いやぁ、時間がなかなか取れないわ、話は思い浮かばないわで大変でしたよ。
今、俺は詩乃と沙耶に挟まれ、両手に華ならぬ両手に刃とも言うべき空気に包まれていた。だって2人とも笑ってんのに目が笑ってないんだもん。
何と言うか……こういうのを修羅場って言うんだっけ?……俺、なんかやらかしたっけ?
「……汐耶」「……汐耶くん」
2人が同時に口を開き……
「「……浮気?」」
ネタとしか言いようのない言葉が飛んできた。
「まず、前提条件が可笑しいな。お前等どちらかと付き合ってる訳でもないのにその単語は出て来ないだろ」
「「……じゃあ、誰?」」
……沙耶が過去の事で有名なのとのアイツの持っている『性質』があれば詩乃を忘れる訳は無いし、詩乃があの特異な容姿を持つ俺の幼馴染である沙耶を忘れる訳も無い……。
「わざとやってんなら……これから一切合切何があろうが反応しないぞ?」
「「ごめんなさい、それだけは勘弁してください」」
過去、友人に聞いた話では本当に一切合切反応しなかったらしい。虐められているという話を聞こうが、何を聞こうが(藁人形が俺の写真と共に五寸釘で有名な神社の御神木に磔にされてたと聞いても(後に何か俺に恨みを持ってた奴が倒れたとか聞いたな……そう言えば近所の御神木に頭に蝋燭巻き付けて火付けて何かを五寸釘で打ってるそいつを見たような)、呪いを掛けようとしているらしいと聞かされようが)反応しないと決めた奴には本当に反応しなかったらしい。
聞いてた自分が怖くなって話の途中で耳塞いで聞かなかった。
「てな訳で自己紹介は不要だな……でだ沙耶、お前なんで此処に居る?」
「うえー……話さないと駄目?」
「駄目だな。いくらお前が天才で、頭がキレて、世の中上手く渡れようが……俺が納得するまで話せ」
沙耶はうー…………と少し、唸った後に言った。
「分かった。でも、条件がある」
「……どんな?」
粗方予想は付く。一緒に出掛けよう辺りだろう。
「週末、遊びに行こう?詩乃ちゃんも誘ってさ」
「ほう……そりゃあ良いな。何処にだ?金は持ってやるよ」
「羽振りが良いね……じゃ、遊園地とかどう?」
「貸し切りにしてやろうか」
「だーめっ!時間掛けて並んで乗るのが良いんじゃないか」
一回やってみたいな……と思っていたが、却下された。残念、また今度だな……いや、次があるかは不明だけど。
「えー……と……?」
あ、詩乃が話に着いて行けなくなってる……。
「んで?飯でも食いながら沙耶の話を聞こうか」
「分かったわ」「は~い」
2人は俺の両隣に座って昼食を食べ始める。
端から見れば両手に華かもしれんが、やられてる本人からすれば両手に刃……もとい、両方から銃の空気はキツい。まだ、GGOで武器持った奴らに囲まれた方が居やすいぜ。
「んでー、汐耶が聞きたかった『ボクがここに居る理由』だけど……簡単に言うなら『あの学校に通う必要性が無くなったから』だよ」
「勉強なら、お前は教科書読むだけで良いしな」
「キミが思う以上に困っているんだよ?この症状」
「物事を一切忘れない……いや、忘れられない病気『超記憶症候群』……だったか?」
アニメなどで使われるのは『完全記憶能力』と言われるもので、かなり症例は少ない。
沙耶はその少ない症例を持っている内の1人だ。
とは言え、この超記憶症候群は一般人からすれば『あったら楽が出来る』と思うだろうが、実際に持っている物からすれば『呪い』の他当てはまらない。失敗したことや侮辱、虐め、耐え難い恥ずかしい事……それらが一般人のように超記憶症候群を持つ者は『記憶に埋もれる』なんて事は無いのだから。
特に虐めは受けやすい。どんなことも忘れられないその力は学校の些末な事にさえ影響を及ぼす……テストを受ければ毎回百点満点……当たり前だ。テストは授業で受けたことしか出ないのだから自然、普通に受ければそうなる。
沙耶も例外に漏れず、中学に症状の出始めてから2回の定期テストで連続全教科満点を取り、クラスメートから何かズルをしているのでは無いかと思われる始末。
そして、沙耶は容姿も相まって虐めを受け始めるが何事も無いかのように日々の日常を過ごした。靴を隠されようが予備を出して履く、教科書を捨てられようが水浸しにされようが捨てられた物を普通に使い、水浸しになった物は次の日には綺麗にして使われている。暴力を受けようがすらりすらりとかわして反撃はしない。
だが、そんな虐めの日々はある日突然見なくなる。
理由は簡単、沙耶が日本を震撼させた最悪の事件『SAO事件』に巻き込まれたからだ。
まぁ、閑話休題。
「じゃ、ここに来た理由を教えて貰おうか」
「簡単だよ。あそこで勉強する事が無くなったから転校してきた」
「……そんな事だと思った」
詩乃は最早話に参加する気が無いようで、無言で昼食を食べている。蚊帳の外って感じになってすまん……。
「ところでさ、詩乃ちゃんは何かVRMMOやってたりするの?」
「え……?何でそう思ったんですか?」
「同じ年なんだから敬語は要らないよ。
何でそう思ったのかって疑問の答えは……なんとなくかな?」
沙耶は勘が良いからな……何となくでも当たるんだよな。
「えっ……と…………ガンゲイル・オンラインを……」
「やっぱり……昨日振りだね、シノンちゃん」
「え……?」
「キミの名前で何となく分かったよ。本名のモジリとはちょっとどうかとも思うけど……本人次第だし」
「まぁ……そうね……」
「ま、そう言うボクも人の事言えず、少し前まで『Die』と表示して『ディー』と名乗ってたんだけどね」
『ディー』……沙耶がMMOなどて多く使う名前だ。沙耶の場合、『Die』の表記+PKをする事が多いためかなり有名な名前だ。
他の特徴として沙耶が付加させているのが白い髪に紅い目、白の下地の装備に紅い血の血飛沫の装備が基本。
呼び名は『白血飛沫のPKer(死神)』読み方は『はっけつひまつのしにがみ』。恐ろしい名前がついたものだ。GGOでは『西方の魔女(ウェスタンウィッチ)』と呼ばれては居るが中身は同じで偶にニュートラルフィールドにいるスコードロンを潰しに潰しているらしい。
最早戦闘になって居らず、只の蹂躙としか言いようのない状況だったが、ミットスがとても良い笑顔だったので止める事無く、俺はその場から去った。死にたくは無かったからね。
にしてもあいつ、SAOというデスゲームの中でも同じ事してないだろうな……流石に無いか。
※─※─※
時は飛んで放課後の後者裏。
俺は昨日詩乃についてありもしないことを嘯いていた遠藤とかって言う愚者とその取り巻き2人に呼び出されていた。
めんどくさい事が起きそうな予感がいたします。理由?現実をねじ曲げる嘘をあの遠藤……めんどくせ、遠藤ズに言うからだよ。
しかも、今回の嘘は実際にその現場を見なければ見抜けない嘘だ。
「はーい?待たせたぁ?」
「呼び出しておいて30分も待たせるな」
「女子に対して紳士としての対応があるんじゃ無いのぉ?」
「興味が1マイクロメートルとしてない奴に紳士としての対応をする必要は無い」
「ふーん……ガッカリね」
勝手に言ってろ。
まったく、何で俺はこんな馬鹿共の相手をせねばならんのだ……話してるだけで気持ち悪い。
「で?調べ直して詩乃のやった事は変わったか?」
「はぁ?変わる訳ないじゃん」
「「無いじゃん?」」
ハモるな、鬱陶しい。
「全く……まぁ、良いや。お前等に本当の話をしてやるよ。
尾鰭の付いていない、本当の話をな」
「はぁ?なにそれ、それで朝田さんを擁護するつもり?あ、もしかして体で誑かされたとか?」
「「ギャハハハハ!!」」
ウザったい。殴りたいと本気で思う程にウザったい……。
で、ひとしきりあいつらが笑った所で話を再開した。
「んじゃま、話を聞いて貰おうか?」
「仕方ないわね聞いてあげるわよ」
「「仕方無くよ?仕方無く」」
「ああ、はいはい……良いから聞け、疑問に思うことがあるなら質問しろ」
そう言って俺は嘘と真実を織り交ぜだけ話をし始めた。
「面倒臭いから要点だけを話そう。
俺と詩乃が親と共に郵便局に来た。そこにいきなり強盗が押し入って金を要求した。
強盗は郵便局員を1人撃つと今度は客の居る方に銃を向けた。強盗の照準した先には幼い詩乃……俺は強盗に襲い掛かり、強盗の銃を奪い、三度引き金を引いた。
致命的だったのは最後の3回目の引き金だった。3発目は強盗の眉間に当たった。ゲームで言うならヘッドショット。強盗は即死した。
これがお前たちの言い触らしてる事件の真相だ」
何か遠藤ズが苦虫を噛み潰したような顔してるが構わず続ける。
「で、こっからがお前たちの聞かなければならない話だ。
世の中は8割方嘘だ……てな訳でお前等の見つけた大半の情報は嘘だった……幾つか無かったか?実際には同い年の男子が殺したって記事」
「そう言えば……」
この話については俺が実際に記事を作り出し、サイトに載せただけだ。全くの大嘘だが、今更他の本当の記事とともにネットの情報の海に沈んでいるだろう。
「情報伝達なんて伝言ゲームと同じで、他人から他人へ行く毎に内容は変わる。
詩乃の件もそうだ。情報は広がりやすい形にどんどん変わり、最終的に殆ど原型を留めない。
詩乃のやつは俺という『男子』が殺したと言うより『女子』殺したと言うことにすれば、悲劇のヒロインらしく広めやすい……そう言うことだ」
話し終わった俺に遠藤が言う。
「なら、朝田さんのPTSD(心的外傷後ストレス障害)はなんて説明するんだ?」
「嘘によって広がった情報による虐めによって起こった現実錯誤……だろうな……殺してもいないのに殺してしまったと思い込んでしまったんだろ」
「…………アンタは人を殺して何とも思わなかったのかよ?」
「正当防衛で何を思えと言うんだ?
ま、罪から逃げるための建て前ではあるがな」
「そうかよ……『人殺し』」
「「人殺し」」
遠藤ズの口元がつり上がる。
「そうさ、俺は人殺しさ」
俺はそう言ってその場から離れた。
※─※─※
人殺し……ね……これは予測してなかったが……ま、後は遠藤ズがまた広めるだろうな……確証は無いし……確率も少し低いが……。
これで多少、詩乃の重荷を背負えるなら良いさ。
俺はそう心の中で終わらせて頭にアミュスフィアを被り、合い言葉を口に出す。
「リンク・スタート」
てな訳で(どんな訳?)後書きですが……これの外伝的なのを書き始めようかなと思案中……もとい、決定です。異論は認めません。反論も聞く気はございません。
と言う訳でその物語の主人公はこの作品で幼馴染み兼サブヒロインを持つ七乃瀬 沙耶/ストラトミットスことディーです(神ないから離れるつもりはない)。
タイトルは『SAO ~赤黒の戦乙女(ブラッディヴァルキリー)~』です。近日公開!!かみんぐすーん