遊戯王 ―― strayeD girls ――   作:James Baldwin

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 もう少ししたら採用表作ります。


VS悪鬼夜叉姫・悪姫の脅威 後編

「遊佐さん、大丈夫?」

 

「? ええ、何も問題は無いわ」

 

 織奈の心配に変わらぬ様子で答えた黒江。

 実際、今の彼女にとってこのデュエルは何ともないものである。今この時、当事者でありながら微塵も勝敗に拘っていないからだ。なんならこのデュエル自体にすらほとんど興味を持っていない。

 流されるままに始まったデュエルだから、というのもあるが、それ以前にデュエルモンスターズに対する熱意があまりにも薄かった。

 

 今一度旭飛のフィールドを見る。

 攻撃力3500のランク8・Xモンスター【悪姫-酒呑童子】。

 手札も含めた全体除去という確かに恐ろしい効果と打点を持つが、それだけならばどうにかなるかもしれない。XモンスターがX素材を用いて効果を発動するモンスターなら、【悪姫-酒呑童子】にはもう既にX素材が存在していないからだ。

 こういう時、過剰に警戒しても意味は無い。

 

 やるからには、勝っておいた方が良いだろう。姉さんと白袮が喜んでくれるから。

 もしも黒江が勝敗に拘るとしたら、理由はそれくらいのものでしかない。

 

「進藤先輩」

 

「何かな?」

 

「進藤先輩なら、この局面から逆転できるかしら?」

 

 唐突な質問。

 織奈はその意図を理解し損ねていたが、しかし、後輩からの質問であるからと気を取り直して思考する。

 

 結論はすぐに出た。

 

「できるよ」

 

「それなら良かったわ」

 

 昨日の姉妹からの簡単なルール説明と今日の織奈からの説明によって、大体のデュエルモンスターズのルールは把握した。

 後はこれが勝てる盤面であるかどうか。先輩である織奈にも不可能なら、黒江が勝てる筋合いは無い。

 けれども、もしそうでないというのなら。

 

 

 ここから、初めてのデュエルに勝つだけだ。

 

 

「……オレが言えた義理じゃないけど、遊佐さん、君なら勝てる。頑張ってくれ」

 

「ええ、元より負けるつもりは無いわ」

 

 黒江が逆転するのに必要な鍵は、今の手札を墓地に送って効果を使える類のカードか純粋に蘇生札だ。

 当然ながら、今の手札にはそのどちらもが存在しない。

 

 黒江は思い浮かべる。

 昨日、白袮が加えた方が良いと言って渡してくれたカードを。

 

「まだやるってのか? てめえにアタシは倒せねえよ」

 

「それはどうかしら。私のターン、ドロー」

 

 引いたカードは【思い出のブランコ】。

 白袮のカードは、想いに応えてくれた。

 

「私は手札から【ジェスター・コンフィ】を自身の②の効果で攻撃表示で特殊召喚する。そして、通常魔法【思い出のブランコ】を発動。墓地から、通常モンスター扱いの【De:Monstar-アリエス】を特殊召喚」

 

 現れたのは、球に乗った道化師と、先程の宇宙を纏った羊。

 彼女はそこで、昨日唯一姉妹から聞いたこのデッキの特徴的な戦い方を実践してみせる。

 

 

「私はデュアルモンスターである【De:Monstar-アリエス】を通常召喚として、再度召喚(・・・・)

 

『■■■■■■■ーー!!!』

 

 温厚な様子はなりを潜めて、思わず耳を塞ぎたくなるような絶叫を上げる羊。その身体の宇宙には黄道十二星座がひとつ、牡羊座が赫く浮かび上がっている。

 

 デュアル、それはフィールド・墓地においてはある条件を満たさない限り通常モンスターとして扱われる特殊な効果モンスター。

 1ターンに1度通常召喚できる権利、俗に言う召喚権を用いてフィールド上に既に存在するデュアルモンスターを再度召喚することによって効果モンスターとなり、彼らは強力な効果を得るのだ。

 

「効果モンスターとなった【De:Monstar-アリエス】の効果を発動。1ターンに1度、自分の墓地に存在する【De:Monstar】モンスターを1体除外することで、デッキ・手札から【De:Monstar】モンスター1体を特殊召喚する。更に自分は、この効果の発動後、通常召喚に加えて1度モンスターを召喚できるわ」

 

 

 ▽

【De:Monstar-アリエス】

 ②フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。

 その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

 ●1ターンに1度、自分の墓地に存在する「De:Monstar」モンスター1体を除外して発動できる。自分のデッキ・手札から「De:Monstar」モンスター1体を選んで自分フィールドに特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は通常召喚に加えて1度、モンスターを召喚することができる。

 

 

「私は墓地の【De:Monstar-タウラス】を除外し、デッキから【De:Monstar-バルゴ】を特殊召喚」

 

 

 ▽

【De:Monstar-バルゴ】

 レベル6 光属性 悪魔族 デュアル チューナー ATK2000/DEF2000

 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。

 

 

 現れたのは、宇宙で形作られたドレスに身を纏った乙女。その眼には比喩無しに宇宙が存在し、吸い込まれてしまいそうな異様を湛えていた。

 

「ここで、除外されていることで効果モンスター扱いとなった【De:Monstar-タウラス】の除外された時の効果を発動。手札を1枚捨て、除外されている自身をフィールドに特殊召喚する。その後、通常モンスター扱いの【De:Monstar-タウラス】を通常召喚として再度召喚するわ」

 

「■■■■■■■ォォォオ!!!」

 

 

 ▽

【De:Monstar-タウラス】

 ③このカードが除外された場合、手札のカードを1枚墓地に送ることで発動できる。除外されているこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 今度は宇宙色に染った胴体と眼を持った牡牛がフィールドに現れると同時に、その胴体に赫く煌めく牡牛座を浮かび上がらせ、猛々しく咆哮する。

 

 これで彼女のフィールドには効果モンスター扱いのアリエス、タウラスに、通常モンスター扱いのバルゴ、そしてジェスター・コンフィが存在することになった。

 

 彼女はフィールドを見据えて準備が整ったことを認めると、悠然と勝利への一歩を踏み出した。

 

「私はレベル1の【ジェスター・コンフィ】に、レベル6の【De:Monstar-アリエス】をチューニング。来なさい、【シューティング・ライザー・ドラゴン】」

 

 飛翔する星が一つとなり、空より白いモンスターが現れる。

 それは、有機的なフォルムをした竜。

 

 黒江は【シューティング・ライザー・ドラゴン】を第六のモンスターゾーンであるEXモンスターゾーンに特殊召喚した。

 

「【シューティング・ライザー・ドラゴン】のS召喚時自身の①の効果を発動。更に、フィールドにSモンスターがS召喚された場合に発動できる墓地の【De:Mon-デビル・スター】の①の効果をチェーンして発動」

 

 淡々と黒江は自身のカードの効果を処理していく。

 

 黒江の底知れなさと、生まれたここからの逆転の可能性に旭飛は知らない内に顔を苦々しいものへと変えた。

 

「チェーン2の【De:Mon-デビルスター】の効果から処理。墓地のこのカードを特殊召喚する。この効果は一度のデュエルで一回しか使用出来ない」

 

 

 ▽

【De:Mon-デビルスター】

 レベル2 光属性 悪魔族 効果 ATK500/DEF500

 このカードはルール上、「De:Monstar」カードとして扱う。

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できず、①の効果はデュエル中に1度しか発動できない。このカードの②の効果を使用するターン、自分は「De:Monstar」モンスターしか特殊召喚できない。

(1)このカードが手札・墓地に存在し、自分フィールド上にSモンスターがS召喚された場合に発動できる。このカードを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 質量を持った五芒星がフィールドに浮かび上がる。その中心の五角形で悍ましい雰囲気を放つ眼が開かれた。

 

「続けてチェーン1の【シューティング・ライザー・ドラゴン】の効果。デッキからこのモンスター以下のレベルを持つモンスター1体を墓地に送り、そのレベル分このカードのレベルを下げる。墓地に送るのはレベル1の【ミラー・リゾネーター】」

 

「レベル6のSチューナーと、レベル2のモンスターが1体……!」

 

「まだ終わりじゃないわよ。私は墓地の【De:Monstar-サナ】の効果を発動。1ターンに1度、墓地の【De:Monstar】カードを1枚除外することで、墓地のこのカードを特殊召喚できるわ。私は墓地の【De:Monstar-アリエス】を除外してサナを特殊召喚」

 

 

 ▽

【De:Monstar-サナ】

 ②このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地に存在する「De:Monstar」カード1枚を除外して発動できる。このカードを特殊召喚する。

 

 

「【De:Monstar-サナ】の効果で、通常モンスター扱いの【De:Monstar-アリエス】が除外された時、再度召喚されている【De:Monstar-タウラス】の効果発動。タウラス以外の除外されている【De:Monstar】モンスター1体を特殊召喚する。私はこの効果で今除外された【De:Monstar-アリエス】を特殊召喚」

 

 

 ▽

【De:Monstar-タウラス】

 ②フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。

 その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

 ●1ターンに1度、このカードがフィールド上に存在し、このカード以外の通常モンスターがフィールド、または墓地から除外された場合に発動できる。このカード名以外の除外されている「De:Monstar」モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

 これにて、悪魔を呼び出す準備は整った。

 

「私はレベル2の【De:Monstar-サナ】と、同じくレベル2の【De:Mon-デビルスター】に【シューティング・ライザー・ドラゴン】をチューニング。召喚条件はSモンスターのチューナーに【De:Monstar】モンスターが1体以上」

 

「レベル10……!」

 

「っ、来るか、てめえの切り札!」

 

 織奈と旭飛が驚いたのは、レベル10の上級Sモンスターにではない。

 それを鮮やかな手腕でS召喚してみせる黒江の初心者とは思えないデュエル・タクティクスにである。

 

「シンクロ召喚。来なさい、レベル10【De:Mon-デモニック・ザ・スター】」

 

 

 ▽

【De:Mon-デモニック・ザ・スター】

 レベル10 光属性 悪魔族 シンクロ チューナー 効果 ATK1000/DEF1000

 Sモンスターのチューナー+「De:Monstar」モンスター1体以上

 このカードはルール上、「De:Monstar」カードとして扱う。

 このモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できない。

 

 

 その時、三人は己が眼を疑った。

 

 空が溶け堕ちる。リアル・ソリッド・ビジョンが塗り替えるようにして青空を満天の星空へと変えた。

 リアル・ソリッド・ビジョンが作り出したビジョンは質量を持つとはいえ幻影だ。

 

 だが、そのモンスターが現れた時、彼女達は本物の怖気を覚えずにはいられなかった。

 

「なんだ、そのモンスターは……!」

 

「私にも分からないわ。けれども、私はこのままバトルフェイズに入る」

 

 黒江は自身が扱うモンスターがただのモンスターではないと直感しながらも、冷静にバトルフェイズへと入る。

 だが、そこに旭飛は待ったをかける。

 

「どういうつもりだ? てめえの場のカードにアタシの【悪姫-酒呑童子】の打点を超えるモンスターはいねえだろ」

 

「ふふ、本当にそう思うの?」

 

「なに?」

 

「【De:Mon-デモニック・ザ・スター】の①の効果は攻守変動効果。その条件はフィールド上のモンスターのレベルの合計掛ける200よ」

 

「モンスターのレベル掛ける200だと!?」

 

「攻撃力、6600……!!」

 

 

 ▽

【De:Mon-デモニック・ザ・スター】

 ①このカードの攻撃力・守備力は、フィールドに存在するモンスターのレベルの合計×200アップする。

 

 

 黒江のフィールドに存在するモンスターのレベルは合計28。現在の【De:Mon-デモニック・ザ・スター】の攻守は実に6600に昇る。

 

 それは、大抵のモンスターであれば太刀打ちするなど考えることも出来ない数値であった。

 

「私は【De:Mon-デモニック・ザ・スター】で【悪姫-酒呑童子】を攻撃」

 

「ぐぅっ、……酒呑童子っ!」

 

 天元寺旭飛・LP8000→LP4900

 

 星空で作られたデモニック・ザ・スターの怪腕が酒呑童子を握り潰す。

 攻撃力6600の前では如何に高打点と言えども容易く捻られる。

 

「これで天元寺先輩のフィールドはがら空きね」

 

「ちっ、そうみてえだな。アタシはてめえをみくびってたらしい」

 

 旭飛は心底楽しそうな笑みを浮かべる。

 負けるというのに、彼女はどのまでも愉快そうであった。

 

「……終わりよ。私は残った3体の攻撃力2000の【De:Monstar】モンスターでダイレクトアタック」

 

 黒江の命の下、3体の星座の悪魔の攻撃が旭飛を掠めた。

 それは即ち、このデュエルの終わり。

 

「ぐぁぁあっ!!」

 

 

 天元寺旭飛・LP4900→LP0

 

 リアル・ソリッド・ビジョンにより巻き起こされた風圧が旭飛を吹き飛ばす。

 ライフポイントがゼロになり、放課後の校舎裏にブザーが鳴り響いた。

 

「私の勝ち、ね。じゃあ進藤先輩、私はこれで」

 

「え、あ、うん……」

 

 目の前で引き起こされた逆転劇と、用いられた恐ろしいモンスター、それを顔色一つ変えずに操る黒江に対する混乱を極める織奈を放って。

 

 初めてのデュエルで勝者となった黒江は、今日のお昼ご飯のことを考えながら一人帰路に着くのであった。

 

 

 To be continued.




 ――今日のキーカード――

【De:Mon-デモニック・ザ・スター】
レベル10 光属性 悪魔族 シンクロ チューナー 効果 ATK1000/DEF1000
Sモンスターのチューナー+「De:Monstar」モンスター1体以上
このカードはルール上、「De:Monstar」カードとして扱う。
このモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できない。
①このカードの攻撃力・守備力は、フィールドに存在するモンスターのレベルの合計×200アップする。
②S召喚されたこのカードは相手モンスターの効果では破壊されず、相手が発動した魔法・罠カードの効果を受けない。
③エンドフェイズ毎に発動する。このカードのコントローラーは自分フィールドのモンスター1体を選んで除外しなければならない。

────────────

 今日のキーカードはこれね。
 私が使う【De:Monstar】テーマのカードよ。テーマにとってのキーカードは前回私が無駄にした【De:Mon-スター・サナ】だけど、このカードはフィニッシャーとしてとても強力な効果を持っているの。

 その証拠に、このカードの①の効果はフィールド全体のモンスターを参照して、そのレベルの合計掛ける200の攻守を上げる効果をもっていて、フィールドにこのカードが単体で存在しても攻守3000を誇るわ。その代わりにこのモンスターはダイレクトアタックができないから、今回みたいに攻撃表示の相手モンスターを貫通して倒すのが手よ。

 また、このカードがフィニッシャーとして優秀な理由として②の除去耐性も挙げられるわね。S召喚されていることが条件になっているけれど、それでもほとんど完全耐性と言っても良い体制を持っているから、S召喚から戦闘に至るまでこのモンスターを妨害できる手段がかなり限られてくるの。このカードで厄介な相手モンスターを戦闘破壊しつつ、残りのカードでバトルを終わらせるのが今の【De:Monstar】の常套戦術のひとつね。

 ……こんなところかしら。
 それなら、また次回の『遊戯王 ―― strayeD girls ――』で会いましょう。
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