ヴァンガードoverDress 新訳版   作:ふぁみゆ

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思ったより長くなったので、今回のファイトは前後編で次回に続きます。


第七話「深淵黒夜」

夜23時。すっかり暗くなり、ほとんどの店が閉店しているこの時間。僕は廃墟の遊園地に来ていた。

この場所でパックの開封をしていた時にほしかったカードが当たったのだが持って帰るのをうっかり忘れていたことに気付いたのがこの時間。

誰もいないこの時間、遊園地はあかり一つなく真っ暗なうえに、錆びた遊具が逆に不気味な雰囲気を放っていた。

 

(よりにもよってなんでこんな日に…。)

 

おまけに今日、姉に付き合わされてホラーゲームの鑑賞会をしていたところだ。しかも最後に出てきたのが夜の遊園地。

特に最後のシーン、逃げ切ったと思って安心してため息をついたヒロインが、肩をたたかれ振り返った次の瞬間には…。

 

(だめだ、考えちゃだめだ!)

 

頭を振り、まっすぐに目的地に向かう。とにかくカードだけ拾ってさっさと帰ろう。

懐中電灯で視界を照らして震えながらも前を向いた。

幸いカードは目立つところに置いてあった。おそらく僕の忘れ物に気付いたダンジさんあたりが目立つことろにおいてくれたのだろう。

本当に良かった。ダンジさんありがとう、と僕がカードを手に取り、安心しきったその時だった。

 

トントン

 

誰かが僕の肩をたたいた。

僕はどうしても思い出してしまう、あの映画のことを。

恐ろしい怪異から逃げ、遊園地に来たヒロイン。追ってきた怪異から逃げきれたと思い、安心した時に肩をたたかれ、振り返ると…。

 

「は、はいなんでしょう…。」

 

細長い真っ赤な二つの目が

 

「やあ、こんな時間にどうしたんだい?」

 

じっとこちらを見つめていた。

 

「で、出た…。」

ガクッ

 

そのまま、僕は気を失ってしまったのだった…。

 

 

 

 

朝、僕は自室のベッドの上で目が覚めた。

 

(あれ、全部夢だったのかな?…。)

 

ぼんやりとそんなことを考える。しかし、服装は私服のまま、そして机の上には昨日遊園地で回収したカードがあった。

夢じゃない?なら、どうして家にいるんだろう。

不思議に思いながらもとりあえず、リビングに行く。するとそこにいたのは…。

 

「きゃっ!また失敗しちゃった!」

「ごめんなさいね、石亀さん。全く、いつもユウユにばかり料理をさせていたツケが回ってきたわね。ナツコ。」

 

慣れない料理に苦戦しているナツコねえさんと

 

「あの、僕のことはお構いなく。」

「いえいえ、ユウユを助けてくれたんですもの。朝ご飯だけじゃなく、もっとお礼がしたいところなのに…。」

 

食卓に座る母さん、そして知らない男の人だった。

 

「おや、気が付いたみたいだね。大丈夫かい?少年。」

「あら、ユウユ。ほら、あんたもこっちに来て石亀さんにお礼を言いなさい。」

「えっと…。」

 

状況を理解できないまま椅子に座る。すると母さんが状況を説明してくれた。

今、席についているのが石亀ザクサさん。夜の遊園地で倒れていた僕を助けて、警察に駆け込み、そのまま家に連れてきてくれたらしい。

 

「すみません、とんだご迷惑を…。」

「いやいや、あんな真夜中に後ろから声をかけた僕にも責任があったしね。」

 

すぐにお礼を言う僕に、ザクサさんは笑顔で答えてくれた。

 

「あの、ザクサさんはなんで」

「きゃっ!?」パンッ!

 

何故あんな時間に遊園地に来ていたのか、それを聞こうとしたのだが、キッチンから聞こえてきた破裂音に遮られてしまった。

 

「なになにどうなってんのよ!?助けてユウユ〜!」

「しょうがないな…。ナツコ姉ちゃん、今行くから変なとこ触らないでよ!」

 

一先ず話は置いておいて、いつもより多めの朝食を作ることになった。

 

 

 

「へえ、これはすごい」

 

僕が作ったオムレツをザクサさんが褒めてくれる。姉さんが作ろうとしていたものをそのまま作っただけだが喜んでくれたのは素直にうれしかった。

 

「石亀さんは画家さんでね、各地を回って風景がを描いているんですって。」

「私見たことあるかも!夜の街をすごくきれいに描いてる絵ですよね!」

「まあ、そこまで有名でもないけどね。そういってくれるのはうれしいよ。」

 

母さんと姉さんが僕にザクサさんの紹介をしてくれた。どうやら夜の街にもそのために来ていたらしい。

 

「そこまで有名ではないんですけどね。覚えていてくれてありがとうございます。」

「でも、どうして夜の風景なんですか?」

 

ふと、そんな疑問が浮かんだ。初対面なのにいきなりこんなことを聞くのは失礼だったかもしれない。しかし、ザクサさんは優しくこたえてくれた。

 

「確かに夜は視界が暗くて見えずらい、風景画を描くには不向きだと言えるね。でも、視界が暗いからこそ見えてくるものがたくさんあるんだ。」

 

その言葉とザクサさんの瞳を見た僕は、ザクサさんのイメージに引き込まれた。

真夜中の風景、周りは暗く、見えるものは少ない。でも、

 

「周りが暗い分空に浮かぶ満月はくっきりと輝き、星空はより鮮明に輝く。夏の時期には蛍が当たりを飛び、淡い光であたりを照らしてくれるだろうね。もちろん、目に見えるものだけじゃない」

 

アオーン!

 

どこからか、狼の遠吠えが聞こえてきた。次に聞こえてきたのは猫の鳴き声。夜に活動する生き物たちの生命の息吹だ。

 

「夜行性の動物たち、秋の夜長の虫の声。そんな夜だからこそ美しいもの、輝くものを僕は描きたいんだ。」

 

イメージから解放された僕は八ツと息を飲んだ。

ザクサさんは静かに僕を見て笑う。

 

「それに、写真とは違って、絵だからこそできることもある。写真なら、ただの暗い1枚で終わってしまうけれど、絵には描き手のイメージが入る余地があるんだ。」

「イメージ…。」

 

それは、ヴァンガードを始めた僕にとってはとても馴染みのある言葉だった。

 

「あの、ザクサさんはもしかして…。」

「ほらユウユ、お話したいのは分かるけど、早くしないと遅刻しちゃうよ。」

 

今日は平日、あまりゆっくりはしていられない。残念ながらザクサさんに話を聞けそうにはなかった。

 

「そうだね。もし、放課後に時間があったら、あの遊園地においで、今日はそこの風景を描く予定だからさ。」

「!、わかりました。」

 

 

 

放課後、僕は急いで廃墟の遊園地に来た。遊園地にはいつものメンバーと石亀ザクサさん。

キャンパスに鉛筆で描いていくザクサさんに僕は話しかける。

 

「ザクサさんこんにちは」

「やあ、ユウユくんこんにちは。」

 

ザクサさんは一度手を止めて、僕に返事を返してくれた。

ふと、僕はザクサさんの描いた鉛筆の下書きを見る。この遊園地の風景がしっかりと描かれており、ファイトしている人たちの様子も丁寧に描かれていた。その背後には薄く、その人たちの使うユニットの姿も描かれている。それを見て、僕が抱いていた疑問は確信へと変わった。

 

「そういえば、僕に聞きたいことがあったんじゃないかい?」

「はい、ザクサさんって、ヴァンガードやってるのかなって…。」

 

その問いかけに、ザクサさんは静かに鉛筆を置いてカバンから、カードを取り出した。

 

「そうだね。正確には“やっていた”だけどね。」

 

そう、それはつまり

 

「…、今はやってないんですか?」

 

そこへ、遅れてきたダンジさんが声をかけた。

 

「お前、チームスターゲートの石亀ザクサか?」

 

その言葉に僕とザクサさんが振り返る。そして、ザクサさんは少し苦笑いをしながら答えた。

 

「2年ぶり、になるのかな?元チームTD3の桃山ダンジさん。まさか、僕のことを覚えてくれているとは思っていなかったよ。」

「忘れるはずなんかないさ、お前とは直接ファイトできなかったがいいチームだったからな。」

 

どうやら、ザクサさんは大きな大会でダンジさんと対面したことがあるらしい。

そんなザクサさんにダンジさんは僕と同じ疑問をぶつけた。

 

「最近は名前見ないけど、やってねえのか?ヴァンガード」

 

ザクサさんは静かに笑う。目をつぶり、少しもの思いにふけってから、答えた。

 

「あの日から、ね。」

「そっか」

 

それだけ話すと、ザクサさんもダンジさんも何も言わなくなってしまった。

 

「こんにちはユウユくん!あれ、そちらの方は?」

 

そんな少しきまずい空気を壊してくれたのはメグミさんだ。残りの一人入れることができるメンバーについて話すことになっていたため、声をかけてくれたのだろう。

ザクサさんも元の調子を取り戻している。

 

「こちらは石亀ザクサさん。風景画を中心に描いている画家さんなんです。」

「始めましてお嬢さん。少しお邪魔させてもらうよ。」

 

丁寧にお辞儀をする、ザクサさん。育ちのいいメグミさんもぺこりとお辞儀をした。

 

「でも、アニキはなんでそんな画家さんと知り合いなの?」

「ああ、ヴァンガードつながりでな。」

 

どうやら、ザクサさんとダンジさんが話していたのは見ていたらしい。

そこでダンジさんは考えなしにザクサさんが元カードファイターであることをしゃべってしまう。

それを聞いたメグミさんは目を輝かせて、こんな提案をした。

 

「ねえ、ユウユくん、ザクサさんにチームに入ってもらおうよ!アニキの知り合いなんだったらきっと実力は間違いないんだし。」

「ええ、でも…。」

「チーム?」

 

ザクサさんはいまはヴァンガードをやっていない、それを説明しようとしたのだが、チームという言葉を聞いてザクサさんのほうが先に反応した。

 

「君たちは公式大会に出るのかい?」

「そうなんですよ。いろいろあって。」

「へえ、ユウユくん、良かったらその話聞かせてくれないかい?」

「…、そんなに面白い話じゃないですよ。」

 

そして、僕はことのあらましを説明した。

このワンダヒルが取り壊される予定があること

それを撤回するには年末までにここにいるファイターが公式大会で実績を残す必要があること

そして、僕たちも公式大会出場に向けて、チームメンバーを集めていること。

途中メグミさんはバツの悪そうな表情をして、ザクサさんもその様子を見ていた。

 

「そうか、ここにいるみんなが生き生きしているのはユウユくんのおかげなんだね。」

「そ、そんなことはないです。」

「とにかく!」

 

ザクサさんに詰め寄るメグミさん。

 

「あなた、どこのチームにも所属していないんなら、私たちと組まない?」

 

しかし、ザクサさんの表情は渋かった。

 

「ごめんね、今は公式大会に出る気はないんだ。」

「そっか、残念。」

「お前ら、最低人数の3人は集まったんだろう?そんなに慌てて勧誘しなくてもいいんじゃ?」

「いやいや、あの変態婦警から一人でユウユくんを守らないといけないんだよ!絶対無理!」

 

その時のザクサさんがとても悲しそうな顔をしていたことが、僕にはどうしても忘れられなかった。

 

 

 

 

夜21時、暗くなってから、僕は再び家を飛び出し、廃墟の遊園地に来ていた。目的はザクサさんに会うことだ。

ナツコ姉さんが言っていた、ザクサさんは夜の街をきれいに描くと

ならば、ザクサさんは夜にもこの場所に来ている。そう思ってのことだ。

昨日僕がザクサさんと初めて会った場所、そこには…。

 

「おや、どうしたんだいユウユくん?また忘れ物かな?」

 

予想通り、キャンパスに絵の具で色をつけるザクサさんの姿があった。

 

「…、すみません、ザクサさんにお願いがあるんです」

 

不思議そうに僕を見つめるザクサさん。ただ、これは僕の漠然としたイメージだ。うめく言葉にすることができない。

あの時、ここでメグミさんがチームの話をしていた時、ザクサさんがとても悲しそうに見えた。表情は変わらないし、声色にも変化はない。でも、たしかに感じたザクサさんの不安。僕はどうしてもそれを確かめたかった。

だから、僕は、自分のデッキを取り出した。

 

「お願いします。僕とファイトしてください。」

 

静かに空を見上げるザクサさん。そして、ゆっくりと息を吐くとカバンを持ってファイトテーブルへと歩き出した。

 

「いいよ、公式戦の経験があるファイターとして、アドバイスができるかもしれないからね。」

 

 

 

 

「聞かないのかい?どうして僕が公式戦に出ないのか?それが知りたくて来たんじゃないのかな?」

 

ファーストヴァンガードを置いてザクサさんは僕に尋ねる。

 

「もちろん、それも知りたいです。でも、きっとただ聞くだけじゃザクサさんのことは理解できないと思って」

「なるほど、それでファイトを挑んできたんだね。」

 

僕は静かにうなずいた。

 

「ファイトには、その人間の心が現れる。ダンジさんが教えてくれたんです。だから、僕はこのファイトでザクサさんのことを知りたいし、できることなら力になりたい。ファイトのことであんなに悲しそうにしていたザクサさんの力に」

 

そんな僕の言葉に、少し驚いてから、ザクサさんは目を閉じた。

 

「優しいんだね、君は…。」

 

 

「スタンドアップ・ヴァンガード!」

「スタンドアップ・ヴァンガード!」

 

「《サンライズ・エッグ》!」

 

《サンライズ・エッグ》

G0 パワー6000

 

「《枢機の獣フォーヴィ》」

 

《枢機の獣フォーヴィ》

G0 パワー6000

 

サンライズ・エッグにライドした僕の目の前に現れたのは黒輪をまとった白い獣だ。

先行はザクサさん。

 

「《枢機の兵ルーチス》にライド。」

 

《枢機の兵ルーチス》

G1 パワー8000

 

「ルーチスのスキル発動。デッキから世界カードを探して手札に加える。セットオーダー《虚ろなる月夜》を手札へ」

 

どこかから狼の遠吠えが聞こえた。そして、ルーチスの持つ、正四面体の球体がひとりでに回転を始めた。

 

「僕はこれでターンエンド。さあ、君のターンだよ。」

 

ザクサさんが手札に加えたセットオーダーはグレード2。すぐに発動はできない。だが、トマリさんも使っていたセットオーダーはオーダーゾーンに置かれると永続的に効果を発揮する。時間をかければかけるほど、こちらが不利になってしまう。動くのは早いほうがいいだろう。

 

「ライド!《焔の巫女リノ》」

 

《焔の巫女リノ》

G1 パワー8000

 

「《トリクスタ》と《焔の巫女アルーナ》をコール!バトル!」

 

《トリクスタ》

G0 パワー 5000

《焔の巫女アルーナ》

G1 パワー8000

 

横にリアガードを並べての速攻。これなら、ヴァンガードの攻撃を手札1枚で防がれても、リアガードにトリガーの効果乗せることができる。

 

「《焔の巫女リノ》でヴァンガードにアタック!」

「ガード《枢機の姫ナビレム》」

 

《枢機の姫ナビレム》

シールド15000

 

「ドライブチェック!」

 

《焔の巫女ゾンネ》クリティカルトリガー

 

「ゲット、クリティカルトリガー!効果はすべて《トリクスタ》に!」

 

《トリクスタ》

パワー15000 ☆2

 

「アルーナのブーストしたトリクスタでヴァンガードにアタック!アルーナのスキル!グレード0のユニットをブーストしたバトル中パワー+5000!!」

 

《焔の巫女アルーナ》

パワー18000

 

リノの放った火球はナビレムが持つ六面体のキューブから出た障壁のようなものに阻まれてしまった。だが、その横から、火の玉になったトリクスタをアルーナが蹴りだす。

トリクスタは見事にルーチスに命中、そして着弾と同時に大爆発を起こした。

 

「ダメージチェック」

 

《枢機の兵サンボリーノ》トリガーなし

《ヴァイオレート・ドラゴン》トリガーなし

 

「ターンエンドです。」

「いいファイトだね。ちゃんと相手の動きも見て、その時の最善の選択をしている。君のまじめさ、ファイトに対する真剣さが、このファイトに現れているね。」

 

スタンド&ドロー、をしながらザクサさんは僕にそんなことをつぶやいた。

いきなり褒められるとは思っておらず、僕は驚いてしまう。

 

「そんなに驚くことかな?君も言っていただろう。ファイトにはその人間の心が現れる。君の心は僕にも伝わっているんだよ。ライド!《枢機の兵キュビジア》」

 

《枢機の兵キュビジア》

G2 パワー10000

 

新たに現れた枢機の兵士がまだ卵の僕に槍を向ける。まるで僕のことを試すように。その姿は、ファイトを通して僕の心を見透かしているザクサさんと重なって見えた。

 

「《枢機の竜アルビデルド》をコール。そしてさっき手札に加えたこのカードを使わせてもらうよ。ソウルブラスト1を支払いセットオーダー《虚ろなる月夜》を発動。」

 

イメージの中の惑星クレイの中に、満月が浮かび上がった。それと同時に当たりが真夜中のように暗くなる。

 

「このカードのスキルで一枚ドロー。そして、このカードがセットオーダーにあることでこの世界は黒夜-ダークナイト-になる。」

「黒夜…。」

「黒夜になったことで僕の枢機兵たちは新たなスキルを獲得する。そして、オーダーゾーンに世界が置かれたことで《枢機の兵キュビジア》のスキル発動。《枢機の竜アルビデルド》にパワー+5000」

 

《枢機の兵アルビデルド》

パワー15000

 

「バトル、《枢機の兵キュビジア》でヴァンガードにアタック。」

「《焔の巫女ゾンネ》でガード!」

「ドライブチェック」

 

《虚ろなる月夜》トリガーなし

 

トリガーはない。だが、ドライブチェックで出たのはさっきと同じセットカード。

 

「《枢機の竜アルビデルド》でアタック。この時、世界が黒夜なため、パワー+2000。もっとも、それだけではガードに必要な手札の枚数は変わらないけどね。」

 

《枢機の竜アルビデルド》

パワー17000

 

「《焔の巫女パラマ》でガード!」

 

《焔の巫女パラマ》

シールド15000

 

「ターンエンド。さあ、君のファイトを見せてくれ。」

「スタンド&ドロー」

 

気になるのはさっき手札に加えたもう一枚の《虚ろなる月夜》、そして、このままでは効果を十分に発揮できない枢機の兵のスキルだ。以前ふファイトしたダンジさんのブルース程の圧力がない、もしかしたらあのオーダーにはまだ何かあるのかもしれない。

幸い、さっきのターンに出したトリクスタは残っている。さっきと同じく、素早く攻撃をしかけよう。

 

「《焔の巫女レイユ》にライド!レイユにライドされたリノのスキルでデッキからトリクスタをスペリオルコール!」

 

《トリクスタ》

G0 パワー5000

 

 

「炎の精霊よ、祈りを叶えるために進化せよ!オーバードレス!希望の守護者《ヴェルリーナ》!!」

 

《ヴェルリーナ》

G2 パワー10000

 

「バトル!《ヴェルリーナ》でヴァンガードにアタック!この瞬間、ヴェルリーナのスキル発動!ソウルブラスト2を支払い、《枢機の竜アルビデルド》を退却!」

 

ヴェルリーナが大地を踏みしめ、アルビデルドの足元から炎が噴き出し、アルビデルドは退却。

これでインターセプトは封じた。

 

「さらに、ヴァンガードにアタックした時、《ヴェルリーナ》のパワー+10000!」

 

《ヴェルリーナ》

パワー20000

 

「届け!バーニング・フィスト!!」

「ノーガード」

 

炎をまとったヴェルリーナが枢機の兵を殴りつける。

ヴァンガードは大きく吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

「ダメージチェック」

 

《枢機の兵サンボリーノ》トリガーなし

 

「《焔の巫女レイユ》でヴァンガードにアタック!」

「ガード、《枢機の竜バルビゾンデ》」

 

《枢機の竜バルビゾンデ》

シールド15000

 

「ドライブチェック」

 

《ツインバックラードラゴン》トリガーなし。

 

「アルーナのブースト、トリクスタでヴァンガードにアタック!アルーナはスキルでパワー+5000!」

「《枢機の竜バルビゾンデ》でガード!」

「ターンエンドです。」

 

相手の手札を削りつつ、なんとかダメージ3まで持っていくことに成功した。だが、相手はグレード3。何をしてくるかわからない。

 

「スタンド&ドロー。さて、ユウユくんが知りたいのは、僕がどうして公式戦に出なくなってしまったか、とかそんなところかな…。」

 

ザクサさんは僕の考えてることに近いことを看破して見せた。

 

「どうして」

「僕がヴァンガードをやっていた、といったとき、理由を聞こうとしていたからね。それに、君のファイトを見ていれば、このファイトを通して僕のことを知ろうとしているのが分かる。そこからちょっと推理し見ただけさ。」

 

そうして、ザクサさんはライドデッキのユニットを手に取った。

 

「ユウユくん、君は優しい人間だ。そのやさしさをどうか失わないでほしい。だから、このファイトを通して、僕があるファイトで感じたことを君に伝えよう。ライド!」

 

満月を背景に、赤い光が浮かび上がる。その光は徐々に広がり、その光に照らされて、大鎌を持ったドラゴンが姿を現した。

 

「忌まわしき血を持つ夜の支配者、《枢機の神オルフィスト》」

 

《枢機の神オルフィスト》

G3 パワー13000

 

「セットオーダー《虚ろなる月夜》を発動。これでオーダーゾーンに世界カードが二枚おかれた。僕の世界は深淵黒闇-アビサルダークナイト-へと変化する。」

 

枢機の神が僕を見下ろす。だが、その姿を深まる夜の闇が隠していく。空に浮かぶ満月は血のように赤い色に染まり、不気味な赤い目が僕のことを見下ろしている。

警戒していた二枚目のオーダーカードによる新しい能力がついに発動した。

 

「《枢機の神オルフィスト》、スキル発動。カウンターブラスト…。」

 

夜の闇の中、何かが蠢いているのが微かに見えた。暗闇に姿を隠しているもののそこに何かがいる!

 

「世界が深淵黒闇なら、自分のリアガードサークルに《夜影兵トークン》を三体、デッキ外からスペリオルコールする。」

「夜影兵…。」

「このトークンはいずれもパワー15000、そして、ブーストを持つユニットとして扱うよ。」

「高いパワーにブーストまで!?」

「これが夜の闇に紛れ、人知れず戦う、枢機の神の真の力。《枢機の竜アルビデルド》をコールし、バトル。」

 

世界が暗闇に包まれたままバトルが始まった。

 

「《夜闇兵トークン》で《焔の巫女レイユ》にアタック。」

「《トリクスタ》でガード!」

 

《トリクスタ》シールド5000

 

「《夜影兵トークン》のブースト、《枢機の神オルフィスト》でヴァンガードにアタック!」

 

黒い影の力を受けて、オルフィストの鎌が怪しく光った。その鎌がレイユへと振り下ろされる。

 

「ノーガードです。」

「ツインドライブ」

 

《ヴァイオレート・ドラゴン》トリガーなし

《枢機の獣フウグルス》ドロートリガー

 

「ドロートリガー、アルビデルドにパワー+10000、1枚ドロー。」

 

《枢機の竜アルビデルド》

パワー20000

 

「ダメージチェック」

 

《焔の巫女ヒメナ》トリガーなし

 

「《枢機の竜アルビデルド》でヴァンガードにアタック。世界が深淵黒夜の時、スキル発動。パワー+5000」

 

《枢機の竜アルビデルド》

パワー25000

 

「くっ、ノーガード。」

 

アルビデルドが投げた鎖が巻き付き、身動きが取れなくなったレイユをアルビデルドが剣で切り裂いた。

これで僕は2ダメージ。序盤からガードしたおかげでなんとかもっているが時間とともに苦しくなっていく。

そして…

 

「君も気付いているだろう?この攻撃、僕は手札をほとんど消費していない。」

 

パワー15000を誇る《夜影兵トークン》は3体とも、オルフィストのスキルで登場したユニット。ザクサさんここまで盤面をほぼ手札を使わずに広げていた。

ダメージ差以上の圧倒的なアドバンテージの差。その差は、夜の暗さと同じようにじわじわと僕に恐怖を与え続ける。

 

「恐ろしいかい?でも、僕が大会で感じた恐怖はこんなものではなかったよ。ターンエンド。」

「僕のターンです。」

 

ザクサさんが与えてくる恐怖。それに対抗する方法を僕は考える。

 

(このまま続けていても、アドバンテージの差は開いていく一方だ。なるべく少ないターンで決着をつけるしかない。大丈夫、パワーなら、僕にも出せる。)

 

「目覚めろ!新しい自分!熱き炎とともに生まれ変われ!ライド・ザ・ヴァンガード!!」

 

サンライズ・エッグが殻を破り、炎とともにニルヴァーナが姿を現した。その光が夜の闇を僅かに照らしている。

 

「《天輪聖竜ニルヴァーナ》!!」

 

《天輪聖竜ニルヴァーナ》

G3 パワー13000

 

「ニルヴァーナにライドされた、レイユのスキル、デッキから《ヴェルリーナ》を手札へ。そして、前列のトリクスタにもう一体の《ヴェルリーナ》をオーバードレス!」

 

《ヴェルリーナ》

G2パワー10000

 

「さらに《焔の巫女ミリン》をコール!バトルです!」

 

僕のところに駆けつけるユニットたち。暗闇の中で視線を向けると僕の仲間たちは力強くうなずいてくれた。

 

「《焔の巫女ミリン》のブースト、ヴェルリーナでヴァンガードにアタック!この瞬間、ニルヴァーナのスキル発動!自身とオーバードレス能力を持つ、《ヴェルリーナ》2体にパワー+10000!!」

 

《天輪聖竜ニルヴァーナ》パワー23000

《ヴェルリーナ》パワー20000

《ヴェルリーナ》パワー20000

 

「ノーガード」

「ツインドライブ!ファーストチェック!」

 

《焔の巫女ゾンネ》クリティカルトリガー

 

「クリティカルトリガー!効果はすべてブーストするユニットのいる《ヴェルリーナ》へ!」

 

《ヴェルリーナ》

パワー30000 ☆2

 

「セカンドチェック!」

 

《ヴェルリーナ・バリエンテ》トリガーなし

 

「ダメージチェック」

 

《枢機の姫ナビレム》ヒールトリガー

 

「ヒールトリガー、ダメージを1回復、ヴァンガードにパワー+10000」

 

《枢機の獣フルグレス》ドロートリガー

 

「ドロートリガー、ヴァンガードにパワー+10000、1枚ドロー。」

 

《枢機の神オルフィスト》

パワー33000

 

2枚のトリガー効果で、片側のヴェルリーナのパワーでは届かなくなってしまった。ならば!

 

「ヴェルリーナでリアガードの《枢機の竜アルビデルド》にアタック!」

「ノーガードだよ」

 

これで、インターセプトを封じた。次の追撃で少しでも手札を削る!

 

「《焔の巫女アルーナ》のブースト、《ヴェルリーナ》でアタック!オーバードレスしている《ヴェルリーナ》がヴァンガードにアタックした時、パワー+10000」

 

《ヴェルリーナ》

パワー40000

 

「《枢機の姫ナビレム》でガード」

 

《枢機の姫ナビレム》

シールド15000

 

「ターンエンドです。」

「それじゃ、僕のターンだ、スタンド&ドロー」

 

届かなかった。そのうえドロートリガーで手札の補充までされてしまった。次のターンも自分のリソースを割かずに攻撃をしてくる。

 

「このファイトから君の恐れを感じるよ。大会に出れば、より強い恐怖が待ち受けているとしたら、君はどうする?」

「…、より、強い恐怖。」

「イメージしてほしい。僕の感じた、恐怖と絶望を!」

 

その言葉で僕はザクサさんのイメージの中に引き込まれた。

夜の荒野、そこに立つ僕と、ザクサさん。

 

「僕にもかつては仲間がいた。その仲間たちとともに僕はこの舞台に立った。でも…。」

 

突如上がる悲鳴。声のほうを見ると、2人のファイターがいた。彼らの体はみるみる氷ついていく。そして、完全に氷に閉ざされ、身動きが取れなくなってしまった。

 

「そこで僕たちは出会ってしまった、絶対的な恐怖と絶望に…。」

「…、その人たちはどうなってしまったんですか?」

「その時の戦いがトラウマになってしまってね、もうファイトをやめてしまったよ。もし、直接戦っていれば僕もそうなっていたかもしれない。」

 

そして、次は別のイメージだ。旅をしながら風景画を残しているザクサさん。そのザクサさんは何かを探していた。

 

「そして僕は探し始めたんだ。あの恐怖に負けない方法を。でもね、そのために僕自身が他の人たちに恐怖を与える存在になってはいけない…。大切なものを見失わず、あの恐怖を克服する。」

 

もちろんそれは簡単なことではない。だからこそ、ザクサさんは公式戦に出ることはなく、ファイターを名乗ることもせずにいた。

 

「君は優しい、だから僕はこうも考えている。君には僕と同じ恐怖を感じてほしくない、力をつけすぎて恐怖を与える存在にもなってほしくない。そう、大会に行ってほしくないんだ。」

 

そして、ザクサさんは手札のユニットをだした。

 

「呪われし刃で等しく死の無常を、ペルソナライド!」

 

暗闇の中で赤い光がきらめいた。それが巨大な鎌の形を取る。そして、その鎌とともに巨大なドラゴンが姿を現した。

 

「《枢機の神オルフィスト》!」

 

僕にさらなる恐怖を与えるため、枢機の神がその刃を僕に向けていた。




次回予告

「ファイトから伝わってくる、ザクサさんの感じた恐怖が、ザクサさんが僕を思う気持ちが、でも僕はここで立ち止まるわけにはいかない!それにザクサさんは一つ間違えている!!」

盤面に埋まる夜影兵トークン。ザクサの手札は増える一方、それに対してユウユは自分の手札を消費していく。
でも、ユウユの目には消えない情熱の光を灯していた。
ユウユが放つ炎に、包まれたザクサは一体何を思うのか

次回「結成!チームBQ4!!」

「ザクサさんは僕に思いを伝えてくれた!だから今度は僕の番だ!!」
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