イタリカ防衛戦にはならなかったよ……
登場キャラのイラストです。
総司令こと柊木真と、その妹柊木結。
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副指令こと木場義秀と、その奥さん。
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竜司がキャラとして動かしやすいことに気がついた。
ロゥリィ・マーキュリーは死と断罪と狂気と戦いの神・エムロイに仕える神官であり、同時に人の肉体のまま神としての力も得た亜神と呼ばれる存在でもある。
亜神となると、まず不死身の肉体と獣系亜人をも上回る身体能力が手に入る。
だから首チョンパされようが手足をもぎ取られようが内臓を破壊されようがすぐさま回復するし、大の男でも到底持ち運べない巨大で重量のあるハルバードを小枝のように振り回しながら軽業師よりも見事な曲芸を決める事もロゥリィには容易い。
また亜神になった時点の年齢で肉体の成長も止まる。
ロゥリィが亜神になったのは10代前半の頃である。
でもって人間時代のロゥリィが生まれたのは1000年近く昔の時代である。
つまりロゥリィは少女の外見でありながら実年齢は約1000歳、より正確には961歳という、高齢者なんてレベルじゃない存在なのであった。
だものだから、彼女はそんじょそこらの老人や賢者などメじゃない人生ならぬ神生経験の持ち主である。
そして先に述べた通り、彼女は死と断罪そして狂気と戦の神であるエムロイの神官でもある。
ゆえにロゥリィは、血の臭いに敏感だった。
なにせ彼女自身がその手を血で染める機会など100や200や利かないぐらい経験しているのである。
永い神生において、血の臭いほど嗅ぎなれたものはないと言っても過言ではない。
だからこそ、最初に出会った者達の中で特に濃い血の匂いを漂わせていた伊丹に接触したのだが、後々になってもっと興味深い者達がいたことに気付く。
それが、異能力者だ。
「ねぇあなたぁ? 少し話をお聞きしてもよろしくてぇ?」
「あん? どうした嬢ちゃん……って、これ前にもあったな……」
ジエイタイの者達と親しそうにしながら、言葉の通じないジエイタイの者達と比べて会話が通じる者達であり、そして、炎龍に手傷を負わせられなかったとはいえ、犠牲者などなく避難民全員を救出して見せた強力な魔法を使う者達のことであった。
まさしく、神代の英傑のような者達が何人もいたという事実は、長く生きてきたロゥリィであっても予測できなかった事実。
だからこそ、彼等の拠点である場所に着いた時には真っ先に話しかけることにしたのだ。
そんな異能力者の中でも、気配だけで分かるほどの力を持った大男に話しかけてみる。
場所は、鉄の馬車が多く存在する〝チュウシャジョウ〟と言う場所だ。
鉄の馬車に寄りかかるようにして立っていたその男は、邪険にするわけでもなく、ただ「なんで自分なんかに……」という疑問が顔に表れているだけであった。
その男は、飲み物を一口含み、飲み込んでからロゥリィに向き直る。
その体は歴戦の兵士の肉体が可愛く見えるほどに鍛えられ、そしてその腕は丸太のように太い。
ジエイタイのような兜などの防具の類は欠片も装備しておらず、袖の短い黒色のコートに同色の光沢のあるズボンを穿いている。
惜しげもなく晒される腕と胸板は無駄な贅肉などなく、極限まで引き締められていた。
目元だけを隠す黒いバイザーに秘められているであろう視線は射貫くように鋭く、しかし、どこか優しさを感じさせる。
そして、極めつけはその体から漏れ出る魔力の密度。
うまく隠しているようだが、感覚を研ぎ澄ませてみればその膨大な魔力に後退ってしまう。
例えるならば、少しづつしか流れない小川をたどってみれば、渡ろうものなら押し流されるほどの勢いがある大河を見つけてしまったようであった。
改めて分かる男の威容に息を呑み、恍惚の表情を浮かべるロゥリィ。
あの時、炎龍と相対していた者達も素晴らしい英雄だったが、目の前の男と比べると見劣りしてしまう。
もし、この男が炎龍と相対していたのならば、炎龍派での一本では済まされないほどの傷を負っていただろう。
そう思わせるほどに、目の前の男――山内竜司は戦士として練り上げられていた。
「で、嬢ちゃんは俺に何の用だ? この町のことなら俺には聞くなよ。もっと詳しい奴がいるからな。もし、そうだとしたら案内をしてやるが……」
「いいえぇ? 私が聞きたいのはぁ、あなたほどの人がぁなぜこんな場所にいるのかと思ったのよぉ」
「……俺はしがないタクシードライバーさ」
「〝たくしぃどらいばぁ〟が何なのかは分からないけどぉ、私が聞きたいのはぁそんなことではないわぁ」
煙に巻こうと言葉を濁す竜司を問い詰めるロゥリィ。
「じゃあ何が聞きたいんだい、お嬢ちゃん? ……いや、お嬢ちゃんじゃねぇな、アンタ結構な時間を生きてるんだろ? できれば年齢を教えてもらいたいんだが……」
「今年でぇ961歳になるわねぇ」
「きゅ……!?」
驚愕の年齢を言葉にされてその手に持った飲み物が入った容器を握り潰しかける。
それに気づいた竜司は、心を落ち着かせるために容器に入っている飲み物を飲み干した。
そして、ロゥリィに向き直ると、すまなそうに後頭部へと手を置きながら謝罪する。
「……こいつぁすまねぇな。それならお嬢ちゃんって呼び方は失敬だな」
「大丈夫よぉお嬢ちゃんでぇ。女としては若く見られたいと思うのが普通だからぁ」
「そうか……なら、嬢ちゃんの名前を教えてくれ。いつまでも嬢ちゃんじゃ誰かと呼び間違えるかもしれないからな」
その言葉を聞いたロゥリィは、自身の名前を口にする。
「私はぁ、神エムロイに使える信徒ロゥリィ・マーキュリーよぉ」
「ロゥリィさんか……俺の名前は山内竜司。山内が姓で竜司が名だ。よろしく頼む」
「よろしくねぇ」
互いに握手を交わし、一先ず会話のスタートラインに立つ二人。
まずは、ロゥリィから質問が投げかけられる。
「あなたの本当の仕事はぁ?」
「……言わなきゃなんねぇか?」
「言わないといけないわよぉ」
本来の仕事に関して言うのを渋る竜司。
これは絶対に何かがあると確信するロゥリィ。
やがて見つめ合ったまま、十数秒が過ぎる。
そして、竜司の方が大きくため息を吐いたかと思うと、腕を上げて降参の姿勢をとった。
「分かったよ。言うさ。その代わり、そっちの情報もくれよ」
「話が分かる人で助かるわぁ。それであなたの本当の仕事ってぇ何なのかしらぁ?」
今度こそ、答えが聞けると興味津々に目を輝かせるロゥリィ。
その視線を受けながら、竜司は言った。
「俺の仕事は、若手の異能力者達のお守りだ」
「お守りぃ? あなたのような人をお守りにするなんて、あなたの上の人はなにを考えてるのかしらぁ?」
「実際、俺はお守りに最適とは言えねぇが、年長者として、尚且つ、実力者としてあいつらの為に、世間様の矢面に立つ覚悟はあるのさ」
「世間ねぇ……あなたほどの戦士を縛るほどのものなのぉ?」
ロゥリィは不思議に思ったこと、ジエイタイと異能力者が来たという地球について聞いてくる。
「あぁ、俺達の住む地球という場所はここよりも大分発展している世界でな。そこでは、今まで魔法や魔物、ましてや、あの炎龍とかいう化物なんて伝説のものでしかなかったのさ」
「炎龍はともかくぅ、魔法にぃ魔物もかしらぁ?」
「あぁそうだ」
そう言って、懐から黒い板――スマホを取り出す竜司。
ロゥリィは興味深そうにスマホを眺める。
「これはスマホって言ってな。地球ではこれ一つで世界の裏側にいるやつと話ができるんだよ。もちろん、他にもいろいろなものがあるからこいつは機能するんだけどな。これには魔法の技術なんて欠片も使われてねぇ。あるのはただの金属を細かく並べて、電気……雷が通るようにした、ただの技術なんだよ」
「それはすごいわねぇ。国宝級のものよぉこのすまほって言う板。ねぇリュウジィ。これ私にくれないかしらぁ?」
「ダメだ。使い方が分からねぇだろ。それに、高いんだぞこれ。っと、話が逸れちまったな」
話が逸れていたことに気がついた竜司が修正にかかる。
「俺達の世界では、ここみたいに治安が悪いわけではない。アンタにとっては普通だろうが俺達にとっては結構おかしいんだ」
「あらぁ? どういうところがおかしいのかしらぁ?」
自分達の生活がおかしいと言われて、首を傾げるロゥリィ。
そんなロゥリィに、竜司は自分の考えを言った。
「この世界と俺達の世界を比べると、圧倒的に古いんだ。生活様式が。戦いが。法が。何もかも俺達のいる世界に比べて古いんだ。……魔法はどのぐらいなのか分かっていないがな」
「そこまで言うほどかしらぁ?」
「そこまでさ。だって分かるだろ? 道中起きた問題に対しての自衛隊達や俺達の対応」
「そうねぇ……」
竜司の言葉を受けて回想するロゥリィ。
そんなロゥリィの頭には、ここに来るまでに起こったある事故のことが思い浮かべられている。
そう、コダ村からこのアルヌスの丘に退避しているときに起こった事故。
コダ村の者が使用している馬車が脱輪した時のことだった。
この世界では脱輪したならばよほどの余裕がない限り、荷物を捨てなければならない。
だから自身の馬車が脱輪してしまったのならば、という事態に陥ったものの顔は絶望に濡れてしまう。
それを救ったのはジエイタイの者達と異能力者の者達だった。
彼等は誰に言われるわけでもなく、率先してそれらの問題解決に動いて、解決したのなら礼も聞かずに持ち場に戻る。
そんな行動をこの世界に住む者は不思議に思ったのだ。
それはロゥリィだって同じである。
だからこそ、気になったロゥリィはこうして竜司に理由を聞いているのだ。
「あれが俺達の世界では普通なんだよ。って言っても、そんなことするのは俺達の国〝日本〟ぐらいだけどな」
「あらぁ? 他の国は違うのかしらぁ?」
疑問の浮かんだロゥリィは続けて質問する。
「ま、日本は他の国と比べても優れているっていうのをよく聞くだけだ。戦争を放棄した点も含めてな」
「戦争を放棄したぁ?」
信じられない言葉を聞いたと言わんばかりに目を丸くするロゥリィ。
だってそうだ。
あの炎龍を退け、それ以前から帝国軍に壊滅的な被害をもたらしておきながら、戦争を放棄しているという日本という国。
それに、竜司の言い方からして他の国は戦争を放棄していないというようなことも察せられる。
もしかして、ジエイタイは手加減していた?
そんな考えが頭によぎる中、肩を竦めた竜司がその疑問を切り捨てる。
「日本もこっちの帝国と同じように戦争に負けてるんだよ。それも七十年前にな」
「長いわねぇ……あなたはそれを実際に見たのかしら?」
「いんや? さっきも言っただろ、俺達の世界は発展している。だから、七十年前の戦争も記録として残っている。ただその時の戦争の状態は、聞くだけで背筋が寒くなるようなヤバい状態だったらしいんだってよ。丁度いい。ここにスマホがあるからその時の映像を流してやるよ。ただし、でけぇ声を出さないでくれよ?」
「……分かったわぁ」
竜司ほどの戦士が警告するほどのもの。
それはどういったものなのか。
好奇心に負けたロゥリィは地獄の箱を開けてしまった。
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竜司が開いた映像は日本が負け、そして世界でもっとも有名な戦争である、
第二次世界大戦とは、1939年9月から1945年8月まで、日本・ドイツ・イタリアの枢軸国*1とイギリス・フランス・中国・ソ連・アメリカなど連合国との間で起きた、世界的規模の戦争のこと。
もともとはドイツのポーランド侵入と、これに対するイギリス・フランスの対ドイツ宣戦により勃発したが、1941年12月に日本のアメリカ・イギリスとの宣戦により世界大戦に発展する。
後に、1943年9月にイタリアが、1945年5月にドイツが、1945年8月に日本が降伏してようやく終戦を迎えた。
六年という、小学校入学から卒業までというそれなりに長い時間の間に亡くなった人の数は、
全世界で言えば、軍人の死者数が約2000万人。
民間の死者数が約4000万人という一国の人間が丸々一つ死んでなお余りあるような、そんな死者の数だ。
これは全世界の死者数であって日本ではない。
では肝心の日本はどうなのか?
日本では、軍人が約200万人。
民間人が約80万人という、これまた膨大な死者数だ。
そもそも、なぜ第二次世界大戦が起きたてしまったのか。
多くのきっかけが複雑に絡み合っているのでまとめるのが非常に難しくなってしまうが、それでも要点だけに絞ると、下記のようになる。
1.アメリカがきっかけで世界大恐慌が起き、他国へも波及
2.なかでもドイツ、日本、イタリアは経済的に苦しくなる
3.ドイツは第一次世界大戦で背負った賠償金200兆の負債で首が回らない
4.ヒトラーは経済的要所であるポーランドの奪還を図る
5.ポーランドと安全保障条約を結んでいたイギリス・フランスがこれに対抗
6.第二次世界大戦、勃発
これらを解説していこう。
当時アメリカは世界の債権国となっていたこともあり、影響はアメリカ国内に留まらず、世界中に波及していく。
イギリスやフランスは、この危機を打開しようと「ブロック経済*2」を作ったのだ。
イギリスやフランスのように植民地を領有している国は問題なかったが、「そうではない国」はブロック経済に阻まれて、国際貿易ができずに経済的に苦しむことになりました。
ドイツや日本、イタリアがまさにその「そうでない国=経済的に窮地に立たされた国々」だった。
両国とも軍事力を使って領土を拡大することで、この問題を解決しようとする。
そう、植民地を得ることで自給自足を目指そうとしたのだ。
第二次世界大戦への道が決定的になったといわれているのが、1938年9月に行われた「ミュンヘン会談」だ。
ドイツが、ドイツ人が住民の多くを占めているチェコスロバキアのズデーテン地方を割譲するよう要求したのに対して、イギリス・フランス・ドイツ・イタリアの首脳が集まって会議を行った。
チェコスロバキアにとってズデーテン地方は、地下資源もあり工業地帯でもあることから自国経済の要であり、おいそれと譲れる場所ではなかった。
一方、「民族自決*3」を掲げるヒトラーにとって、ズデーテン地方をドイツに割譲することは理にかなったことだったのだ。
結果的にイギリスのチェンバレン首相による宥和政策*4により、ズデーテン地方はドイツに併合されたのであった。
この背景にチェンバレン首相が最大の敵をソビエト連邦と見ていたという事情があった。
ドイツや日本は、ソビエト連邦を抑えるために利用しようとしていたのだ。
一方ヒトラーは、イギリスがソビエト連邦を警戒している限り、自分の要求が通ると考えていた。
その結果は、予想通りであった。
この会議の問題は、出席者にもあった。
まず、当事者であるチェコ代表のベネシュ大統領*5が呼ばれていなかったことである。
フランスと相互援助条約を結んでいたにも関わらず会議に出席できなかったチェコは、フランスとの関係も解消してしまう。
ドイツにとって、チェコがフランスと手を切ったことは好都合であった。
そしてフランスと同盟関係にあったソビエト連邦も会議に呼ばれなかった。
ソビエト連邦最高指導者スターリンはフランスとの決別を決め、ドイツに接近していく。
これが後に独ソ不可侵条約に繋がっていくのであった。
当時まだ下院議員であった、後のイギリス首相チャーチルは、この知らせを聞いて第二次世界大戦は避けられないものになったと嘆いたと言われている。
そして、このミュンヘン会議によって、ドイツはポーランドにあるダンツィヒを奪い返そうとする。
これが直接的な原因となった。
ダンツィヒとは現在のポーランドにあるグダニスク(グダンスク)のことで、ドイツ語ではダンツィヒと表記される。
ここはバルト海に面している海港都市で、中世より繁栄していた。
19世紀にはドイツの貿易港となっていましたが、第一次世界大戦に敗北したドイツは、ヴェルサイユ条約によりダンツィヒを奪われ、事実上ポーランド領となっていました。
ドイツにとって、ダンツィヒはどうしても取り戻したい都市であった。
そこでダンツィヒ奪還のため、ドイツ軍はポーランド侵入をすることになったのである。
ヴェルサイユ条約でドイツは厳しい軍備制限下に置かれることになった。
これは第一次世界大戦で敗戦国となったドイツを押さえ込む目的でしたが、この厳しすぎる制限が逆にドイツの国家主権の侵害に当たると訴えるナチスの台頭に繋がり、ドイツは再軍備宣言をすることになるのであった。
そしてヴェルサイユ条約で、ドイツ領内なのに非武装地帯と定められていたラインラントに、ドイツ陸軍は軍隊を進駐させる。
ヒトラーは、「イギリス・フランスの事情を考えると反撃してくることはないのでは?」という「賭け」に出たのであった。
この予想が見事的中し、ヒトラーは国民の絶大な支持を得ることになる。
もしこの時、フランスがラインラントに軍を送っていたなら、再軍備したばかりのドイツ軍は負け、ヒトラーも失脚して第二次世界大戦は起こらなかったかもしれない、とも言われている。
ドイツは第一次世界大戦の敗戦国として、ヴェルサイユ条約において1320億金マルク*6の賠償金支払いを背負いました。
この賠償金完済がつい最近の2010年であったことを考えてみても、尋常ではない金額の賠償金であったことがわかります。
ドイツは第一次世界大戦の影響で国は荒廃し、経済状況も悪く、とても賠償金を払う余地はなかった。
そのため、賠償金支払い滞納を理由にフランスとベルギーは、ルール地方というドイツ西北部の炭鉱地帯でありヨーロッパ有数の工業地帯を占領してしまう。
これに対しドイツは、労働者が生産を行わないサボタージュを断行して抵抗した。
その結果、ドイツの生産力が低下してインフレーションが起こり、ドイツ経済は危機に瀕してしまう。
ドイツに救いの手を差し伸べたのはアメリカであった。
アメリカがお金を貸すことでドイツ経済の復興とイギリス・フランスへの賠償金支払いが可能となったのである。
これで上手くいくと思ったところに起きたのが、1929年の世界恐慌でした。
そして、ヴェルサイユ体制の崩壊も原因の一つだ。
ヴェルサイユ体制とは、「ヴェルサイユ条約」によって決められた、ドイツの封じ込めを目指す国際的体制のことである。
ヴェルサイユ条約の規定により、史上初の国際平和機構である国際連盟が作られ、世界の平和維持を目指しました。
日本は常任理事国となり、新渡戸稲造は国際連盟事務局次長を務めています。
しかしドイツは再軍備化を進め、1933年に国際連盟を脱退する。
日本も満州国からの撤兵を勧告されたことで国際連盟を脱退した。
また、植民地を増やそうとしていたイタリアも、諸外国の非難を浴びることになり、1937年に国際連盟を脱退したのである。
国際的に孤立を深めた日本・ドイツ・イタリアは日独伊三国防共協定を結び、枢軸体制が出来上がります。
ここにヴェルサイユ体制は崩壊したのです。
そうして始まったのが、歴史に名を深く刻んだ第二次世界大戦であった。
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「――とまぁ、こんな戦争が起きたんだよ。そして俺達のご先祖様は負けて、そこから学んだんだよ。戦争は碌なもんじゃねぇってな」
スマホを支えながら、画面を食い入るように見つめるロゥリィに自身の考えを言う竜司。
ロゥリィは、未知との遭遇による余韻から夢見心地のようであった。
座り込んだロゥリィはスマホを懐にしまう竜司に問いかける。
「……すごいわねぇ。こんな戦いが世界を巻き込んで起こったのよねぇ?」
「さぁ? 俺は戦争を凄いとは思っちゃいねぇがな。戦争なんてものはやらなきゃいいんだよ。世界の皆が手を取り合えたのならこんなことも起こらなかったかもしれねぇな。ま、それもまた夢物語」
「帝国との戦いかしら?」
「あぁそうさ。奴さんは俺達が平和に暮らしていたところを問答無用で攻撃してきて、結果、何百人もの人が死んだんだ。まったく……腹が立つことこの上ない」
憎々しげに指を鳴らす竜司の体から魔力が漏れる。
あまりの圧に全身の毛が逆立ったような感覚に陥るロゥリィ。
そんな竜司の姿を見つめながら、ロゥリィは不思議そうに言った。
「あなたならぁ指示も無視してぇ帝国に殴り込みに行けるのではなくてぇ?」
「……やろうと思えばできるだろう。だがやっちゃいけねぇんだ。俺達は過去を通して学んだんだよ」
「そうねぇ……愚問だったわぁ……」
今まで見せてもらった記録から、彼等はそんなことをするような人ではないと判断する。
そんなロゥリィは立ち上がり、踵を返して去ろうとした。
「どうした嬢ちゃん? まだ聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「あなたの話を聞いてぇ俄然聞きたいものがたくさんできたわぁ。でもぉ……」
引き留めようとする竜司の声に、振り返ったロゥリィはこう言う。
「気が立っている猛獣のようになってしまったあなたの傍に居たらぁ、喰い殺されてしまうかもしれないわぁ。というわけでぇ、話はまたの機会にさせてもらうわぁ」
「……そうか。気を遣わせてすまなかったな。道に迷うなよ」
竜司の心配する言葉に、後ろ手に手を振りながら別の場所に向かっていくロゥリィ。
一人残された竜司は懐から、タバコを取り出し、指先に点けた火によって先端を燃やし一服する。
「フゥ……俺も、まだまだだな……魔力が漏れ出ちまうなんて」
そう呟いた後、どこかへと歩き出す。
帝国の未来はどうなるか……
現時点では分からないままであった。
今回、第二次世界大戦の情報については、Rekisiruというサイトから引用させてもらいました。
やっぱ、政治って難しいですわ……。