夜23時、ユウユとザクサがファイトしていたころ、河川敷ではメグミはトマリに問い詰められていた。
「もう一度聞くわ、こんな時間に、一人で、何をしているの?」
「それ、答えなきゃいけないの?私がいつ、どこで、何をしていようと、勝手じゃない?」
「全くこれだから無知な子供は…。あのね、この加賀の国では深夜23時~午前4時の間は補導の対象なの。こんな時間にうろつくのは立派な条例違反ってこと。」
それを聞いて気まずそうにうつむくメグミ。むろん話の分からないメグミではない、悪いのは自分のほうだとわかっている。しかし、わかっていても目の前にいる大倉メグミという人物への反骨精神から素直になれずにいる。この人のいうことに従うのは負けた気がするからだ。
「…、ちょっと探し物してただけなのに。」
「探し物?」
ぼそりと小さくつぶやいたメグミの言葉にトマリは目ざとく反応する。
「そういうことなら素直に言えばいいじゃない。何を探しているの?落とし物なら交番で調べれば…」
「いや、落とし物とかそういうんじゃなくて」
「え、どういうこと?いったい何を探しているの?」
メグミは何も言わない。なぜならいうのが恥ずかしいからだ。しかし、沈黙でこの場を収めることはできない。時間がたつほど、トマリの表情は険しくなる。
「なに、人に言えないようなものなの?答えによっては」
そこでメグミはこう答えた。
「クアドリフォリオ…、を」
「へ?」
これは日本語ではない、最近覚えたイタリア語の単語だ。これでトマリが意味をくみ取れなければこの場を乗り切れるかもしれない。そう考えてのことだった。
「ほら、聞いても何のことかわからないでしょ?だからあんたじゃ力には…。」
「ぶっ、はっははははは!!」
しかし、それを聞いたトマリは突然笑い出した。予想とは違うリアクションにメグミは戸惑いを隠せない。
「あなた意外とロマンチストなのね。高校生にもなって四葉のクローバーを探して河川敷に来るだなんて。おまけにかっこつけてイタリア語なんて使って、あー、おかし。」
その小細工はあっという間に看破された。しかも背伸びしてイタリア語を使ってた分、余計に恥ずかしさがこみあげてくる。
「う、うっさい!別にいいでしょうが!!もう、笑わないでよ!!!!」
「ふっふっふ…。ごめんごめん。意外だったからつい。」
顔を真っ赤にして抗議するメグミ。
そして、そんなメグミにトマリはまたまた意外なことを提案した。
「じゃ、笑っちゃったお礼にちょっとだけ付き合ってあげるわ」
「え、いいの!?」
「まあ、ちょっとくらいならね。それに、私たちチームじゃない。チームってのは協力し合ってなんぼでしょ。さ、行きましょう。」
「…。」
意外と話を分かってくるトマリにしばらく茫然としてしまう。メグミ。メグミの中でトマリの評価が少し変わった瞬間だった。
ー
「呪われし刃で等しく死の無常を、ペルソナライド!《枢機の神オルフィスト》」
《枢機の神オルフィスト》
G3 パワー13000
ザクサさんのペルソナライド。その効果で手札を一枚ドロー、前列のユニットはこのターンパワー10000が与えられる。
ダメージは4点まで与えたが、手札は6枚とかなり余裕がある。さらに盤面には三体の「夜影兵トークン」。このトークンはオルフィストのスキルでデッキ外から登場したユニット。つまり手札を使わずに現れたユニットたちだ。
「《枢機の兵サンボリーノ》をコール。そして、《夜影兵トークン》と全後列を入れ替えてバトルだ。」
《枢機の兵サンボリーノ》
G1 パワー8000
前列の《夜影兵トークン》のパワーはすべて25000さらにこの攻撃に使った手札は1枚だけだ。
一方こちらはインターセプトできる《ヴェルリーナ》が2体いるものの手札はたったの三枚。この高火力の攻撃をすべて防ぐことはできない。
「《夜影兵トークン》のブースト、《枢機の神オルフィスト》ヴァンガードにアタック。さあ、合計パワーは38000だ」
枢機の神は黒いオーラをまといその大鎌を振り上げる。ニルヴァーナは辺りを見渡すが、周囲は暗く、どこに逃げればいいのかわからない。
「ノーガード!」
幸いこちらはまだ2ダメージ。相手がトリガーを引く可能性があるが、こちらもトリガーを引ければ…。
「ツインドライブ」
《枢機の神オルフィスト》トリガーなし
《枢機の姫ナビレム》ヒールトリガー
「ヒールトリガー、ダメージを回復。そしてパワーは《夜影兵トークン》へ」
《夜影兵トークン》
パワー35000
「ダメージチェック。」
《焔の巫女ヒメナ》トリガーなし
「《夜影兵トークン》でヴァンガードにアタック。」
「ノーガード、ダメージチェック。」
さっきのドライブチェックで見えたのはもう一枚の《枢機の神オルフィスト》。つまり、次のターンにはまたペルソナライドが来る。そのため、次のターンは全力で攻撃しなければならない。このターンの敗北はない。ならばここはすべて受ける。
《バーニングフレイル・ドラゴン》クリティカルトリガー
「クリティカルトリガー、パワーをヴァンガードに」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》
パワー23000
「《枢機の兵サンボリーノ》のブースト、《夜影兵トークン》でリアガードの《ヴェルリーナ》にアタック」
ザクサさんもここで無駄にコストを与えるようなことはしない。退却すると立て直しが難しいオーバードレスユニットを狙ってきた。
「この時、《枢機の兵サンボリーノ》のスキルを発動。パワー+15000」
《枢機の兵サンボリーノ》
パワー23000
合計でパワー48000、対するヴェルリーナは攻撃されたときはパワー10000だ。
「ノーガードです。ごめん、ヴェルリーナ」
手札が足りず、ヴェルリーナは退却することになってしまった。
「スキルを仕様したサンボリーノは同じ縦列の《夜影兵トークン》とともに退却。そして僕はカードを1枚ドローする。これでターンエンドだ。」
相変わらず、ザクサさんの手札は減らない。盤面は3つ空いているがオルフィストがスキルを発動するためのコストは十分にある。
そして、ザクサはユウユのことをよく観察している。震える手、緊張でつばを飲み込む喉、冷や汗。彼はこの盤面を見て恐怖を感じているのは確かだった。
(でも、どうしてまだ続けようとするんだい?どうしてその瞳に、闘志の炎を灯し続けられる?)
「スタンド&ドロー。ニルヴァーナのスキル発動、手札を1枚捨てて、トリクスタをスペリオルコール。そして…。」
さっきのドライブチェックで引いたユニット。さっきのターンで敗北し使えなくなる可能性も十分にあったが、僕はまだ負けていない。その意思にこたえるようにそのカードを場に出した。
「焔が焔を食らい、希望は燃え続ける!クロス・オーバードレス!!」
オーバードレスしたのはトリクスタではなくすでにオーバードレス状態のヴェルリーナ。その体は光を放ち、新たな姿へと進化した。
「進み続ける光!《ヴェルリーナ・バリエンテ》!!」
《ヴェルリーナ・バリエンテ》
G3 パワー13000
「クロス・オーバードレス…。」
「どんな恐怖が立ちふさがろうと、このヴェルリーナが歩みを止めることはない!《ヴェルリーナ・バリエンテ》はドレス元のカードの数だけ常にパワー+5000!」
《ヴェルリーナ・バリエンテ》
パワー23000
(彼が諦めないのはこのカードがあったから?いや、何か違う気がする…。それを確かめるためにもこの攻撃は通さない!)
「バトル!《焔の巫女アルーナ》のブースト!《トリクスタ》でアタック!この時、アルーナは自身のスキルでパワー+5000!」
《焔の巫女アルーナ》
パワー13000
「《枢機の姫ナビレム》でガード」
《枢機の姫ナビレム》
「《トリクスタ》がヴァンガードにアタックしたバトル終了時のこの瞬間、スペリオルオーバードレス!悲しみを払う風《ヴェルリーナ・エルガー》!」
《ヴェルリーナ・エルガー》
G2 パワー20000
「《ヴェルリーナ・エルガー》もそのスキルで常にパワー+10000、さらにスタンド状態でオーバードレスしているため、もう一度攻撃ができる!!」
「おまけにまだニルヴァーナのスキルも残している、か、本当に見事だよ。」
「行きます!ミリンのブースト!ニルヴァーナでヴァンガードにアタック!そしてスキル発動!自身とオーバードレスを持つユニットにパワー+10000!」
《天輪聖竜ニルヴァーナ》パワー23000
《ヴェルリーナ・バリエンテ》パワー33000
《ヴェルリーナ・エルガー》パワー30000
ザクサは考える。ここで完全ガードを使うという手もある。しかし、相手の両脇にはヴァンガード以上のパワーを持つユニットたちが控えている。そして、あの《ヴェルリーナ・バリエンテ》。あのカードの攻撃を受けてはならない。ザクサのファイターとしての直感がそう告げていた。ならばここは…。
「ノーガード」
「ツインドライブ!」
《ツインバックラー・ドラゴン》トリガーなし
《焔の巫女アルーナ》フロントトリガー
「フロントトリガー!前列にパワー10000」
《ヴェルリーナ・バリエンテ》パワー43000
《ヴェルリーナ・エルガー》パワー40000
「ダメージチェック」
《枢機の兵サンボリーノ》トリガーなし
「《ヴェルリーナ・バリエンテ》でヴァンガードにアタック!」
「《ヴァイオレート・ドラゴン》、手札を一枚捨てて完全ガード。」
《ヴェルリーナ》より更に加速したバリエンテがオルフィストに迫る。しかし、その攻撃は《ヴァイオレート・ドラゴン》に止められてしまった。
「《ヴェルリーナ・エルガー》でヴァンガードにアタック!!」
「《枢機の姫ナビレム》、そして《枢機の竜バルビゾンデ》でガード」
《枢機の姫ナビレム》シールド15000
《枢機の竜バルビゾンデ》シールド15000
「ターンエンドです。」
オーバードレスに加えてフロントトリガーまで乗せた攻撃だったが、ザクサには届かなかった。手札は残り二枚まで削ったもののダメージゾーンには表のカードが二枚。つまり、オルフィストのスキルが発動可能。さらにはドライブチェックでペルソナライド用のオルフィストも手札に加えている。ユウユにとってはこれ以上にないピンチだ。
「スタンド&ドロー…、!」
そんな状況でユウユの表情を見たザクサは気付いた。ここまで追い込まれているにも関わらず、目の前にいる少年は…。
「ユウユくん、君は…、笑っているのか?この状況で。」
「えっと、おかしいですか?」
ユウユは本当に不思議そうにザクサに尋ねた。
「君ほどのファイターが今の状況が分からないはずがない。それなのに…。」
「確かに、今は大ピンチです。でも、それ以上にザクサさんがどんな手を使ってくるか、楽しみなんです。」
(はったりなのか?)
今のザクサにはユウユの考えていることが分からなかった。今の自分のプレイングで分かってもらえないというなら、さらに追い詰めるだけだ。
「今一度味わってもらおう、ペルソナライド!《枢機の神オルフィスト》!!」
再臨する枢機の神、前列すべてにパワー+10000、そして1枚ドロー。盤面には2体の《夜影兵トークン》だけだが、ザクサのダメージゾーンには表のカードが3枚。オルフィストのスキル発動条件が整っていた。
「《枢機の神オルフィスト》のスキル発動!もう一度現れろ!《夜影兵トークン》!!」
《夜影兵トークン》
G1 パワー15000
手札を消費せずに盤面が埋まる。おまけに《夜影兵トークン》はすべてパワー15000の高い打点を持つユニット。ユウユはこの攻撃をしのぎ切らなければならない。さらにしのぎ切ったとしても、この攻撃で手札を消費していないザクサは次のターン、防御に使う手札に余裕がある。まさに絶望できな状況だった。
「バトル。《夜影兵トークン》でブーストしたオルフィストでヴァンガードにアタック!」
「手札から《焔の巫女アルーナ》、さらに《ヴェルリーナ・エルガー》のインターセプト!《ヴェルリーナエルガー》はスキルでシールド+10000です!」
《焔の巫女パラマ》シールド20000
《ヴェルリーナ・エルガー》シールド20000
「ツインドライブ」
《枢機の兵サンボリーノ》トリガーなし
《枢機の竜アルビデルド》トリガーなし
「賭けは君の勝ちだね。」
「結果的には、カード1枚分、損をしたことになりましたけど。」
「いや、君の防御はよく考えられたものだ。君の手札は残り2枚。つまり完全ガードをコストなしで使うことができる。おまけに君は4ダメージ、僕の攻撃を一回なら受ける余裕がある。」
大会出場を経験しているだけあってザクサの読みは正しいものだった。前のターンのドライブチェックで加えたカードを把握したうえでこちらの戦術を予想してくる。だがそれは同時に、その対策もしてくるということだ。
「《夜影兵トークン》でリアガードの《ヴェルリーナ・バリエンテ》にアタック」
「くっ!《ツインバックラー・ドラゴン》で完全ガード。手札が一枚以下なのでコストは必要ありません!」
「でも、その最後の手札は捨ててもらおう、もう一体の夜影兵トークンで《ヴェルリーナ・バリエンテ》にアタック。」
「《焔の巫女パラマ》でガード!」
バックラーを構えたドラゴンと炎をまとった巫女が影の兵隊からヴェルリーナを守り切った。しかし、兵隊は夜の暗闇の中に消えていった。こちらはボロボロになりながら暗闇からの襲撃に備えなければならない。
「ターンエンド」
「僕のターン、ドロー」
それでも僕は諦めずにカードに手を伸ばした。
ダメージは4対4で互角だがザクサさんは8枚もの手札がある。対するこちらの手札は1枚、そして前列にいるユニットも《ヴェルリーナ・バリエンテ》のみな上に手札は0。ここで攻撃できるユニットを引かなければ2回しか攻撃できない。
だがまだ、戦いは終わっていない。それに、この楽しいファイトを終わらせてしまいたくないから。
ザクサさんはさっきまでのように何も言わずに僕を見定めるように見つめていた。
引いたカードを見る。これでまだ希望はつながった。
「燃え上れ、希望の焔!絶望の民を希望に導け!ペルソナライド!《天輪聖竜ニルヴァーナ》!!」
再び焔に包まれ、力を取り戻すニルヴァーナ。しかし、まだ夜の闇は深く、ニルヴァーナの焔もか細いものだ。
前列にパワーが1万されるとはいえ、次のドローで攻撃できるユニットを引かなければまだザクサには届かない。
「そう、この感じ、この次の瞬間にはどうなるかわからない感覚。これがヴァンガードの面白さなんだ。」
「ヴァンガードの…、面白さ…。」
その言葉を聞いたザクサの脳裏に、かつて聞いた笑い声が響いた。
「前列のユニットにパワー+10000、そして、カードを1枚…、ドローする!!」
再びユウユのプレイングに意識を戻すザクサ。
引いたカードを確認するユウユ。そのユウユは、静かに笑みを浮かべた。
(引いたのか!この状況で)
「僕はヴェルリーナをコールして、バトルだ!!」
《ヴェルリーナ》
G2 パワー20000
ニルヴァーナの横に、いつも自身を支えてくれる頼もしい焔の精霊が並び立つ。
オーバードレス状態ではないがそれでも頼もしい仲間だ。
「《焔の巫女ミリン》のブースト、《天輪聖龍ニルヴァーナ》でヴァンガードにアタック!」
焔の巫女の支援を受けて、ニルヴァーナは火炎球を作り出す。
「さらに、ニルヴァーナのスキル発動!オーバードレスを持つユニット全てにパワー+10000!!」
《ヴェルリーナ》パワー30000
《天輪聖竜ニルヴァーナ》パワー33000
《ヴェルリーナ・バリエンテ》パワー43000
深くくらい夜の闇、それをニルヴァーナ2体のヴェルリーナたちの放つ焔が払う。闇に紛れていた夜影兵とオルフィストはその姿をはっきりと見せていた。
敵は少数ながらも強大なパワーを持つ。それを迎え撃とうとオルフィストは鎌を握りなおす。
(くっ、ヴェルリーナ・バリエンテが何をしてくるかわからない。だが、ここでクリティカルトリガーを引かれれば負けだ。幸い、手札に余裕はある。それならば)
「《ヴァイオレート・ドラゴン》で完全ガード。」
「ツインドライブ!ファーストチェック!」
《ヴェルリーナ・バリエンテ》トリガーなし
1枚目はトリガーなし。勝利が遠のいていく。だが、ユウユは諦めない。そしてトリガーを引く前にユウユはザクサに語り掛けた。
「確かにザクサさんのファイトは強くて恐怖すら感じるものでした。でも僕が感じたのは恐怖だけじゃない。この先の見えないドキドキ、高揚感。ザクサさんとのファイトは本当に楽しいんです。」
苦しみながらも、挑戦的な顔で笑うユウユ。そして、その表情のまま、ユウユは2枚目のトリガーをめくった。
「だって、ファイトって楽しいものじゃないですか!」
《焔の巫女パラマ》フロントトリガー
「4枚目の、フロントトリガー!?」
「フロントトリガー、前列すべてにパワー+10000!」
《ヴェルリーナ》パワー40000
《ヴェルリーナ・バリエンテ》パワー53000
「《ヴェルリーナ・バリエンテ》でヴァンガードにアタック!この瞬間《焔の巫女ミリン》のスキル発動!アタックしたバリエンテにパワー+5000!合計パワーは58000だ!!」
手札は6枚もあるにも関わらず、ガード値10000を超えるカードは2枚だけ。驚いたことに《ヴェルリーナ・バリエンテ》の攻撃を受けきるには防御値が足りない。
「ノーガード。」
そのため、この攻撃は受けるしかなかった。大鎌を使い、攻撃を防ぐオルフィスト。しかし、そのあまりのパワーに鎌は砕けてしまう。
そして、その時ザクサの脳裏にあるイメージが浮かぶ。大会に敗北する前、ただ純粋に楽しくファイトをしていたころのイメージ、仲間と楽しく笑いあっていた時のイメージが…。
「《ヴェルリーナ・バリエンテ》のスキル発動、アタックがヒットした時、カウンターブラストを支払うことで、もう一度スタンドする!エターナル・ホープ・フレイム!」
再び焔を燃え上がらせ、《ヴェルリーナ・バリエンテ》が再び立ち上がった。鎌を取り落としたオルフィストにはもう防ぐ手段は残されていなかった。
「《ヴェルリーナ・バリエンテ》でもう一度ヴァンガードにアタック!」
ヴェルリーナ・バリエンテは空高く飛び上がり背中のブースターを吹かせオルフィストに突撃。そして、焔をまとった拳をオルフィストにぶつけた。
「バーニング・ダイナマイト!!」
オルフィストとバリエンテは激しい火柱に包まれた。
「どうやら…、」
6枚目のダメージチェックをするザクサ。その表情は晴れやかなものだった。
「大切なことが見えてなかったのは、僕のほうだったみたいだね…。」
《枢機の神オルフィスト》トリガーなし
火柱が収まった時、立っていたのはヴェルリーナ・バリエンテだけだった。そして、日が昇りはじめ、ゆっくりと夜が明けていった…。
「ふう、緊張した。でも楽しかった。」
ユウユはザクサに手を差し出した。
「ザクサさん、ありがとうございました。」
「いやこちらこそありがとう、ユウユくん。」
ザクサもその手を握り返す。ファイター同志の握手。するとザクサは最後にユウユに聞くのだった。
「ところでユウユくん、君のチーム、まだ席は空いているかい?」
ー
後日、ユウユとザクサは廃墟の遊園地で、メグミとトマリと会っていた。チームメンバーでの顔合わせだ。
「本当に石亀ザクサさんのスカウトに成功したんだユウユくん。」
「彼の熱意に心打たれてね。これからよろしくね。大倉さん、瀬戸さん。」
「メグミでいいよ。これからはチームなんだから。ね、トマリさん?」
「そうね、あ、私もあなたのことはザクサって呼ぶから。」
どうやら、知らない間にメグミとトマリも少し仲良くなったようだ。だが、いつまでも談笑に浸っている暇はない。
「それじゃあ、改めて、チームのことを話合おうか。まずは方針だね。」
「えっと、トマリさんとザクサさんには話した通りこの遊園地は取り壊しの危機に瀕しています。それを防ぐため、この場所に集まるファイターが大会で実績を残す。僕たちも大きな大会で実績を残すことが必要です。」
改めて状況を確認する。今もチームブラックアウトの人たちは各々チームを組み、各地の大会に出ている。同じように自分たちも近場の大会で戦うのが簡単だ。
「でも、それとは別に、僕はこのチームでやってみたいことがあります。」
その言葉に全員が僕のほうを見る。
メグミさんとトマリさんは驚いたように、ザクサさんはどこか悟ったように。
「僕はまだヴァンガードを初めてまだ日が浅いけど、でも、僕は自分の力がどこまで通用するか試してみたいです。その、皆さんが良ければですが、僕は…。」
皆の注目が集めるせいで緊張してしまう、うまく口が回らない。そこで僕はニルヴァーナのカードを手に取り、あの子の暖かい笑顔と言葉が、あの子にもらったニルヴァーナが、そしてヴァンガードが僕に勇気をくれる。ヴァンガードと一緒なら、僕は自分の言いたいことを言える。
「加賀の国で一番のファイターを決める大会、加賀の国将軍決定戦に出たいです!」
少しの沈黙。しかし、メグミさんは静かに笑った。
「いいじゃない、そこらの大会は皆が出てるし、それにファイターなら自分の実力を試したくなるのも当然だしね。」
トマリさんは関心したようにうなずいた。
「それにしても、ユウユ君って内気なタイプかと思ってたけど、結構男気あるじゃない。お姉さん見直しちゃった!」
ザクサさんは皆を見て呟いた。
「異存はないみたいだよ。リーダー」
良かった。みんなに反対されなくて。でも、今ザクサさんなんて
「え、り、リーダー!?」
「今更何言ってんの?ここにいるみんなユウユくんに惹かれて集まったんだよ。ユウユくん意外がリーダーなんて考えられないよ!」
トマリさんに肩をたたかれ、僕は顔を赤くしてうつむいた。
「それじゃあ、さっそく参加登録をしようか、と言いたいところだけど…、まずはチーム名から決めないとね。」
ザクサさんに言われ、そういえばと思い至った。
「えっと何か案がある人はいますか?」
全員が口をつぐむ。誰もチームの名前を考えている人はいなかったようだ。そんな中、ふとメグミさんを見ると…。
「メグミさん、それなんですか?」
「えっ、あー、これ?」
するとメグミさんは手に持っていた4つの四葉のクローバーを見せると、みんなに配った。
「そのお守りにいいと思って。」
「昨日必死に探したんだもんね。クアドリフォリオ!」
「ちょっ、やめてよトマリさん。」
「クアドリフォリオ?」
「イタリア語で四葉のクローバーの意味だね。」
耳慣れないトマリさんの言葉に思わず僕は聞き返してしまう。それに対して隣に聞いていたザクサが答えてくれた。それを聞いた僕は
「これだ!」
思わずつぶやいてしまった。
「幸運を呼ぶ四葉のクローバー、チームクアドリフォリオ!チームの名前にピッタリじゃないですか!」
ああ、とみんなも納得した。そこからはチーム名の話し合いだ。
「でも、そうするとブラックアウトのメンバーっていうのが分かりにくいね。」
「じゃあ、そのままブラックアウトをそのまま入れちゃおうよ!チーム、ブラックアウトクアドリフォリオ!なんか響きもいいしね!」
「でも、そうすると文字数が長くなりすぎる。登録用にイニシャルを抜き出して」
そして、ザクサはキャンバスを取り出し、レタリングをした文字で新しいチーム名を描いた。
「チーム“BQ4”ってところかな」
「「「おおーっ!!」」」
こうして、全会一致でチーム名が決まった。
「それじゃあ、決まりですね。僕たちはこのブラックアウトに幸運を運ぶ四葉のクローバー!チームブラックアウトクアドリフォリオ、略してチームBQ4です!!」
こうして、新しいチーム、チームBQ4が始動した。
ついに始まった加賀の国将軍決定戦。
加賀の国の名だたるファイターが終結する。
そこには、あのトップファイター、江端トウヤとその仲間たちの姿も
僕たちチームBQ4の挑戦がついに始まる
次回「開幕!加賀の国将軍決定戦!」
僕は自分の力がどこまで通用するか試してみたい。さあ、行こう!みんな!!