VOCALOID ~麗しき歌姫に憧れて~   作:ソウルメイジ

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説明会

たっぷりと二秒間思考停止したあと、思考を取り戻した僕は反応というよりもむしろ反射ともいえるほどのスピードで部屋を出た。

当然、決まり文句のような「ごめんなさい!部屋間違えました!」という言葉も忘れない。

あまりに突然の出来事だっただけに、外に出た瞬間急に力が抜けて、そのまま部屋のドアにもたれかかり「はぁー」というため息が出た。

しかし、それにしてもビックリした。なんてタイミングの悪い。まさか風呂上がりだったとは。もたれかかっていたドアをもう一度見直す。

すると、奥にいるであろう少女の突如として見てしまったほてっていて少し赤らめた肌や湿った髪、可愛いという形容が似あうほどのクルリとした丸い目などが鮮明に思い出されていき自分でも頬が赤くなるのがわかった。

とりあえず、僕は冷静さを取り戻すためにクルリと自分の周りを見回した。

見えるものは、いくつもの部屋の扉と窓から見えるとても東京都は思えないほどの緑豊かな自然の景色。きれいにされている廊下や窓はまるでホテルのようだ。

そして、再び視線は扉へと戻る。

部屋の番号は508。

やっぱり、この部屋だよなぁ……

さっきはとっさに部屋間違えました!なんて言って出たが実際僕は間違っていないことを再確認する。

というより、さっきの子は何者だ?

この時間帯、普通部屋にどころかこの寮にすら入ることはかなわないはずだ。

もし、あの警備員が僕とおんなじ調子で連れてきたのなら話は別になるが……。

もう、イロイロと考えるのが面倒くさいから、部屋はいいから先に説明会の会場に行って待ってようかと時計を見る。

時刻は4時過ぎ。

時間的にはいい頃合いだ。

この学園は人気かつ有名であるためと全寮制であるということから、遠くからの合格者のことも考えて5時からに設定されているのだ。

一時間前からは普通に説明会場もオープンされる。

もう生徒の一人や二人くらいなら来ててもおかしくないかもしれない。

僕は、いったん考えるのをやめてそちらの方に足を進めた。

 

 

               ☆

 

 

会場は想像にしていないほどすでに人が来ていた。

一人、二人?とんでもない。

もう、すでにこの会場の席は外部受験で受かった人間の半分以上の人間で埋められていた。

机は二つずつくっついた状態のものの列が縦横ともに5列の計50席が用意されていた。

僕は、まだ隣に誰も座っていない二つとも空席の席を見つけてそこに腰を下ろす。

にしても、想像通り、やはりみんなして美男美女と言った感じの人間が多い。

警備員の言っていた通り、受験の結果ではなくそのアイドルに対する才能の量で合否が決められているというのも納得できるような気がした。

とりあえず、時間が余ることは家を出た時から想定していたのであらかじめ用意しておいた暇つぶし用のゲームとイヤホンを取り出して遊ぶ。

音楽の太鼓のゲームで、音楽に合わせて流れてくるドンとカッの記号に合わせて、画面の太鼓をたたく単純な音ゲーというものだが、難易度によっては正直クリアは無理なんじゃね?と言われるような難易度のものもある。

僕は、そのゲームに入っている曲の一曲である<千本桜>を選択する。

初音ミクの大ヒット曲の一つだが、これが信じられないほど難しい。

全部ドンであったとしても打ち続けられるか難しいほどの量をカッと織り交ぜてやらせてくるのだから、譜面でも覚えてないととてもじゃないができない。

僕がこれをノルマクリアできるようになったのも最近のことで、練習しだしてから一か月半も必要とした。

ゲームとはやりだすと案外周りが見えなくなるもので、十分前の放送が入ることでようやくゲームからの集中が途切れた時には席が僕の隣以外すべて埋まっていた。

……僕は避けられてない。避けられてなんかないぞ。きっとあんまりにも僕がゲームに集中してたからみんなが気遣ってくれたんだ。いや、そうに違いない。

そんな自己暗示のようなことをして自分を慰めていると、最後の一人となる子が入ってくる。

一瞬ぼくは、その入ってきた子をある人間と錯覚した。

さっき、508号室で出会ったあの少女だ。

少女とかなりよく似た髪色(長さは全然違うけど)に色白な肌はまるで女の子のよう。

だけど、決定的に違うことがあった。

彼は男用の制服を着ていたのだ。

つまり、彼は男で女ではないということである。

少年は、僕の隣の残りひとつの空いてる席を見つけると、笑顔でこちらへとよってきた。

「隣、座っていいかな?」

「ど、どうぞ」

すると、手に持った重そうな荷物を椅子の隣において、席に着く。

「僕は常美 ハク。よろしくね。君は?」

声を聴いた瞬間僕はその声に違和感を感じた。

だけど、些細なことだと思ってスルーした。この世にはいろんな声の持ち主がいるんだなー、と言う形で勝手に納得することにした。

「僕は日比野 和馬。」

「へぇ、和馬君っていうのか。うん、いい名前だね。ココにいるってことは君も当然外部からだよね?」

「うん、まさか受かれるなんて思ってなかったけど……」

「アイドル目指してるの?」

「まぁ、一応そうなるのかな。常美くんは?」

「ハクでいいよ。僕は無理やりこの学校に来させられた感じで。本当はアイドルなんかに興味ないんだ。ただ、普通の学園生活が送りたいだけで。でも、歌うのは好きだよ。しょっちゅうカラオケとか行くし!僕がカラオケでよく歌うのはね……」

この後は自慢げに話すハクのカラオケ話をひたすら僕は聞くこととなった。

どうやら、彼の友人はとても愉快な人が多いらしい。

話に出てくる、カイトという人がなんとなく僕は気に入っていた。

残念な人というか、でもそういうところが面白いと僕は思った。

そんなことを考えながら相槌を打っていると、突然部屋の電気が消えだした。

まだまだハクが話している最中だったが、どうやら説明会が始まるらしい。

すると、一人の老人教師が前にあったモニターに現れる。

「皆さん、わが校への入学本当におめでとう。私がミソラ学園校長の曽我石 彗(けい)です。

今日皆さんに説明するのは、これからのカリキュラムとコース選択。

あとは寮のルールの部屋割り。大まかに言えばこの3点だけです。まぁ、多少は他のことも説明しますが

後のことは、また後日、中学からの持ち上がりの人と一緒の時に説明します。

では、まず一点目のカリキュラムとコース分けですが、簡単に言うと、アイドルコースか

それを支援するマネージャーコースになります。

アイドルコースはアイドルを目指すために発声練習であったり、笑顔の練習であったりその他もろもろのアイドルになるためのカリキュラムの組まれたコースです。

マネージャーコースも同様で、アイドルをサポートする側として必要な知識を学びます。

あと、アイドルコースとマネージャーコースは両方半々で人数を割り振ります。でないとこれからある行事にもイロイロ響きますからね。

コース希望は自由ですが最終決定はこちらでしますのであしからず。」

僕は間違いなくマネージャーコースの人間だな。

それにしても、もったいない話だ。これだけのアイドルに近い人間をそろえておきながらそのうちの半分もの人間をマネージャーに回すなんて。

それにしても、みんな強いな。ふつう今の話聞いたらどよめいたりするだろうに、余裕綽綽といった表情を浮かべている。

あの警備員が言っていたことが少しわかったような気がした。

「それでは、続いて寮に関するルールですが、食事は全員一階の食堂で取るようにしてください。部屋はなるべくきれいに扱うように。

あと、恋愛はウチは禁止ということはありません。存分に青春してくれたらいいです。

ただし、学園内だけにとどめておくことが絶対条件です。

では、最後に部屋割りですが、うちの寮の二人一部屋です。すでにばんごうのかかれた紙とカードキーが渡されていると思います。こちらが勝手に割り振っておいたので、部屋に行ったらわかると思います。安心してください、ちゃんと男子は男子、女子は女子で区別はしてありますので。」

そういえば、部屋にカードキーさしっぱなしだ。

まぁ、大丈夫だろう。一番に走っていけばばれないだろうし。もともとゲームをしてた時点で浮いているんだ、今更説明会が終わった後走って出ていくぐらい問題ではあるまい。

その後も、しばらくの間学園の校訓であったりかたっくるしいことがたくさん説明されたが結構自分では頭で割り切っているつもりでいたが、やはりそう簡単にはいかずいくつもの不安がこみ上げてカードキーのことしか頭になく、聞き流し続けて結局説明の内容はほとんど聞かずに終わってしまった。

「では、これで説明会を終わります。各自部屋に行ってください」

その言葉とともに僕は席を立ち、寮へと走っていった。

 

 

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