遊戯王 ―― strayeD girls ―― 作:James Baldwin
「なるほど。姉さんの【ガーリー】と同じ融合テーマなのね」
「そう。私のサブデッキなんだけど、初心者向けで安定してる強さが売りのデッキなんだ」
渡されたデッキを眺めるが、どうやら融合召喚を主体としたデッキのようだ。
融合召喚は姉の灰都が使う【ガーリー】デッキの主体とする戦術である為、黒江もある程度は理解があった。融合やフュージョンといった魔法カードを用いて融合モンスターを特殊召喚して戦う、デュエルモンスターズに古くからあるスタイルのデッキだ。手札やフィールドのリソース消費が激しいのが難点であったが、近年はデッキや墓地のカードを用いた融合も多く存在する為、主流のスタイルとして一定以上の地位を誇っている。
「黒姉ならきっと使いこなせるよ! 頑張って!」
「……仕方ないわね」
取り敢えず、今回は大会に出ることにしよう。もう既に帰るとは言えない段階になってしまっている。
使ったことの無いデッキだが、そもそも【De:Monstar】も一度しか使ったことが無いので大した違いは無い。
大会開始まで残り数分。高まる店内の緊張感など露知らず、黒江はこれ以上妙な因縁を得ることなく終われば良いなと漠然と願った。
□
「Players主催デュエル・トーナメント、第一回戦はこの二人!」
スタッフの一人がマイク片手に煽り立てるような口調で宣う。少々音量が大き過ぎる気がしないでもない。
暗転した店内で、最も大きなデュエルスペースが照らされた。
カードショップPlayersは中規模の店舗とはいえ、相応に場所を取るリアル・ソリッド・ビジョン用のデュエルスペースは一つしか存在せず、それに対して参加者は十人を優に超える為、この大会は必然的に数時間にも及ぶ長丁場となる。
「期待のルーキー、遊佐黒江!」
「頑張ってー! 黒姉!」
「負けんなよ、黒江!」
黒江は早く帰りたい思いを堪えて、妹と知人の応援、その他大勢の歓声の中ステージに上がる。
どうやら遊佐灰都の妹であるという認識はされていないようだ。内心ほっとしながら、デュエルディスクを展開する。
「対するは波動竜の主、
「お前のエクィテス愛を見せてやれ!」
「ルーキーに
たとえ無感動無関心事勿れ主義な黒江とて対戦相手くらいは気になるもので、反対側からステージに登壇したデュエリストを見遣った。
背丈は織奈と同じか誤差程度に高いくらいか、黒江と対面すると20cm以上は差があるようで自然と見下ろす形となる。肩ほどまで伸ばされた橙色のセミロングに、丸く大きめの同色の眼。幼い印象を受ける容貌だが、織奈という前例もいるため見た目で判断はしない方が良いだろうと黒江は判断した。
二人はステージの中心まで来ると手を差し出す。これから戦うのだとしても、デュエルモンスターズもまたスポーツマンシップならぬデュエリストシップ(黒江にデュエリストの認識は無いが)に乗っ取って行われるべきで。
握手を交わすと、黒江は口を開く。
「遊佐黒江よ、よろしく」
「竜見御代。御代でいい」
挨拶も程々に、自らの位置へと戻って向き直った二人は宣言する。
「「────デュエルッ!!」」
竜見御代・LP8000
VS
遊佐黒江・LP8000
□
「先行はもらった。私のターン、スタンバイ、メイン。私は手札から【波動竜の担い手】を通常召喚。召喚成功時、デッキから【波動竜の担い手】以外の【波動竜】カードを一枚手札に加える。私は【波動竜 ドラグランス】を手札に」
「【波動竜】……」
「そう、私は【波動竜】使い。いずれ世界最強の波動竜の主になる」
▽
【波動竜の担い手】
レベル1 風属性 戦士族 効果 ATK200/DEF0
このカード名②③の効果はそれぞれ1ターンに1度、いずれか一つしか使用できない。
①このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから「波動竜の担い手」以外の「波動竜」カード1枚を手札に加える。
無表情ながらも何処か意気揚々と行く末を語る御代のフィールドに現れたのは、紺色の鎧を纏う小柄なドラゴンに騎乗した少女。
黒江は知らないことだが、【波動竜】は古くからデュエルモンスターズに存在する単体カテゴリーであったとあるモンスターに端を発するデッキテーマである。
「私は手札から永続魔法【竜皇の息吹】を発動。手札のドラゴン族通常モンスター【波動竜 ドラグガード】、【波動竜 ドラグスカイ】をデッキに戻してシャッフル、その後戻した枚数ドローする」
▽
【竜皇の息吹】
永続魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
②1ターンに1度、手札のドラゴン族通常モンスターを任意の数まで相手に見せて発動できる。それらのカードをデッキに戻してシャッフルし、その後自分は戻した数だけデッキからカードをドローする。
「手札から【魔の試着部屋】を発動。800LPを払ってデッキの上からカードを四枚めくる。そして、その中のレベル3以下の通常モンスターを自分フィールドに特殊召喚し、それ以外のカードをデッキに戻す」
「通常モンスター主体……あのデッキと同じね」
「あのデッキ……?」
「いいえ、こっちの話よ。気にしないで」
「……私は引いた【波動竜 ドラグガード】と【コピックス】を守備表示で特殊召喚。残りのカードをデッキに戻してシャッフルする」
▽
【波動竜 ドラグガード】
レベル1 風属性 ドラゴン族 通常 ATK0/DEF2100
波動竜の担い手を守護する竜族の一頭。冷静沈着な性格で、皆の纏め役になることが多い。波動竜皇の盾となる運命を負っている。
紺色の重鎧に身を包んだ筋骨隆々のドラゴンと、一つ目玉の戦士が現れる。魔法カード1枚と800ライフで最大4体までモンスターを展開できるのは通常モンスターらしい強サポートだ。
【De:Monstar】もまたデュアルモンスターを扱う性質上通常モンスターサポートの恩恵を受けられる為、黒江は妙な親近感を覚えた。
「私はレベル2の【コピックス】にレベル1の【波動竜 ドラグガード】をチューニング。シンクロ召喚、レベル3【波動竜 ドラゴミーレス】」
▽
【波動竜 ドラゴミーレス】
レベル3 風属性 ドラゴン族 シンクロ 効果 ATK1300/DEF1000
「波動竜」チューナー+チューナー以外のモンスター1体
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
二体を素材としてシンクロ召喚されたのは、長槍で武装した二足歩行の鎧竜。
レベル3のSモンスター。なんらかの重要な効果を持っているだろうことは確かである。
「S召喚に成功した時、【波動竜 ドラゴミーレス】の効果発動。墓地からレベル3以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。私は墓地から【コピックス】を特殊召喚」
▽
【波動竜 ドラゴミーレス】
①このカードがS召喚に成功した場合、墓地のレベル3以下の通常モンスター1体を対象にして発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
墓地から一つ目玉の戦士が蘇る。
低レベルの通常モンスターに限定するだけあって便利な効果だ。
「私は手札の【波動竜 ドラグランス】と墓地の【波動竜 ドラグガード】を対象にして【波動竜の担い手】の②の効果を発動。この二体を自分フィールドに特殊召喚する」
▽
【波動竜の担い手】
②自分メインフェイズに手札・墓地から「波動竜」通常モンスターをそれぞれ1枚ずつ対象にして発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果を使用するターン、自分は「波動竜」モンスター以外のモンスターをEXデッキから特殊召喚することはできない。
▽
【波動竜 ドラグランス】
レベル2 風属性 ドラゴン族 通常 ATK1000/DEF1000
波動竜の担い手を守護する竜族の一頭。勇敢な竜だが向こう見ずなのが玉に瑕。波動竜皇の矛となる運命を負っている。
筋骨隆々のドラゴンと、対照的に細身のドラゴンが御代のフィールドに現れた。
どちらも時折己を誇示するように、片や体を丸めることで鎧を結合させて巨大な盾に、片や体を直線に伸ばして鎧を結合させ槍に姿を変えている。
「レベル1とレベル2のチューナー……」
「私のターンはまだまだ終わらない。私はレベル2の【コピックス】にレベル2の【波動竜 ドラグランス】をチューニング。シンクロ召喚、【波動竜 ドラゴクールソル】」
▽
【波動竜 ドラゴクールソル】
レベル4 風属性 ドラゴン族 シンクロ 効果 ATK1000/DEF2000
「波動竜」チューナー+チューナー以外のモンスター1体
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
命令文と思しき書物や物資を溢れるほど背嚢に詰め込んだ伝令の小竜が大慌てで御代のフィールドへと到着する。もちろん守備表示だ。
ここまでの展開で、御代のデッキは凡そレベルの低いシンクロモンスターで展開しつつ、なんらかの強力な一手を打ってくるデッキだと黒江は当たりを付けた。
「レベル1【波動竜の担い手】にレベル1【波動竜 ドラグガード】をチューニング。シンクロ召喚、来て【波動竜の護り手】」
▽
【波動竜の護り手】
レベル2 風属性 戦士族 シンクロ 効果 ATK200/DEF1100
「波動竜」チューナー+チューナー以外のモンスター1体
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①このカードはドラゴン族としても扱う。
成長した【波動竜の担い手】である少女が、盾となった【波動竜 ドラグガード】を携えて現れる。体格差ゆえにだいぶ重たそうにしてはいるが、成長した彼女は頼もしく見えた。
「このカードがS召喚に成功した時、【波動竜の護り手】の効果発動。墓地から【波動竜】の通常モンスター、【波動竜 ドラグガード】を自分フィールドに特殊召喚し、このターン自身のレベルをそのモンスターのレベル分上げる」
▽
【波動竜の護り手】
②このカードがシンクロ召喚に成功した場合、墓地に存在する「波動竜」通常モンスター1体を対象にして発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。このターン、このカードのレベルはそのモンスターのレベル分アップする。
フィールドにもう一度呼び戻されたドラグガードを見て、黒江の脳裏に過労死の三文字が過ぎるが灰都も時折やっているのでそういうものだと結論付けた。
それよりも、今はフィールドにレベル1のチューナーが一体に、レベル3のシンクロモンスターが二体とレベル4のシンクロモンスターが一体揃ったことが重要である。
「私はレベル3の【波動竜の護り手】とレベル3の【波動竜 ドラゴミーレス】にレベル1の【波動竜 ドラグガード】をチューニング。
────総軍に告げよ、進撃の時は来たれり。
シンクロ召喚、レベル7【波動竜揮 ドラゴグローリア】」
▽
【波動竜揮 ドラゴグローリア】
レベル7 風属性 ドラゴン族 シンクロ 効果 ATK2000/DEF1500
「波動竜」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
フィールドに波動の竜の指揮官が降り立つ。
煌びやかな長剣を地に突き刺すと堂々とした様でフィールドを俯瞰する竜に、黒江は言い知れぬ嫌な予感を覚えた。
「私は墓地の【波動竜 ドラゴミーレス】と、同じく墓地の通常モンスター【波動竜 ドラグランス】を除外して【波動竜 ドラゴミーレス】の効果発動。デッキから【波動竜の担い手】を手札に加える」
▽
【波動竜 ドラゴミーレス】
②墓地のこのカードと「波動竜」通常モンスター1体を除外して発動できる。デッキから「波動竜の担い手」1体を手札に加える。
「次のターンのリソース確保も完璧、というわけね」
「私は手札から永続魔法【凡骨の意地】を発動し、カードを一枚伏せてターンエンド」
レベル4とレベル7のシンクロモンスターに伏せカードが1枚。更には後続も確保している。
それらを鑑みて相手の少女が強い部類のデュエリストであると認識するのは当然のこと。
黒江は、気を引き締めて自分のターンを迎えるのであった。
To be continued.
――今日のキーカード――
【波動竜の担い手】
レベル1 風属性 戦士族 効果 ATK200/DEF0
このカード名②③の効果はそれぞれ1ターンに1度、いずれか一つしか使用できない。
①このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから「波動竜の担い手」以外の「波動竜」カード1枚を手札に加える。
②自分メインフェイズに手札・墓地から「波動竜」通常モンスターをそれぞれ1枚ずつ対象にして発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果を使用するターン、自分は「波動竜」モンスター以外のモンスターをEXデッキから特殊召喚することはできない。
③このカードが墓地に存在する場合、墓地のこのカードを除外して発動することができる。自分の墓地から「波動竜騎士 ドラゴエクィテス」1体を特殊召喚する。
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今日のキーカードはこれね。
【波動竜】デッキの展開の起点となるカードよ。
①の効果で【波動竜】カードを手札に加えつつ、②の効果で手札と墓地から【波動竜】モンスターを特殊召喚すれば、それだけでいくつもの展開ルートが見えてくるわね。
それに③の効果は墓地が潤う中盤以降ならかなりの驚異となる効果よ。そこから【波動竜騎士 ドラゴエクィテス】の効果で墓地の【波動竜】Sモンスターの効果をコピーすることで更に展開したり妨害を構えたりするのも良し、勝負を決めに行くのも良しと、取れる戦術が更に豊富になるのだから。
……こんなところかしら。
それなら、また次回の『遊戯王 ―― strayeD girls ――』で会いましょう。