異能力者 異世界にて、斯く戦えり   作:クラウディ

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会話メイン回





異世界への一歩

 

 

 

 

 

 某月某日

 

 本来なら見るはずのないであろう戦車が、キャタピラ音を鳴らし、東京の街中を通過していく。

 それも一台だけではなく、「どこへ戦争をしに行くつもりだ?」と言いたくなるような量だ。

 

 そんな戦車の軍勢に守られるようにして進む数台の装甲車。

 その中では、こんな会話が繰り広げられていた。

 

「なぁ……」

「どうかしたか……? トイレは我慢しろ」

「違ぇよ! ……今回の派遣ってさ総司令だけじゃなくて、表のお偉いさん方の意向も含まれてるんだろ?」

「そうだね。で、それがどうかしたの?」

 

 一番最初に口を開いたのは、それなりに筋肉質であり、高校生の平均身長より少しだけ低い男。

 彼は周りの者と比べると、非常に軽装と言える服装を身に纏っていた。

 具体的に言うと、他の者達が作業服に装飾を追加したような衣服を着ているのに対し、その男は半袖で黒一色のジャケットに同色のカーゴパンツ。

 そして、服によって覆われていないところは、黒いタイツのようなもので覆っていた。

 

 そんな男は、頭上で腕を組みながら仲間達に疑問を投げかけていた。

 そこには緊張感の欠片もなく、むしろつまらないと言わんばかりの雰囲気を漂わせていた。

 

「な~んで、俺達も出ることになったのかな~、って思ってさ。こんな装甲車の中に押し込めて」

「…………あなた、聞いてなかったの?」

 

 男が質問を投げかけると、それを聞いた対面に座っている女が頭を抱えながら聞いてくる。

 それに対し、男は首を傾げながら口を開いた。

 

「? 何の話だ?」

「………………ハァ~…………………………」

 

 男のアホとしか言いようがない言葉に、キョトンとした後、呆れたように非常に長いため息を吐く女。

 何故なら、

 

「先ほど最終確認をしたでしょ? まさか聞いてないなんて言わないでしょうね?」

「最終……確認……?」

「ハァ~………………」

 

 男はそもそも話を聞いていなかったようだ。

 何のことだか分からないと言わんばかりに、先ほど以上に首を傾げて反芻する男。

 また、長いため息を吐く女。

 

「いいですか〝城之内〟? 我々は異世界へと向かっています。これぐらいなら分かっていますよね?」

「おう知ってるぞ。ってか、〝皐月〟。俺がそこまで馬鹿だと思ってるのか?」

「思ってるから言ってるんですよ!」

「どわぁ!?」

「ぐぇっ!?」

 

 何故か自信満々に自分のことを馬鹿ではないと胸を張る男――城之内(じょうのうち)和孝(かずたか)に、身を乗り出して怒声を上げる女――藤井(ふじい)皐月(さつき)は体を固定するために着けていたシートベルトを引き千切らんばかりにキレていた。

 それを受けた城之内は驚いて、手足をばたつかせながらから横に倒れ込む。

 その所為で横に寝転がっていた男性の顔にのしかかってしまい、男性がカエルの潰れたような声を上げて立ち上がった。

 

 その男性の身長は少し小柄な城之内より頭二つ分ほど高く、この場にいるメンバーでは二番目に身長の高い人物だ。

 

「なんだなんだ!? 敵襲か!?」

「あっ、おはようございます〝春日〟さん。ぐっすりでしたね」

「……おはようございます春日さん。そこの馬鹿をとっちめていいですよ」

「おう! おはよう皐月! そしてやっぱりお前か城之内!」

「ギャー!?」

 

 起き上がった男性――春日(かすが)紀仁(のりひと)は、藤井の言葉を聞いてすぐさま城之内の頭へアイアンクロ―を食らわせる。

 車内が騒がしくなってきて所為で、もう一人眠っていた人物が目元を擦りながら、起き上がった。

 

 その人物は、この場にいるメンバーと比較して一番背が低く、藤井と同じく女性である。

 しかし、その少女の面影は紀仁とどこかに通っていた。

 

「うるさい……静かにして……」

「ご、ごめんよマイシスター! 騒がしくしちゃって! ほら、お前も頭を下げろ城之内……!」

「ぐっ、す、すみませぇん……〝花音〟さん……」

「…………それでいい。じゃ、もう一度寝るから……」

 

 そう言って横になったかと思えば、十秒後には寝息を立て始める少女――春日(かすが)花音(かのん)の姿を見て、一同はほっと一息を吐く。

 男連中が明らかに年下の女性(片方は兄妹関係)に頭を下げることの情けなさと言ったら……

 

 その様子を見て、またため息を吐いた藤井は耳元に手を当てた。

 すると、彼等の脳内で声が響く。

 

(仕方ありません……本当のところを言えば、すぐさま説教をしたいところ……しかし、花音さんを怒らせてはいけないので〝念話〟を使います)

(OK……流石に、ぶっ飛ばされたくねぇからな。真面目に聞くよ……)

(了解……マイシスターの睡眠を邪魔したくはないからな(マイシスターの寝顔……最高です……!))

(おい、この人余計なこと考えてるぞ)

(お前等……ちったぁ真面目にしろ。あと五分程度で目的地に着くぞ)

(((!!)))

 

 彼等が脳内で会話を開始すると、彼ら三人以外の声が脳内で響いた。

 その声の主は、彼等の乗る装甲車を運転する男である。

 装甲車のハンドルを握る男――山内(やまない)竜司(りゅうじ)は、今年五十歳の初老の男性だ。

 しかし、その体には衰えなど存在しないかのように、ハンドルを握る腕は丸太のように太い。

 その姿は、まるで某コマンドーのように、「若い頃はドンパチやっていたのか?」と言われそうなほどマッチョだ。

 目元にはサングラスを装着し、某親指を立てて溶鉱炉に沈むサイボーグのようにワイルドな服装で身を包んだ様は、一流の戦士のようだった。

 

 竜司が五分と言った瞬間、後部座席にいた全員が準備をし始める。

 

 城之内は、座席の下に置いていた黒一色で染められたゴツい見た目のアタッシュケースを引っ張り出し、取っ手付近についていたボタンを押しこむ。

 すると、そのアタッシュケースは発光し、バラバラになったかと思えば、某アメコミの戦う社長が着るロボットスーツのように体のいたるところに装着されていく。

 やがてできたのは、人体の急所と関節を守るように装着されたアーマーに、指先から肘までを覆う機械的なグローブであった。

 だが、さっきのアタッシュケースのどこにそんな容量があるんだと言わんばかりに、物理法則を無視したゴツいアーマーも追加で装着されていく。

 結果できたのは、どこぞのEDFの重戦士よりかは薄い装甲を纏った城之内が立っているという状況だ。

 そんな城之内は、拳を握ったり開いたりして動作に不備がないか確かめていた。

 

 藤井の方も同じように座席の下から取り出したアタッシュケースのボタンを押しこんで、変形させている。

 できたのは、城之内と同じく急所と関節を守るように装着されたアーマー。

 そして、城之内のようなグローブではなく、少し大きめのハンドガンに取り回しやすいように改造されたサブマシンガンであった。

 こっちは城之内とは違い、過剰と言ってもいいような装甲はなく、動きやすさにステータスを振った装備だった。

 藤井も、銃を分解し、パーツに不備がないか確かめていく。

 

 紀仁も先にアタッシュケースを起動した二人と同じように装備していた。

 しかし、先の二人のように急所を守るところは変わってないが、関節を守るアーマーは最低限に減っていた。

 そんな紀仁の装備は腰に提げられた四角い矢筒のようなもの。

 だが、入ってるのは矢ではなく何本か剣の柄が見えた。

 しかも、刀のような柄ではなく、西洋剣のようなものでもない。

 紀仁は、そんな剣を矢筒から取り出し、状態を見ていく。

 紀仁の持つ剣には鍔がなく、形容するなら長い投げナイフとも言うべきものだった。

 

 一般人が見れば目を見開くそうな光景を作りだす城之内達。

 何故、このような光景を作りだすことができているのか。

 それには理由がある。

 

 彼等は〝異能力者〟と呼ばれる者達だ。

 詳しい説明は省くが、要は特殊な力が使える者達と思ってくれればいい。

 本来なら、秘匿されるべき能力の行使を車内とはいえこんなに堂々としているのは、最近、彼等の存在が世間に知れ渡ってしまったからだ。

 こちらに関しても省かせてもらう。

 

 各々が、調子を確かめ終わったところで、竜司が提示した時間まで残り三分となった。

 もう、目の前には異世界へつながる(ゲート)が見えていた。

 城之内達は、それぞれ装備を着込んだ状態で座席に着き、会話を再開し始める。

 もちろん、口を動かさない〝念話〟というものでだ。

 

(で、俺達は何をしに行くんだ? 侵略してきた奴等の国を潰しに行く……なんてことはねぇよな?)

(ええ。そんなことをしては相手と同じことをしているんですよ。そんなこと、戦争を禁止した我が国がするわけありません)

(だろうな。ま、一応聞いただけだよ)

(本題はそこじゃねぇだろガキ共。時間が無い。藤井、話してやれ)

(分かりました)

 

 城之内の推測を否定した藤井に、運転席の竜司が話を急かせる。

 残り三分という時間で今回の出来事を話すには、少し時間が足りないと思ったからだ。

 

(我々の目標は、件の侵略の際に相手国に誘拐されてしまった人命の救出です。その際、様々な障害が発生するだろうことを見越して、我々異能力者が動くことになりました)

(ワイバーンとかゴブリンとかのファンタジーな生物と戦うんだろ? それなら任せろ!)

(話を最後まで聞け坊主。事はそう簡単に終わらねぇんだよ)

 

 自信満々に拳を握ってやる気を見せる城之内を一喝する竜司。

 そのまま、竜司が藤井の話を引き継いで話を続ける。

 

(相手の国がこの世界で言うところのどの時代に当たる生活基準なのか知って、その国から今回の件の賠償金を払わせる。その際、あわよくば同盟を組んで資源の貿易を行おうとしている……ってのが、お国の連中が考えているところだろう。だが……有識者達による情報交換で分かったことから察するに、相手国の生活水準というか、論理感というのは中世ヨーロッパレベルだろう)

(それって……どういうことだ?)

(要するに、今の常識が通用しないということですよ。殺しはダメとか、戦争はダメとか)

(なるほど……)

 

 竜司の説明によく分かっていなかった城之内が、藤井の説明で納得いったように左手の掌に右拳をあわせるという「理解した」の古典的な表現方法をする。

 

(それに言葉もよく分かっちゃいないからな。俺達異能力者は念話の応用で相手の言ってることが分かるが……今回の派遣はあくまで自衛隊さん方メインだ。それなりに時間はかかるだろうな)

(へ~)

(んで、今まで言ってきたのは、自衛隊さん方もやることだ。こっからは俺達がメインになる行動だ)

 

 そう区切った竜司は、ドリンクホルダーに置いていたコーヒーに手を伸ばし、一口含んでから言葉を続ける。

 

(俺達がやるのは、この世界とお相手さんの世界を繋げた原因を突き止め、世界間の繋がりを断つ。もしくは、自由に開閉できるようにするってのがメインだ)

(え? それはどういうことなんだ?)

 

 今まで自分に用はないからと、妹の寝顔を楽しんでいた紀仁が疑問を投げかける。

 それに対し竜司は肩を竦めながら言った。

 

(さぁ? さすがの俺でもそこまでは分からん。俺達は命令されただけだ。聞きたいなら総司令にでも聞け)

(おっさんでも知らないのか……)

(それでも、情報はありがたいです)

(気にすんな。……っと、そろそろ見えてきたぞ)

 

 そんな声が響くと同時に、全員の気が引き締まる。

 まるでピリピリとした気配が車内に満ちて、眠っていた花音も起きてくる。

 

「お兄ちゃん……時間なの?」

「おう、もうすぐ着くってさ」

「ん、分かった。すぐに着替える」

 

 そう言って、他の皆に大きく遅れながらも、皆と同じようにアタッシュケースを取り出す花音。

 発光したアタッシュケースは花音の体を包み込み、鈍く輝く装甲を作りだす。

 しかし、出来上がった装甲は、大部分をコートのようなものに回しているからか、少し貧弱そうに見えた。

 だが、それでもちゃんと急所を守り、体の動きを阻害しないように設計されているようだ。

 コートを構築した後、最後に残ったパーツが手に集まり、見るも凶悪なバズーカを構成する。

 花音は、そのバズーカをトンファーのように構えて、ポーズを決める。

 

「むふ~……」

「相変わらず、物騒な武器だな」

「なんだと!? 貴様、マイシスターの装備を馬鹿にするのか!?」

「黙ってください紀仁。大丈夫ですか花音?」

「大丈夫……たくさん寝たから……」

「そうですか……なら、期待してますよ? あなたの火力は凄まじいものですから」

「分かった……お兄ちゃん、うるさい」

「ぐはぁっ!? そ、そんなぁ……マ、マイシスタァアア……」

「うっわ、スライムみたいになっていく……」

 

 和気藹々とする車内。

 これが今から戦場へと向かう者達の空気だろうか。

 

 そんな時に、竜司から一喝が入る。

 

「お前等、騒ぐのもいいが目的地まであと三十秒だ」

「「「「!!」」」」

 

 和気藹々とした空気を作りだしていた四名が、すぐさま自身の武器を手に取り、後部の扉から出られるように構える。

 そこには、戦士の顔をした者達が立っていた。

 

 気づけば、装甲車がいるのはドームの中。

 車両の前方には先行している大量の戦車と、異世界が見える。

 

「……さて、お前等には言っておくべきことがある」

 

 コーヒーを飲み干し、空になった缶を握りつぶした竜司は、臨戦態勢へと入った城之内達に告げる。

 

「命令は三つだ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ不意を突いてぶっ殺せ。あ……これじゃ4つか。とりあえず死ぬな、それさえ守れば後は万事どうにでもなる」

「……それ、あのゲームのセリフですよね?」

「あぁ、そうさ。俺みたいないい男が言うと様になるだろ?」

「同感、っと……」

 

 ドームの名かという長い一本道を通り、遂に異世界へとたどり着いた城之内達。

 すぐさま、後部のドアを開いて指示されていた持ち場へと移動する。

 

 一人残された竜司は、誰もいなくなったことでようやく吸えるようになった煙草をくわえ、指先から火を灯し、タバコに火をつける。

 一度大きく吸い、肺を煙で充満させ、吐き出していく。

 まだ夜明け前の空に、紫煙が昇っていく様を見ながら、竜司は独り言ちた。

 

「ハァ……奴さんもどえらいもんに手を出したな。柊木が切れるなんて相当だぞ?」

 

 その間にも朝日は上っていき、敵達を照らしていく。

 そこには、異形の者達が大勢いた。

 それを見て、自衛隊の者達も迎撃の構えを取っていく。

 

 それを他人事のように見つめる竜司は、こちらへと向かってくる異形の者達に対し、心の中で念仏を唱えていた。

 

「この世界には魔法があるんだってなぁ……それにファンタジーな生物も」

 

 頭上で腕を組み、これから始まる戦闘という名の蹂躙を頭の中で浮かべながら、言葉を続けていく竜司。

 

「だけどな……」

 

 それは、思いのほか早く実現される。

 

「それはあんたらの専売特許じゃねぇんだわ」

 

 次の瞬間、

 

 銃弾と魔法の雨霰が、異形の者達へと降り注いだ。

 

 

 これが、日本の自衛隊と異能力者が異世界に来て、初の戦闘。

 

 

 そして、波乱の始まりであった。

 

 

 

 

 







今回登場した城之内達は、主人公ではありません。
強いて言うなら、「主人公の中の一人」で言ったところです。

これからもいろんな人が登場するため、主人公を一人に絞ると書きづらくなるんじゃないかと思ってこのようにしました。

さぁて、お相手さんの度肝を抜いちゃうような文章を書けるように頑張るぞ!


登場人物紹介

城之内(じょうのうち)和孝(かずたか)

 決してポンコツではない。
 だけどバカ。
 能力は筋力強化系の能力。
 装備は地球防衛軍のフェンサーみたいな装備(銃とか使わない)。


藤井(ふじい)皐月(さつき)

 苦労人二号。
 眼鏡を掛けている。
 頭のいい優等生
 能力は解析系の能力。
 装備はサイバーパンク風味な作業服(語彙力が足りないせいでこんなことしか言えない)


春日(かすが)紀仁(のりひと)

 シスコン。
 妹命。
 投擲の達人。
 能力は視力強化。
 装備はサイバーパンク風味の作業服(語彙力が足りないry)


春日(かすが)花音(かのん)

 よく寝ている。
 無気力系女子。
 その癖に武器はバズーカ。
 能力は構築系の能力。
 装備はロングコートに胸や関節に装着されているアーマー(語彙力がry)とバズーカ(ベヨネッタみたいに使う)





 次回は伊丹視点から行こうと思う


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