遊戯王 ―― strayeD girls ――   作:James Baldwin

4 / 13
 デュエル難しい……。


VS悪鬼夜叉姫・悪姫の脅威 前編

 旭飛の後を追って二人が辿り着いたのは、校舎の裏にある開けた場所。人気はなく、柵を挟んだその先には雑木林が拡がっている。

 十分な広さがあるここでなら、リアル・ソリッド・ビジョンでモンスターを投影することも可能だろう。

 

「逃げずに付いてきたのは褒めてやる」

 

「ありがとう」

 

「はっ、だがてめえはひとつ勘違いをしているだろうから、ここで正しといてやるよ」

 

 何を勘違いしているのか黒江にはさっぱりだったが、そんな黒江を他所に旭飛は続けた。

 

「アタシは初心者相手だろうが手加減は一切しねえ。ハナから全力でぶっ潰しに行くからな」

 

「……望むところよ」

 

「御託はここまでだ。さっさとやるぞ」

 

 そもそも、なんで私がデュエルをしなくてはならないのか。その疑問は今ここで呈するにはあまりにも拙い。

 

 ここは取り敢えずデュエルをするしかない。

 そう結論に達した(思考を放棄したとも言う)黒江はポケットからデュエルディスクを取り出した。

 

「デュエルディスク・オープン、だったかしら?」

 

 彼女がそう唱えると、掌から少しはみ出る程度のサイズであったデバイスが文字通り展開する。

 デバイスから飛び出したベルトが手首に巻き付き、デバイス本体はその身を何枚もの薄型のパネルに変えて横長に姿を変える。

 そして定位置にデッキホルダーをセットすることで、デュエルディスクは完成するのだ。

 

 ――DUEL mode ready――

 

「これが、リアル・ソリッド・ビジョン……」

 

 展開を完了した黒江のデュエルディスクと旭飛のデュエルディスクがデュエルモードでマッチングし、彼女たちを基点として周囲二十平方メートルにリアル・ソリッド・ビジョンによる簡易的なデュエルフィールドが投影される。フィールドとは言うが景観はほとんど変わらず、全体を囲むように半透明の壁が生み出されている。

 これらは全て二つ以上のデュエルディスクによって出力されているものだ。

 

「本当に初心者なんだな」

 

「そう言ってるじゃない。何をすれば良いのか全然知らないわ」

 

「ったく。おい、織奈。責任持ってこいつにやり方を教えてやれ」

 

「……うん、もちろん」

 

 指名された織奈はフィールドの中へと入ってくると、黒江の少し後ろに立つ。

 本来デュエルモンスターズはタッグデュエルなどの特殊なレギュレーションでもない限りは一対一でプレイするものだが、黒江と織奈のような形でセコンドが付くことも可能なのだ。

 

「遊佐さん、シャッフルはした?」

 

「ええ」

 

「テーブルデュエルならカットが必要なんだけど、今回は飛ばしても構わない。取り敢えず、伏せたまま五枚引くんだ」

 

 その通りに黒江がカードを五枚、最初の手札を引くと待ってましたと言わんばかりに旭飛が口を開いた。

 

「さあ、やろうぜ」

 

「……」

 

 そうして、二人は宣言する。

 戦いの始まりを。

 

 

「「────デュエル!!」」

 

 

 遊佐黒江・LP8000

 

 VS

 

 天元寺旭飛・LP8000

 

 ブザーが鳴り響き、二人の視界にリアル・ソリッド・ビジョンが8000のライフポイントを投影する。

 

 今ここに、デュエルの幕が切って落とされた。

 

 

 □

 

 

「先攻は譲ってやる」

 

「そう。なら遠慮なく」

 

「遊佐さん、先攻はドローフェイズとバトルフェイズが無い。最初の五枚の手札を使って、メインフェイズで体勢を整えるんだ」

 

 ゲームにおいて先攻というのは何かと有利である。

 それは、デュエルモンスターズにおいても変わらない。無論、構築とプレイング次第では後攻で勝つことなど造作もないし、そもそも後攻型のデッキテーマだって存在する。

 しかし、近代の遊戯王においては先攻で強力な布陣を敷いたり、盤面をロックすることで相手の動きを封じるなどの戦術、デュエルタクティクスが比較的多いのは事実であった。

 

「先ずはレベル4以下の低レベルモンスターを召喚するか、魔法カードを使って動き始めるところからだ」

 

 黒江は取り敢えず手札を見ることにした。

 そして、モンスターカードのレベルに疑問を覚える。

 

「レベル6のモンスターは召喚できるのかしら?」

 

「できるけど、レベル5以上のモンスターは上級と呼ばれるモンスターだから、通常召喚するにはモンスターを1体から2体生贄に捧げてアドバンス召喚しなきゃならないんだ。でも、1ターンに通常召喚できるのは原則1度だけだから、特殊召喚を併用したりして先ずは場にモンスターを生み出さないと最初のターンからアドバンス召喚することは出来ないよ」

 

 つまり、黒江の手札に存在するモンスターの内2体は今の状況では使えないということであった。

 何か出来ることは無いものかとカードのテキストを読み込むこと一分。黒江は手札とデッキのカードを思い浮かべ、頭の中で展開を導き出すと早速動き始めた。

 

「……私は手札から【De:Monstar-サナ】を通常召喚」

 

 

 ▽

【De:Monstar-サナ】

 レベル2 闇属性 魔法使い族 効果 ATK500/DEF500

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、このカードの①の効果を使用するターン、自分は「De:Monstar」モンスターしか特殊召喚できない。

 

 

 黒江の手札から召喚されたのは、黒を基調に可愛らしいフリルが配われた装いの少女。

 その名前と見た目に、黒江以外の二人は首を傾げる。

 

「【De:Monstar】? 知らないカードだな」

 

「ちゃんと召喚できてるってことは認可されてるカードだろうが……気にはなるが、それは後でだ。続けろ」

 

「言われなくても。私は、【De:Monstar-サナ】の①の効果を発動するわ。このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキ・手札から【De:Monstar】チューナー1体を特殊召喚する」

 

 

 ▽

【De:Monstar-サナ】

 ① このカードが召喚、特殊召喚に成功した場合に発動できる。手札・デッキから「De:Monstar」チューナー1体を特殊召喚する。

 

 

「私はこの効果でデッキから【De:Monstar-アリエス】を特殊召喚」

 

「レベル2のモンスターに、レベル6のチューナー……シンクロデッキか」

 

 

 ▽

【De:Monstar-アリエス】

 レベル6 光属性 悪魔族 デュアル チューナー ATK2000/DEF2000

 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。

 

 

 現れたのはモコモコとしたシルエットの羊のようなモンスター。だが、その身体はまるで宇宙で形作られたかのような有様で、夜空の至る所に星が見えた。しかし、鳴き声は「メーーー」である。

 

「デュアルモンスターの……」

 

「チューナー?」

 

 二人の困惑の声。

 現状、デュエルモンスターズにおいてデュアルモンスターのチューナーというものは存在しないのだ。

 ここからどうするのか。このカードはどのような力を秘めているのか。知らず知らず期待が膨らむ二人。

 一方の黒江は、そこで小首を傾げた。

 

「……それで、この後は何をすれば良いのかしら?」

 

「え、あ、えっとフィールドにレベル2のモンスターとレベル6のチューナーがいるから、EXデッキにレベル8のシンクロモンスターがいればシンクロ召喚できるよ。でも、①の効果を使った【De:Monstar-サナ】の制約で【De:Monstar】モンスターしか特殊召喚できないから、そこは気を付けて」

 

 自分のデッキのことながら本当に何も知らない彼女に絶句する二人のことを放って、黒江はEXデッキに目を通す。

 今シンクロ召喚できる条件を満たしているモンスターは1体のみ。

 

 効果を読むにどちらかと言えば今出すべきではないのだが、打点の低いサナを棒立ちさせるのもそれはそれで不味いと判断して特殊召喚することに。

 そこで隣からの期待の視線に気が付いた黒江は若干煩わしく思いながらそちらに視線を向けた。

 

「何かしら、進藤先輩」

 

「え、いや、本当に未知のカード群だからどんな召喚口上が来るかなってワクワクしちゃって」

 

「口、上……?」

 

 口上とは、デッキにおけるエースモンスターを召喚する際にデュエリストが口にする魂からの叫びである。

 黒江には全くもって理解できない文化であった。ちなみに姉の灰都も可愛らしい口上を口にする。

 

 しかし、ここでやらないと言うのは少々難しいのも事実。

 もう既に口にすることが確定しているかのような空気が流れてしまっているからだ。

 仕方無く、本当に仕方が無く、黒江は即興で口上を考えることに。

 

「レベル2の【De:Monstar-サナ】に、レベル6の【De:Monstar-アリエス】をチューニング……堕ちよ、【De:Mon-スター・サナ】」

 

 

 ▽

【De:Mon-スター・サナ】

 レベル8 光属性 悪魔族 シンクロ チューナー 効果 ATK2500/DEF1900

「De:Monstar」チューナー+「De:Monstar」モンスター1体

 このカードはルール上、「De:Monstar」カードとして扱う。

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、このカードの①②の効果を使用するターン、自分は「De:Monstar」モンスターしか特殊召喚できない。

 

 

 空間が軋み、空を破り裂くようにして現れたのは、アリエスと同じように宇宙で彩られたドレスに身を包んだサナ。しかし、その雰囲気はただのサナの時の物とは違い澱んでいて何処か冒涜的ですらあった。

 

 このデッキのエースであろうモンスターの登場に、緊張が一気に張り詰める。

 

「発動条件を満たしている①の効果は使わないわ」

 

S(シンクロ)チューナーか。だが、他にモンスターはいないぞ?」

 

 旭飛の言う通り、如何にシンクロモンスターのチューナーが存在すれどシンクロ召喚に必要なのはチューナー以外のモンスターが1体以上だ。しかし、黒江のフィールドに存在するモンスターは1体のみ。

 ここからどのように展開するというのか。

 

 旭飛の疑問、そして見たことも無いカードプールとそれを操る駆け出しデュエリストに対するそこはかとない期待に応えるように黒江は口を開き、

 

 

「私はカードを1枚セットして、このままターンエンド」

 

 

「「え」」

 

 そのままカードを1枚セットするとターンエンドを宣言した。

 

 なんとも呆気ないターンエンドに、二人は驚きを隠せない。

 しかし、すぐさま気を取り直した旭飛は黒江への失望を隠せないまま自らのターンを開始する。

 

 

「……アタシのターン、ドロー! スタンバイ、メイン。アタシは手札から速攻魔法カード【悪姫羅刹】を発動。このカードは自分より相手の場のカードが多い時に、フィールドの表側表示カードを1枚対象にして発動することが出来る。対象のカードを持ち主のデッキに戻す!」

 

「そういうのもあるのね」

 

「……アタシはてめえの場の【De:Mon-スター・サナ】を対象にする」

 

 

 ▽

【悪姫羅刹】

 速攻魔法

 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

 ①相手フィールドのカードの数が自分フィールドのカードの数より多い場合にフィールドの表側表示のカード1枚を対象にして発動できる。対象のカードを持ち主のデッキに戻し、その後、自分フィールドにこのカード以外のカードが存在しない場合、自分のデッキから「悪姫」モンスター1体を手札に加えるか自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 淡々と処理を行うその様に、先程までの高揚していた様子は微塵も見られない。

 

 発動されたカードから金棒を握った細腕のビジョンが現れると、そのまま【De:Mon-スター・サナ】を弾き飛ばしてしまう。

 

「スター・サナが……!」

 

「場ががら空きになってしまったわ」

 

「その後、【悪姫羅刹】の効果でアタシはデッキから【悪姫】モンスター1体を手札に加えるか、特殊召喚できる。来い、【悪姫-天邪鬼】!」

 

 

 ▽

【悪姫-天邪鬼】

 レベル8 闇属性 悪魔族 効果 ATK1800/DEF0

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 

 

 現れたのは、何処か蠱惑的な笑みを浮かべた着物姿の少女。しかし、その額には小さいながらも角が生えていて、彼女が真に人間でないことを如実に表していた。

 

 レベル8の上級モンスターでありながら、2000にも届かない攻撃力。しかし、そういうモンスターは得てして厄介な効果を持っているもの。何より、旭飛の【悪姫】デッキを知っている織奈はこれから始まるであろう恐ろしいコンボに一人冷や汗を流した。

 

「アタシはそのまま【悪姫-天邪鬼】の効果を発動! このモンスターが【悪姫】カードの効果で特殊召喚された場合、アタシの手札から【悪姫】モンスター1体を特殊召喚できる。特殊召喚するのは【悪姫-熊童子】だ」

 

 

 ▽

【悪姫-天邪鬼】

 ①このカードが「悪姫」カードの効果によって特殊召喚に成功した場合に発動できる。手札から「悪姫-天邪鬼」以外の「悪姫」モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

 ▽

【悪姫-熊童子】

 レベル4 闇属性 悪魔族 効果 ATK1000/DEF0

 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

 続け様に展開されたモンスターもまた鬼の少女。

 黒江が【悪姫】とは悪鬼と姫を掛けたテーマなのだろうかと場違いなことを考えていると、旭飛は更に続ける。

 

「このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、【悪姫-熊童子】の効果を発動! 手札・デッキからレベル4【悪姫】モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する! アタシはデッキから【悪姫-星熊童子】を特殊召喚!」

 

 

 ▽

【悪姫-熊童子】

 ①このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札・デッキから「悪姫-熊童子」以外のレベル4「悪姫」モンスター1体を効果を無効にして自分フィールドに特殊召喚する。

 

 ▽

【悪姫-星熊童子】

 レベル4 闇属性 悪魔族 効果 ATK1000/DEF0

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「レベル8のモンスターが1体に、レベル4のモンスターが2体……シンクロ召喚ではないわね」

 

「そうだ。アタシが今から行うのはエクシーズ召喚」

 

「エクシーズ召喚?」

 

「エクシーズ召喚は同じレベルのモンスターを素材にして行う特殊召喚の一種だよ。シンクロ召喚と違ってチューナーは必要無いけど、同じレベルのモンスターをフィールドに揃えなくてはならない召喚方法なんだ」

 

 疑問符を浮かべる黒江にすかさず織奈が説明する。

 なるほどと一応の理解を得るが、しかしそこで黒江は旭飛のフィールドのモンスターのレベルの違いに目を向ける。

 同じレベルのモンスターを素材にするのなら、レベル4のモンスター2体は分かるがレベル8のモンスターの存在が分からない。ただ場に揃える為の展開要員だと言われればそれまでだが、それではどこかちぐはぐでシナジーが薄い印象を受けたのだ。

 彼女の展開にはまだ先があるのではないか。黒江はじっと出方を窺った。

 

 その答えは、すぐに明かされることとなる。

 

「天邪鬼のレベルが気になるか? 見せてやるよ、アタシのやり方を! 【悪姫-天邪鬼】の第二の効果を発動! 対象は【悪姫-天邪鬼】自身! このターン、アタシのフィールドのモンスターのレベルは天邪鬼と同じ8になる(・・・・・・・・・・)!」

 

 

 ▽

【悪姫-天邪鬼】

 ②自分フィールドの「悪姫」モンスター1体を対象にして発動できる。自分フィールドの全てのモンスターのレベルはターン終了時まで対象のモンスターのレベルと同じになる。

 

 

【悪姫-天邪鬼】の第二の効果、それはレベル変更効果。

 これにより彼女のフィールドにはレベル8の上級モンスターが3体並んだことになる。

 

 旭飛はニィっと口角を釣り上げると、声高らかに宣言する。

 

 

「レベル8の【悪姫】3体でオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 

 

 ────絢爛泰平を脅かせ、【悪姫-酒呑童子】!」

 

 

 大地が震撼する。リアル・ソリッド・ビジョンの演出だけとは思えない本物の恐怖。それを振り撒きながら現れたのは、身の丈程の酒瓢箪を携えた妙齢の美女。その額には、大小違う一対の禍々しい角。

 

 

 ▽

【悪姫-酒呑童子】

 ランク8 闇属性 悪魔族 エクシーズ 効果 ATK3500/DEF0

 レベル8 「悪姫」モンスター×3

 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できず、その効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行うことが出来ない。

 

 

 ランク8、3500の高打点。紛うことなき旭飛のエースモンスターである。

 確かに容易に突破できない存在はそれだけで脅威の一言だが、このカードの最も恐ろしい点はその召喚時の効果である。

 

「このカードのX召喚成功時、X素材を1つ取り除いて発動できる! 自分の手札・フィールド、加えて酒呑童子のX素材から【悪姫】カードを5枚選んで墓地に送る。アタシは手札から3枚、酒呑童子のX素材から2枚の【悪姫】カードを墓地に送り、そして、お前のフィールドと手札のカード全て(・・)を墓地に送る!」

 

「全て墓地に……」

 

 

 ▽

【悪姫-酒呑童子】

 ①このカードがX召喚に成功した場合、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。手札・フィールドおよびこのカードのX素材から「悪姫」カードを5枚選んで墓地に送り、相手フィールド・手札のカードを全て墓地に送る。その後、相手はデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

 妖艶に微笑んだ酒呑童子が瓢箪に口を付けると、次の瞬間黒江のフィールド目掛けておどろおどろしい色をした鬼種の魔息を吐きかける。

 伏せられていた一枚のカード【カウンター・ゲート】はグズグズに溶け、黒江の手札は一瞬にして全て墓地へと送られた。

 

 それは、理不尽の権化。

 出でるだけでフィールドを更地へと変える最悪の後出しジャンケン。

 

 旭飛は、これまでのデュエルでも酒呑童子を始めとした悪辣なカードを用いて相手デュエリストを完膚無きまでに打ち砕いてきたそのプレイングを、情け容赦無く初心者の黒江に見せ付けた。

 

「さあ、てめえの最後の頼み綱を引きな!」

 

「ドロー」

 

「……ちっ、アタシはこれでターンエンドだ」

 

 促されるまま変わらぬ無表情でカードを2枚ドローした黒江。

 その姿を見て、先までの笑みから一転、つまらなそうな顔をした旭飛は自らのターンを終了する。

 たとえカードを2枚引くことが出来ても、一度崩されたタクティクスを埋め合わせるのはどんなデュエリストにしても至難の業。しかも相手は初心者だ。ここから巻き返せるとは到底思えない。

 

 冷めきった心情を胸に、旭飛は黒江を見た。

 そして、その顔を驚愕に染めた。

 

「……どうしたものかしら」

 

 そんなことなど露知らず。

 黒江は冷静に状況を見極める。

 

 こちらは更地。相手のフィールドに聳え立つのは、打点3500のモンスター。

 起死回生の頼みである黒江の手札は、次のターンのドローを合わせて3枚。

 

 初心者と実力者、圧倒的差を前に黒江はただ己のデッキを見遣るばかり。

 

 しかしその眼は、この絶望的状況において何一つ揺らいでいないのであった。

 

 

 To be continued.




 ――今日のキーカード――

【悪姫-酒呑童子】
ランク8 闇属性 悪魔族 エクシーズ 効果 ATK3500/DEF0
レベル8 「悪姫」モンスター×3
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できず、その効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行うことが出来ない。
①このカードがX召喚に成功した場合、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。手札・フィールドおよびこのカードのX素材から「悪姫」カードを5枚選んで墓地に送り、相手フィールド・手札のカードを全て墓地に送る。その後、相手はデッキからカードを2枚ドローする。
②X素材を持つこのカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

────────────

 今日のキーカードはこれね。
 天元寺先輩の使う【悪姫】テーマのエースカードよ。
 【悪姫】は展開力に優れたテーマで、コンボによってアドバンテージを稼ぎ強力な効果を持つ【悪姫】Xモンスターの特殊召喚に繋げるの。

 特に【悪姫-酒呑童子】は【悪姫】テーマの中でも極悪な効果を持っていて、①の効果は通ればほとんどのデュエリストが膝をつくことでしょうね。現に私も客観的に危機的状況よ。

 加えて、①の効果発動時に素材を残してさえいれば相手にチェーンをされても、②の効果で対象を取る効果無効や破壊などから自分を守ることもできるの。自らのケアもできる優秀なカードね。

 ……こんなところかしら。
 それなら、また次回の『遊戯王 ―― strayeD girls ――』で会いましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。