Re:escapers   作:闇憑

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お待たせしまして、申し訳ありません。ボチボチですが再会します。

今年の凱旋門賞……ドウデュースの話を調べれば調べるほど、リアル先輩にぶん殴られている気分になります。


東京競馬場 第11レース  第25回ジャパンカップ(G1)その3

『秋晴れの東京競馬場に、G1総数29勝という豪華なメンバーが揃っています。四半世紀、25回目を迎えたジャパンカップ、18頭のフルゲートでレースが行われます。

 放送席はKEIBA7の吉多仁さん、そしてルドルフ、テイオーでこのジャパンカップを二度制してる長部幸雄さんです』

『よろしくお願いします』

『よろしくお願いします』

 

『吉多さん、なんといってもG1馬が11頭という……もう凄い馬たちが揃いましたね』

『そうですね、正直もう……馬券を買うよりもレースを見たい感じですね。それにジョッキーも名手が世界中から集まって……もうこのレベルの騎手が集まっちゃって、他がガラガラなんじゃないですかね』

『注目はやはり、前回の覇者、ゼンノロブロイ。そしてそれを宝塚、秋天と二連続で破ったバーネットキッドなんですが、長部さん、この二頭をどうご覧になりますか?』

『うーん、去年のレースでゼンノロブロイにとってベストが2400~500m前後だと分かってるので、リベンジマッチの舞台としては整っていると思います。バーネットキッドにとって、やはり2400というのは未知の距離ですから、そこは少なからず不利はつくとは思います』

『では、ゼンノロブロイが有利、と』

『発表された時計はじめデータを見ると、やはりロブロイに有利はつくでしょうが……問題はあの抜群のスタート勘からの高速展開に巻き込まれて、各馬、各騎手がどこまで対処できるかですね。下手についていけば潰されるし、かといって放置はできない。究極の二択で最悪、駆け引きそのものを潰しに来ますから、相手をするのは大変ですよ』

『そして、そんな状況で挑んで来た海外勢ですが、これまた凄い馬たちが揃いました……』

 

 

 

「……………」

 

 見られてる。

 めっちゃ見られてる……主に、外人の騎手たちと、海外馬たちに。

 っつーかヒゲ生やしてるジョッキーって、確かに国際的に見ても珍しいもんな……調整室でも外国の騎手に『何で君はヒゲを生やしてるんだ?』って聞かれたし。

 割と日本語が不自由な人たちなので、彼らも母国語でやり取りしてるのだが……ああ、館さんがしれっと外国語で答えて、外人の騎手が二度見してる。

 

 ……うん、まあ、気持ちは解るよ。

 こんなパドックの珍獣が、今まで無敗のままG14勝を含む9戦無敗の馬だ……なんて、誰も信じられないと思う。

 

 スターターで旗が振られて、ファンファーレが鳴る。

 ゲートインの時間。

 

 今日の出走枠である5枠9番……『可もなく不可もなく』な枠番に素直に収まる。

 奇数番だが問題ない。キッドはゲートを苦にしない。

 

 ……だから……出来る事ならば、叶うならば、みんな笑っていてくれ。

 油断してるほうが奇襲の成功率は上がるのだから。

 

 

 

『よう、古いの』

 

 隣の8番ゲートに入って来た、ロブロイ親分に。

 普段とは違い、こちらから声をかける。

 

『なんだい、若ぇの。お前から声かけて来るとは、吹き回しが変わったな』

『なに、散々一緒にレースして手口もバレてるからな……今更あんたに『油断して欲しい』とは思わねぇよ。タダのレース前の挨拶さ』

『ふん……殊勝な心掛けだな。

 ついでに敬老精神を発揮してお前が油断してくれてもいいんだぜ?』

『5歳や6歳で老け込むタマかよ、あんたが?

 大体8歳のタップ爺さんだってヤル気満々じゃねぇか』

『はっ、違ぇねぇ……だが、ここらでお前に借りを返さねぇと、有馬まで俺も時間がネェんでな』

『そりゃ俺も一緒だよ。

 この場に居ない、借りを返さにゃならんヤツが居るんでな』

 

 胸を張って。堂々とヤツに再び挑むために。

 そして『俺の勝ちだ!』と。名乗りを上げるために。

 

『しかし……あんた含めて元気なジジババばっかり相手で困るぜ』

『はっ、お前みたいな元気な若いのに言われるたぁ、光栄だぜ』

 

 軽口を叩き合いながらも、集中を高める。

 全頭がゲートに入った合図。バラバラと散っていくスタッフ。

 

 さあ、競走馬の時間だ……

 

 

『そして最後にビッグゴールドが入りました。

 四半世紀の時を超えて、ジャパンカップ……』

 

 

 意識を切り替える。

 走るために……今っ!!

 

 

 

『スタートしました!

 まずは揃った綺麗なスタートの中、ポーンと抜けたのはやはりバーネットキッド、内からタップダンスシチーが並びかける、続いてビッグゴールド。やはりこの三頭がレースを引っ張るか!? ゼンノロブロイは中段の位置のまま、第一コーナーから第二コーナーへと抜けていきます』

 

 

 

『よう、ジジィ! 相変わらず無駄に元気だな? 宝塚の大人しさはドコいった!?』

『はっはっは、相変わらず口の悪い若造よな、敬老精神が足らんぞ』

『そんなん要らねぇだろ、こんだけ元気なら』

『ふん……口も逃げ足も達者じゃの』

 

 

 

『先頭は依然バーネットキッドとタップダンスシチー、後ろにビッグゴールド、この三頭がぐーっとリードを広げながらレースを加速させていく。向こう正面1000メートルの通過タイムは57秒9、いつものハイペースに全てが巻き込まれていく大逃走劇。しかし2400m大丈夫か、怪盗にとって未知の距離!! しかしお構いなしにバーネットキッドがグーっとリードを広げていく!』

 

 

 

 はは……俺にいわせりゃ、2000のほうが怖いくらいだぜ?

 距離が長い方が、相手のスタミナを削る余地が出て来るからな。

 だから……

 

『悪ぃな、爺さん。『今のあんたとは』ここまでだ。

 ……置いてくぜ!』

『っ……の……若造……!』

 

 

 

『さあ大ケヤキを越えて第三コーナーに入ったバーネットキッドが先頭! しかし後ろもじりじりと詰めて来てる! 先頭を逃げる怪盗を追い詰めんと、スズカマンボを先頭に後続が距離を詰めて来た!』

 

 

 

 そう、ここだよ。

 みんなが『俺を末脚の射程圏に捉えるために、位置取り調整して加速を始める』このあたり……だけどな、よーっく考えな? ここまで調整するのに『どんだけ君たちアシを使って俺に追いついて来たのかな?』。

 

 

 

『さあ、第四コーナー回って直線に来た!! バーネットキッドの一人旅か、いや、後ろからハーツクライだ、マイソールサウンドも来た、アルカセット、アドマイヤジャパン! ゼンノロブロイも来た! 来た! 一気に鞭が入る!!』

 

 

 

『小僧ぉぉぉぉ!!』

『勝負やっ!!』

『待てぇぇぇ!!』

 

 

 

 高速展開を想定、あるいは対応できず、脱落を始める連中とは裏腹に。

 背後から迫る、古馬集団+同期一頭を含めた『想定していた連中』が、完全に俺を捕まえに来てる。

 

 ……うん、普通にやばい連中だね……正直おっかないよ。

 

 でもな。

 俺はそれより凄まじい末脚を皐月賞で……いや『生まれる前から』知っているんだよ。

 だから俺は……このレースで『ソレを想定して』来たんだ!!

 

『ハーツクライ! ゼンノロブロイ! マイソールサウンド! アルカセットが抜けたか!? リンカーンも来てる! しかし先頭のバーネットキッド、逃げる、逃げる、逃げる!! 残り200メートルここからキッドは未知の距離!!』

 

 

 

 残り200!!

 さあ……こっから全開だっ!!

 

 

 

『後続が迫る! 迫る! だが縮まらない! 残り2馬身が縮まらない! 一歩抜けたのはハーツクライ! ゼンノロブロイも抜けた! アルカセットも来た! しかし先頭は依然バーネットキッド! 芦毛の怪盗が今、ゴール!!!!!!』

 

 府中2400メートル芝左回り。

 轟、というスタンドから発する、うねりを伴った大歓声の中……誰の後塵を拝する事も無く、俺はターフを駆け抜けた。

 

『逃げた逃げた逃げ切ったぁぁぁぁぁ!! バーネットキッド、2分21秒3! 堂々の逃げ切りでワールドレコードタイム更新!! 二着争いは僅差でアルカセット、三着にハーツクライ!

 これが日本の三代目大怪盗!! 未踏未知の2400mで、海外勢も古馬も寄せ付けず、お宝を手にして鮮やかに逃げ切ったぁぁぁぁ!! エルコンドルパサー、ジャングルポケットに続いて、3歳馬が栄光を掴みました第25回ジャパンカップ!! 更に無敗記録を伸ばし10連勝、トキノミノルに記録が並びました!!』

 

 

 

 スコールのような歓声の中を、堂々と駆けながらも。

 初めて駆け抜けた2400mの感触に、俺は確信した。

 

 これで、有馬で『奴』と戦える……と。

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