最終的に闇堕ち霊夢と戦う話   作:カザナミ

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難易度『死にたいなら』の洗礼

 

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁふざけんなクッッソがぁぁぁぁぁ!!??」

 

 

私は身に降りかかった不運に盛大に毒づきながら必死に足を振り上げ疾走する。

 

呼吸などとっくに乱れて心臓が忙しなく酸素を寄越せと喚き散らす。

 

既に疲労困憊状態であるが、現在私には走りを止めるという選択肢はない。

 

何故なら、私の真後ろから身長を軽く越える鉄球に追い回されているという状況だからだ。

 

 

「おら急げ急げ~。もうすぐ出口だぞ~」

 

「くそ、くそ、くそぉぉぉぉぉ!?」

 

 

身体能力を越えた走りをしている事で、いつ崩れ落ちてもおかしくない。

 

それでもなんとか、もう自分でも執念としか言い様のない有り様で聞こえてきた声の言う出口に間に合った。

 

扉は無く、鉄球が通れない程度の細い道に飛び込む。後ろから来ていた鉄球は狭い道の口に当たって轟音を上げて戻る道を閉じたけど、何とか私は無事だった。

 

 

「ヒュー…ヒュー…つ、つかれ…息、が」

 

「おいおい、何安心してんだ?まだ最後のお楽しみがあるだろう?」

 

「お、お楽しみって…こっち、は、それどころじゃ…」

 

 

全力疾走してきた私に休みを与える間も無く、仰向けに倒れていた私の視界には、刃物をぶら下げたどんどん下がってきている天井が写る。

 

鉄球といい、釣天井といい、何かの映画のセットかよと思う。でも、その仕掛けは本物だ。このまま何もしなければ、私は本当に殺されてしまう。

 

だから、どんなにしんどくても立ち上がらなくてはならない。

 

 

「ハッハー!日本産ミートソースの出来上がりだ!オキナには俺から言っといてやるよ。お前はお嬢のスパの材料になりましたってなぁ!」

 

「最、悪…!」

 

 

少し前の自分の選択を恨む。こうなるって分かってたら、絶対に関わらなかったのに…

 

どうして私がこんなデスゲームじみた事をやらされているのか、それは私がとある場所に関わってしまったからだ。

 

 

・・・

 

 

 

幻想郷で外来人が生きていくのはかなりしんどいという経験者曰く、そういう時はどこかに後ろ楯になってもらうのが良いらしい。

 

いくつかの候補をあげてもらった私は、取り敢えず紅魔館という所に行ってみる事にした。

 

教えてもらったのだが、紅魔館には吸血鬼という妖怪やらが居る幻想郷でも強い部類の化け物が当主を務めているらしい。

 

危険な相手ではあるが、話はできるとの事で興那から紹介状というのを持たされてそれらしき場所に来た。

 

 

「あ、もしかしてあれかな?」

 

 

森の湖近くにミスマッチな洋風の外壁。遠目からでは中がどうなのか確認出来ないけど、近づいてみよう。

 

…というか、何で私は「死にたいなら」とか言われるような所に来てしまったんだろうと今更ながらそう思う。

 

普通なら絶対にそうしないんだけど、何かこう、何かの運命の流れがそうさせたというか…分かる?ないか…

 

 

「お、あれは…人、かな?…他に入り口は、近くには無さそう、かな…よし」

 

「あのー、すみません。ここは、紅魔館で間違いないでしょうか?」

 

「…珍しい。ええ、合っていますよ。どんなご用件でしょうか?」

 

「興那から紹介状を…これを」

 

「あー、なるほど。少しだけ、本当に少しだけ待ってて下さい。お嬢様に伝えてきますから」

 

「あ、はい」

 

 

見た感じ、正面門の監視をしていた女の人は一度中に戻ったと思ったけど、またすぐに出てきた。

 

伝えて来るのでは?という顔になってたんだろう。「すぐに伝わりますよ」とこちらににこにこと笑いかける。

 

それから本当に時間が掛からずにノックしている音が聞こえて私を迎えようとしているのか、それとも何処とも分からない場所へと引き摺り込もうとしているのか、目が痛くなるような紅い屋敷への門が開いた。

 

 

「お嬢様がお呼びです」

 

 

開いた門のその先…件の紅魔館を目にした瞬間、何故だか酷く体温というか、背筋が冷えるかのような緊張感を感じる。

 

人間の直感等を私は信じた事はないが、私の意思に関係なく体そのものがここへの立ち入りを拒んでいるかのようだ。

 

しかし今更引き返す訳にも行かない。緊張によって乱れかけていた呼吸をゆっくりと落ち着け、入り口に来ていたメイドさんの方へ歩いて行く。

 

私の後ろで門が静かに閉まる。もう、引き返す事は出来ない。

 

 

・・・

 

 

(落ち着かないなぁ…)

 

 

銀髪のメイドさんの後に続いて゛お嬢様゛の所に向かっているが、どうにも落ち着けずに色んな所へ視線を飛ばしてしまう。

 

まだ夕方でもないのに館内は窓が少なく日が入りにくいのか若干薄暗い。

 

前評判の「死にたいなら」と聞いていたのもあって、自分の足音にすら驚きそうだ。

 

 

「着きました。くれぐれもお嬢様に対し、礼を欠くことの無いようにお願い致します」

 

「はい」

 

「…お嬢様」

 

「入れ」

 

 

その部屋の中で一際目に入る、誰かの姿を見る。それは、幼い人間の幼女のような姿をしていた。

 

だが、一度相対すれば事前情報など無くても普通ではないと嫌でも理解してしまう。

 

 

「さて…興那からここの事を知ったそうだが…私が分かるか?」

 

「…吸血鬼だと、そう聞いてます」

 

「なんだ、そこを聞いてたのか。驚かせようと思ったのに…なら、別に隠す必要もないか」

 

「!?羽が…」

 

 

そう、目の前の少女から人間にはあるはずのないコウモリのような黒い翼が出てきたのだ。

 

こちらが面食らっているのを一瞥せずに、部屋の中心の椅子に座ってからようやくこちらに目を向ける。

 

 

レミリア「初めまして、人間。私はレミリア・スカーレット。紅魔館の当主をしているわ」

 

「えっと、はい。初めまして…早速ですけど、私は預かった物がありまして」

 

レミリア「ふぅん…興那からの紹介状か」

 

「ん!?ってあれ!?いつの間に…」

 

レミリア「…まぁ、どうせ暫くウチで預かれとかそんな内容でしょう…はっ!下らない」

 

 

持っていた紹介状をいつの間に抜き取られた事にも驚いたが、レミリアは紹介状を眺めただけで中身を確認せずに握り潰してゴミ箱へと放り投げた。

 

どこが話は通じるだよ…全然怖いやつじゃないか…

 

 

レミリア「さて、どうしてやろうかしら?この人間。ここから立ち去るか、それとも私に従うか…」

 

「し、従うって…?」

 

レミリア「決まっているでしょう?私の下僕として従うのか、どうするか…役立たずは要らないのよ。お前の運命は、お前で決めなさい」

 

「わ、たしは…」

 

 

怖い…本当は人間ではない存在と話しているなんて状況が堪らなく怖い。

 

近くに居るだけで私なんか押し潰されてしまいそうな存在に自分の命を預けるなんて本当はしたくない。でも…

 

 

「わ、分かっ…分かりました。でも出来れば、一週間だけ、お願いします」

 

 

絶望の未来を思い出す。私は、その未来が訪れるのを阻止するために、私自身で何とかしなきゃいけないんだ。

 

 

レミリア「えマジか…いや、ふむ…一週間という期限がよく分からないが、まぁ良いだろう」

 

レミリア「但し、さっきも言ったが役立たずは要らん。例え一週間だろうと、お前は私の下僕として恥じない働きをするように。それさえ守れば、悪いようにはしないわ」

 

「はい、分かりました!」

 

レミリア「…咲夜、部屋を一つ用意。月下とこいつを使えるようにしておくように」

 

咲夜「承知しました」

 

レミリア「行け」

 

 

・・・

 

 

 

「ぶはぁぁぁぁ…すっごい、怖かったぁ…」

 

 

咲夜と呼ばれていたメイドさんに案内してもらった部屋のベッドに倒れこみ、深く息を吐き出す。

 

でもこれは仕方ないでしょ?あのレミリアとかいう吸血鬼。見た目は子供の癖に威圧感半端ねぇんだもん…

 

咲夜にしてもなんか必要最低限の事しか全然喋らないし、こっちを見るときめっちゃ睨んでくるし一般人からしたら怖いよもう…

 

今は予定が組み終わったら呼びにくるとか言われてるから待ってるけど、改めてすごい所に滞在する事になったなぁと思ってしまう。

 

 

「失礼します。予定調整が出来ました」

 

「あ、はい!…誰だろ、咲夜じゃなかったな」

 

 

役立たずは要らないというレミリアの言葉がよぎって急いで部屋から出る。もしやる気が無いとか思われたら、どうなるか分からないし…

 

 

「こんにちは。あなたが本日からお嬢様に仕える外来人ですね?」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

「元気があって嬉しいですね…ありがたい限りだ(ボソッ)」

 

「え」

 

「?」

 

 

咲夜の代わりに私を呼びに来たのは、ここまで洋風だった雰囲気とは反対に、日本の礼服を身に付けた少年だった。

 

咲夜と違い、ニコニコと愛想の良い執事なのかな?

 

 

「いえいえ、私は執事ではありませんよ」

 

「え、すご…何で分かったの?」

 

「ただの勘です♪それより申し訳無いのですが、本日の仕事場所まで歩きながら予定を説明してもよろしいでしょうか?」

 

「あ、はい今行きます!」

 

月下「では改めまして、私は朔日 月下(さくじつ げっか)と申します。メイド長の咲夜と同じく人間ですが、縁あってお嬢様に仕えております」

 

 

さっきの咲夜もそうだったが、この人も人間だったのか…

 

 

月下「あ、もしかして本当はもっと見るからに人外だらけだと思ったのにと思いましたか?」

 

「うぇ!?ま、また…」

 

月下「ふふ、ここに来た人は大体似たような反応をするんですよ」

 

 

そりゃそうだわな。

 

まぁ、でも二人も人間が居るというだけでも少しだけ安心というか気休めにはなる。

 

咲夜はどうか分からないけど、月下は話してくれるし仲良く出来るかも。

 

 

「所で、何処に向かっているんですか?」

 

月下「ん?ああ、地下室ですよ。あそこは手入れが大変なんです」

 

「先ずは掃除からやるんですね?」

 

月下「ええ、はい。足元、気を付けて下さいね。その先のドアが今日の仕事場所です」

 

「よっとと…ここでいいのね?」

 

月下「…」

 

「んん?何か、別に汚れてるとか無いような…月下さん、これ(ガチャン!)え」

 

月下「…」

 

「ち、ちょっと、月下さん?何で扉閉めたんです?え、月下さん??」

 

月下「これより、楽しい楽しい紅魔実習基礎能力編を実施する!」

 

「ふぁ!?」

 

 

次の瞬間、地下室からはシューという音と共に、何か妙な臭いが立ち込め始める。

 

何かおかしいと入ってきた扉に手をかけるが、そこは月下に閉められた際に完全に開かなくなっていた。

 

 

「ちょっと月下さん!ここ開けて下さい!!速く!」

 

月下「そいつは出来ねぇ相談だなぁ」

 

「げ、月下さ、ん?」

 

月下「良いか、よく聞け?その部屋に流しているのは毒ガスだ。お前が死ぬ前にそこから逃げてみせな!そしたら話くらいは聞いてやるよ」

 

月下「最近は挑戦者が居なくて妹様も退屈してたからな。期待してるぜ外来人?」

 

「うっそだろおい…!」

 

 

・・・

 

 

ええ、まぁそんな訳で冒頭に戻るんですねこれが。あれから本当に大変だったんですよ。

 

毒ガス地帯から抜けられたと思ったら次は水責めをされるわ、外れの床を踏み抜いたら針が突き上がって足を貫かれそうになるわ。

 

そして鉄球に追い回され終いには釣り天井というね。もう自分でもここまで生きてるのが不思議な位だ。

 

 

「あぁ、クソクソクソ…何とかしないと…」

 

 

刻一刻と、鋭利な刃物が付いた天井がずり下がってくる。

 

そのプレッシャーは相当なものだが、ここまでやったのだ。絶対に生き残ってやる。

 

 

月下「60…50…40…30…20…」

 

 

が、実際の所この状況を打破するようなヒントは見つけられない。

 

月下のカウントダウンが余計に焦らせ、天井はもう私から一メートルも離れてない場所にまで降りてきていた。

 

 

「…あぁ、もう!出し惜しみしてらんない!やってやるわよ!」

 

「サムワンズメモリー………インストール…『グレイソーマタージ』!!」

 

 

私の記憶に、私のものではない別の記憶が瞬間的に流れ込む。

 

その記憶が行うままに、私の体は実際に起こる現象を再現する装置としてだけに定義する。

 

降りてきていた釣り天井は人間一人には十分な隙間が出来上がる。完全に下がりきって仕掛けが動かないことを確認し、正面の扉に手をかける。

 

 

月下「Foooo!踏破おめでとう!やるじゃねぇか!」

 

「この野郎…」

 

月下「お、何だよ不満そうだなぁ。でも終わってみたら楽しかっただろ?イン⚪ィー⚪ョーンズみてーでよアーハッハッハッ!」

 

「イン⚪ィーじゃなくてS⚪Wだよクソが…」

 

 

扉を抜けた先で月下が陽気に迎えた事で本当に終わったのが分かったが、こっちは満身創痍なのに笑っているこいつをみると本気でイラついた。

 

 

月下「…ただ、お前が最後に使ったアレ…見覚えがあるぞ。そう、確かありゃぁ………あれだ。守矢の巫女モドキのスペル技だったな」

 

月下「みょーうだよなぁ。お前、幻想郷に来てから数日の外来人だろ?それが何の練習もなしに技の真似撃ちをした?変だよなぁ?あぁ、なるほど」 

 

月下「お前、なんか変な能力持ってるな?」

 

「…それは」

 

月下「あぁ、いやいや説明しなくていい。そうだなぁ…お前のここまでの身のこなしなんかは正直ただの素人だ。俺から見てそう思った」

 

月下「だが、さっきの『グレイソーマタージ』だけはやけに的確に撃ってたんだよなぁ………」

 

月下「ふふん、読めたぞ。お前、多分記憶に関係する能力があるだろ。そいつでスペル技を真似撃ちしたな?」

 

「!!」

 

 

この人…ふざけた態度とは裏腹に、たった一度の能力使用でそこまで理解出来るのか!?

 

いや、たったあれだけのヒントでここまで見切れるから人間でありながらレミリアの下に付けるのか!?

 

 

月下「ま、本当にそうだとしたらお前がいつサナエに接触したんだよってなるから違うか。まぁでも、イイ線いってるだろ?」

 

「そう、ですね…」

 

月下「ということは…お前をここに置いてたら他の奴の技とか、お嬢の技まで使えるようになるかもしれねぇ訳か…」

 

「…」

 

月下「イッヒッヒ。その能力もだが、さっきの研修で見せた根性も気に入ってたんだ。お前の事はシスターと呼ばせて貰うぜ」

 

「は、はい!?何で!?」

 

月下「そうしたいと思ったからに決まってんだろ。俺の事もブラザーと呼んで構わないぜ!」

 

「ブラザー…い、いや待ってよ。私の能力何となく分かったんでしょ!?なのに置いておくの?」

 

月下「オモロイやん」

 

「えぇ…」

 

 

何か、最初に接した時と今とで月下のイメージが全然違う…最初は物腰の柔らかい格好いい人だったのに…何だこの人…

 

 

月下「おっと、もうタイムリミットか。新人いじめに時間を使いすぎたな」

 

「いじめ!?」

 

月下「一回風呂入ってから食堂に来てくれ」

 

「…何かあるんですか?」

 

月下「何って3時のおやつに決まってるじゃないか」

 

「3時のおやつ!?」

 

月下「知らないのかい、シスター?3時っていうのは人間が一番食べた物を脂肪にしにくくて、育ち盛りの時は一番カロリーの要る時間なんだぜ?」

 

「あ、そうなんすね…」

 

月下「ああ、まぁ夕食が入る程度だがな。今日は俺がアップルパイを焼いてやる日だ。その前に、その格好を何とかしてこい」

 

「分かりまし、た…」

 

月下「ま、今日の体力を作るというお前の仕事は終わりだ。後は部屋で休んでて良いからな」

 

 

あ、今日は終わりで良いんだ…いや、これ以上何かしろとか言われても何も出来ないけどさ…

 

 

月下「メイド妖精!三人位!!」

 

メイド妖精ABC(わたわた…)

 

月下「シスターを風呂に案内。着替えの用意。風呂が終わったら食堂に連れてこい」

 

メイド妖精ABC(ビシッ!)

 

 

あ、何かちっちゃい女の子みたいなのがメイド服着てる。結構かわいいかも。

 

指示を受けた三人のメイド妖精?は月下の指示をこなしているけど、それ以外のメイド妖精はどこか萎縮しているような雰囲気を感じる。

 

紅魔館での生活一日目。たった一日なのにここまで濃い時間を過ごすことになるとは思わなかった…

 

デスゲームの疲れもあるし、その日は本当に吸い込まれるように眠ってしまった。

 

あ、あとおやつのアップパイ目茶苦茶美味しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

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