまった。

 

 

 

 

 

その後、タカミさんから言い渡されたのは、今年の末にここが取り壊されるという事実だった。だがそれ以上にみんなの心に残っていたのは…。

 

「メグミのやつ、あのタカミのスパイだったのか…。」

 

タカミさんが言っていたメグミさんの言っていた通りだといった言葉。その一言のせいで、ここにいるみんなのメグミさんに対する不信感が高まっていた。

でも、僕にはメグミさんがそんな人だとは思えなかった。

 

「待ってください。まだそうと決まったわけでは…。」

「なんだ、お前、ずいぶんとあいつの肩を持つじゃないか。」

 

メグミさんをかばおうとする僕に対して、メンバーの一人が突っかかってきた。

 

「そういえば、お前、あいつとずいぶんと仲が良かったじゃないか。何か知ってるんじゃんないのか?」

 

メグミさんに向いていた疑いの目が今度は僕に向けられた。

 

「本当はお前もスパイなんじゃないのか!?」

 

その人につかみかかられて、何も言えなくなってしまった。

そこへやってきたのは、いつも遅くに来るチームのリーダーだるダンジさんだ。

 

「“伝説との邂逅”3箱買っちゃったな。いや~、ヴァンガードの黎明期を支えた往年のカードがリメイクして、復刻か~。こんなのもう大量に買い込むしかないだろ…、!、何やってんだお前ら!やめろ!!」

 

ダンジさんの制止を受けて、僕は解放された。それを見たダンジさんは「何があった?」と状況を確認。改めて、みんなで事情を説明した。

 

「…、ここの取り壊しか。まあ、いずれそんな日が来るかもとは思って居たんだがな…。」

「ダンジさん、なんとかできないんですか?」

 

メンバーがすがるようにダンジさんに訴えるも、ダンジさんは首を横に振る。

 

「すまねえな、ファイター資格を剥奪されてる今の俺にできることは何もねえんだ。」

「そんな…。」

 

どうやら、ダンジさんでも難しいらしい。

とてもヴァンガードをやるような気分になれない僕たちは一旦解散となった。

他の人たちが帰った後、一人残った僕にダンジさんが話しかける。

 

「お前は帰らなくていいのか?」

「はい、ここの解体はもちろん悲しいけど。それより、気になるのが…。」

「メグミのことだな。」

「はい」

 

僕はメグミさんにもらった、『トリクスタ』のカードを見つめた。

僕をこの場所に、ヴァンガードの正解に誘ってくれたメグミさん。いつも楽しそうに笑っていたメグミさんがここの人たちのことを悪く言うとは思えない。ましてやスパイだなんて…。

でも、ここ数日、メグミさんは来ていない。このままではメグミさんに対する疑念はさらに深まっていくことだろう。

 

「一度メグミとはちゃんと話をしないといけないな。ユウユ、お前今度の土曜日空いてるか?」

 

 

 

 

休日、朝食を済ませたメグミは自室に座る。そして、何か思いつめたようにため息をつき、1枚のカードを手に取った。

(こんなはずじゃなかったのに…。)

 

「お嬢様」

 

そこへノックの音と執事の山倉の声が響く。

 

「どうしたの?」

「お友達がいらしています。」

「友達?」

 

そうして部屋を出て、応接間に向かうとそこにいたのは、近藤ユウユと桃山ダンジの二人だった。

 

「お邪魔してます…。」

「はは、藩主様の邸宅だけあってすごいな…。」

 

初めてのお屋敷で緊張して硬くなっているユウユと、広い邸宅に来てもマイペースを貫くダンジ。

そんな二人に対するメグミの反応は極めて冷たいものだった。

 

「何をしに来たの?」

 

座りもせず、目も合わせずただそれだけしか言わないメグミ。

普段の優しいメグミからは考えられないような行動にユウユはまたしても、何も言えなくなってしまった。

対するダンジはある程度予想はしていたのだろう、余裕を崩さない。

 

「まあ、そう邪見にしないでくれよ。とりあえずさ、これ見てくれよ。ダイナマルのSP版が当たったんだ。」

「ふざけないで!」

 

ダンジの飄々とした態度に怒ったメグミは声を荒げてしまう。

 

「大声を出して、ごめんなさい。でも、どうせワンダヒルの取り壊しことで来たんでしょ?でも、無駄よ。私にできることなんて何もないから。」

「待ってください。僕はただ!」

「それとも、謝ったらいいのかしら?私、藩主様の妹だってことずっと黙ってたもんね。」

 

メグミはユウユの言葉を聞こうとしない。常に攻撃的な態度を示し、ユウユが何を言おうと遮ってしまう。

 

「とにかく、私に話すことなんてないの。いますぐ出て行って頂戴。」

「まあ、待てよ。」

 

何も言えないユウユに代わって、口を開いたのはダンジだ。

 

「お前、もうワンダヒルに来ないつもりなんだろ?だったら最後にあの場所で、ユウユとファイトしてやってくれないか?」

「なんで?」

 

唐突ともとれるダンジの提案。それはユウユにとっても以外な提案だ。

 

「俺からの最後のお願いだ。ファイトしてくれたら、もう何も聞かないし、付きまとったりしない。それでどうだ?」

「…、わかった。夕方にそっちに行くから。」

「よし、決まりだな。行くぞユウユ」

 

こうして、ファイトの約束を取り付けてダンジとユウユは大倉家を後にした。

 

「ちょっと!ダンジさん。」

 

突然のことで混乱した僕はダンジさんを引き留める。

 

「ああ、すまねえな、お前の断わりもなく約束を取り付けちまって。でも、ああするしかなかった。いや、ああいうのが一番よかったんだ。」

 

僕が不服を申し立てるとダンジさんはすぐに謝ってくれた。しかし、僕にはダンジさんの言葉が理解できない。あんな方法で本当に良かったのだろうか?

 

「今のメグミの様子じゃ、話なんてとてもじゃないができないからな。完全に心を閉ざしちまってる。それに、お前も自分の言いたいことを相手に言葉で伝えるのは苦手だろ?」

「うう、たしかにそうですけど…。」

 

自分でも情けない話だが、あのまま話を続けても、僕は何も言えなかっただろう。

 

「だが、幸いにも俺たちはヴァンガードファイターだ。言葉で語り合えなかったとしても、カードで語りあうことができる。」

「カードで語り合う?」

「そうだ。」

 

ダンジさんは僕のデッキケースを指さした。それにつられた僕は自分のデッキを手に取る。

 

「ファイトには、その人間の心が現れる。心のすさんでいるファイターはイライラして攻撃的なファイトをするし、迷いを抱えた人間は優柔不断なファイトになる。弱気な奴は守りを中心にした弱気なファイトをする。ヴァンガードファイターにとって、ファイトは心の写し鏡なんだ。」

 

今までたくさんの人とファイトをしてきた僕は自然とその言葉を理解できるよな気がした。

 

「お前はヴァンガードを初めてまだ日が浅いが、真摯にファイトに向き合うことができる。だからきっと、お前ならできると思うぜ。ファイトでメグミと語り合うことが。」

「本当にそんなことができるんでしょうか。」

「できるさ。自分を信じろ。それができないなら、お前を信じるおれを信じろ。」

 

カードで語り合う。そんなに簡単なことだとは思えない。でも、ダンジさんは僕を信じてくれた。それに本当にカードでメグミさんと話し合うことができるなら。やるしかない。

 

「わかりました。やってみます。」

 

こうして、僕たちは一足先に廃墟の遊園地へと向かった。

 

(そうだ。俺にはできなかったが、お前ならきっと…思いを届かせることが。)

 

 

 

 

夕方、廃墟の遊園地にメグミさんがやってきた。

いつもと同じ、ボーイッシュな恰好、だが、いつもと違い、表情は硬い。

周りの反応も、冷たいものだった。裏切者疑惑のせいで、いつもメグミさんと話していた女の子たちまでメグミを避けてひそひそ話をしている。

周りを無視して、メグミさんがやってきたのは一番目立つ中央のファイトテーブル。そしてそこで待っていたのはデッキを持った僕だ。

 

「来てくれてありがとうございます。」

「…、約束だから。これで最後だからね。」

「はい、でもうれしいです。メグミさんとこうしてファイトができるの」

「…、!。うるさい、さっさと始めるよ。」

「はい、でもやるからには全力でお願いします!」

 

こうして、周りが見つめるなか、僕たちのファイトは始まった。

(ダンジさんは、ああいっていたけど、僕は僕のできることをしよう。相手のファイトをよく見て、イメージするんだ。)

 

「スタンドアップ・ヴァンガード」

「スタンドアップ・ヴァンガード」

 

「《サンライズエッグ》!」

G0 パワー6000

 

孵化を待つ卵にライドして僕。相対するメグミさんのユニットのは

 

「《樹角ローテ》!」

G0 パワー6000

 

樹木の角を持った獣のユニット。

 

「樹角獣、これがメグミさんのユニット…」

「レスティアの森の守護者たち。ユウユ君は私に全力で戦えって言ったけど、このカードでファイトするからには手加減なんてできないよ。ライド!《樹角獣カリス》!」

 

《樹角獣カリス》

G1 パワー8000

 

「ライド!《焔の巫女リノ》!アタック!」

 

《焔の巫女リノ》

G1 パワー8000

 

「ノーガード」

「ドライブチェック、トリガーはなし。」

 

「ライド!《樹角獣ラティス》!」

 

《樹角獣ラティス》

G2 パワー10000

 

「ラティスにライドされたカリスのスキル!山札の上1枚を確認し、そのカードがグレード2以下のユニットならリアガードサークルにコールし、違うならソウルに!」

 

出てきたカードは《樹角獣アーレイオ》、そのままリアガードサークルにコールされる。

 

「さらに《樹角獣ドゥーガー》《樹角獣アーレイオ》をコール!アーレイオのスキル、このユニットを退却させリアガード2体にパワー+5000!バトル!」

 

《樹角獣アーレイオ》

G2 パワー15000

《樹角獣ドゥーガー》

G2 パワー15000

 

グレード2のユニットを次々と展開し、速攻を仕掛けてきたメグミさん。

 

「《樹角獣ラティス》でヴァンガードにアタック!」

「ノーガード。」

「ドライブチェック」

 

《樹角獣ジャッカロープ》クリティカルトリガー

 

「クリティカルトリガー!パワーはアーレイオにクリティカルはヴァンガードに!」

 

《樹角獣アーレイオ》パワー25000

 

メグミさんのラティスの周囲から岩が浮かび上がる。そして、その岩は自然に砕かれていき、鋭い槍の形になる。そして、ラティスの動きに合わせて、石槍は僕のほうへ飛んできた。それを代わりに受け止めたのはリノ。その華奢な体を傷付けながら、卵である、僕を守る。

「くっ!?」

 

《焔の巫女アルーナ》トリガーなし

《トリクスタ》トリガーなし

 

「ドゥーガーでヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード!」

 

《天輪聖竜ニルヴァーナ》トリガーなし

 

「アーレイオでヴァンガードにアタック」

「ガード!」

 

《焔の巫女ゾンネ》シールド15000

《焔の巫女ヒメナ》シールド5000

 

2ターン目にして、高いパワーでの連続攻撃。リアガードたちがお互いに干渉しあってパワーを上げていく。これがメグミさんの戦術なのだろうか?

 

「ターンエンド。」

 

ファイトに現れるというメグミさんの心は分からない。でも、今はそう簡単に負けるわけにはいかない。

 

「スタンド&ドロー…。ライド!《焔の巫女レイユ》!レイユにライドされたリノのスキル!《トリクスタ》をスペリオルコール!」

 

《焔の巫女レイユ》

G2 パワー10000

《トリクスタ》

G0 パワー5000

 

メグミさんの連続攻撃に対応するには手札の枚数が必要になる。そのために今必要なユニットは…。

 

「オーバードレス!希望の翼、《ヴェルリーナ・アルクス》!」

 

《ヴェルリーナ・アルクス》

G2 パワー10000

 

「《ヴェルリーナ・アルクス》のスキル!カウンターブラスト、ヴェルリーナ・アルクスにパワー+5000、そしてカードを2枚ドロー!」

 

これで手札を増強し、ガードに必要な手札を整える。だが、味方のパワーを上げるスキルを持つリアガードが残っている。カウンターブラストは使えないが、アタックすることならできる。

 

「手札から《トリクスタ》《焔の巫女アルーナ》をコール!」

 

《トリクスタ》

G0 パワー5000

《焔の巫女アルーナ》

G1 パワー8000

 

「バトルです!」

「!?、オーバードレスしていない《トリクスタ》を前列に!?」

 

僕の盤面にメグミさんは同様を隠せない。しかし、これは相手の盤面を切り崩すための行動であると同時に、僕のメグミさんに対する問いかけでもあった。

 

「アルーナのブーストしたトリクスタで《樹角獣ギュノスラ》にアタック!アルーナのスキル!グレード0のユニットをブーストした時、このユニットにパワー+5000」

 

《トリクスタ》パワー5000+《焔の巫女アルーナ》パワー13000

 

グレード0を含めながら、そのパワーはG3のヴァンガードにも有効な18000に届いている。パワー10000のギュノスラを守るには15000のシールドが必要だ。当然、それだけの手札を使うわけにはいかず。

 

「ノーガード」

 

火の玉となったトリクスタをアルーナが投げつけ、それがギュノスラに命中。そのまま頭に火がるいたギュノスラは退却していった。

だが、メグミさんはそれ以上に動揺しているのが、僕にはわかった。

 

「ヒメナのブーストしたレイユでヴァンガードにアタック!」

「ノーガード」

「ドライブチェック!」

 

《ツインバックラードラゴン》トリガーなし。

 

レイユの炎に焼かれて、苦しむラティス。同時にメグミさんも苦悶の声を上げる。

これでダメージは2対2。でも僕はここで…。

 

「《ヴェルリーナ・アルクス》でリアガードの《樹角獣アーレイオ》にアタック!」

「なっ!?」

 

メグミさんはガードせずにアーレイオは退却。

《ヴェルリーナ・アルクス》はパワー15000。ヴァンガードの《樹角獣ラティス》に攻撃した時のシールドの要求値は10000。メグミさんは手札1枚または2枚消費だ。それなら次の攻撃に参加してくるリアガードを減らして、自分のグレード3のターンに全力を尽くそう。

そう、考えての攻撃だったのだが、メグミさんにはそうは映らなかったらしい。

 

「ふざけないでよ!」

 

突然のメグミさんの罵声。その目は怒りに満ちている。

 

「別にふざけてなんかいません。」

「じゃあ、なに、私なんて相手にする必要ないっていうの!?」

 

そして、メグミさんはギャラリーに目を向ける。

 

「そうだよね。私、ここじゃ裏切りものって呼ばれてるんだよね。」

「メグミさん?」

「いいよ、別に間違ってないし。ここのことをカツミさんに私だし、ここが取り壊されることになったのは私のせいだから。」

 

その言葉に周りはさらにざわめいた。

しかし、僕には、そんなメグミさんに違和感を感じていた。

 

「なら、私の顔なんて見たくないでしょ?さっさと終わらせてあげるわ。」

 

メグミさんは手札を捨てる、そして冷たい態度を崩さない。

そして、切り札となるグレード3のユニットにライドした。

 

「すべての命に恵みと祝福を!ライド!」

 

深い森の奥から現れる森の王者。その者が歩くたびに足元から草花が生え、風が吹き抜ける。

王冠にも見える樹の角を持った獣がその姿を現した。

 

「《樹角獣王マグノリア》!」

 

《樹角獣王マグノリア》

G3 パワー13000

 

「マグノリアにライドしたラティスのスキル。山札の上一枚を確認しユニットならスペリオルコール、違うなら手札に」

 

《樹角獣ドゥーガー》

G2 パワー10000

 

再び、前のターンと同じスキルでリアガードを展開する。

 

「手札から《樹角獣ドゥーガー》《ルーティングペタルストマリア》をコール!」

 

《樹角獣ドゥーガー》

G2 パワー10000

《ルーティングペタルストマリア》

G2 パワー10000

 

「《ルーティングペタルストマリア》のスキル。カウンターブラスト、このユニットにブーストを与え、パワー+5000」

 

グレード2のユニットが前列にそろい、後列にはブーストの能力を得たユニット。盤面を一気に整えてきた。

 

「手札からオーダーカード《霊体凝縮》を発動。ソウルブラストを1支払い、ドロップゾーンの《樹角獣ギュノスラ》をスペリオルコールし、パワー+5000」

「え!?」

 

《樹角獣ギュノスラ》

パワー15000

 

パワー15000のグレード2のユニット。だが、出てきたのは後列だ。いくらパワーが上がっても攻撃には参加できない。一見無意味に思える。だが、その答えはすぐにわかることになる。

 

「バトルよ!ルーティングペタルストマリアのブースト、マグノリアでヴァンガードにアタック!」

 

《樹角獣王マグノリア》パワー13000+《ルーティングペタルストマリア》パワー15000

 

合計パワー28000の攻撃。まだダメージは2。無理をする必要はない。トリガーが乗ることにも期待し

 

「ノーガード」

「ツインドライブ」

 

《樹角獣王マグノリア》トリガーなし

《樹角獣ヴァーリン》フロントトリガー

 

「フロントトリガー、前列すべてにパワー+10000!」

 

《樹角獣ドゥーガー》パワー20000

《樹角獣ギュノスラ》パワー20000

 

「ダメージチェック」

 

《焔の巫女ローナ》ヒールトリガー

 

「ゲット、ヒールトリガー。パワーはヴァンガードにダメージを1回復」

 

《焔の巫女レイユ》

パワー20000

 

「この瞬間、《樹角獣王マグノリア》のスキル発動!カウンターブラスト1を支払うことでユニット1体を選択し、パワー+5000、そして、そのユニットはこのターン後列からのアタックが可能になる!」

「なんだって!?」

「これが森を統べる王者マグノリアの神助の風よ!」

 

《樹角獣ギュノスラ》

パワー20000

 

これで、メグミさんは後3回攻撃が可能になった。

その時、メグミさんは一瞬、僕のリアガードを見ていたのを僕は見逃さなかった。

 

「いや、ここは、ギュノスラでヴァンガードにアタック!ギュノスラのスキル発動!後列からアタックした時、自分のユニットにこのカードのパワーを与える!」

「インターセプト!」

 

《樹角獣ドゥーガー》

パワー40000

 

《ヴェルリーナ・アルクス》シールド5000

 

連続攻撃でにユニットのパワーを上げていくメグミさん。

 

「ドゥーガーでヴァンガードにアタック!」

「ノーガード、ダメージチェック。」

 

《焔の巫女ヒメナ》トリガーなし

 

「ドゥーガーでヴァンガードにアタック!」

「《ツインバックラー・ドラゴン》!手札を一枚捨てて完全ガード!」

「ターンエンド」

「スタンド&ドロー」

 

リアガードの数が足りず、スキルが使えない状況だったがメグミさんは攻撃をヴァンガードに攻撃を集中させた。リアガードを見ていたにも関わらずだ。

そんなメグミさんから感じたのは、焦り…。だんだんとファイトの中からメグミさんの心が見えてくる。

 

「どうして、そんなに勝負を急ぐんですか?」

「何を!?」

「メグミさん口では、僕を挑発してきますけど、僕にはなんだか、メグミさんのほうが僕から逃げようとしているような気がします。」

「…、そんなことは」

 

メグミさんは僕から目をそらした。

 

「目覚めろ、新しい自分!熱き炎とともに生まれ変われ!ライド・ザ・ヴァンガード!!」

 

樹木が生い茂る森に光が満ちる。そして、卵から聖竜が姿を現した。

 

「《天輪聖竜ニルヴァーナ》!!」

 

《天輪聖竜ニルヴァーナ》

G3 パワー13000

 

「裏切者…、僕はメグミさんのことをそんな風には思いません。」

 

ニルヴァーナにライドされたレイユのスキルでヴェルリーナを手札に加える。そして、手札を1枚捨ててトリクスタをスペリオルコール。

自分のスキルを処理しながら僕は言葉を続ける。

 

「ここでファイトをしているメグミさんはとても楽しそうだった。そんなメグミさんがここのことを悪く言うはずがない。オーバードレス!希望の守護者《ヴェルリーナ》!!」

 

《ヴェルリーナ》

G2 パワー10000

 

「でも、今のメグミさんは、メグミさんのファイトは、とても辛そうでとても悲しそうです。」

「…。」

「僕は、そんな悲しい顔をするメグミさんは見たくない…。《焔の巫女ヒメナ》と《焔の巫女ミリン》をコール…。ヒメナのスキル、山札の上7枚を確認し、その中からオーバードレスを持つユニットを手札に。お兄さんと一体なにがあったんですか?」

「いったところで何も変わらないわよ。」

「そうかもしれません。でも、きっと悲しみを分かち合うことくらいならできます。バトル、アルーナのブーストしたトリクスタでヴァンガードにアタック!アルーナはスキルでパワー5000!」

 

《トリクスタ》パワー5000+《焔の巫女アルーナ》パワー13000

 

「インターセプト」

 

《樹角獣ドゥーガー》シールド5000

《樹角獣ドゥーガー》シールド5000

 

「この《トリクスタ》はメグミさんにもらったカードです。」

「…っ。」

「僕はこの《トリクスタ》のおかげでここまでこれた。ずっと、気が弱くて、言いたいことも言えない弱い僕がここまで強くなれたのは《トリクスタ》の、メグミさんのおかげなんです。」

 

静かに《トリクスタ》に手を触れる僕、そして、手札のカードを手に取る。

 

「だから、メグミさんが悲しんでいるときは僕は力になりたいんです。」

「やめてよ!君の勝手なイメージを押し付けないでよ!私は、悲しんでなんか…、悲しくなんか」

「嘘ですよ。」

「嘘じゃない!」

「だったらどうして、メグミさんは泣いているんですか?」

 

深くかぶった帽子で隠していた涙。顔を上げると、その涙はあらわになった。

前のターン、アーレイオで攻撃しようとしたとき、僕のリアガードの《トリクスタ》を見たメグミさんは帽子を深くかぶりなおし、その表情を隠していた。その時からだろう、今までこらえていた悲しみが、この廃墟の遊園地での思い出とともにあふれ出したのは。

そのメグミさんの様子を見ていたギャラリーからのメグミさんへの罵声は完全になくなっていた。

後はこのファイトで僕の思いを伝えるだけだ。

 

「自分の《トリクスタ》がアタックしたバトルの終了時、ソウルブラスト2を支払い、手札のこのカードのスキルを発動します…。」

 

攻撃を終えた、トリクスタが炎に包まれる。メグミさんの涙を見たトリクスタはその涙を払うべくあらたな姿へと変化した。

 

「炎の精霊よ、悲しみを払うため、すべてを吹き消す風になれ!スペリオルオーバードレス!!」

 

鋭い爪を持ち、青い炎をまとった新しいヴェルリーナが姿を現した。

 

「涙を払う風《ヴェルリーナ・エルガー》!!」

 

《ヴェルリーナ・エルガー》

G2 パワー10000

 

バトルフェイズの攻撃後にスタンド状態でオーバードレスしたカード。これでさらに、攻撃回数が増やせた。あとは、攻撃に僕の思いを乗せてメグミさんに届かせる!

 

「ミリンのブースト、ニルヴァーナでヴァンガードにアタック!ニルヴァーナのスキル!自身をオーバードレスを持つユニットにパワー+10000!」

 

《ヴェルリーナ》パワー20000

《天輪聖生ニルヴァーナ》パワー23000

《ヴェルリーナ・エルガー》パワー30000

 

一気に前列のパワーを上げた僕に対して、メグミさんの手札は残り4枚。ダメージ2でどこかで受けることがきるメグミさんは

 

「ノーガード。」

 

僕自身の分身である、ヴァンガードの攻撃に自分の思いを乗せて、ドライブチェックを始めた。

 

「どんな形でも構わない。僕はメグミさんの力になりたいんです。」

 

《焔の巫女ゾンネ》クリティカルトリガー

 

「だって、メグミさんは、僕をこの世界に導いてくれた、先導者なんだから。」

 

《バーニング・フレイルドラゴン》クリティカルトリガー

 

「!、ダブルクリティカル!?」

 

火炎に押しつぶされるマグノリア。神聖な森に巨大な火柱が上がった。

炎の中から出てくるマグノリアはいまだ健在。

そこへ2体の炎の精霊が迫った。

 

拳に炎を灯したヴェルリーナ、しかし、《プラナプリベント・ドラゴン》が立ちふさがった。

そこへ、一陣の風が吹いた。

ヴェルリーナと対峙したネイチャードラゴンがマグノリアのほうを振り返ると、そこにいたのは《ヴェルリーナ・エルガー》

 

「届け!バニングホールド!!」

「私は、私は…。」

 

炎をまとったヴェルリーナ・エルガーがマグノリアに組み付き、再びマグノリアは炎に包まれるのだった。

メグミさんのダメージは6。クリティカルトリガーを引いたものの、ダブルトリガーの攻撃力を止めることはできず、勝負は僕の勝ちでおわった。

 

「私だって、ここがなくなっちゃうなんて、嫌だよ…。う、ううっ、うわあああああああん」

 

その場にへたりこんで泣き崩れるメグミさん。僕はそばにより、そっとメグミさんの肩に手を置いた。

この場にいる人に、メグミさんを裏切者だという人は、誰もいなかった。

 

 

 

 

ベンチに腰をかけるメグミさん。ようやく落ち着いたようで、僕とダンジさん、そして遊園地の仲間たちがメグミさんのところに集まっていた。

 

「ありがとう、ユウユくん。」

「いえ、僕は何も」

 

そして、ダンジさんがついに話の本題に切り込む

 

「無理のない範囲で話してやってくれねえか?お前とタカミさんの間に何があったのか…。」

「…。うん、わかった。」

 

こうしてメグミさんは、大倉家でのことを話始めた。

 

「最初は、本当にささいな会話だった。」

 

食卓でタカミはおもむろにメグミに尋ねる。

 

『最近ずいぶんと帰りが遅いみたいじゃないか。どこで何をしているんだ?』

 

「タカミさんが家族の動向を気にするのは珍しいことじゃなかった。加賀の国藩主であるタカミさんの家族がどこかで問題を起こそうものなら、あの人の名声にも傷がつくから。いつもは適当にごまかしていたんだけど、そんな兄の干渉を疎ましく思った私はつい…。」

 

『ご心配なく、タカミさんに迷惑をかけるようなことはしていませんから。』

『なに?』

『別にいいんでしょう。私がどこで何をしていようが、あなたにさえ迷惑がかからなければそれで。』

『お前…。』

 

「つい、あの人の神経を逆なでするようなことを言ってしまった。それからしばらくして、タカミさんに私は呼び出された」

 

『メグミ、もうワンダヒルに行くのはやめろ。』

『!、なんで!?』

『お前のことを調べさせた。夜な夜なあそこに通っているみたいだな。だが、あの場所はただの廃墟だ、あんなところに出入りするのなど、街の不良たちだけだろう。』

『そんなことはない!あそこは!』

『適当なことを言うな、あそこに何があるというんだ。』

 

「この場所を否定された私は引っ込みがつかなくなってしまったの。もちろん、ここは自由にヴァンガードを楽しむ場所だってことは分かっていた。でも、私はそこで、一つの嘘をついてしまった。」

 

『あそこには伝説のファイター桃山ダンジがいます。』

『伝説のファイター?』

『そうです。タカミさんだって知っているでしょう?公式戦20連勝の記録を持つ加賀を代表するヴァンガードファイターです。あそこでは彼の指導の下強いヴァンガードファイターが育成されています。いわば、ファイターの養成施設です。』

 

「とても浅はかで考えなしの嘘。そんな嘘がばれるのは時間の問題だった。」

 

また別の日、メグミはタカミに例の通知書を渡された。

 

『どうして…。』

『もともと、あの場所は、取り壊しの候補の一つだった。もし、お前の言うことが本当なら候補からは外れたんだがな。あそこに出入りしているファイターで公式戦での実績を持ったファイターなんか一人もいない。そんな連中が群れているだけでは不良のたまり場となんの違いもない。まあ、お前が言ってくれたおかげで分かったんだがな。』

 

そして、タカミは茫然とするメグミにとどめの一言を言った。

 

『あきらめろ、これはもう決まったことだ。』

 

 

こうして、今の状況があった。

 

「私があの時、アニキのことを出して、あんな嘘つかなければ、いや、最初にカツミさんに追及されたときにうまくごまかせていたら、いや、そもそも私がここに来なければ、こんなことにはならなかった。」

 

座ったままメグミさんは皆に向かって頭を下げた。

 

「本当にごめんなさい。」

 

そんなメグミさんを攻めることができる人間なんてここには一人もいない。

 

「もともと取り壊しの候補地だったんだろ?だったら、遅かれ速かれ、こうなっていたさ。お前のせいじゃない。」

 

ダンジさんがフォローに入るも、問題は何も解決していない。

 

「でも、どうするんだよアニキ。ここが取り壊しになったら。」

「ま、別の場所を探すしかないだろ!何、加賀は広いんだ。きっと見つかるさ。」

 

ダンジさんはそういうが、この場所は皆にとって、たくさんの思い出の詰まった大切な場所だということは不思議と僕にもわかった。

そして、僕は、考えていたことを口にする。

 

「あ、あの…。」

 

僕が言うと周りの視線が僕に集まってきた。緊張で委縮してしまう。でも、言わないと…。

 

「ここにいる人たちに、公式戦の実績がないから、ファイターの養成施設っていうメグミさんの話が通らなかったんですよね?なら、取り壊される前に、実績を残せば、いいんじゃないでしょうか?」

 

僕の言葉にみんなが戸惑いの声を上げた。

もちろん簡単なことじゃない。本気でヴァンガードに打ち込んでいる強い人たちを倒さないといけいないのだ。ここにいる人たちは気ままにファイトをしているだけ。大会を目標にやってきたわけじゃない。

でも、それでもやる価値はある。

 

「僕はここにきてからまだ日が浅いけど、でも、僕にとっても、ここは皆とファイトをした大切な場所です。だから!ここを守れる可能性が少しでもあるのなら、僕はそれに賭けたいんです!みんなだって気持ちはおんなじでしょう!守りましょう!この場所を!ここにいるみんなで!!」

 

わずかな静寂。そして…。

 

「そうだな。」

「ああ、やろう!」

「ダンジさんに鍛えてもらってるんだもの!私たちならできるよ!」

 

皆の顔が明るくなり、そんな声が次々に上がった。

僕の言葉でみんなに希望が戻った。僕たちチームブラックアウトはここから新たに始まったのだった。

 

「ユウユ君…。」

 

そんな僕をメグミさんが見つめている。

 

「ははは、いつになくかっこつけちゃいました。似合わないですよね。こういうの?」

「いや、すごく格好良かったよ。」

 

こうして、メグミさんにもようやく笑顔が戻ったのだった。

 

「全く、大したやつだぜ。」

 

ダンジさんは一人静かに笑う。

 

(たった一人でここにいるみんなに道を示しちまった。メグミに導かれてきたって言ってたが、今じゃあいつも立派なヴァンガードだな。)




「ありがとうユウユ君おかげで私も前を向けたよ」
「本当に大変なのはここからです。とにかく大会に出ないと」
「でも大きな大会に出るならチームが必要だよ?メンバー集められるかな?」
「チーム!?」

メンバー集めのため、カードショップをめぐるユウユとメグミ。
その様子を婦警、瀬戸トマリが見ていた!
なぜか、甘い雰囲気(に見える状態)になるユウユとメグミ、そんな二人にトマリが笛を吹く。
そして始まる。トマリとメグミのファイト。
メグミの樹角獣たちが次々に監獄に収容されてしまい…!?

次回「危ない婦警」

「どうしよう、知らない人に声をかけるなんてそんなの無理だよ…。」
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