「た、た、たしゅけて………たしゅけて……」
どうしてこんな事になってしまったのだろうか。
操縦席に複数のベルトで固定されながら、延々と前後左右に天地を回転させられ続ける状況に、バーネットキッドは回想する。
そもそもの事の発端は、クリスマスのプレゼント企画で。
サトノダイヤモンドが、実家であるグループ企業のソフト開発部門のソフトを景品にしようとしたものの、『何を皆が面白がってくれるだろうか』と、思い悩んでいた事が発端であった。
で……『ゲームに詳しい』と聞いて相談した相手が
「ああ、あの!
ゲームより、社史や開発歴見ているほうが、よっぽどエンタメやってる面白ゲーム会社!」
「ば、バーネット先輩!?」
よりにもよって最悪な事に、バーネットキッドだった事が、色んな意味で騒動の始まりであった。
「何言ってんだいサトちゃん。あの自社ハードの断末魔として、業界全てを敵に回して世に出た『例のソフト(通販版)』を俺は忘れてないよ!? 『餓狼電鉄』とか『エースウォンバット』とか『ショパン3世』とか!」
「忘れてください!! っていうか何で知ってるんですか!?」
初手から核爆弾級の黒歴史を掘り起こされ、悶絶するサトノダイヤモンド。
あまりにも相手がヤバすぎたとしか言いようのない、正直、相談相手として考えるなら、人選を根本から間違ったとしか言えない相手であった。
「えー、『むきむきホモリアル』とか『ロリーX』とか初手から持ち出さなかっただけ、まだ有情なつもりだけど」
「どこが!? っていうか、流通版はとっくに修正済みです!!」
「もったいないなぁ……子供の頃、駄菓子屋にあった『銀〇任侠伝』を見てるみたいで、腹抱えて笑いながらプレイしてた、俺的に一押しのソフトなんだけど」
あまりにもネジネジ曲がって捻くれて歪んだ『ゲーム遍歴を持つゲーマーによるゲーム観』を漏れ聞いたサトノダイヤモンドは、確信した。
関わってはならない。この先輩とは関わってはならない、と。
「いや、そんな警戒せんでも。
『70億』とか『占いアロマ』とか『犬の散歩』とか、色々とチャレンジャブルな会社だからこそ、見てて飽きないんじゃないか」
「だっ、だから……何故ソッチに行くんですか」
「いや、個人的にシイタケ作るゲーム会社が無くなってから、一番注目してる会社だし……色んな意味で『アソコ』と斜め上方向でタメ張れたのは業界でサトちゃん所しか無いじゃないか」
「面白がってるでしょう!? 開発者の苦悩と狂気を面白がってるでしょう!?」
「ソコも含めて、作ったゲームを楽しみつつも、完全無関係な外野の立場で無責任に指さして笑うまでが、エンタメ産業ってヤツじゃないですか♪」
余りにも醜くも禍々しく歪んだ『完全外野の視点』。
業界関係者として『絶対に相手をしちゃいけないユーザー』に関わってしまった事に、頭痛と眩暈が止まらない。
「で、クリスマスのプレゼントの相談だよね?
とりあえず、背びれ取ったゴジラとか、三つ目のドムとかはダメなの?」
「ダメに決まってるでしょう!!」
スナック感覚で黒歴史に触れて来る無法者に、色々と限界に達しつつあるサトノダイヤモンド。
完全に相談相手を間違えた事を悟ったものの、既に後の祭りであった。
「先輩、そろそろ真面目に答えてくれないと、ミレニアムタワー使ってR720で宇宙に打ち上げますよ!?」
「ああ、それだ!?」
「はい?」
本気で宇宙の彼方に打ち上げて廃棄処分にしてくれようか、と思って居た矢先。
虚を突かれて、首を傾げるサトノダイヤモンド。
「いや、少し古いけど倉庫とかに無い? 『R360』?
アレ、知らない人間にとって一度はプレイしてみたいんじゃないかな?
もう『とし〇えん』にあったヤツは無くなっちゃってるし、最悪、マイケルさんの家から借りて来るとかしてさ」
「なる、ほど。『アレ』ですかぁ……」
「いや、やってみたい人はやってみたいだろ? というか俺も一度しか乗った事無いし」
「確かに。技術力を見せるという意味でも、アリかもしれませんね」
意外とマトモな意見が出て来たあたり。
何だかんだと『人間性が歪んではいても、見識自体は深いのだな』と改めて見直し……
「ところで噂に聞いたんだけど、『男子が初めて握るコントローラー』を使う『アレ』ってホントにあるのか?
流石に俺もウマ娘だから見た事もやった事も無いんだけど、正直どういう代物なのかちょっと興味が」
パチン。
と、据わった目でサトノダイヤモンドが指を鳴らすと。
何故か、『龍を背負ったミホノブルボンのトレーナー似の人』と、『般若を背負った眼帯姿の主治医似の人』が現れ。
問答無用でキッドの両脇を確保して、黒塗りの高級車で何処かへと連行して行った。
「……あれ、ウチの姉さんは?」
少し間を開けてやってきたクアッドターボに問われたサトノダイヤモンドは。
それでも完璧なお嬢様の笑顔を崩さないままに、
「ウチの技術開発部門の新作で、ミレニアムタワーを使った『R1080』の打ち上げ試射会で宇宙に行ってもらいました♪
冥王星あたりまで逝って、ドリキャスタワーを倒せば、たぶん帰って来れると思います♪」
割とカッ飛んだ返事を返し。
「OK、一週間くらいしたら帰って来るって事ね」
と、しれっと承諾するクアッドターボに。
「……おい、何をドコから突っ込めばいいんだ、コレ?」
と、戦慄するゴルシだった。
なお、ホントに一週間後に、トレセン近くの多摩川にR1080が着水して帰って来るのだが……その辺に関しては、別の話である。
「って、こーんな感じのシナリオ書いたんですけど、どーでしょーかね?」
メインとは別に、サポカ用に『バーネットキッドが他のキャラと絡んだシナリオを書いてほしい』と頼まれたので。
徹夜明けで、ヤバ気な脳内物質が効きまくって膿んだ脳みそをフル稼働させて、ザックリと小一時間で一本、かるーく書き上げたのだが……
『……細かい修正は兎も角、最終的にサトノダイヤモンドのオーナーに、シナリオを直接見せて掛け合う事になるんですけど、ホントにこの方向で宜しいので?(意訳:やるなら君が生贄ね?)』
「やっぱりバーネットキッドの馬主権限でボツって事で」
『了解しました』
かくして。
正気に戻ったシナリオライターの手により、このシナリオは日の目を見る事もなく、ボツと相成った。
書き上げておいてアレなんですが……全部のネタ元分かる人は、サトちゃん家の熱心なファンだと思われます。
というか、書いていて『多分最終的に蜂屋君こんな感じになるだろうな』と気付いてしまいまして……
(某所、ファン感謝祭にて)
針生「あのー、皆さん、私にバーネットキッドのシナリオを追加で望まれるんですけど……あのですね、一応、私、まだ現役の馬主なんですよ。
で、普通、ゲーム会社の場合、シナリオライターの方はシナリオ書くだけで、編集作業とか馬主様や馬会への説明や営業は、別の人の仕事じゃないですか?
だから、正直ライターの方が気にするのは『上司や編集者の決裁』だけで、基本的にライターが直接馬主様と顔を合わせて話をするワケじゃないですよね?
でも、私の場合『他の馬主と競馬場の馬主席で直』なんですよ?
分かりますこの恐怖? 他のウマ娘をネタにしたコメディシナリオとか、精神的な意味でも気軽に書けるワケ無いんですよ?
そりゃね? 引退した馬主様のウマ娘とか、あるいはゴルシの馬主様みたいな、中には理解のある御方もおられますけど。それを差し引いても、そうそう気軽に書けないですよ。
それこそ、徹夜明けで脳みそ膿んでる時、本能のまま書き上げてボツにした話が山ほどあるんですから」
司会「えー、どんなお話ですか?」
針生「とてもとても言えません。
っていうか、他のウマ娘と絡んだハッチャケ系のシナリオを出す時、生贄にしようとして来る事があるんですよ。『馬主様への説明よろしく』って。俺、営業じゃないっちゅーねん!」
司会「うわぁ、それは上司に伝えておきます」
針生「ほんとに『知らないから、顔合わせないから書ける』ってのはあるんです。
あるいは、ファンタジーだから書けるんです。
リアルで顔合わせる相手の、しかも遥かに年上のエライ方々の馬を使ったキャラに関して、アレコレ気軽に書けませんよ、マジで。
タダでさえ、キッドが実装されて色々言われてるんですから」
こんな風に、ゲームで実装されたら、蜂屋君、馬主席で、巷で語られる『伊東ライフ状態』より強烈な事になるだろうなと思います……