SAO ~銃の喝采の鳴る仮想の地で~   作:見知らぬ誰か

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第02話 過去のトラウマとゲーム

 4時限目終了直後、汐耶はクラスの誰かと質問に答えつつ昼食を取るという事はせず、鞄から弁当と黒い板のようなものを取り出すとそれらを手に持ちそそくさと教室を出て行った。

 詩乃はそれを横目で見つつ、何時ものように愛読書の本と弁当の入った袋を持って教室を出て何時も昼食を食べている屋上に向かった。

 詩乃が屋上のドアを開けるとそこには授業終了直後速攻で教室を出て行った汐耶が詩乃が何時も昼食を食べているベンチで黒い板のようなタブレットPCで何かをしながら昼食を食べていた。

 汐耶は人というよりも詩乃の気配を察知したようにタブレットPCから顔を上げて詩乃を見た。

 

「やぁ、朝田さん」

「教室で食べないの?」

 

 汐耶はウーン……と少し悩むと何かを思い出したようにニヤリと笑うと言った。

 

「俺、コミュニケーション能力低いから」

「……確かにそうだったわね……その割に学校の規則とかは思いっ切り破ってPCとかポータブルゲーム機とかポータブルデバイスもって来てクラスの人気者になってたけど……」

 

 汐耶は、ははは……と笑うと言った。

 

「いやぁ……あれは俺の楽しみの一環だよ」

「と言うと?」

「小学では無かったけど中学じゃ持ち物検査ってあったろ?」

「そうね……しかも抜き打ちで」

「俺がそう言う事をして他の奴に持ってこさせるだろ?で、俺は嫌な予感がしたときに持って来ない……すると見事に打ち抜き持ち物検査……あらびっくり、検挙者多数で漏れなく人の不幸は蜜の味を味わえます」

「えげつないわね」

 

 汐耶はけらけらと笑うと自分の座っているベンチの端に移動した。

 

「昼飯、食わないの?座ったら?」

「あ……うん……」

 

 詩乃はぎこちない動きで汐耶が座っている右端の逆の左端に座ると袋から弁当箱を取り出して食べ始める。

 

「ねぇ……なんで神那岐くんは私に関わろうとするの?私は人殺しなのにさ……」

「…………」

 

 汐耶は口に運び掛けていたおかずを弁当箱に戻して詩乃に聞いた。

 

「関わる理由?大した理由は無いと思うけど……強いて言うなら……そうだなぁ……これを撃ったときの感覚が知りたいから……かな?」

 

 汐耶は制服の上着から黒星を取り出して詩乃に見せた。

 

「ひぐっ……」

 

 その銃を見た瞬間詩乃はそれから目を離せなくなった。それと同時に呼吸が乱れ吐き気が詩乃を襲い、詩乃の全身を冷気で包んだ。

 詩乃は膝に乗せていた弁当箱と箸を屋上のに落とし、弁当箱の中身をぶちまけたのにも気付かず、前に倒れ込む。

 

「ヤバっ…………見せるんじゃなかった……!」

 

 汐耶は手に持っていた黒星を制服の中に仕舞うと倒れ込んできた詩乃を受け止めた。

 

「ごめん、朝田さん……何も考え無さ過ぎだったな……」

「…………」

 

 詩乃は受け止められている汐耶に抱きついた。

 トラウマとなっている銃を詩乃に見せた汐耶だが、詩乃にはそれが悪意で見せたものでは無いことは分かっていたから汐耶の腕の中は安心出来る場所だった。

 汐耶は詩乃抱きついている詩乃を抱き返し、詩乃に小さく声を掛けた。

 

「……ごめん、本当に何にも考えないであんな事してさ……

 信じられないかもしれないけど……あれは嘘だから気にしないでくれる……?」

 

 その言葉に詩乃は小さな、とても小さな声で答えた。

 

「分かってる……分かってる……だから、信じるわ……」

「……嘘は言わなくて良いよ……」

「本当にそう思ってるわ……だから、本当の事を教えてくれない?」

 

 汐耶は少し黙ってから口を開いた。

 

「……良いよ。

 俺は、あの事件の場にいた人として……友達として朝田さんの安心出来る場所になりたいと思ったから、君に関わろうとしている。

 もし、君がそんなことして欲しくないと言うなら、不本意だが止めるよ」

「……周りから孤立しても?」

「周りに混じらなかった俺からすれば、孤立とは一体何なのだろうという感じでね、孤立しようが何しようが構いやしないよ」

 

 汐耶はニッコリ笑って答えた。

 

「気分はどう?」

「……少し、気持ち悪い……かな……」

「……ちょっと失礼」

 

 汐耶は詩乃をお姫さま抱っこで持ち上げ横のベンチに寝かせた。

 

「何するの?」

「お片付け」

 

 汐耶は制服のポケットからビニール袋を取り出すと詩乃がぶちまけてしまった弁当の中身をそれに入れた。全て片付けると詩乃の弁当箱を詩乃の持って来た袋に仕舞い、自分の弁当箱も袋(勿論、詩乃とは別の自分の袋)に仕舞って黒いタブレットPCを一つの場所に一度纏めると詩乃の方に来た。

 

「今日はもう、早退しようか」

「でも神那岐くんは……」

「気にしないで良いよ。ただ消化するだけの日々だし、高校は卒業出来れば問題ないよ」

 

 汐耶は詩乃を起き上がらせると背中に詩乃を背負い、他の弁当箱の入った袋やタブレットPCを右手に持って屋上から出てクラスにまで戻ると自分のと詩乃の荷物を取ってから保健室に行った。

 保健室に入ると保健室の先生に話し掛けられた。

 

「あら、どうしたの?」

「この子が気分悪いって言うので早退届けを出しに……」

「それは君もって事かな?」

「あー……何か気分悪いなぁー……」

「良いよ。名前は?」

「一年A組の神那岐 汐耶と朝田 詩乃」

「分かったわ。お大事に」

「はい」

 

 汐耶は保健室を出て昇降口に向かう。周囲からは変な目を送られるが、気付かない事にして昇降口に真っ直ぐ向かう。

 汐耶は靴に履き替え、詩乃は汐耶に支えられ靴を履き替えるとまた背中に背負われ、学校の駐輪場に向かう。

 駐輪場にあったのは自転車ではなく、大きな1100ccのガソリンバイクだった。

 

「これ、神那岐くんの……?」

「まぁね……親の高校合格祝いだよ」

 

 汐耶はバイクのキーをズボンから取り出して鍵穴に入れて回してエンジンをかけた。

 汐耶は詩乃をバイクのリアシートに座らせバイクに置いておいたオープンフェイスのヘルメットを詩乃に被らせ、顎下のハーネスを留めると汐耶はフルフェイスのヘルメットを被ってバイクに跨ると詩乃が汐耶の腰の辺りに腕を回されるのが分かるとバイクを発進させた。

 

「家はどこ?」

 

 汐耶にそう聞かれて詩乃は答える。

 

「学校側の商店街の端にあるアパート……って言っても分からないわよね……」

「大丈夫。分かるよ」

 

 汐耶は少し速度を上げて詩乃の住むアパートの方へとバイクを走らせる。

 五分そこらで2人は詩乃の住むアパートに到着した。

 

「ありがとう。ここまで来ればもう大丈夫よ」

「ん、俺もここに住んでるんだよね~」

「そ、そうなんだ……」

 

 詩乃はそう言ってバイクから降りて立ち上がろうとするがクラリと立ち眩みがして倒れ掛けたのを汐耶が受け止めた。

 

「無理はしなくても良いよ。人間、頼って頼られてなんぼだしね」

「ありがとう……じゃあ、部屋まで運んでくれない?」

「部屋の番号は?」

「201号室」

「俺の隣だな」

 

 汐耶は自分と詩乃の2人分の荷物を持つと詩乃をお姫さま抱っこする。

 詩乃は自分の顔が朱くなっているのが分かるぐらい恥ずかしくなって顔を俯けた。

 

「ま、恥ずかしいのはお互い様だよ」

 

 詩乃が顔を上げて汐耶の顔を見れば汐耶の顔は真っ赤だった。

 

「そ、そうね……」

 

 詩乃は再び顔を俯けた。

 汐耶は階段を上り、詩乃の部屋の前に来ると詩乃を降ろした。

 

「はい、到着」

「あ、ありがとう……」

 

 詩乃はドアの前に立つと部屋の鍵を取り出して開錠すると、電子ロックに暗証番号を入れてドアを開けた。

 

「あの……上がっていかない?お茶でも出すよ?」

「良いのか?」

「ええ」

「じゃ、上がらせて貰うよ……っと、俺は一回家からちょっと取ってくるよ」

「何を?」

「朝田さん、昼飯食べてないだろ?具材もって来て適当に作るよ」

「あ、ありがとう」

 

 汐耶はそう言って詩乃の荷物を詩乃に渡すと隣の202号室の鍵を開けてキッチンの冷蔵庫を開けて、何を作るか考える。

 

「何が良いかな……ささっと食べられるやつ……ラーメンとかの麺類……あ、ラーメン無いや……蕎麦もうどんもない……あ!」

 

 汐耶は冷蔵庫を閉めてキッチンの棚を開ける。そこには……

 

「あったあった」

 

 大量のそうめんが入っていた。しかもそうめんが美味しいと有名な所で作られたそうめんで統一されているという恐ろしさ。

 

「ん~……流石に冷たいつけ麺では今の時期キツいよな……」

 

 今は10月で寒くなってきた時期であり、冷たい物は結構キツくなってきた時期である。

 

「頑張って温かいの作りますか」

 

 汐耶は他にネギや人参、鶏肉その他調味料を持つと詩乃の部屋の前に来て、インターホンを鳴らすとすぐにドアは開いた。

 

「ど、どうぞ」

「お邪魔するよ」

 

 汐耶はそう言って部屋に上がった。

 

「んじゃ、キッチン借りるよ」

 

 汐耶が自分の部屋と同じ間取りの詩乃の部屋のキッチンに入ると詩乃もそこに来る。

 

「調理器具とかどこにあるか分からないでしょう?」

「有り難い」

 

 それから汐耶は詩乃に調理器具の場所を聞きながら、詩乃と話しながら料理を作っていく。

 

「何を作るの?」

「温かいそうめんだよ。本当はラーメンにしたかったがね」

「そうなんだ」

「そうめんは嫌い?」

「冷や麦が嫌いよ」

「じゃあうどんは?」

「嫌いじゃないわ」

「……今言った3つ……太さが違うだけで原材料は同じだった気がするんだが……気のせいだよな?」

 

 そんなこんなで20分程で料理は完成した。

 詩乃と汐耶は出来上がった料理を入れた丼をリビングのテーブルに置いて、向かい合って座ると両手を合わせ……

 

「「頂きます」」

 

 同時にそう言って食べ始めた。

 

「……美味しい……」

「そりゃ、そうめんが美味いって有名な所で作られた奴だからな。美味くない訳が無い」

「そうじゃなくて全体的に美味しいわ」

「そりゃ良かった」

 

 汐耶はそうめんを食べながら部屋を見回す。そうして見つけたのは、二重円環状の機械『アミュスフィア』だった。

 

「朝田さん」

「何?」

「何かVRゲームやってるの?」

 

 詩乃は少し考え込んでから答えた。

 

「笑われるかもしれない、馬鹿にされるかもしれないけど、VRMMORPG『ガンゲイル・オンライン』っていう銃ゲーをやってる」

「GGOか……」

「神那岐くんは何かやってるの?」

「同じGGOをやってるよ」

 

 汐耶は少し驚きつつ答えた。

 まさか詩乃がトラウマとなっている銃主体のゲームをやっているとは思わなかったからだ。

 

「じゃあ、中で落ち合う?」

 

 詩乃は唐突に汐耶にそう言った。

 

「ああ、良いよ。俺の名前はアリスだよ」

 

 汐耶は了承の返事を言い、プレイヤーネームも添えた。

 

「私はシノン」

 

 こうして2人はGGOで落ち合う約束をしたのだった。

 まぁ、詩乃が汐耶のキャラネームを聞いて不思議に思ったのはご愛嬌だろうか。

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