伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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一回戦、そして似たもの個性

 

《まだまだ続くぞ第七試合!クラス1の盾男!その硬さは盾であると同時に矛でもある!漢気魅せれるか!ヒーロー科、切島鋭児郎!vs対するはB組きっての女傑!可憐な見た目に惑わされるなぁ!ヒーロー科、拳藤一佳!》

 

「悪いが譲られたもんだからな。負けるつもりはないよ」

 

「おっしゃあ!かかってこいやぁ!」

 

 そう言うと拳藤へ体を左足を前に大きく半身にし、脚を蟹股気味に前後に広げて配置。腰を深く落とし、左腕は肘を少し曲げ胸の高さ位に構え、切島はいつものように拳を前にぶつけ合うとガキンという音共に体を構えアウトボクサーに似た構えをする。

 

「なあ、伏黒。あの子お前の幼馴染なんだよな」

 

 尾白の言葉に若干一名(エロ葡萄)が何やら「快活系美少女と幼馴染、だとッ」と慄き、青春の匂いを嗅ぎつけた女性陣が「伏黒に女の影が!?」とキャーキャー騒ぐなどがあったが、スルーして伏黒は振り返り尾白と顔を合わせる。

 

「そうだがどうした?」

 

「ならあの子の戦い方も知ってるわけだ、それを踏まえてどっちが勝つと思う?」

 

 尾白の質問に伏黒は2人の個性と戦闘スタイルについて少し考え込んでから自身の考えを言う。

 

「……確実にどっちが勝つとは言いにくいが、場合にもよるな」

 

「場合?」

 

「ああ。もし切嶋が攻めを主軸に戦うならワンチャンあるが、防御を主軸に戦うんだとしたら悪いがかなりぶが悪いぞ」

 

「そこまでか?切島の《硬化》の個性を忘れてないか?あの硬さもそうだがアイツ自身のタフネスさはなかなかだぞ?」

 

「そうだな。だが、もし拳藤の個性の威力が切島のタフネスよりも上だったら?まあ、こんな考えせずとも試合でわかるだろ」

 

 そう言って伏黒はフィールドに目を向ける。

 

《それでは第七試合スタート!!!》

 

 それと同時に試合が開始。そして次の瞬間、

 

 ドゴオオオオオォォォォォォォォンンンン!!!

 

 まるで車同士の衝突音にも似た鈍い音が会場に響き渡る。全員がフィールドに目をやるとフィールド上には腰を深く落とし、縦にした拳を前に突き出した拳藤とその延長線上の場外に切島を中心に切島の1.5倍はある巨大なクレーターが出来上がっていた。

 

《マジ、かよ…》

 

《これはまた》

 

 静まり返った会場に皆の胸中を代弁するかのようにプレゼントマイクと相澤の言葉が響く。そしてそれはA組内部でも。

 

「嘘、でしょ」

 

「おいおいヤベェーなお前の幼馴染」

 

「伏黒の言葉から強いことはわかってたつもりだがまさかここまでなんて…」

 

 中学時代からの付き合いである芦戸は絶句し、下心が10割を含めた目で拳藤を見ていた峰田はドン引きし、戦々恐々といった面持ちで尾白はうめく。他にも切島のタフネスさをUSJや騎馬戦などで嫌というほど知っていた爆豪などは目を見開き驚愕していた。

 

「拳藤の個性は《大拳》。書いて字の如く自身の両拳を巨大化させることができるっていうやつだ」

 

 静まり返ったからかA組の陣営に伏黒の声がよく聞こえる。その声に釣られて皆の視線が伏黒による。

 

「地味な個性だが、拳の大きさに比例して重量と膂力が変異する。元々アイツのフィジカルが高いのもあるが実家が中華系の武術道場を営んでてな、《大拳》と崩拳が合わさった結果威力はご覧の通りだ」

 

 そこまで話して尚、絶句するものもいたが爆豪のような好戦的な人物は至極楽しそうに深く笑うと次の試合での出番のためA組の陣営から離れていった。

 

 そんな中、拳藤が即攻を仕掛けたのは伏黒にとっても少し意外だった。そんな中で伏黒はふととある存在を思い出す。それは切島に似た個性を持つ鉄哲の存在を。そこまで気がつくと成長してるのはなにも自分だけではないなと再確認させられた。

 

 

《第一回戦最後の第八試合!中学からちょっとした有名人!堅気の顔じゃねえ!ヒーロー科爆豪勝己!vs俺こっち応援してえ。ヒーロー科麗日お茶子!》

 

 爆豪と麗日がプレゼントマイクの紹介のと共にフィールドに入場する。

 

《それでは第八試合スタート!!!》

 

 そして間をおかずに開始の合図が響く。それと同時に麗日が爆豪に向かって走り出す。恐らく爆豪に触れて身体を浮かし、主導権を握るつもりなのだろう。事実、麗日の個性は触れさえすれば格上相手であっても優位に相手どれる強個性。だが、

 

 ボンッッ!!

 

 相手はあの(・・)爆豪。麗日の行動をあっさりと見切ると右手を振るい、同時に麗日目掛けて爆破を浴びせる。これは誰もが予想できていたことだった。爆豪の反射神経は尋常じゃない。何せ相手の動きを見てから反応できるのだから(・・・・・・・・・・・・・)

 

 それはA組ならば全員が知っているはずなのに同じことを繰り返す麗日に疑問を持つ。すると、ふと爆豪の爆破によって生じた煙から何かが飛び出す。その行先に目線をやって伏黒は麗日のやりたいことの意図を察する。確かにこれならば一発逆転が狙えないこともない。

 

 その後はほぼほぼ一方的だった。重心を低くしながら突撃する麗日に容赦なく爆破を浴びせる爆豪。それが何度も行われた。それが原因からか客席からはブーイングが巻き起こる。確かに爆豪は側から見れば女を嬲るクソ野郎に映るのだろう。だがしかしそのブーイングはお門違いではないのかと伏黒は少し呆れる。今なお麗日が足掻きながら構築する()を知らないとするならば尚更。すると、

 

《今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?素面で言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ!帰って転職サイトでも見てろ!さっきの伏黒のブーイングといいお前らは何を見てきたんだ!爆豪はここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろ。本気で勝とうしてるからこそ、手加減も油断も出来ねえんだろうが!》

 

「本当にかっこいいな、イレイザーヘッド…」

 

 解説席から相澤が怒気を含んだ声でそう言った。思わず伏黒がヒーロー名で読んでしまうほど相澤は真剣に怒っていた。まあ、もっともそれ以前にたかだかこの程度で爆豪が凹むほど柔な神経をしていないことはA組の全員が知っている。そしてそれは麗日にも言えることだった。

 

「ありがとう爆豪くん……。油断してくれなくて」

 

「あ゛?」

 

 麗日は朧げな目でそう言うと手のひらを合わせる。すると壊れたフィールドの欠片を空中に蓄え続け、絶え間ない突進と爆煙で爆豪の視野を狭めたことでそれを悟らせなかった瓦礫が流星群のように一斉に降り注ぐ。

 

「勝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!」

 

 裂帛の勢いとともに自重を軽くして突撃する。自身が瓦礫に当たるか可能性も視野に入れずただ貪欲に勝利を求めて。しかし、

 

BOOOOOOOOOOOOM!!!

 

 爆豪が空に向かって掲げた手のひらから超火力の爆破が打ち出す。たったそれだけで麗日の足掻きを一笑に付すかのように瓦礫を一掃する。その衝撃波は麗日本人をも巻き込み吹き飛ばすほどだった。それでもと麗日は立ち上がって足掻こうとするも体がそれについていかずダウン。ミッドナイトが覗き込んで麗日を確認すると、

 

「麗日さん行動不能!二回戦進出は爆豪くん!」

 

 戦闘続行は不可能と判断し、高らかにそう告げる。こうして爆豪勝己の二回戦進出が決まった。そして一回戦の全ての試合が終わった。

 

 

 爆豪が勝利したのを見るとやたら早歩きで次の試合へと向かう緑谷。それとすれ違うように1人の人物が現れる。

 

「なんのようだ拳藤」

 

「お前に会いたくてきた、じゃあダメか?」

 

 一回戦で凄まじいゴリラっぷりを見せた拳藤がそこにはいた。拳藤はニコッと笑いながらそう言う。すると「軟派影野郎」と言いながら血の涙を流す峰田と上鳴が伏黒の二の腕をしばき、少し凹んでいた麗日を含めた女性陣のボルテージが上がり騒がしくなる。ここに味方はいねぇのかと嘆きながら軽く睨むと拳藤は手を挙げて降参のようなポーズを見せながら隣に空いた席に座る。そして、あることに気がつく。

 

「なあ、拳藤」

 

「ん、なんだ」

 

「なんか近くね?」

 

「……」

 

 伏黒の質問に対して拳藤は沈黙をもって返す。気のせいでもなんでも無く、近い。いつもなら席一つ分は確実に開けるのに今では密着しているくらいだ。まさかと思うが八百万の告白を間に受けてるのではないかと思い聞こうとすると、後ろから衝撃がくる。何事かと思いながら振り返るハンドサインで『余計なことを言うな!』と指示される。初見なのに見切れたことに疑問を抱きながら拳藤を見るとうっすら耳が赤いことに気がつく。伏黒はこれ以上の質問は無粋だと思い、内容を切り替えることにする。

 

「どっちが勝つと思う?」

 

「うーん、私はそっちのことは詳しく知らないけど、どっちが勝つかでいうなら言うまでもなく、轟じゃね?」

 

《二回戦第一試合!今回の体育祭両者トップクラスの成績!緑谷ァァ!VS轟ィィ!まさしく両雄並び立ち…今!スタァートッ!!!》

 

 プレゼントマイクの合図と同時に轟が氷結攻撃を仕掛ける。それに対して緑谷は指を犠牲にしたぶっぱでそれを迎え撃った。氷結攻撃を防がれた轟だがなおも氷結を出し続ける。そのたびに指を犠牲にして氷結を砕く緑谷。この構図が5度ほど繰り返された段階で緑谷の負けが濃厚なことを再度認識させられる。

 

「やっぱりこうなるか…」

 

「んー、まずいねこれ。緑谷だっけ?多分持久戦に持ち込みたいんだろうけど先に潰れるよ」

 

「え?なんで持久戦に?」

 

 伏黒と拳藤がこの状況を見て緑谷の分の悪さにうめく。そんな2人の会話を聞いた麗日がなぜ持久戦なのかと聞いてくる。

 

「単純な話だ。轟や爆豪みたいなタイプの個性には限界値があんだよ。麗日、お前にもあるだろ」

 

「あ」

 

「緑谷は多分だがそれを狙ってる。まあ、もっともそれも叶わないだろうがな」

 

「お、おかしいって!デクくんの戦い方はもっとこう……」

 

「クレバーに立ち回ってるってか?だがそれをやるには轟と緑谷は相性が最悪すぎる」

 

 伏黒の言い分は的を得ていた。緑谷の戦い方は相手の行動を予測、いわゆる先読みすることで相手よりも先んじて行動し、生まれた隙に漬け込むというものだ。それは戦闘訓練の際に爆豪との戦闘で爆豪が大ぶりの攻撃を振り切る前に掴んで投げたことから確認された。しかし、

 

「緑谷の先読みは相手の動きを何度もかつ詳しく見たことあることが前提だ。お前ら轟の戦い方を氷ブッパ以外で知ってる奴いるか?」

 

「それはっ」

 

「それに緑谷が勝ったところであの怪我じゃあ、次の試合には出られない。緑谷の試合はこの第二回戦で終了だ」

 

 麗日が反論しようとするも本人も事実であると理解しているからか少し唸ってからフィールドに向き直り、応援する。すると訝しむ拳藤が伏黒に問う。

 

「お前のクラスメイト何がしたいんだ?」

 

「なにってなんだ?」

 

「そのまんまの意味で緑谷だっけ?アイツなんていうか勝つことにこだわってるって感じじゃあないっていうか…」

 

 拳藤の言葉を聞いた伏黒は緑谷に目線を向ける。鬼気迫るところは周りに興奮以上に戸惑いを与えるほどだ。なりふり構わぬ戦いは確かに勝利を前提とした戦い方とは思えないところがある。

 

 そんな緑谷に対しても轟の攻撃の手は緩まず、ついには左腕をも個性によって壊してしまった緑谷。しかし轟は緑谷の手数を捨てた一撃も自身の背後に氷を生み出し、場外負けになるのを防いだ。轟がトドメを刺そうと氷結攻撃を緑谷に浴びせたが、

 

 バキキキキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!

 

 へし折れた指で轟の攻撃を防ぐ緑谷。常軌を逸した防ぎ方に轟を含めA組の生徒達が驚いて緑谷を見る。そして緑谷は痛々しいではすまないほどに変色した右手の指を握りしめると大きな声で轟に宣言した。

 

 「全力でかかって来い!!」

 

 その言葉を聞いた轟はあからさまに不機嫌になる。勝負を急いだのか、それとも接近戦でも勝機を見出したからか緑谷のもとへ駆け出す。が、

 

「遅いな」

 

 第三者である伏黒がそう漏らすほどその動きは普段の一回りほど遅かった。そんな動きを相対する相手が見逃すはずもなく、左足が上がったタイミングで緑谷は腹に自身が壊れない範囲で強化された一撃をお見舞いした。轟が端のほうへと吹き飛ぶ。轟の半身を見ると霜が降りており、口からは白い息が漏れていた。さらに、

 

「攻撃も鈍いし規模が狭い。いよいよMP切れか?」

 

 簡単に避けられる轟の攻撃に底が見え始める。伏黒が考察している間にも緑谷は轟の体にエグめの威力を誇る拳を何度か叩き込むことに成功していた。これは予想に反して緑谷の勝ちか?と伏黒が思っていると

 

「君の!力じゃないか!!」

 

 魂を捻り出すかのように緑谷や轟にそう言う。そこまで聞いて伏黒はようやく理解し、同時に呆れた。緑谷は試合中にも関わらず轟を救おうとしていたのだ。しがらみや怨讐から。極まったお人好しぶりに軽く眩暈がしそうだが、それは轟から放たれる熱波によってさまたげられる。

 

 伏黒も隣に座る拳藤、A組の生徒や会場の観客も皆目の前の光景に目を奪われる。2人の間に何があったのかはわからない。だが、泣きそうだがどこか楽しそうに笑う轟の顔にはしがらみなど何もかもが無くなったかのように見えた。

 

 何度か2人が会話を交わした瞬間、同時に攻撃態勢に入る。轟が炎を出しながら大氷塊を緑谷にぶつける。が、それを緑谷は左足で超跳躍してそれをかわし、右足で大氷塊を足場に轟目掛けて突っ込む。緑谷が向かってくるのを目で捕らえた轟は周りの氷が一瞬で蒸発するほどの熱量を誇る炎を解放。緑谷は超過強化された右手を轟は全てを燃やし尽くす左手を突き出す。

 

 瞬間、冷やされた空気が熱さられて膨張し視界が一瞬白く染まるほどの光と衝撃が発生。セメントスの個性を用いて作った複数枚のコンクリートの壁を難なく粉砕。近くにいたミッドナイトの体が余波で宙に舞うほどの爆風が巻き起こった。

 

「ヤッベーなお前のところやつら」

 

「あそこまでのバカ火力を出せんのはアイツらくらいだ、一緒にすんな」

 

 呆然と呟く拳藤に伏黒は心外だとでも言いたげな態度を取るも凄まじいまでの破壊力に内心驚愕する。少しずつ土煙が晴れていく。そこには背後に展開した氷を支えにフィールド上に留まる轟と場外で気を失い崩れ落ちる緑谷の姿があった。

 

「み、緑谷君場外。轟君、三回戦進出!!」

 

 こうして凄まじいインパクトを残した第一試合は轟の勝利となった。2人の戦いを見届けた伏黒は席を立つ。

 

「そろそろ出番だ。行ってくる」

 

「おう、気をつけてけよ」

 

「それが戦うかもしれない奴に送る言葉かよ……」

 

 伏黒が呆れたようにそう言うと彼女は満面の笑みで快活に笑い返す。そんな拳藤に一瞬笑みをこぼすと控え室へと向かった。

 

 

 二回戦第二試合。尾白VS飯田はこれと静と動の戦いと言う言葉がよく似合っていた。飯田にはどう足掻いても追いつけないと悟っていた尾白はどっしりと構えて迎撃の構えをし、それに対して飯田が個性《エンジン》を用いた高速のヒットアンドアウェイで削るの繰り返し。

 

 最終的に飯田が超必であるレシプロバーストを起動。途中までは徒手空拳と個性《尻尾》の複合技で応戦していた尾白だったが、次第に追いつけなくなり超加速によって威力が高められたブラジリアンキックでノックダウン。勝者は飯田という形で終わりを告げた。

 

《似た個性同士の戦い!勝つのは一体どっちだぁ〜?ヒーロー科、常闇踏影!vs同じくヒーロー科、伏黒恵!レディー!スタート!!》

 

「ダークシャドウ!」

 

「【玉犬】」

 

 そして迎えた第三試合。プレゼントマイクの宣言と同時に常闇は腹から自身によく似た影のような存在を顕現させ、伏黒は手を犬のように形取ると足元の影からシェパードほどの大きさを誇る狼が現れる。

 

「オラァ!」

 

 ダークシャドウの伏黒の頭ほどある拳が迫る。玉犬と共に伏黒は回避、外れたダークシャドウの一撃はコンクリートに深々と突き刺さる。ダークシャドウの一撃はひどく重い。おまけに基本物理攻撃が効かないこともあり弾かれることはあっても怯むことないと下手な増強系の個性持ちよりも遥かに厄介な性能を持つ。

 

 故に伏黒が出来るのは回避か、玉犬を用いていなすかのどちらかだった。攻防がある程度続いた時、いきなりダークシャドウの動きが止まる。

 

「何故だ…」

 

「あ?」

 

「何故本気でこない!我が友よ!」

 

 常闇が激昂する。その様子に伏黒は怪訝そうな顔をしながら聞く。

 

「なんのことだ」

 

「惚けるな!貴様の玉犬は2匹で1匹のはずだ!何故、黒しか出さずに白を出さない!」

 

 その言葉を聞いて伏黒は「あぁ」と常闇の言いたいことを理解して納得する。そして常闇の質問に答える。

 

「出さないんじゃあない。出せないんだ」

 

「なに?」

 

「そう言えばお前らに俺の個性の詳細は話したことなかったな。俺の影絵で作った動物は多少壊されたくらいだったら修復はきくんだ。だけどな?完全に壊されたら二度と元には戻らねぇ」

 

「なんだと…まさか」

 

「そうだ。先の襲撃で俺の【玉犬・白】と【大蛇】は完全に壊された。二度と呼び出すことはできない」

 

 その言葉を聞いた常闇は目を見開きダークシャドウも「マジカ…」と驚愕する。攻防をやめて話をする2人にプレゼントマイクが何事かと実況するのを聞きながら常闇は口惜しそうな顔をするとダークシャドウを構えさせる。

 

「残念だ友よ。お前とは出来れば万全な状態で「話は最後まで聞けよ」…なんだ」

 

 攻撃を仕掛けて来させようとする常闇を手で制すると伏黒は言葉を続ける。

 

「ここからが俺の個性の面白いところでな。壊れた影絵の動物の特性、性質、性能ありとあらゆるものが他のものに引き継がれるんだ」

 

 伏黒の言葉に再度目を見開き驚愕する常闇。そんな常闇を尻目に伏黒は再度、手を犬の形で型取る。

 

「そしてこれが【玉犬・白】の性質を引き継いだ新たな【玉犬】だ。来い」

 

【玉犬・渾】

 

 伏黒の言葉と共に玉犬の体が影で覆い尽くされ、丸い球体となる。それは少しずつ膨張していきやがて直径が伏黒と同程度の大きさへと至る。そして影の球体は揺籃の時を終えたかのように砕け散る。

 

「ウオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 そこに【玉犬・黒】の代わりに現れたのは背中の毛が荒々しく逆立て目と牙を剥いた凶暴な顔つきの伏黒1人をすっぽり覆えそうなほどの巨躯を誇る人狼だった。

 

「悪いな遺憾せん継承が遅くてな、おかげで手間取った。じゃあ、続きといくか」

 

「ああ!来い!」

 

「そうさせてもらう。行け、玉犬」

 

 伏黒の言葉と共に玉犬とダークシャドウが動き爪と拳が衝突する。少しの拮抗が起こったがそれはすぐに破られる。

 

「ヌオッ!」

 

 押し負けたのはダークシャドウだった。爪を振り切った玉犬はそのまま四足歩行へと移行し、ダークシャドウに詰め寄ると爪や牙を用いて攻め立てる。当然ダークシャドウはやられっぱなしでいるはずもなく反撃しようと拳を振るうも機動力でも上をいかれあっけなく避けられては再度攻撃されるを繰り返していた。

 

「くそッ。ダークシャドウ!」

 

「よお、常闇」

 

「しまっ、がぁっ!」

 

「遠中距離主体の奴の手駒が離れたらそりゃあ本体を攻めるわな」

 

 ダークシャドウのことで集中しすぎた常闇に伏黒はあっさりと接近し、背負い投げを敢行。常闇は受け身を取る間もなく地面に叩きつけられる。そんな常闇の腹に伏黒は脚を置いて押さえつける。

 

「ナッ、踏影!」

 

「意識を戦闘の外に持ってくなんて随分と余裕だなダークシャドウ」

 

「グエッ」

 

 常闇に意識を持ってかれたダークシャドウは一瞬だけ視線を玉犬から外してしまう。その一瞬はあまりにも大きくすぐさま玉犬に取り押さえられ、ダメ押しと言わんばかりにいつのまにか顕現していた【蝦蟇】に手と胴体を押さえつけられる。

 

「一応聞くがまだやるか?」

 

「クソッ、参った…」

 

 自身も動けず攻めの要でもあるダークシャドウも完封されることを悟ると悔しさを滲ませながらそう宣言する。

 

「常闇君降参!伏黒くん三回戦進出!」

 

《決まったァァァァ!!!似たもの同士勝負勝ったのは伏黒恵!!つーか、玉犬の姿が変わってなかったかぁ!?》

 

《確かにあれは俺も初見だな。伏黒は隠蔽したりするような性格ではない。となるとつい最近になって気づいたか?》

 

 プレゼントマイクと相澤の声が響く中、伏黒は黙って踵を返す。こうして伏黒の準決勝進出が決まった。

 

 

《二回戦第四試合!!A組のギャング爆豪勝己!!vsB組の女大将、拳藤一佳!!》

 

「こいやぁ、メリケン女ぁ」

 

「ガラ悪っ。地元でよく見たチンピラかよ」

 

 爆豪は手を前に出して前傾姿勢に、拳藤は体を左足を前に大きく半身にし、脚を蟹股気味に前後に広げて配置。腰を深く落とし、左腕は肘を少し曲げ胸の高さ位に。右腕も同じように少し曲げ胸の位置くらいにして構える。

 

《レディー、スタート!!!》

 

 合図とともに爆豪が爆破をブーストに拳藤へ肉薄する。

 

《センテヒッショー!!!》

 

《後手に回れば切島の二の舞だ。取る判断としては間違っちゃいねぇな》

 

 その言葉と同時に爆豪は手始めと言わんばかりに拳藤の横面目掛けて爆破をかます。が、これは巨大化した拳になんなく塞がれ。拳藤はすぐさま拳を縮めると爆豪目掛けて掌底を放つ。直撃しようとする瞬間、拳が拡大。あわや当たると思われるも、爆豪は片手で爆破をすることで回避。飛び退く際にわざと爆破を強めて攻撃にも成功する。

 

《初ヒットは爆豪だー!》

 

 プレゼントマイクの言葉に会場が盛り上がる。勢いづかせてはいけないと判断したのか拳藤は今度は自分から攻めに転じ、拳、脚、膝、拳、脚、脚、肘のコンビネーションが至近距離でめぐるましく拳藤の乱撃が放たれる。

 

「チィッ」

 

 たまりかねた爆豪は咄嗟に飛び退き空に退避しようとする。が、

 

「逃げんなぁ!」

 

「なッ!」

 

 拳藤は見逃さず即座に左手を最大限まで拡大させて振り下ろす。結果、拳藤の剛力によって煽られた風は強風となって爆豪に襲い掛かり、大きく体勢を崩す。そんな爆豪に勢いのまま立ち上がった拳藤が、その場からまっすぐに縦の拳を突き出す。それは切島を下して見せた技、【逕庭拳(けんていけん)】。宙に浮いた状態で体勢を崩した爆豪の胴体に吸い込まれるように拳藤の拳が突き刺さる。

 

 しかし、そこはA組きっての才能を持つ爆豪。拳が胴につきたてられる寸前。拳が当たる直前に掌を拳と胴の間に滑り込ませることで受け止めることには成功した。が、

 

「ごっがァァァァ!!」

 

 そのまま掌ごと腹に押し込まれる。しかも、インパクトの瞬間に拳にねじりが加えられたおまけ付きで。しかし負けじと麗日戦で見せた最大火力を拳藤目掛けて両手で放つ。瞬間、爆豪がまるで弾かれたのように場外目掛けて飛んでいく。凄まじい勢いで飛んでいく爆豪に誰もが拳藤の勝ちを確信する。が、

 

「〜〜〜ッッッッッんなところで終われるかァァァァ!!!」

 

 咄嗟に体を回転させながら爆破をして軌道修正。結果、場外に行かず地面に叩きつけられるで済んだ。

 

《まさに一・進・一・退!!どちらも引くことなく食らいついていくぅぅ!!つーか爆豪、よく拳藤の一撃を食らって立ってられるな!》

 

《あの時の最大火力のブッパで完全に芯を捉えられるよりも前に飛び退くことが出来たんだろ。でなきゃ今の一撃で終わってた》

 

《2人が息を荒くしていく中、会場のボルテージは上昇(あが)っていくぅー!!マジでどうなるか俺たち教師陣営もまるで見当がつかねぇー!》

 

 プレゼントマイクの言う通り会場は大盛り上がりを見せる中、2人は限界を迎えていた。

 

 拳藤は自身の【逕庭拳(けんていけん)】が決まった時、勝ちを確信していた。にも関わらず爆豪によるゼロ距離全力爆破を避けることもできずモロに喰らってしまった。

 

 一方、爆豪は【逕庭拳(けんていけん)】を喰らった影響で腹から灼熱のような痛みを感じていた。そしてさらに致命的なことに挟み込んだ掌が完全に壊れているのか動かないのだ。

 

 故に2人は覚悟を決めた。この一撃に全てを賭けると言う覚悟を。爆豪は砕けた手を無理矢理動かし爆破させ天高く飛ぶとさらに爆破を用いて拳藤目掛けて回転しながら近づく。それに対して拳藤は左足を大きく下げ解放した掌を前に持っていき、拳を弓のように大きく引いて構える。そして互いが技の射程距離に入った瞬間、必殺の一撃が解放される!

 

 

榴弾砲・着弾(ハウザー・インパクト)ォォォォ!!!」

 

 

破城拳・一天(はじょうけん・いってん)!!!」

 

 

 片や落下と同時に加速、爆風により回転まで付加して突っ込んだのち、生身での最大威力の爆風を放つ榴弾の如き一撃。

 

 片や背骨を含む全身27箇所の関節の回転を連結加速させることで音の壁をを超える打突の瞬間に拳を拡大させて放つ最強の英雄(オールマイト)に準ずるほどの威力を誇る一撃。

 

 ぶつかり合った衝撃は馬鹿げたまでの暴風を巻き起こし会場全体を包み込む。伏黒は身を乗り出して勝負の結末を見守る。勝負を制したのはクラスメイト(爆豪勝己)幼馴染(拳藤一佳)かを見届けるため。土煙が腫れていき、フィールドが視認できるようになる。結果は、

 

《ダ、ダブルノックダウン〜〜??!これは一体どうなるんだぁー!!》

 

 プレゼントマイクの言葉にミッドナイトがドローを宣言しようとした瞬間、ズル…ズル…と何かが這いずるような音が聞こえてくる。会場全員の目線がそちらに向かう。最強の一撃のぶつかり合いを制したのは

 

「拳藤さん戦闘不能!爆豪くん三回戦進出!」

 

 ミッドナイトの宣言と同時に膨大な歓声と万雷の拍手が鳴り響く。誰もが爆豪と拳藤の勝負を讃える中、爆豪、轟、飯田、伏黒のベスト4が揃ったことでいよいよ体育祭も大詰めとなった。





まだ準決勝も決勝戦も残ってんのに決戦のノリで書いてしまった。
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