機能面は、取説を見ながら、割と手探りでやってるので、ご勘弁を……
「……非常にまずい事態だ」
春。
新たな年度が始まり、トレセン学園に新入生が入って来る頃。
トレセン学園の食堂を切り盛りする料理長は、真剣な顔で厨房のスタッフたちに告げる。
「オグリキャップ、スペシャルウィーク……この二人だけならまだいい」
健啖で知られるウマ娘たちの中でも群を抜いた食欲の持ち主。
冗談抜きに、胃袋がブラックホールなんじゃないかと思われる大食ウマ娘の名前が挙げられる。
「スイーツ限定に言うならば、メジロマックイーンもです」
「その辺は、スタイルに拘る御嬢様だ。ダイエット等で調整してくれれば問題ない。だが……」
最近、入学してきた新入生……バーネットキッドの食欲たるや。
先ほど挙げた、オグリキャップやスペシャルウィークにも匹敵する、胃袋ブラックホールウマ娘なのだ。
初日はなんとかしのぎ切った。
オグリキャップと、スペシャルウィーク、バーネットキッドという、胃袋ブラックホールウマ娘三人の、ジェットストリームアタックを食らいながらも、トレセン学園の厨房は、他のウマ娘たち含めて支え切った。
そもそも、先の二人とも既に学園に居るウマ娘であり、そこも計算に入れて食材の仕入れは行われている。
だが……
「第三のブラックホール……完全に想定外だ」
「事前情報が無かったのが痛すぎる……年子で同時に入って来た妹の方は普通だったのが救いですね」
「アタリマエだ。四人目なんて来られたら今日の時点で破綻してる。
とはいえ……だ、危機的状況に変わりはない」
すでに食材の増量を納入業者に手配はしているが、増援の物資が学園に到着するのは三日後。
それまでは備蓄と通常配送の物資その他でやりくりをするしかない。
更に……
「人手の手配は……」
「幸い、新年度の募集面接は行ったばかりだ。追加採用の枠を広げれば問題はない」
「運が良かったですね……」
厨房を預かる面々が、微かな安心材料にため息をつく。
「諸君。三日だ。
あの三人だけじゃない、学園全てのウマ娘たちの胃袋は、我々の創意工夫にかかっている!
何か意見があるなら、述べてもらいたい」
料理長の宣言に、各々が意見を挙げる。
「とりあえず、麺類はヤワ目に茹でたモノを中心に、カサを増しましょう」
「スイーツ系よりも、油分を多めなメニュー……焼きそばとか?」
「焼うどんも可能でしょう……あと粉ものの類とか、胃にたまりやすそうですね」
「スープを大目にすれば……あの三人は汁まで飲み干すタイプなので」
「ジュースの類は在庫があったハズです」
ホワイトボードに書き込まれる、各方面担当からの見識と、現在の備蓄状況。
そこから導き出される、三日間の持久戦への回答と結論。
いける……
その場に居た全員が、希望を持った。
「よし、食材が増配されるまでの三日間、特別メニューをもって、切り抜ける。
いいな、諸君!!」
『はい!!』
自信に満ちた部下たちの声に。
(さあ来い、小娘共!
トレセン学園の厨房を預かる者として、『足りない』とは言わせないぞ!)
厨房を預かる料理長は満足し、闘志を燃やしていた。
彼らは知らない。
バーネットキッドの妹も、実は状況によっては、負けず劣らずの大食ウマ娘であることを。
普段とは違う環境になると、食が細くなったり体調を崩す繊細なウマ娘は多く。
そして彼女はバーネットキッドほど図太くなかったダケであり、だんだんと学園の生活に慣れていくごとに、元の食欲を取り戻していき……
トレセン学園の厨房における、阿鼻叫喚は始まったばかりであった。
厨房の状況的に、オグリとスぺがそれぞれ+1、って感じでしょうか。
シンデレラグレイだと『足りないとは言わせない』と言い切ってた料理主任も、スぺが加わり、この話だとキッド+妹という度重なる増援に、緊急事態に陥りつつあります。