アンケート結果から、書いてほしいとのことで書きました。
ここは、とある平原。
起伏もなく、周囲に風を遮る障害物など有るわけがない。
点々と浮かぶ小さい雲が見えるただひたすらに青い空の下、短く生えた草が風に揺られて波を作りだしている。
しかし、そんな現象が起きていたとしても、この場所は些か殺風景すぎた。
実はこの世界は地球のどこかにある場所ではない。
これは魔術的なものによって作られた人工的な世界なのだ。
そんな場所に、数十人の男女がいた。
彼等を目に見える範囲で判断するなら、各々が様々な国から来たのであろうことを表すように、それぞれ特徴的な服を身に纏っている。
作業服を身に纏う者、シスター服を身に纏う者、甲冑を身に纏う者……等々。
一見、コスプレ会場か? と疑ってしまうような者達がいるさまはどこか周囲の環境も合わせて浮いていた。
世界に存在する国から一人一人ランダムに選ばれたのかと言える彼等は、思想もバラバラであろうことがうかがえる。
しかし、
「皆ごめんね~。今回付き合わせちゃって~」
それは平常時ならばの話だ。
彼等がそろって見つめる先には、一人の男――
魔術師のようなフード付きコートに、黒い杖を突いた柊木が、まるで世間話をするかのように話しかけてくる。
そこには緊張感の欠片もなく、ただの会話だと思っているであろう気配が感じられた。
柊木を除いた全員がそんなことを思ってられないほど
そんな時、その場全てに響くような声が聞こえた。
『兄さん。聞こえてますか?』
「う~ん……大丈夫だよ〝
『分かりました。皆様の準備はよろしいでしょうか?』
そんな声が響く中、その声の主と会話をしていく柊木。
やはりそこには緊張感の欠片もなく、ただ親しいものとの会話だけがこの場に響く。
そもそも何故、彼等がこんな場所にいるのか?
それは、ある事を行うためなのは今更言わなくても分かるであろう。
「みんなの方も大丈夫そうだし始めようか」
彼等は戦いに来たのだ。
柊木真対その他全員で。
『それでは、審判を務めます、柊木真の妹、
虚空から聞こえる声の主は、どうやら柊木の妹のようだ。
そんな彼女の声が響くと同時に、全員が構える。
ピリピリとした殺気が漏れ出し、場の緊張感を高めていった。
自身が持つ武器を抜き放つ者もいれば、周囲に魔法陣を浮かび上がらせる者もいる。
明らかな戦闘態勢だ。
しかし、
「ふんふふ~ん♪」
それでも柊木は鼻歌を歌いながら杖を回して戦闘態勢など摂っていないように見える。
『カウントダウンを始めます。10…9…8…7…6…』
そんなことを思ってる間にも、結がカウントダウンを始める。
『4…』
これより始まるのは、世紀の大決戦。
その一部始終。
『3…2…』
神話ともいえる伝説が、
『1…』
今、始まる。
『0』
瞬間、世界が赤く染まった。
何が起こったか。
それは、先ほどまで何の構えもとっていなかった柊木が、目にも止まらぬ速さで杖を向けたかと思えば、その杖の先から膨大な熱量の光線が放たれたのだ。
その威力は今起こっている状態が物語っている。
平原を覆っていた草は一瞬にして燃え上がり、その光線のあまりの明るさに、周囲が夕焼けのように暗くなっていた。
時間にしてわずか五秒と経たずに引き起こされた災害にさらされた者達は、しかし、
「ジャアッ!!」
諦めてなどいなかった。
攻撃にさらされた先にいたであろう一人が、いつの間に移動していたのか音速を軽く突破するような速度で横から急接近してくる。
その人物は蒼い光を纏い、殴り掛かってきていた。
このままでは無防備に受けることになってしまうであろう柊木は、杖を構えたまま棒立ちしている。
それは何故か。
答えは簡単だ。
光を纏った人物の速度が速すぎるからである。
例えるなら、音速を超えて飛翔する弾丸。
例えるなら、軍隊が使用する戦闘機。
例えるなら、我々を見下ろす宇宙を高速で翔る流星。
残光を残しながら疾走する様は、まさしく流星のようであった。
が、
「さっすが! 世界最速の名は伊達じゃないね
「そんな俺の速度に追い付くアンタの方もおかしいがな!」
「割とギリギリだったよ? 彼方君ってすごく速いからさ」
空いていた腕を向けられ、そこから展開された複数の魔法陣によって簡単に受け止められてしまう。
それでも、展開されていた魔法陣の何枚かは破壊され、粉々になっていた。
そこから察するに、先ほどの拳は絶大な威力を秘めていたのだろう。
実際、拳が直撃した反動で、地面が少しめくれあがっていた。
しばらく、金属の擦れ合うような音を響かせながら拮抗していたが、蒼い人物が引いたことでいったんは終わる。
しかし、すぐさま加速した青い人物――彼方はまたも急接近して、今度は連撃を加えていく。
先程の一撃を重視したような攻撃ではなく、手数を考えたラッシュを叩きこんでいった。
ガラスの割れるような音を立てて魔法陣が砕かれていくが、すぐさま新しい魔法陣が展開されて拮抗状態は変わらない。
「おお! 更に速くなっていくのか! 君に限界はないねぇ!」
「だったら一発くらいは食らってくれねぇかな!」
「そうしたら負けちゃうじゃん。というか、一発はいつも食らってるでしょ?」
「防御完璧でノーダメージなのを食らったとは言わねぇんだよ!」
そういうやり取りをしながらも、状態は変わらない。
むしろ、魔法陣の生み出される速度が上がってきているからか、彼方の方が不利になっていく。
そんな状態であろうとも、彼方は不敵に笑う。
そして、愚痴を吐きながらラッシュをしていた彼方はある事を言う。
「なぁ、なんで俺がこんなぺらぺら話しているか分かるか?」
「もっちろん! 君がこんなに話すとしたら――」
分かったように言葉を続けようとした柊木に影が差す。
「時間稼ぎ以外の何物でもないよね!」
「ごめんね柊木ちゃん!」
そこにいたのは巨大な戦鎚を振りかぶっている女性だった。
瞬間、大爆発が起きる。
先程の彼方が引き起こした衝撃による被害程度ではない。
まさしく膨大な爆薬が瞬間的に爆発したかのように地面は隆起し、岩盤がめくれ上がった。
土が雲を突くほどに舞い上がり、傍目から見ればそこから瞬時に山が生えてきたかのようだと感じられた。
地中にあったであろう岩石が大地に降り注ぎ甚大な被害をもたらすが、周囲に建物など有るわけがなくただ大きな音を立てるばかりである。
先ほどまで放たれていた熱線も、柊木が土煙に隠れてしまった瞬間から途切れている。
そんな爆心地とも言うべき場所から少し離れた場所に彼方と戦鎚を担いだ女性が降り立つ。
「手応えはどうっすか〝藤原〟先輩!」
「うぅ~ん! ダメだと思う~!」
「ですよね! 知ってました!」
「もうちょっと期待してくれてもいいのにな~!」
そう状況を確認する彼方と戦鎚を担いだ女性――藤原は、警戒心を緩めることなく爆心地を見据えた。
今もなお、もうもうと煙の上がる爆心地から誰かが出て来る。
「いや~、さっきのは結構危なかったね~。まさか転移術式を使って上空に転移させての、そこから落下による加速の乗った一撃を藤原君に決めてもらうなんてね!」
そこにいたのは、無傷の柊木だった。
着ている服には一切のほつれが見当たらず、先ほどの攻撃は回避されてしまったことが分かる。
相手の強大さに思わず息を呑む二人。
戦いは始まったばかりだ。
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さて、いきなりの連続に理解が追い付いていない者達もいるだろう。
そんな者達の為に解説だ。
そもそも彼等は普通の人間ではない。
彼等は〝異能力者〟と呼ばれる者達なのだ。
詳細は省くが、分かりやすく言うなら「魔法などが使えるようになるための改造手術を受けた超人達」といえば分かりやすいだろう。
そんな彼等は、常人離れした力を持っている。
柊木が最初に撃った熱線に攻撃を受け止める魔法陣のようなもの。
彼方の音速を越えた移動速度に、藤原の戦鎚を振り回せるほどの凄まじい筋力等々……。
そのように常人じゃできないであろうことを成せるのが〝異能力者〟というのだ。
彼等は、フィクションであるような力を使うが、それらの中の一部のように異能という力を自由に使っていいというわけではない。
それは何故か? 理由は簡単だ。
彼等は国に属する軍隊なのである。
そんな彼等が異能を無暗に使ってしまってはいけないのは当たり前のこと。
そして、異能というものは武器なのだ。
それもそこらのオモチャ以上に殺傷能力のあり、機械なんかでは探ることのできない武装解除も出来ないそんなもの。
それを行使するのは、武器を振り回すことと同意義だ。
もっとわかりやすく言おう。
同じ銃を持つ者でも、警察と犯罪者では訳が違うといえば分かりやすいか?
彼等は異能という超常の力を行使する存在であり、とある存在や異能を悪用する犯罪者と戦う兵士でもあるのだ。
警察が町中で発砲してはいけないように、異能力者も緊急時以外は異能を使ってはならない決まりとなっている。
さらに言うなら、異能の力を秘匿しておきたいからという理由もある。
異能の力は前述したように非常に強力だ。
そんなものをテロリストが手に入れてしまったと考えてみよう。
答えは簡単。
そこらで死人が出る地獄へと、いつ変わるのか分からない恐怖の世界が出来上がる。
だからこそ、異能力者達は異能のことを秘匿し続けるのだ。
世界を、人々を守るために。
前置きはさておき、本題に入ろう。
何故、彼等が戦っているのかについてだ。
異能力者とは兵隊である。
日本の分かりやすい戦力という意味では自衛隊というものが存在する。
そんな彼等と同じようなものであるならば、非常時には戦闘を行い、負傷者を助けるといったことをしなければならない。
自衛隊の者達も他とは一線を画すような訓練を行っているが、異能力者達はその比ではない。
――ところで、君達は山のように巨大な竜と戦うことになったらどうする?
相手は強大で、歩みを進めるだけでも地震が起きる。
攻撃をしようにもまるで痒みすら感じていないかのように歩みを進める竜。
立ち向かおうものなら、たちまちその巨体で踏みつぶされてしまう。
そんな存在に遭遇してしまったら、普通は逃げるべきだ。
――だが、その先に守るべき存在があるとしたら?
ならば、命を賭して戦わなければならないだろう。
こういうのは異能力者の間でも稀なケースだが、それでも異能力者として生きているのならば様々な困難が誰にでも訪れるはずだ。
だから、異能力者はそれらをはねのけるために事故を研鑽する。
それが、彼等のやっている〝模擬戦〟。
それも、数多くいる異能力者の中でも上澄みである〝特級〟と呼ばれる者達と、〝最強〟と呼ばれる男たった一人の
――〝特級〟
それは、異能力者の中でも最高位に位置する者達しか与えられない栄光。
ある者は人望から。
ある者はその速さから。
ある者は傷を治すという能力を持っていたことから。
ある者は山のように大きい竜を沈めたことから。
ある者は伝説の後継者であることから。
ある者は人類の歴史を大きく発展させるほどのものを作りだしたことから。
――ある者はその圧倒的な強さから。
様々な理由で選ばれるが、個人個人が常識を超えた実力を持っていることから、〝特級〟の者達を総じてこう呼ぶ。
――「異能力者の最高戦力」と。
そんな彼等も日頃の研鑽は怠らない。
最速と呼ばれた者は、遠方へ自身の足を用いた物資の運搬を行い、傷を癒せる者は積極的に負傷者の治療を行いつつもその現場の緊迫さへ慣れる。
だが、戦闘に特化した者達はこれらのことができないのだ。
だからこそ、そんな者達の為にこうした模擬戦を開催したりするのである。
これで解説はいったん終わりだ。
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「痛たたた……おっとっと……危ない危ない……」
「だぁっ、くっそ! ひょいひょい避けんな!」
現在の状況を見てみよう。
未だ、柊木と彼方の攻防は続いており、彼方の怒涛の連撃を柊木が紙一重で避けていた。
縦横無尽に駆けまわり、周囲から空気の壁を突き破るほどの速度で攻撃を仕掛けてくる。
もはや、速すぎて見えているのは残像だけかもしれない。
そう思ってしまうほどに、彼方は速かった。
しかし、そんな攻撃を回避している柊木は大分余裕そうで、反対に彼方は息が上がっている。
実はあれから一分ほど時間が経っているが、彼方は一撃もクリーンヒットさせることができず、そして余裕そうな柊木に苛立っていた。
無理もない。
柊木は口では焦っている風に言っているが、実際はギリギリに避けていることを楽しんでいるようにすら感じられるからだ。
息が上がっているとはいえ、その技のキレは落ちておらず、むしろキレが増しているとすら思える彼方の攻撃は、例えるとするならもはや〝雨〟である。
絶え間なく降り注ぎ、地面を濡らす雨。
それほどの攻撃をしているのに、相手は余裕どころか舐めているように感じられる。
ちょっとキレてもいいだろうに、そこは彼の人柄か。
自身が未熟だと思い、後から鍛え直そうと考えていた。
そんな時、横合いから攻撃が飛んでくる。
ドドドッという音と共に、無数の弾丸が飛んできたのだ。
「じゃあな柊木さん! 穴だらけになるなよ!」
攻撃が来るのを事前に察知していたかのように、彼方はすぐさま撤退して攻撃の射線上に入らないようにする。
遮蔽物がなくなった弾丸は、柊木へに向かって直進していった。
このままでは、柊木が出来の悪い穴あきチーズのようになってしまうだろう。
しかし、その程度でやられてしまうのなら、誰も彼を〝最強〟と呼びはしないだろう。
「良い攻撃だ!」
弾丸を放ってきた元凶に向かって、賞賛を送りながら杖を振るい弾丸を叩き落としていく柊木。
木製であるはずの杖は、柊木の膨大な魔力によって鋼鉄すら凌駕する硬度を持っていた。
そんな杖によって難なく弾き落とされていく弾丸の群れ。
しかし、杖一本だけでは弾ききれない弾丸もあったが、それは先ほどから防御に使っていた魔法陣を的確に移動させることで防ぎきる。
明らかに人間離れをした動きをしている柊木だが、彼をよく知る者達や、現在柊木と相対している者達が見たなら、「まぁ、柊木だし」というだろう。
「フッハハハハハハハハハハ!!」
柊木が弾丸を叩き落としていく最中、弾丸の飛んでくる方向から高笑いが聞こえてくる。
そこにいたのは、メカメカしい服と武器を装備をした初老の男性だった。
そのメカメカしい装備のほとんどは銃で、どこのコマンドーだと言いたくなるような有様だったが、科学者のような白衣を着ているため、どちらかというとマッドサイエンティストというべき姿だった。
そんな男性は、どこからともなく飛んでくる弾丸を防ぎ続けている柊木の姿を見て思いっきり破顔したかと思うと、声高々に口を開く。
「フッハハハハハハハハハハ!! どうだ柊木!? お前の障壁と身体強化による硬質化した肉体を粉砕するために開発した特製の徹甲弾、その改良版だ! 存分に味わえ!!」
「なんてもんを作りだしてるんだよ
その男性――北見はそう言った直後、自身が身に纏っていた武装を抜き放ち、これまた柊木を襲っている弾丸のように雨霰と乱射する。
弾切れなど存在しないかのように無尽蔵に放たれる弾丸は、雨なんて生易しいものではない。
だが、そこに狙いを定めるなど考えておらず、ただばら撒いているだけだった。
しかし、それが脅威である。
「!? マズいねぇ!?」
自身が振るっている杖を見た柊木が焦りの声を上げる。
何故ならば、その杖がボロボロになっていたからだ。
先に言った通り、柊木が膨大な魔力を込めたことで杖の強度は鋼鉄を凌駕している。
それなのに、杖には傷が入るどころか損傷し始めていた。
このままだと、後数十発で杖は圧し折れてしまうだろう。
それはマズいと思った柊木は、弾丸を魔法陣に任せて、足元にまた魔法陣を浮かび上がらせる。
「ぬ!? 逃げる気か!?」
北見の発言から察するにおそらく転移する術式。
撤退されてはマズいとさらに濃密になっていく弾丸の雨。
その弾丸は確かに障壁を割っていくが、一枚で駄目ならと複数の障壁で防いでいく。
普通の異能力者なら、数十枚の障壁を展開するだけで魔力切れになるが、柊木は一向にその気配が見られない。
やがて魔力が高まり、魔法陣は起動してその場から柊木の姿が搔き消えた。
柊木が現れたのは、そこから少し離れた場所。
最初に藤原が放った一撃により地面が隆起したからか、平原だったそこには高低差のある地形が発生した。
そこの陰で腰を下ろし、一息つく柊木。
「ふぅ……危な――」
「シィッ!!」
「――いねぇ!?」
だが、目の前に突然現れた男が殴り掛かってきたことで一時の休憩は中断される。
現れた男の攻撃によって、先ほどまで柊木が座り込んでいた場所は粉々に砕かれた。
「……外したか……」
「あっぶないなぁ!? あの時の純粋さはどこ行っちゃったの〝
柊木に〝黒井〟と呼ばれた男は、拳を二、三回握ったり開いたりして感触を確かめた後、非常に残念そうに呟く。
それに驚愕しながら言葉をぶつける柊木。
「……眠いんで……無理だろうと思うけど、勝ちに行かせてもらいます……!」
「うわわっ!?」
そのまま問答無用で殴り掛かってくる黒井。
それを尻もちをついた状態から立ち上がって、防御していく柊木。
黒井の攻撃には、彼方のような速さや藤原のような威力はないが、柊木の的確に急所を狙っていく。
眉間、鼻、顎、胸、鳩尾、等々……攻撃箇所の選択には迷いがなく、そして容赦がない。
「うわっ!? ちょ!? ちょっとタイム!?」
「待つわけないでしょ……!」
焦りの余り中断を求める柊木を無視して殴っていく黒井。
「! チッ!」
「へ?」
だが、黒井が舌打ちをしたかと思うと、今度は柊木ではなく黒井の姿が搔き消える。
柊木は思わず呆けてしまった。
その直後、黄金に輝く光の剣がその場を薙ぎ払った。
「えあっ!?」
横っ飛びに回避する柊木のすぐ横を、光の柱というべき巨大なものが通り過ぎる。
そこに込められた威力はすさまじく、母なる大地が削り取られていた。
もし、柊木がその場にいたなら、障壁を張っていても無事では済まないはずだということが分かるほどに、その傷跡は深かった。
「ヒェッ……」
怯えたような声を出し、冷や汗を流す姿には最初の時の威厳などなかった。
そんな柊木の傍に誰かが降り立つ。
それはヨーロッパ系の顔立ちに輝くような金髪を持った少年であった。
その少年は柊木の姿を見ると、心底残念そうに言う。
「あ~あ、外れちゃった……」
「ブ、〝ブライト〟君!? 君、師匠になんてことを!?」
「師匠云々は今は関係ないでしょ? それにこのやり取りいつもやってるからっ!」
「待ってぇ!?」
そう言うや否や、手に持った黄金に輝く剣を振って柊木を攻撃するブライト。
だが、先ほどより精神的安定を取り戻したのか、切りつけてくる剣を的確にさばいていく。
「待って待って!? なんで今日はこんなに攻撃が苛烈なの!?」
そういう柊木は、何が起こっているのか分からないと言った顔をして、ブライトに問いかける。
そんな柊木に、ブライトは額に青筋を浮かべると、こう言った。
「分からないん、ですか!? あなたがっ! この間っ! 起こしたことのっ! 所為でっ! 僕達はっ! 焦ったんですよぉ!」
「えぇっ!?」
怒りのままに剣を叩きつけるブライト。
柊木の脳内は疑問符でいっぱいだった。
「分からない? その様子だと分かっていませんよね? じゃあ言ってやりますよ!」
鍔迫り合いをしながら怒声を上げたブライトはキレ気味に捲し立てる。
「この間ご友人と会食に行かれましたよね? それは良いんですよ? 別に友人と食事に行くなというほど仕事があったわけではありませんし、金銭に関してもあなた自身が稼いできたものなので文句はありませんよ……。ですがぁ! 何故! 異能を! 行使したん! ですかぁ!!?? それもっ! 見られているっ! 可能性がっ! ある場所でっ! 行使するなってっ! 言われてるのをっ! 覚えていらっしゃられないんですかぁ!!??」
「ぬおっ!?」
ブライトが鍔迫り合いから一気に押し込んで柊木をぶっ飛ばした。
たたらを踏んだ柊木は、体勢を立て直すとブライトをまっすぐ見つめる。
そこには、完全にキレているブライトの姿があった。
「あなたがいない間、僕達がどれだけ関係各所に怒られたか知っていますか? 知りませんよねぇ! 僕達が激務に追われている横でっ! ご友人の方とっ! 二人でっ! 焼肉に行っていたんですからぁ!!」
「……ごめん。ホントごめん。後で休暇を出します」
あまりの剣幕に、姿勢を正して頭を下げる柊木。
しかし、謝って済むならこんなにキレていないのだ。
「……と、いうわけでですねぇ、潔くぶっ飛ばされてきてください♪ ちなみに、拒否権はありません♪ キレてるのは僕だけではありませんので♪ それでは……」
「え、ちょ!? 待ってぇ!? あっぶな!?」
「死にさらせ柊木ぃいいいいいいいい!!」
黒井が消えた時と同じように、突然姿が掻き消えるブライト。
助けを求めようと手を伸ばそうとした瞬間、またも横合いから攻撃が飛んでくる。
「み、皆ごめぇええええええええええん!!」
このあと、全員から容赦ない攻撃をぶつけられ、心身ともにこれまで体験した以上の疲労を負いながらも、結局は柊木が無傷で勝利した。
ちなみに、模擬戦終了後、ボロボロになった皆に土下座をしながら、休暇などを渡したらしい。
「皆、ごめん……」
「「「「「「「「「「謝るならそもそもするな!!」」」」」」」」」」
自衛隊では……
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「とまぁ、これが異能力者達の戦闘記録らしい。各自、感想などを記入するように」
「……なんか、すいません……異能力者の皆さん……」
某動画サイトでは……
・なにあれ?
・俺ら何見せられてんの?
・強いのは分かったけど、あれがトップなの?
・最後の方は怖かった。ただし途中の映像、てめぇはダメだ!
・威厳も何もねぇや!
・取り敢えず、異能力者の人は強いってことと、総司令は問題児って言うことが分かったな
・ポ ン コ ツ
・ア ホ の 子
・五 条 悟 と 同 類
……という反応があったとかなかったとか。
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登場人物紹介
「〝元〟世界最速のトレーナー」の主人公張ってるめっちゃ足が速い人。
普段は荷物を配達する仕事をしている。
私が書いたオリジナル作品にちょろっと出ていたキャラ。
めっちゃパワーがある。
今作初登場。
異能力者達の部署の中で、「兵器科」の署長をしている。
トリガーハッピーとマッドサイエンティストという要素が融合してできたキャラ。
「ありふれぬ異能力者は世界最強」の主人公張ってる。
詳しく知りたければ見に行こう!(大胆なダイマは漢女の特権)
ブライト・ラッセル・ゴールドマン
今作初登場。
柊木の弟子をしていた。
聖剣を振るえる。(エクス……カリバァアアアアア!!)