伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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第二種目目、そして結果

 

 

 視点が高いと、意味も無くワクワクする。これは不思議と皆が思うことではないだろうか。高すぎるとこではダメな人間や馬鹿でなくともある程度高い程度だとテンションは上がるものではないだろうか?

 

 

《さあ各チームのポイントはどうなっているのか?7分経過した現在のランクをスクリーンに表示するぜえ!ってあら?ちょっと待てよコレ。A組緑谷以外パッとしてねぇってか…爆豪…あれ!?》

 

 会場にどよめきが走る中そんなことを考えていると

 

「おい!伏黒、それに心操!本当にこれでいいのか!?」

 

「問題ねぇよ。というかさっきも説明してたろ」

 

「こればっかしは俺の個性の問題だ。焦らされてイラつくのはわかるがもう少しだけ待ってくれ」

 

 チームメイトの1人である尾白から焦りの混じった声で抗議をする。それを伏黒と心操は諌めて落ち着かせる。尾白が焦るのも無理はない。何せ今の伏黒チームはなんとビックリ0ポイント。こうなった原因を説明するには今から8分ほど前に遡る必要がある。

 

 

「はぁ!?初手でポイントを全部捨てるぅ?!」

 

「ああ、そうだ」

 

「……策あるんだろうがなんでだ?まぁまぁ、博打もいいとこだろ」

 

 ギリギリ喧騒に紛れるほどの声で叫ぶ尾白にいつものペースを崩すことなく応答する心操。策があるからやれるのだと納得しつつも理解はできない伏黒は心操に尋ねる。

 

「もう知ってると思うが俺の個性は《洗脳》だ。こいつは乱戦の中でこそ真価を発揮する」

 

「まぁな。事実、何も知らない状態で名前を呼ばれたら反射的に答えるもんな」

 

 事実、いきなり大声で声をかけた際に反応してしまうのは先天的に人間が持っている防衛本能的な反射であるから周りがよほど見えていない限り否が応でも反応してしまうものだ。

 

「だが騎馬戦。こういうタイプとは相性が悪いんだよ」

 

「なんで……って、ああそういうこと」

 

「おい、1人で納得すんな伏黒。どういうことだ」

 

「単純だ。個性解除の条件にあるんだろ?」

 

「そうだ」

 

 伏黒の予想に心操は当たりだと告げる。この競技が始めに行われた戦闘訓練のように一度自身の守るものを取られたらそこで終了といったタイプだったら心操の個性は無双ゲーよろしく反則じみた効果を示していただろう。

 

 だがしかしこれは騎馬戦。取られたらそこで終了ではなく取り返してもいいのだ。

 

「心操の《洗脳》は俺がかなり低めの威力でこづいても解除できたんだ肉体や個性のぶつかり合いが前提とした競技とは死ぬほど相性が悪い。ぶつかり合って体のどこかにぶつかれば十中八九B組の小男が目を覚ますぞ」

 

「だったら「今からでも説明するってか?それこそ無理だろ。俺に対する周りからのヘイトっぷりはお前が近くでよく見てただろうし俺は勝つためにも信じれたけどこいつが洗脳した相手を信じるってほど柔軟な考えを持ってる奴とは限らんだろ」……そういえばそうだった」

 

 伏黒の説明に反論しようとする尾白に伏黒が今までのことを思い出させると頭が痛いと言わんばかりに手で頭を押さえる。尾白の頭には一瞬、B組の小男こと庄田を後ろに回せばいいと提案しようとしたが洗脳を解除しないようそこ(後ろ)に気を回して相手どれるほど周りが緩くないことを思い出してやめた。

 

「だからポイント全部手放すってわけか」

 

「そういうことだ。それに待つのは辛いだろうが下位にいた俺が把握してて上位にいたお前らが把握できてない相手の個性や動き方の観察にもなる。はっきり言って良いことずくめだろ」

 

 ……こいつ思ったよりも強かだな。

 

 伏黒と尾白の胸中の考えは一瞬だけ共通した。ヒーローを目指す輩は強固性、没個性に関わらず良くも悪くも目立ちたがり屋だ。それ故に前に出ようとせず後ろで次の競技に賭けようとする。その考えはわからないでもないが実行しようとなるとそこそこ度胸はいる。順位がどの程度か把握できないとなると尚更。

 

「まぁな。となるとポイントを奪いにかかるのは」

 

「ああ、最低でも残り時間が数分頃になった時に賭ける」

 

「なるほどなぁ。いけっかなぁ」

 

「心配になんのはわかるが騎馬を組め。個性のことも考えて俺が上でいいか?」

 

「元からそのつもりだ。やるからには勝つぞ」

 

 心操の言葉と共に全員が配置について騎馬の形をなす。伏黒はその上に乗るとポイントの書かれた鉢巻を巻いて登った。

 

 

 そして現在に至る。途中、ポイントをどう手放そうと考えた直後にポイントを奪われて煽り散らかして来る男や伏黒の幼馴染である拳藤に勝負をふっかけられてポイントがないことをアピールして訝しめられるなどのイベントがあったが敵の攻撃の余波を回避しつつ庄田の洗脳が解けないよう問題なく立ち回れている。

 

 そしてあれから7分ほど経過したが注意するチームがいくつかある。

 

 まず始めに10,000,320Pの緑谷チーム。

 

 前騎馬に常闇、後騎馬が麗日とサポート科の発目という布陣。観察しているとかなりバランスがよく常闇の《ダークシャドウ》が迎撃してサポート科の発目のサポートアイテムで機動力を確保しその機動力を麗日の《ゼログラビティ》で無重力状態にすることで損なわないようにアシストしている。

 

 次に665Pの爆豪チーム。

 

 これに関しては伏黒からするとチームのメンバーが割と予想通りだった。芦戸の個性《酸》で足場を溶かして瀬呂の個性《テープ》を用いて機動力の確保、爆豪の《爆破》によるトリッキーな動きに対応している。そして攻撃の面では切島の《硬化》で前騎馬のことを考慮せずに遠慮なく攻撃できるといった布陣。

 

 ノリが良くどの面子も爆豪(理不尽大魔王)の動きに対応できることから仲間割れによるガタ付きに期待はできない。特に警戒すべきは範囲が広く、意外とスペックの高い瀬呂だろうか。

 

 そして

 

「ん、電撃が来るぞ。下がれ」

 

「「了解」」

 

 伏黒の言葉に従ってその場から飛び退いた瞬間、黄色い光と共にパチっ、と最初の音が鳴ると同時に――――バチバチバチバチ!!!! っと、唐突な電流の嵐が巻き起こる。

 

「よくわかったな」

 

(雄英襲撃時)にアイツの電撃を鵺が喰らってるからな前兆くらいは掴める」

 

「で、あれがお前が警戒してるっていうサラブレッドの」

 

「そう、轟」

 

 最後に615Pの轟チーム。

 

 一言で言うと強い。それに尽きる。

 

 騎手の轟は攻守共に優れ、前騎馬の飯田はとても速く、機動力は無視できず、現にヒットアンドアウェイを難なくこなせている。後騎馬の八百万の地頭の良さは場に適応する物を即座に生み出せし、合図があるとはいえ同じ後騎馬の上鳴の電撃や相手の攻撃にも難なく対処出来ている。上鳴はいわゆる足止め要因。直撃せずとも数百万Vの電撃は確実に相手を足止めできる。本当に隙がない。

 

《何だ何した!? 群がる騎馬を轟一蹴!》

 

《上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた……さすがというか……障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな》

 

《ナイス解説!!》

 

「後もう1発電撃を放ったらいくぞ」

 

「わかった」

 

「おい、本当なのか?あいつのキャパ」

 

「命かかったあそこ(USJ)を乗り越えるためにも手の内をお互いに明かす必要があったんだ。あいつの性格が終わってない限り間違いねぇよ」

 

 アイツはアホだがろくでなしではないからまずあり得ないなと伏黒は内心付け加えておく。

 

「なるほどね。ああ、そうだ伏黒ちょっとやりたいところがあるんだがいいか?」

 

 心底意地の悪そうな顔をした心操がこちらを見上げて来る。伏黒はそれを見てなんなのか気になり、尾白はゲンナリとしていた。

 

「いいぞ。どこだ」

 

「あの銀色のやつだセリフといい、いかにも御し易い」

 

「わかった」

 

「お前ら絶対碌な目にあわねぇぞ……ってああ、手を貸してるのは俺もか」

 

 はは……っと煤けた声で笑う尾白を連れて伏黒一行は鉄哲チームの方へと向かった。そして

 

「よお、鉄哲さんよ」

 

「あぁ?」

 

 気軽に話しかけるように伏黒が声をかけると鉄哲はなんかようかと言わんばかりに振り返る。そんな鉄哲を見て伏黒は柄こそ悪いが善人であることをなんとなく察する。いきなり現れたことに警戒しているのか騎馬全員が臨戦体制を取る。そんな騎馬に伏黒は

 

「タイマンしないか?」

 

 にへら、と笑いながら好戦的にそう告げた。

 

「は?」

 

 いきなりの申し出に呆気に取られる鉄哲チーム。初めは意味がわからなかったのか固まっていたが言葉の意味を理解したのか騎手が目を輝かせながら拳をガキンッガギンッと打ち鳴らし始める。

 

「いいなあ!男らしくて好きだぜそう言うの!なぁ!やろうぜ!」

 

「ちょっ、鉄哲。お前正気か?」

 

 鉄哲の言葉に驚きバンダナを巻いた男が諌める。他のメンバーも同じような反応であったが鉄哲は引き下がる様子がないことを察したのかこちらに対してドンと身構え始める。そして、

 

「クッ、クククク……」

 

 嘲りの混ざった声が心操の口から漏れ出した。

 

「あ?なんだ何がおかしい」

 

「A組の出涸らし風情がいきってんだぜ?これが笑わずにいられるかよ」

 

 その言葉を聞き、一瞬理解できなかったのかポカンとした顔をした鉄哲チーム。間をおかずして

 

「あ゛ぁ?」

 

 ビキィッという効果音が聞こえてきそうなほどの青筋を浮かべながら鉄哲はキレた。他のメンバーも口にこそは出さずとも一応に怒りを露わにしていた。

 

「なんだと」

 

「言葉のままだろう?片やお行儀よく授業を受けているだけのB組と片や文字通り死線を乗り越えて頭角をあらわにしているA組。初めから観客どもが求めてるのはヒーロー科じゃなくてA組だ。お呼びじゃないんだよお前らは」

 

「そこから先は考えてものを言えよ。俺単体ならまだしもみんなを馬鹿にすんじゃねぇよ」

 

「おお怖い。これ以上喋ると殴られそうだ。それは嫌だからなフォローを頼むぜ伏黒。そらかかってこいよ」

 

 

B組(噛ませ犬共)
 

 

 そこまで心操が言った瞬間ブチっと何かがちぎれるような音が聞こえた気がした。俯いていた鉄哲チームは一応に憤怒を顔に浮かばせながら喋る。

 

「不遜ここに極まりましたねっ」「まァ、なんだお望み通り本気でやってやるよ」「ふざけんじゃあねぇぞ!」「上等だコラァァ!」

 

 そう喋ってしまった。

 

「はい、お仕舞い」

 

 鉄哲チームに二の句は告げられなかった。目から光は消え失せてそこに意思は感じられず誰がどう見ても戦闘できる様子ではなかった。

 

「ポイントを全て差し出せ」

 

 心操の言葉につき従うように鉄哲は頭に手をかけて鉢巻を振り解くとポイントを握りしめた手を前に差し出す。それを伏黒が《蝦蟇》を呼び出して受け取る。

 

「あとは行動しろ、安全にな」

 

 心操がそう命じると敵を避けながらその場からゆっくりと離れていく鉄哲チーム。ポイントを握りしめた伏黒は首に巻き、尾白と心操にその場から離れるように命令する。

 

「ああ、超胸が痛い…」

 

「安心しろ俺も痛い」

 

「表情が微塵も変わってないんですがそれは」

 

 伏黒は尾白が泣き言を言うためそれっぽくフォローするもあっけなく見透かされてフォローはあえなく失敗する。次に心操に声をかけた。

 

「よくやったが大丈夫か?俺以上にヘイトかっただろうし後が怖いぞ?」

 

「元から覚悟の上だ。なんの問題もねぇよ」

 

 あっけらかんと問題なさそうにそう言う心操を見て「そうか」と一言づける伏黒。あたりを見渡すと轟が出したであろう氷塊に足を取られて足止めを喰らい緑谷チームと轟チームの事実上の一騎打ちが行われていた。

 

「どうする?行くか?」

 

「まだ待て。さっきも言ったがこっちの都合上、1番の脅威が上鳴の電撃なんだ。1発でも喰らえば庄田が目を覚ましてチームとして機能し無くなる。だから「トルクオーバー!レシプロバースト!!」…なんだ」

 

 伏黒の言葉に被せるように凄まじいエンジン音が鳴り響く。それは

 

《なあ~~~~~!!??何が起きた!?はや~~~~~!!!飯田!そんな超加速があんなら予選で見せろよ!!あっちゅー間に1000万奪取!!!! 》

 

 一位の座が入れ替わる狼煙であった。実況のマイクが興奮した様子で声を上げる。そして何が起こったのか分からないのか飯田を除いた三人が戸惑ったように飯田を見ている。そしてそれは伏黒も同じだった。しかし注目していたのは他の3人とは違い飯田の足元にあった。まるでエンストを起こした(・・・・・・・・・・・・)かのようにマフラーから吐き出される黒い煙。

 

「いくぞ」

 

「は?電撃は?」

 

「予定変更だ。俺も無茶するからお前も無茶しろ」

 

 いきなりのことに驚く心操に伏黒はかなりあやふやな言葉をかける。その言葉に心操は大きくため息を吐くと覚悟を決めた顔で前を見る。

 

「……ああ、クソ。今日ヘイトのバーゲンセールかよ」

 

「なんか奢ってやるから許せ」

 

「割にあってねぇんだよっ。尾白!ちょっと早いが迎撃準備!」

 

「いいのか?」

 

「ああ、じゃあいくぞ…」

 

 心操が近づきながら大きく息を吸う。

 

「おい!サラブレッド半分野郎!」

 

 心操の言葉に該当する箇所があった自覚があったのか轟が振り返る。ここで「なんだと」言ってくれれば楽だったのだが、無口なのが災いして一言も喋らない。轟もその場から離れようと前を向き直そうとする。が、しかし

 

「血に恵まれた奴はいいなぁ、オイ!さぞかし親には甘やかせれて恵まれた上に苦労のない生活を送っていたんだろうなぁ!!」

 

 その言葉に轟は見てわかるほど固まる。伏黒は轟の弱点を似たもの同士であるが故に(・・・・・・・・・・)なんとなく察していた。それは親に対する憎悪、あるいは否定。その反応は頑なに炎を使わないことやヒーロー基礎学の際に話に上がったエンデヴァーに対する態度であった。そしてその予想はあまりにも的を得ていた。

 

「なんだとッ」

 

 振り返り反応する轟。次の瞬間には目から光が消え失せ、固まる。

 

「1000万ポイントをぶん投げろ!はやく!」

 

 それに間髪入れず半ば絶叫に近い形で命令する心操。それに応じるように素早く1000万の鉢巻を握りしめて空目掛けてぶん投げた。それと同時に動くのは緑谷、爆豪、そして掌印無しで呼び出した(・・・・・・・・・・)鵺を操る伏黒だった。それでも

 

「ヤベーぞ伏黒向こうが早い!」

 

 尾白の言う通り爆豪と手を振りかぶった緑谷がはやく鉢巻に到達しかける。

 

 しかし伏黒に焦りはなかった。雄英襲撃以降伏黒は自身の弱点に向き合っていた。それは凡庸性。尖ったところがないが故の決定力の無さ。ふるいに振えば残るのは巨大なものか尖ったものかを知っている。今の丸いままの自分じゃあ間違いなくふるいに落ちると理解していた。それはあのヴィラン相手にした際に味わった火力の無さで嫌というほどわからされた。

 

 そこで編み出した。玉犬に並んで最も利用する鵺を用いた自身の超秘を。一度使用すれば電撃が1時間ほど使用できなくなる上に鵺の肉体に大きな負荷がかかるため多用できない自爆技を。

 

 その技の名は

 

「【迅雷(じんらい)】」

 

 瞬間、間近にいたはずの爆豪と緑谷の放った風圧を置き去りにして鵺は駆ける。電気の通り道を通り舞い上がる1000万の鉢巻を掴み主人である伏黒に投げ渡す。

 

『3』

 

 伏黒は天高く右手を伸ばす。

 

『2』

 

 

 手の平に、1000万のハチマキが落ち、握りしめる。

 

 

『1』

 

 

 モニターの順位も変わり、これにて。

 

 

『タイムアーップ!!!!』

 

 第二種目目である騎馬戦は終わりを告げた。





迅雷
→鵺が作った電気で作ったレールの間に鵺を置き、電流と磁界を発生させて発射する技。言ってしまえば疑似レールガン。速度は亜音速より少し早めくらいのもよう。
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