異世界へ行く儀式というのをやってみると、ポケモンの世界に来てしまった。魔王とかいないから当たりの世界だろう。代償として、女の子になったが良い世界にこれたと思う。この世界に来て約1月が過ぎた。
「おっはよーう。お母さん」
「おはよう、エリナ。今日こそダイビングの習得よ」
約1月で学んだことは異常だということだ。お母さんは居合切り、怪力、岩砕き、波乗り、ダイビングを標準装備している点だ。空気ボンベを使わず海底を自力で移動するとのこと。ムリやん。使えるようになればなろう系最強クラスじゃん。
「むーーりーー」
「失敗して1日も寝込むなんてチャンピオンなんて夢のまた夢よ」
「1日も寝たのは助けてくれたドククラゲの毒のせいだよね。トゲチック」
「どっちも変わらないわよね。トゲチック」
詳しくは聴いてないが、ウチの母は歴代でも最凶と名高いチャンピオンらしい。それはいいのだが、居合切りと怪力、波乗りとダイビングは最低限覚えないと冒険の旅に出られないらしい。え?何其理不尽。レッドもブルーもサトシもそんなモノ覚えてないのではないかと言いたい。ダイビングと怪力以外は取得できたんだけど、この二つがむーーりーー。
「あぁ、もう、無理」
「もうすぐ10歳になるのにバンギラス程度に負けてどうするのよ。午前中はホエルオーにすら負けてたし」
児童保護法はどこ行った?午前中はダイビング、午後は怪力。10歳に満たない女の子がポケモンに勝てるわけないのだ。せめて、コラッタとか他のポケモンにしたら怪力勝負は勝てる気がするんだけどね。もう、キツイ。きつすぎるよ。
「お母さんって現役時代どんな感じだったの?」
「え?私?トゲチックの指を振るで勝ち進んでたけど?普通じゃない」
確実に普通じゃない。チャンピオンで指を振る?逆に新鮮な気持ちになるけど。ねぇ?威厳というか、カリスマの無さが凄い。あんな技に敗れた挑戦者が不憫だわ。
「何よその顔。現役時代は無敗の魔術師って呼ばれてたのよ」
「まさかぁ」
胸を張るトゲチックを目に入れ、本当に無敗だと思い直すが、間に合わずしょんぼりさせてしまう。そ、そんなぁ、ウチのお母さんは嘘つきそうな詐欺師が似合う感じだ。チャンピオン時代に培った雰囲気とかがそう見えるんだろうけど、ポケモンを悲しませるのは俺の主義に反する。
「ごめんよ。トゲチック」
「おい、何を見て判断した」
「トゲチック嘘つかない」
「そろそろ、休憩は終わりよ。せめてリオルに勝つまで晩御飯無しよ」
目の前が真っ暗になった。ポケモン勝負をしても無いのにそんな言葉が思い浮かんだ。そして、その日はリオルのスタミナ不足になった、第380回目の勝負に勝ち夕飯を食べられたのは日付変更線前だった。
次の日もその次の日も修行は続く。今までより過酷となったが、遂に修行の成果がでた。ようやく前進したのだ。1tクラスの巨石を動かせる日が来たのだ。
「うぉぉりゃぁぁぁ!!」
どっごーーん。というような轟音が鳴り響き、地面に埋まる巨石。やった。やってやった。漫画やアニメの世界の主人公に私はなった。ふふん。さて、次は海底散歩だ。
「エリナ行きまーす」
ざぶぶん。みたいな効果音と共に海底に向かっていく。海底にある沈めたぬいぐるみを取り、海面へ浮上する。この時水圧があるので、急浮上するのは駄目だ。ゆっくり浮上するのがコツだ。この前失敗したのも浮上だ。
「ぷはー。やった。成功だ―」
これで、冒険の旅に出られる。その時はそう思っていた。まさかあんな落とし穴があったとは、思わなかった。