ウマ娘短編   作:薩摩白熊

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何か続きが出来たので


たわけ娘のゲート入り(※オリキャラ注意)

──ホント、貴女のお母さんの小さい頃にそっくりね。

 

私達姉妹に会うため頻繁に実家へ訪れる祖母は、私を抱き上げては事ある毎にそう言った。

 

祖母に限らず、母を知る者が私を見るとまず間違いなくこの容姿に驚く。

 

顔立ちといい雰囲気といい、見た目はまるで生き写しのようだと耳にタコができるほど言われてきたものだ。

 

ただ、どうやら瞳の色や笑った時の表情は父によく似ているらしく、父の知り合いからは父にそっくりだなと言われることが多い。

 

母には容姿が、父には笑顔がよく似ている。そう言われるのがとても嬉しくて、私は母と同じ髪型や服装をしたいとねだり、常日頃から父によく似た笑顔で過ごすようになった。

 

母は私の憧れで、父は私の誇りだった。ずっと母のようになりたくて、いつだって父と一緒にいたかった。

 

その夢を実現するため私は一人で寮を抜け出し、深夜の資料室に忍び込んでいた。なお、ルームメートは実家の家庭菜園で採れたニンジンで買収済みである。チョロいもんだぜ。

 

警備の巡回ルートも把握しているため、付近を通る時間にさえ気を付ければ、あとは自由に情報収集に勤しむことができるという寸法だ。

 

お菓子とジュースにクッションも持ち込み、至れり尽くせりな状態で過去のレース映像を流しつつ紙媒体にも目を通す。

 

見るのは当然、現役当時の母──『女帝』エアグルーヴのレース。

 

校内の模擬レースに始まり、選抜レースにエキシビションレース、メイクデビュー、重賞、『G1』、URAファイルズ…

 

かつて放送された母の特集番組で、G1やURAファイルズのレースは見たことがあったが、校内の模擬レース等を見るのは初めてだ。

 

テレビで全国に放送されたり、ネット上にアップされているレースであっても、それ以外の様々な角度から撮影された映像が残されているためなかなか新鮮な気分になる。

 

それにしても──

 

「流石は母ちゃん。気が強いにも程があるだろ」

 

進路を塞がれようが、周りを囲まれようが関係ない。

 

並のウマ娘ならばそのままズルズル沈んでいってしまうような展開でも、映像の中の母は一切怯まず差し返し、激しい競り合いを制していた。

 

頭の中の何か大事なネジが外れてるんじゃないだろうか?と心配になるほどの勝負根性である。

 

目についた順に無作為に母のレース映像を次々流しながら、手元の資料をパラパラ捲っていると、ふと違和感に気付く。

 

「ん…えー、『オークス』の資料無いじゃん」

 

母が勝ち取った『G1』レース。数ある資料の中で、それだけが抜き取られていた。おそらくトレーナーの誰かが持ち出しているのだろう。

 

『オークス』は、私達家族の間は特別な意味を持つ『G1』だ。

 

祖母が大激戦を制して『女王』となり、その娘である母はそれに続いて見事に戴冠し『女帝』としての威を示した。

 

母に憧れる私達姉妹は、当然『オークス』にも憧れを持っている。私は『G1』に勝つのが目標だが、どうせ勝つなら『オークス』がいいなと思っていた。

 

一番上の姉も母娘三代制覇を目指し『オークス』に出走したが、同期のライバルに惜しくも敗れてしまったので、その仇討ちをしたいという気持ちも多少ある。

 

なお、姉に勝ったのはあの『たわけ』こと、うちの父のチームに所属していたウマ娘であることをここに記す。新人トレーナーと組んだ姉は流石に分が悪かったようだ。

 

というか母だけでなく、姉の出走した『オークス』の資料も見当たらない。あと祖母のもだ。

 

ええ、何これ…怖…うちの一家のストーカーか何か?

 

「…確かめてみっか」

 

何となく、この間出会った男の顔を脳裏に思い浮かべながら、私はクッションに埋もれつつジュースを飲み干した。

 

翌日。

 

眠い眼を擦りながら資料室を片付け寮に戻った私は、部屋で待ち構えていた寮長に見つかり大目玉を食らった。

 

どうやら昨晩、早く担当トレーナーを持つよう私を説得するために訪ねてきていたらしい。タイミング悪っ。

 

正座させられながらのお説教の後、反省文を提出し、今は罰として練習用のゲートを磨いているところである。

 

というか古いなオイ。あちこち錆びてるし、ろくな手入れがされていない。これ絶対罰則用に意図的に放置してたヤツだろ。

 

本来はこの時間でトレーニングや調べ物ができたはずだが、自分の不始末のせいなので文句を言う資格はない。次はもっと上手くやろう。

 

ゴリゴリと地道に錆びを落としていると、この間の男がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。ふむ、やはりストーカーだったか。

 

「ストーカーを野放しにするのは寝覚めが悪いからな。私が責任を持って処理するべきか…」

 

「違うよ!?前も言ったけどトレーナーだからね!?」

 

「ストーカーとトレーナーは両立することを貴様に教える」

 

「だから違うって!いやトレーナーなのは本当だけど、少なくともストーカーじゃないから!」

 

犯罪者は皆そう言うが…まあ話が長くなるのでここら辺にしておくか。巻きでいこう巻きで。

 

「で、何か用?ああ、ついでにコレ磨くの手伝ってくれたら、貴様に『ルーちゃんポイント』を1くれてやろう。特別だゾ☆」

 

「…………うん、まあ話を聞いてくれるなら手伝うよ」

 

ちなみに5000ポイントでこの私のスマイル一回と引き換え可能である。

 

男に道具を渡して、しばし無言でゲートを磨く。

 

不思議な感覚だ。沈黙はあまり好きではないが、何故か今はあんまり嫌じゃない。

 

ヤバい、錆び落としって意外と楽しいかもしれん。何だろうこの感じ…レース引退したら錆び落とし職人になりたい。

 

2人がかりで作業した結果、ゲートは見事ピカピカに磨き上げられていた。思っていたより早く終わったな。やはり数isパワー。物量こそ正義よ。

 

「ふぅ、一生分磨いたな…飽きた。職人になるのは無しで」

 

「何の話?」

 

将来設計の話である。まあ先のこと何て気にしたって仕方ない。一歩一歩、地道に進んで行くしかないんだ。

 

だから私はアレだ、刹那的に生きる。未来のこととかよく分からんし。

 

「で、貴様は私に何の用だ?手伝ってくれた礼に、私の貴重なサボrもとい休憩時間を削って聞いてやろう」

 

「…………ああっ、じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな!」

 

言いたいことも言えず飲み込まなきゃいけないって、大人ってやっぱり大変だな。私はまだ世の不条理を知らぬ穢れ無き子供でいよう。

 

「君のレースを見させてもらったよ。この間の選抜レースに、校内レースや模擬レースも」

 

「ほーん、ということは勧誘か?残念ながら今は武者修行中でな。勧誘は全て断っているところなんだ」

 

やはりコイツも他の連中と同じく、私を担当したいらしい。モテる女ってツラい。何がツラいってぶっちゃけ面倒くさい。

 

私は父のチームに入って『G1』を勝つところを父に見てもらうのだ。そして自慢の娘だと、父や母にいっぱい褒めてもらうためにここにいる。

 

正直、それ以外は割とどうでもいい。他の連中はどうだか知らないが、私にとって一番大事なのは、大好きな家族に喜んでもらうことだから。

 

そんな内心はおくびにも出さず、澄まし顔で目の前の男に告げる。

 

「お父さんのチームに入りたいんだね?」

 

「何故バレたし」

 

おくびにも出してないんですけど?何コイツもしやエスパー?虫タイプと悪タイプ呼んで来てやろうか。

 

「いや、もうトレーナーの間では噂になってるよ?『女帝』の娘があのトレーナーのチームに入ろうと頑張ってる、ってね」

 

「マジすか」

 

普通にバレバレだった。まあ、私が勧誘を悉く断ってればどのチーム狙いかは直ぐ分かるか。

 

ドンマイ私。次はもっと上手くやろう。

 

「それで、貴様は何が言いたいんだ?父ちゃんのチームは定員いっぱいだから諦めろ、とでも言いたい感じ?」

 

「そうじゃない。実は…君のご家族のレースも調べさせてもらったんだ。

まあかなり有名なレースだから、今更な気はしたけどね」

 

やはりコイツか。お前のせいで母ちゃんの『オークス』のこと調べられなかったんだからな!後で借りよう。

 

「君のレースと、君のご家族のレースを見比べて思ったんだ。君は──お母さんのように成りたいんだね?」

 

「うん」

 

「あ、普通に認めるんだ…」

 

「だって事実だし」

 

いちいち否定して二転三転してたら尺がいくらあっても足りんわ。巻きでいこう巻きで。

 

「──私は母ちゃんみたいに強くなって、父ちゃんの所で『G1』を勝ちたいんだ。

いや、待てよ…“私を愛情いっぱいに育ててくれた、尊敬する両親に勝利を捧げたいです。”よし、インタビューではこう答えよう」

 

「その手伝いをさせて欲しい」

 

そんな男の言葉に、一瞬思考が停止した。

 

え、何コイツ。重度のお人好しってヤツですか?

 

「んー…いや、何で?メリット無くない?」

 

「メリットとか、そういう問題じゃない」

 

男の瞳を見る。背は父と同じくらいだろうか。自然と見上げる形になる。

 

…分からん。誰だ、眼は口ほどにものを言うとか適当なこと言ったヤツは。コイツの眼、全然口割らねーよ。…ややこしいな。

 

「あー、じゃあさ。貴様が私に手を貸す理由って何よ?自分の担当にならないウマ娘に協力する理由を述べよ」

 

「ウマ娘の夢を叶えるのが、トレーナーの役目だから」

 

──だから、これは当たり前のことなんだ。

 

目の前の男は、ごく自然にそんなことを宣った。

 

「──へぇ」

 

…正直、コイツがどこまで本気でこんなことを言っているのかは分からない。

 

もしかしたらワンチャン狙いのストーカーか、或いは私の父のことを良く思わない連中から送り込まれた刺客かもしれない。

 

だが、まあ。

 

「いいじゃん、気に入った」

 

今の言葉は、かなり私好みだ。

 

「! なら」

 

「ああ、取り敢えず次の選抜レースまでよろしく!私が父ちゃんのチームに入れるように、しっかりサポートしてくれよな、トレーナー(仮)!」

 

「何か発音おかしくない!?」

 

まあそんな訳で、私とトレーナー(仮)の即席のコンビ結成の瞬間であった。

 

今にして思えば何とも色気の無い、実に行き当たりばったりでグダグダなゲートインだ。

 

もっとも、そういう感じも私らしいっちゃ私らしいか。

 

その後の話は、まあまた機会があればということで…




流れとしては母や姉と同じオークス狙い→ライバル達との戦いを選びダービーに路線変更、みたいなイメージで書きました。
続くか全く分からないのであくまで短編です。
何なら誰かこういう設定で書いて欲しい…
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