最終的に闇堕ち霊夢と戦う話   作:カザナミ

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過去への逃亡

 

私の世界は二度、大きく変化した。

 

一度目は日常の変化。平凡で、退屈な当たり前の日常を過ごしていた。

 

ただその中で、他者との繋がりはあまり持て無かったという自覚がある。その時は必要だと思わなかったが。

 

この人間同士の繋がりを軽視していたのが、私が幻想郷という場所に来てしまう要因の一つになってしまったらしい。

 

外の世界、つまりは今までの日常への帰還も考えたけど、私は幻想郷の雰囲気を気に入って戻らなかった。それが、一つ目の変化。

 

そして、二つ目の変化は…

 

私が気に入った美しい風景が今は見る影もなく、とある破壊者によって蹂躙されるのを待つだけの逃げ場の無い檻になってしまった事だ。

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 

私はただひたすらに走る。一歩でも遠く、ソレのいる場所から逃げるために。

 

もはや人里で逃げ惑う人達の悲鳴は聞こえない。ただ、そこに集まっていた人間を一人も逃がすまいと、未だに攻撃の手を休めていない事だけは分かる。

 

 

「あぅ、!?くっ…」

 

 

気が付かない内に足の限界が来ていたのか、私は正面から転んでしまう。

 

地面で擦った足から鈍い痛みが伝わり始める。けど、ここで寝ていたら破壊者に見つかってしまうかもしれない。限界と痛みで震える足を無理やり動かして、太い樹の木陰へと滑り込んだ。

 

 

「はー…はー…いったい、なぁ…」

 

 

荒い呼吸を落ち着けようと、一度地面に腰を下ろして足の傷を確認する。

 

案の定、足には擦り傷が出来ており深い怪我ではないものの、血が滲み始めている。

 

応急処置出来るだけの道具はないので、せめて傷に染みないように体勢を変えようとしたけど、荒い呼吸がそれを妨げる。

 

 

「何で…こう、なっちゃったの、かな…」

 

 

力無く空を見上げる。私の呟きには答えず空は暗く、どんよりとした色しか映さない。

 

 

「きゃあぁぁ!?」

 

 

破壊者が暴れている音すら聞こえなくなった方角を伺おうと、少しずつ樹から顔だけ出した。

 

その瞬間、体を預けていた樹が爆散して私もその場所から吹き飛ばされてしまった。

 

 

「あぁ、っ…何、が………!?」

 

「最後の、一人、ね」

 

 

吹き飛ばされた体は重りでも付けられたかのように酷く鈍重に感じる。

 

それでも体を起こそうと両手を着いて上半身を持ち上げた私の目の前に、この状況を作った元凶の声が落ちてくる。

 

幻想郷を破壊し、人も妖怪も神様ですら見境なく駆逐していった。止めようと立ちはだかった存在の悉くを灰塵にしたモノ。

 

 

「博麗、霊夢…!」

 

「………ふふ」

 

 

何がそんなに可笑しいのか、体を起こせない私を笑いながら見下ろしている。

 

それは素敵な楽園の巫女と呼ばれていた彼女からは想像もつかない、酷薄なものだった。

 

 

「何で、あなたが…幻想郷を大事にしていたあなたが…!」

 

堕霊夢「…」

 

堕霊夢「ふん!」

 

「ぁぁぁぁあああああ!?」

 

 

彼女が手にしているお払い棒。見た目はただ木の棒に半紙が取り付けられているだけにしか見えない。

 

それが見た目以上の凶器で、人間の肉体をあっさりと貫通するような強度があり、うつ伏せに倒れていた私の脇腹を串刺しにして地面に縫い付けてしまう。

 

体が痛みという形で必死に状況を伝えるせいでまともに思考が働かない。でもまだ死にたくないと体は必死にお払い棒を引き抜こうと握り込む。

 

 

「はぁ…うぐ、あぁ…」

 

堕霊夢(ニコニコ♪)

 

「助け…殺さないで…死にたくないよぉ…霊夢…!」

 

 

態々人体にとって致命的な部分を外し、抵抗する私を見ている霊夢。

 

ほら、頑張れば逃げられるかも知れないよ?早くしなきゃ、とでも言いたいのかと内心呻く。

 

幼い子供が虫の足や羽を千切った後の反応を楽しんでいるかのようだ。

 

それが動かなくなった後にどうなるか、分かりきっている。抵抗を諦めて命乞いをした私に対する答えは、振り上げたお払い棒を以ての回答らしい。

 

 

「させるかよぉ!」

 

「何、が?」

 

 

避けられない死を間近に目を閉じて堪えたが、まだ死んでいないらしい。

 

すぐ間近にいた霊夢に多種多様な弾幕が襲いかかっていた。

 

 

「ま、魔理沙!?私、見付かって…」

 

魔理沙「早苗ぇ!早くしろぉ!!」

 

早苗「こうなってしまっては、もう時間がありません…あなたの能力を使って下さい!」

 

「待って、二人は!?」

 

魔理沙「………ちょっと遊んでやるだけだ。後は…いや、前の事は任せたぜ」

 

早苗「お願いします…未来を、こんな世界を認めないで…必ず、変えて下さい…」

 

 

幻想郷でも屈指の実力者達が束になっても勝てなかった霊夢に、魔理沙と早苗のたった二人で挑むなんて無謀でしかない。

 

それでも彼女達がここに来たのは、私の能力が未来を変える為に必要な為だからだ。

 

過去に記憶を送り、この絶望の未来を変える。それが私の役目。

 

 

「約束する!!必ず…必ず未来を変えてやるから!!だから、だから…」

 

早苗「ーーー」

 

 

私の世界は変わった。最後の最後、早苗の言葉を聞くことが出来ずに再びかつての…美しい頃の幻想郷に戻ったのだ。

 

目的は、絶望の未来を変えること。数えきれないほどの犠牲の上に、私は記憶を過去に継承した。

 

 

「絶対に、未来を変えてやる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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