伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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体育祭、そして第二種目

 

 

「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されているわ!」

 

 全生徒が走り終え、もしくはリタイアして第一種目は終わりを告げた。予選突破の42名中、40名がヒーロー科の生徒であり、残りの2名は普通科の男子とサポート科の女子であった。青い顔をした青山を見て「落ちたのか…」呟いていると、ミッドナイトの言葉が続く。

 

「そして次からいよいよ本番よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバりなさい!!!さーて、第二種目よ!私はもう知っているけど~~何かしら!?言ってるそばから…コレよ!!」

 

 ミッドナイトの背後に現れるスクリーンにデカデカと映し出される『騎馬戦』の文字。これを見た一部の生徒は苦々しく顔を顰めた。特に上鳴は顕著だった。騎馬戦である以上チーム戦は確実。上鳴のような体に纏わせたり、自身を中心に放出される類の個性は不利もいいところだろう。参加者がそれぞれの反応をしているとミッドナイトの説明は続く。

 

「参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ。基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、異なる点も有るわ。まずはポイント。第一種目の結果にしたがい各自にポイントが振り当てられるわ!」

 

 ミッドナイトの言葉を聞き伏黒はある程度のルールを把握できた。つまりは組み合わせによってポイントが変動するということなのだろう。となると――元から期待はしてなかったが――爆豪や轟のような強者であっても高ポイントとなるが故に狙われやすくなる分、いくら先ほど活躍しても第二種目払い落とされることなのだろう。ルールはようできてると内心感心する伏黒。すると、

 

「与えられるポイントは下から5ポイントずつ上昇するわ!そして……一位に与えられるポイントは1000万!!」

 

 伏黒の思考を止めるだけの言葉がミッドナイトの口から飛び出す。顔を上げて顔を緑谷に向ける。そこには全身から変な汗をかいた緑谷がいた。

 

「上を行く者には更なる受難を!雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞ"Plus Ultra"!予選通過一位の緑谷出久君、持ちポイント1000万!!」

 

 自身のポイントが205ポイントであるにも関わらず、一位になった途端跳ね上がった。つまりは1位と組んでも組まずとも1位になれる機会が得られるというわけなのだ。しかも、ポイントやこの種目を乗り切ることだけを考えるわけにはいかないのだ。自身の手の内をこの後戦うかもしれない相手に見せる可能性もあると言うことだ。ここまでの情報をまとめて伏黒はこの競技はよく出来てると伏黒は思わされた。

 

「個性発動アリの残虐ファイト!でも、あくまでも騎馬戦ということを忘れちゃダメよ!!?悪質な故意に行われた崩しの攻撃は1発アウトよ!……それじゃあ、これより15分間の交渉タイムスタート!!」

 

 ざわめく生徒たちを尻目にミッドナイトはそう締めくくった。それと同時に伏黒はチームメイト探しを始めた。伏黒は自身が下でない限り特に問題はない。手を封じられない限り自身の個性が攻防一体の万能型であることを把握してるからだ。それ以上に心配なのは誰かに声をかけられないということだったがそれは杞憂に終わった。

 

「伏黒!俺と組め!」

 

「ケロ、私と組みましょう。伏黒ちゃん」

 

「ウチと組もうよ伏黒」

 

 考え込んでいる伏黒に砂藤や蛙吹、耳郎などを筆頭に一斉に声をかけてきたからだ。交渉開始わずか数秒足らずで話しかけられたことに驚きながらも伏黒は誘った理由を問う。

 

「何で俺なんだ?緑谷(1000万)よりかはマシだろうがそこそこ狙われるぞ?」

 

「でも奪われずに逃げ切れば問題なし!」

 

「それに伏黒ちゃんの個性なら迎撃して逆にハチマキ(ポイント)を奪うことも可能でしょう?」

 

「……そうかい」

 

 どうやらクラスメイトの中でメリットとデメリットを天秤にかけた結果、伏黒と組んだほうが本戦に勝ち残れる可能性が高いと判断したようだ。思っていた以上に信頼されてこそばゆく思う反面、少し予想外の事態に戸惑い悩まされる伏黒。10秒ほど考え込み伏黒は話しかけてきた中の1人に声をかけた。

 

「尾白。俺と組まないか?」

 

「え?俺ェ!?」

 

「すまないが他は別を当たってくれないか?」

 

 尾白を指名した後にそういうと周りに群がっていたクラスメイト達は散り散りにその場から離れていった。それを見届けると伏黒は困惑顔の尾白と向き直る。

 

「なんで俺なんだ?蛙吹とかいい奴いっぱいいただろ」

 

「確かにそうかもな。でも、それ以上に近距離で迎撃できる奴が欲しかった」

 

「どう言うことだ?」

 

「俺の個性だって万能じゃあないんだ。突破されることだってある。爆豪あたりに超近接戦に持ち込まれたらかなりきつい。そこをお前にカバーしてほしい」

 

 実際その通りだった。伏黒の個性の対応範囲はあくまでも中距離や遠距離であって近接などは無理をすれば出来ないことはないがあまり得意ではないのだ。しかし、チームを一度組んだ際に尾白の格闘術の有用性を知っている伏黒は個性の弱点を埋めることが出来ると考えられたのだ。

 

 伏黒の説明を受けて尾白はしばらく悩むそぶりを見せた後に頷くと手を差し出し「よろしく頼む」と告げる。それを見た伏黒はニヤリと笑うと尾白の手を取る。

 

「後は機動力の確保だな」

 

「あてはあるのか?」

 

「まぁな」

 

 そう言うと伏黒は後ろに目線を向ける。そこには腕を組みながら傍観する常闇がそこにはいた。尾白も伏黒の目線の先をたどりそれを確認する。そんな尾白に対して伏黒は「そろそろ他のメンバーを探すぞ」と告げると尾白は「おう」と返事をして伏黒の後を追った。

 

 

 ――――おい待てフザケンナ。

 

「おいおいおい!伏黒ォ!ヤバくねぇか!?」

 

 あれから10分経過した。伏黒のチームメンバー。現在、尾白のみ。何故こうなった。そんなことを考えながら軽く絶望し、焦り散らかす尾白を尻目に伏黒は軽く遠い目をした。あの後、常闇に声をかけたのだ。理由は当然機動力の確保のため。他にも同じく影の個性のため相性が良いと言う点でも選んだのだ。が、結果はあえなく惨敗。常闇曰く、

 

『伏黒よ我が友よ。お前とはただ友であるだけでなく宿敵でもありたいのだ』

 

 だそうだ。初めは言っている意味がわからなかった。それでも意味を咀嚼して自分なりに解読してみて『お前とも戦ってみたい』的なことを言ったのだと解釈した伏黒はなるほどな、と納得して常闇と別れた。断られたのは予想の範疇だったため驚きはしなかった。仕方ないと納得すると他に声をかけた。

 

 ここから伏黒にとっての予想外が勃発し続けた。

 

 佐藤や蛙吹、耳郎、切島、芦戸などを筆頭に他のA組に声をかけていった。正直なところ伏黒は自信の保持したポイントや初めにかけられた声の数にまぁ、いけるだろとたかを括っていた。

 

 しかし、伏黒は舐めていた、というか忘れていた。A組の行動力の速さを。

 

 伏黒が声をかけて帰ってきた返答のほぼ全てが『悪ぃ、もうチームメンバー揃ってるわ』だった。これには伏黒と尾白は予想外。最終手段として腹を括って緑谷と組もうとしてすでにチームが出来上がっていたのを確認した時、軽く頬に汗が伝うのを感じた。内心焦りながらもなんとか現状を受け入れてB組やC組に声をかけ初めて、断られた。

 

 これには流石の伏黒も目を白黒させた。だって、いくらなんでも予想外だったのだ、しょうがないだろう?

 

 ちなみに断られた者たちは一応にこう返してきた『お前たちA組とじゃ実力が合ってないもんなぁ』と。目に宿る敵意や嫉妬を見て伏黒は『もしかして開会の言葉が不味かったのでは?』と悟る。この考えは当たっていた。B組達は伏黒の開会式での言葉に当てられて反発を抱いたのを理由にチームを組もうとしなかったのだ。最後の綱である拳藤に断られた段階で時間を巻き戻したい衝動に駆られながら現在に至る。最悪、尾白に肩車してもらいながらやることを視野に入れながら尾白に指示を出す。

 

「尾白、悪いがここからはお前だけで勧誘してくれ。俺じゃあ話が拗れる」

 

「お、おう、わかった。あんま期待はすんなよ」

 

 そう言うと尾白は人混みの中に紛れ込む。それを見届けると伏黒は申し訳なさと予想外の出来事に対する疲れからその場で軽く座り込む。「はあ……」と軽くため息を吐きながらどうしたもんかと頭を悩ませていると。足音が二つほどこちらに向かってくるのがわかった。伏黒は振り返り確認する。するとそこには尾白がいた。しかし、

 

「尾白?おい、どうした」

 

 目に生気が一切宿っていなかった。まるで、意識がないかのように。突然の出来事に困惑していると、

 

「おい、伏黒さんよ」

 

 気怠げな声が聞こえてきた。バッと振り返る。するとそこには紫色の立った髪と濃い隈が特徴的な少年がいた。声の印象通り気怠げでどことなく影があった。A組でも拳藤から聞かされたB組でも見ない顔から伏黒は消去法である人物に特定した。

 

「心操、だったか?普通科の」

 

 伏黒がそう告げると目の前の少年は目を見開き驚いていた。その反応に伏黒は予想があたったのだと悟る。そして、面倒な相手だと思わされた。何故ならば彼はこの体育祭での唯一の普通科の生徒(・・・・・・・・・)であるからだった。

 

「驚いたな。上にいる連中は下なんて見たことないと思ってたよ。でもまぁ、自己紹介は重要だな。―――心操人使だ。よろしく頼むよ。A組(エリートさん)

 

 まるで挑発するかのような自己紹介と共に差し出された手を見て軽く目を細める伏黒。尾白が来たタイミングを考慮すると洗脳系であることを伏黒は予想立ててながら手を取らずに返事をした。

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 ここまで言った時、意識がぼやけ始めた。『返答で発動する』そう理解した瞬間、自身の迂闊さを呪った。相手の顔をが喜悦で歪むのを見ながら伏黒の意識が深く落ちていった。

 

 

 ふわふわと揺蕩う。

 

 ふらふらと揺らいでいく。

 

 冷たくともどこか心地よく感じられる暗い黒い海影の中を無念と共に。

 

『ガコンッ』

 

 歯車が回る。意識が薄らと明るくなる。

 

『ガコンッ』

 

 歯車が回る。意識が明瞭になる。

 

『ガコンッ』

 

 歯車が回る。これを最後に世界から拒絶されるかのようにフワフワとそれでいて凄まじい勢いで上昇していく。視界に光が差し込み始める。そして――――

 

 

「存外大したことなかったな」

 

 意識を失い傀儡と成り果てたヒーロー科(エリート達)を見てそう嘲笑う。ヒーロー科3名を同時に手玉取る男―――心操人使は半ば勝ちを確信していた。遠中距離を伏黒の《影絵》で牽制、あるいはポイントの獲得に回し、近距離を攻められたら尾白の《尻尾》でカバー、威力が足りなければ庄田の《ツインインパクト》でそれを補っていく。一位を獲得せずとも確実に次の試合に参加できると。

 

 しかし、忘れていた。

 

「それじゃあ、指示に従ってもらうぜ皆んな(手駒)

 

 自身と組んでいるこの男(伏黒恵)は。

 

「ああ、そうさせてもらう」

 

 倍率300倍の中の最高位に位置付けられた人間であることを。後ろから返答が返ってくる。決してあり得ない事態に背後を振り向くとこちらを見下ろす伏黒がそこにはいた。

 

「なん、で」

 

「解けたからじゃねぇの?」

 

 嘘だと受け入れられず咄嗟に聞けばそれが事実であると告げるように返答が返ってくる。

 

「おら。起きろ尾白」

 

 そう言いながら隣に立つ尻尾を生やした男の頭をこづく。すると「んぁ」っと寝起きのような声をあげると辺りを見渡す。伏黒から事情を説明され、目を見開き心操を見る。この状況に最も焦っているのは言わずもがな心操だった。自身の個性はあくまでも初見殺し。一度喰らって立て直せばいくらでも対策が出来るからだ。

 

「さて、話し合おうか」

 

「ハッ!話し合うだと?この状況で話し合うだなんて随分と余裕じゃねぇか!なぁ!主席さんよぉ!」

 

「悪いが余裕がなくてな。ちゃっちゃと済ませるぞ」

 

 自身の言葉に伏黒が反応し返答する。その瞬間、自身の感覚に伏黒が操れる感覚が伝わる。しかし、

 

「わかってると思うが無駄だ」

 

 その感覚とすぐに解けて無くなった。心操はその事実に歯軋りをする。

 

「種は単純だ。俺の影の中で《蝦蟇》を展開させて足を痛くなるまで縛ってる。軽くこづくだけで解けるんだったらこれで十分だと思ったんだが、どうやら問題なかったみたいだな」

 

「種なんぞ微塵も聞いてないんだよッ」

 

 なんてことなさそうに語る伏黒を見て心操は自身がここまでであることを悟る。当たり前だ。なにが悲しくて洗脳した挙句自身のことを駒扱いして来る輩を味方につけたいと思うのだ。事実隣にいる尾白はかなり険しい顔をしている。だからこそ、

 

「それじゃあ、お前の考える作戦とやらを教えろ」

 

 伏黒が今までのことがなかったようになんと事なく心操の作戦を聞いて来るのは予想外であったのだ。

 

「は?」

 

「おい、伏黒。正気か?」

 

 心操も驚いたがそれと同じくらい尾白も驚いていた。だってそうだ。操られそうになったのは同じなのに何も言わずに受け入れようとしてるのだから。

 

「こいつは俺らを操ろうとしたんだぞ?」

 

「だったらどうした。残り時間少ない中で他のメンツを探すか?無理だろ」

 

 伏黒の言葉に時間を見る。表示される残り時間は2分にも満たない。その間で新しいメンバーを集めて作戦を考えることが無理であることを尾白は歯噛みをする。

 

「クソッ」

 

「コイツは俺を含めたヒーロー科3人を出し抜いたんだ。初見殺しぶりや頭の回転の速さはこんなかじゃあダントツだろ?だったら引き入れて損はねぇよ。それに」

 

「それに?」

 

「アイツは必死に上を目指そうと足掻いてる。その足掻きに俺もお前も引っかかったんだ。文句を言う筋合いはねぇだろ」

 

 そこまで伏黒が言うと渋々とはいえ納得したのか尾白は引き下がる。それを見届けると伏黒は再度、心操と向きなおり手を差し出す。

 

「で?どうする。手を取るのか取らないのか」

 

 心操は混乱していた。何故なら初めてだったから。『洗脳』という『ヴィラン向き』の個性。他人だけでなく友人からもヒーロー向きではないと言われ続けていた。なのになんでまた俺の手を取れるのだ、と。

 

『後、1分よー!』

 

 後ろからミッドナイトの声が聞こえて来る。考える時間はあまりにも少ない。頭を掻きむしって目の前に差し出された手を取る。

 

「せいぜい動き回れよッ、伏黒恵」

 

「そうか。じゃあ、うまく使ってみろよ」

 

 紆余曲折あったが今ここに伏黒チーム完成した。

 

 

「それじゃいよいよ始めるわよ!!」

 

 交渉時間の15分が過ぎ、ミッドナイトが開始の笛を鳴らす準備をしながら生徒達に言う。

 

《さあ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立ったぁぁ!!》

 

《…中々面白い組が揃ったな。》

 

 騎手に伏黒。前騎馬に心操、後騎馬に尾白と庄田。

 

《さあ上げてけ鬨の声!血で血を洗う雄英の合戦が今の狼煙を上げる!!》

 

 会場にマイクの声が響き渡ると、伏黒は騎馬の4人に声をかける。

 

「それじゃあ、お前(心操)の予定通り俺を中心に尾白が近接を迎撃して庄田がそのアシスト、心操は油断した輩を煽り散らすでいいな」

 

「ああ」

 

「……わかった」

 

「…」

 

 伏黒の言葉に1人は抑揚なく、1人は不服そうに答え、1人は意識がなく沈黙を持って答えた。騎馬三人の役割を確認し終えると、ちょうどマイクの声が再度響く。

 

 《よ~し組み終わったな!準備はいいかなんて聞かねえぞ!!さあ行くぜ!残虐バトルロワイヤルカウントダウン!》

 

《スリー!ツー!ワン!》

 

 「スタート!!!」

 

 ミッドナイトが合図がした途端、一斉に全ての騎馬が走り出す。今ここに第二回戦騎馬戦が始まった。

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