平和、宿毛湾泊地   作:はまなす改二

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平穏な午後

 

菊月の夏服。

睦月型の正式な制服と比べても見た目で変わるところと言うのは袖の長さのみである。

細かく見れば変わるところは服の材質や薄さなどがあるが見た目ではほぼ判断出来ない。

この建物の居間に当たるところに菊月がソファーに座っている。

菊月は半袖にしたからか少し涼しそうにしていた。

「どうですか?涼しいですか?」

「ああ、当然だ。涼しくなくては夏服の意味がないからな。」

菊月と話していると、すでに夏服を着こなしている深雪がやってきた。

「あ、菊月ちゃんの服、夏服になったんだー!涼しそうでいいねー!」

深雪は一週間程前から夏服になっている。

吹雪型の正式な制服は半袖なので、深雪は元の正式な姿に戻ったと言える。

白い吹雪型の制服と、黒い睦月型の制服。

やはり、見る限りは黒い夏服と言うのは涼しそうには見えない。

黒は光を集めると言うし、夏本番はもっと暑いだろう。

「また、本部の人達と協議してみないとですね〜。」

どこの鎮守府や泊地の提督でも総司令部(本部)に協議を申し立てる権限が与えられている。

本部だけの独裁政権ではなく、各鎮守府や泊地の意見を取り入れながら艦隊を運用しようと言う本部の方針だ。

協議の内容は艦娘に関することなら比較的何でも良く、睦月型の制服に夏服が取り入れられたのもこの協議のおかげである。

「司令官、今度は何を協議しようとしているんだ?」

菊月が聞いてくる。やはり、協議と言う言葉に引っかかったのだろう。

「特に大きな事ではありませんよ、気にしなくて大丈夫です。」

そう言って少しはおさまった菊月だが、人に迷惑や世話を焼かせたくない性格なので、少しは警戒しているように見える。

前回の協議「睦月型の夏服」の件も私が暑そうな菊月を見て発案し通したもので、当時は協議に通った事が嬉しくて即刻菊月に話してしまった。

しかし、それが裏目に出てしまい、菊月は世話を焼かせた、と思い込んでしまったよう。

そんなことではないと説明したが、この様子だとまだ引きずっているようだ。

こちらとしても菊月にこのような思いはさせたくないのですが…。

この話はどうにか解消しないといけない。

そう考えていると倉庫の扉(提督達が住んでいる住居用建物の玄関的ポジション)が軽く叩かれる。

そして、新しいとは言えない横開き扉がガラガラと音を立てて開かれる。

「ごめんくださーい、提督さんはいらっしゃいますかー。」

この声は近くの漁港の漁師さんの声だ。

「はーい、ただいまー。」

私は玄関の方へと向かい、漁港の漁師さんと少々話をする。

内容は捕れた魚を譲るというもの。

ありがたく頂いておく。

青みがかった発泡スチロール箱の中には大量の氷水と少々生臭さのある新鮮な魚が複数尾入っていた。

「これはちょっとした(漁港)組合からの礼の品物です。今夜の食卓にでも並べてください。」

そう言って漁師さんは戻っていった。

全国各地の港や海の関係者は深海棲艦と言う脅威から海を護ってくれる艦娘に礼を言い、感謝の品を自主的に渡す事があると言う。

もちろんここも例外ではなく、過去にも度々新鮮な魚を頂いている。

「今夜は、アジフライカレーでしょうか。」

そんなことを呟きながら居間へ戻る。

そこには先程までソファーに座っていた菊月の姿はなく、カーペットで横になる深雪の姿があった。

「深雪さん、今夜はアジフライカレーになりそうです。」

と、深雪に話しかけるも反応がない。

気になったので、貰った新鮮魚入り発泡スチロール箱を適当な場所に置き、横になる深雪に近づく。

近づくと徐々に微かな寝息が聞こえてきた。

寝てたんですね…。

時刻は午後二時頃。

晴れた空、潮風が気持ちいいこの時間帯、絶好の昼寝日和。

深雪が寝ていることを知ると釣られるように軽く睡魔が迫ってくる。

貰ったばかりの鮮魚を魚専用冷凍庫に入れ、居間にあるソファーに腰を下ろす。

ゆっくり目を閉じると爽やかな潮風が感じられた。

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