伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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最近になって両面宿儺とワンピースのクロスオーバーを書いてみたいなって思ったけど確実にエタるなって思って書くのやめました。

後、今回は一万字に迫ったためまあまあ長いです。


閉幕、そしてコードネーム

 

 あの晩、拳藤主催の伏黒が優勝したことを祝った。2人きりで盛り上がりこそしなかったかが、一人暮らしの伏黒にとっては珍しい経験でもあった。そして次の日

 

「それじゃあ。約束通り特訓といこうか」

 

「うん!よろしくね、伏黒君!」

 

 伏黒は緑谷と共に雄英に来ていた。あの後、緑谷はどうやら許可が取れたらしく相澤に3時まで使っていいと許可がおりた。それが『トレーニングの台所ランド』、略してTDLである。余談だが2人揃ってこの略し方はちょっと不味いのではと思った。

 

 緑谷の両手は完治したらしくギプスが外れていた。しかし、右腕から見られる生々しい傷跡や腕の形が歪なのを見るにこちらに来てまだ時間が経っていないがかなりの無茶をしてきたことが窺える。

 

「それで今日は何をするの?」

 

「まあ…そうだな。取り敢えず個性を基礎から学ぶってことから始めるか」

 

「こ、個性の基礎?」

 

 伏黒が悩んで提案したことに緑谷は不思議そうに首を傾げる。そんな緑谷を見ると伏黒は両手をあわせ犬の頭を表現すると【玉犬・渾】を呼び出す。

 

「ふ、伏黒君!?」

 

「ひとまず実践形式でお前の動きを見る。出来ることを最大限やってみろ」

 

「ちょっ!そんないきなり…ってうわぁぁ!?」

 

 いきなりの提案に驚く緑谷目掛けて【玉犬・渾】は爪を立てずに拳を地面に叩きつける。緑谷が咄嗟に避けるとさっきまで立っていた場所に【玉犬・渾】の拳が突き刺さる。

 

 それを見た緑谷は伏黒が全力ではないが本気でこちらに攻撃していることを否が応でも理解したのか覚悟を決めた顔をしてブツブツと呟くと足からバチバチと緑色の稲妻にも似た光が見え始める。右に避けようとしてそれに追い縋るろうと【玉犬】の重心が右に向いた瞬間、方向転換して左に跳んで【玉犬】の攻撃範囲から逃れる。

 

 予め緑谷が引き出せるOFAの出力を聞いていた伏黒らたった5%ぽっちなのにも関わらず一歩で5メートル近く跳べることに驚愕しつつ緑谷の長所を再認識する。確かにOFAの性能は凄まじい。しかし緑谷の最大の武器というのは得た情報を使って攻略法を考えそれを最高速度で実践するというところにある。現に大会で最も使う頻度の高かった【玉犬】に対してしっかりとフェイントをかましていた。だがそれでも

 

「ちくしょう!やっぱり振り切れないか!」

 

 【玉犬】を振り切るのは今の緑谷ではどう足掻いても不可能だった。諦めたのか止まって振り返ると【玉犬】が拳を倒れ込むように除け、ガラ空きになった顎目掛けて一撃見舞おうとする。しかしそれは【玉犬】が首を軽く左にずらすことで回避すると驚く緑谷の顔面を掴んで押さえ込み拳を叩き込もうとする。

 

「はい、そこまで」

 

 その直前に伏黒が個性を強制解除。【玉犬】の形が不定形となりバシャという音共に崩れ去る。伏黒が緑谷の元へ歩いていくと緑谷は呆然としながら寝転がるっていた。

 

「絶対に当たったと思ったのに……」

 

「なんて言うかお前は固いっていうか意識がチグハグだ。いくら先読みの能力が高くてもそれじゃあ意味がない。だから今お前は寝そべってるんだ」

 

 欠点をいくつか挙げる中で伏黒は緑谷の個性の扱いの致命的な弱点を悟る。本来であればあり得ないが元々無個性であったが故の弊害とも言えるものだった。そんな時、ふとある疑問が浮かんでくる。

 

「というかオールマイトはOFAの使い方を教えてないのか?」

 

「あの、なんていうかオールマイトは僕と違って感覚派で特に教えられるようなものがなかったぽくって」

 

「いや、そんな奴を一年の教師にすんなよ」

 

 何となく察してはいたが、オールマイトまさかまさかの感覚派。100歩譲って3年か2年ならわかる。緑谷の件や色々と実績があるとは言え、まだヒーローのいろはを習うべき一年坊に感覚派をあてがうなんてマジか?と思いつつ伏黒は毒ずく。

 

 伏黒はいっそのこと指摘してやろうかと考えたが直ぐにやめた。欠点を指摘したのにこれ以上は蛇足だと判断したからだ。わからないんだったら何でもかんでも指摘していいという訳ではない。考えぬいた時に導き出した答えは教えたとき以上に身に付きやすい。それに緑谷の能力を考えればそっちの方がためになる。

 

 それでもこれっぽっちでハイお終い、はいくら何でも無理があると思い伏黒はもう少しだけアドバイスする。

 

「お前は判断能力や分析能力、他にも思い切りや決断力は高い。それは騎馬戦や障害物走で知ってるし利用法も理解してるのはわかった。じゃあ何でこうも一方的に負けたと思う?」

 

「……ごめんわからない」

 

「元々無個性だった弊害だな。お前は個性自体を特別視しすぎてる」

 

「それってどういう…」

 

「こっからは自分で考えろ。ってことで一旦休憩だ」

 

 伏黒はそう言いながら引き留められるのを無視して緑谷の元を離れると近くに置いてあった水筒を開けて中に入れてあったお茶を飲む。そうして数分ほどぶつぶつと呟く緑谷を眺めながら待っていると、

 

「そうか!OFAは、個性は体の一部!別に必殺技ではなかったんだ!だったら、もっと…もっとフラットにOFAを考える!」

 

「考えに至るのがはやいな」

 

「あ、伏黒君!もっかい【玉犬】を出してくれない!?」

 

 緑谷の注文に伏黒はいいぞとだけ答えると影から再度【玉犬・渾】を顕現させる。考えに至るのが早いことに驚きながらもそれは妥当であったと伏黒は考え直す。思考は元々柔軟だった。それは戦闘訓練や体育祭だけでなく今この瞬間も伏黒の前で見せていた。

 

 【玉犬】が緑谷に向けて突撃する前に緑谷は腕に発動させたOFAで地面を砕くことで生じた大ぶりの石塊を【玉犬】目掛けて投擲する。【玉犬】がそれを爪を用いて問題なく弾いている間に視野が狭まり生まれた【玉犬】の死角に回り込むと再度強化した腕で一撃を見舞おうとする。

 

 が、それを読んでた【玉犬】はその一撃を受け止めると緑谷を振り回して地面に叩きつけようとする。それも読んでいたのか緑谷の足からバチバチと緑色の稲妻にも似た力が漏れ出る。が、それが足全体に行き渡るよりも早く地面に叩きつけられた。

 

「やっぱり、イメージ喚起してからじゃあ間に合わないか…」

 

「惜しいな。さっきよりマシだがまだ固い。オールマイト、いや切島を思い出してみろ」

 

「ん?切島君を?」

 

 伏黒の助言に不思議そうに首を傾げるが無駄なことを言う筈がないと思った緑谷はブツブツと考え始める。すると何か思いついたのか呟きが止まり顔が少しずつ明るくなる。そして、考えに至ったのか伏黒のいる方へ顔を上げる。

 

「そうか!」

 

「わかったか?」

 

「うん!そうだよ、戦闘訓練で切島君は個性を発動させている時は何もピンポイントに一部分だけを硬化させてたわけじゃなかった!全身を気張るように固めてたんだった!」

 

 緑谷のテンションが高まり声が跳ねるように明るくなる。そしてそれに比例するかのように先ほどまで一部分だけに集中していたはずの緑色のエネルギーが腹を中心に体全体に巡り始める。

 

「それに初めからスイッチを入れとけばさっきみたいに一手遅れるなんて事もなくなる!そう!全身に行き渡るように、満遍なく広がるようにすれば!全身を常時身体許容上限(5%)にすれば!」

 

 そして緑谷がそう言い終わる頃にエネルギーは緑谷の全身に行き渡った。この力を緑谷は後にこう呼んだ『フルカウル』と。それを見届けた伏黒は【玉犬】に声をかける。【玉犬】はまたかと少し嫌そうな顔をしたが緑谷を見ると唸り始めた。

 

「どの程度保つ」

 

「わっかんない」

 

「じゃあ、やるか?」

 

「お願い!」

 

 勢いよく頼む緑谷を見た伏黒はようやく辿り着いた答えに少しだけ頰が緩む。これこそ増強系が本来あるはずの姿。一部一部を使い分けて強化してた頃はどうしても相手の後手に回ることが多かった。だが、これを全身に張り巡らせて使いこなせたとするならば。いままでの緑谷とは一線を画すほどの力を得られる。

 

「ひとまず5分、いや3分だ。そこから始めてみよう」

 

「わかっ、た!」

 

「余裕があればでいい。その間に【玉犬】に一発入れてみろ。それじゃあヨーイ、ドン」

 

 合図と同時に手に持ったスマホに設定された3分のタイマーが起動する。それと同時に【玉犬】が駆ける。未だ慣れていないのか【玉犬】の一撃を喰らうと体に巡らせていたエネルギーが消え失せる。

 

「どうする、やめるか?」

 

「っ!」

 

 仰け反りながらも伏黒の言葉に緑谷は歯を食いしばると。すぐに腕だけにエネルギーを収束させて地面をぶっ叩く。それで生じた土煙に緑谷は身を投じる。

 

「それじゃあさっきと同じだな」

 

 伏黒の言葉を肯定するように【玉犬】は問題なく前に進み緑谷に一撃かまそうとする。しかし、それは凄まじい勢いで投擲された石塊によって阻まれる。先ほど以上の速度で飛んできた石塊に【玉犬】は少しの間足を止められる。するとその隙をついて緑谷が土煙から現れる。それを見た伏黒は先ほどの行動が再度全身にエネルギーを張り巡らせるための布石であったと悟る。

 

 足を止めた【玉犬】目掛けて緑谷は飛びかかりながら右腕を振り下ろす。しかし【玉犬】はこれを咄嗟に前に進むことで回避すると緑谷の背後を取る。

 

「うぅしろ!」

 

 そうして振り返ると【玉犬】が拳を倒れ込むように除け、ガラ空きになった顎目掛けて一撃見舞おうと上半身を起き上がらせて蹴りを見舞おうとする。先ほどと同じ手段に伏黒は疑問を抱き【玉犬】はどこか呆れたように避けると先ほど同様、緑谷の頭目掛けて手を振り押そうとする。が、緑谷がいないことに気がつく。その事実に固まる【玉犬】。

 

「SMAAAAAAAAAASSSH!!!」

 

 そんな【玉犬】の頭目掛けて上にいた緑谷が掛け声と共に拳を叩き込む(・・・・・・・・・・・・)

 

「考えたな」

 

 伏黒は第三者であったが故に見ていた。あの時、緑谷は蹴りを放ったのではない【玉犬】の頭上に回り込むため一手だったのだ。基本的に緑谷は二次元的に戦い続けていたこともあって【玉犬】は三次元的には動かないと思っていた。それ故に生まれた思考は【玉犬】が緑谷を見失い隙を生むには十分すぎるほどだった。

 

 視覚外から一撃を貰い、たたらを踏んだ【玉犬】を見て伏黒は個性を強制解除する。それと同時にスマホからアラームが鳴り3分経過していたことを知らせる。それと同時に緑谷は個性を解除するが先ほどとは違って顔をこれでもかと明るくしながら伏黒の元へと向かってくる。

 

「や!やった!見た、見ててくれた!伏黒君!僕今すっごい個性を使いこなせてた!」

 

「語彙力が終わってるぞ。……まあ、でも【玉犬】を殴り飛ばせたのは大したものだと思った。今のを体育祭でやれてたら爆豪相手でもいい線いってたと思うぞ?」

 

 伏黒の言葉に嘘偽りはなかった。いくら油断していたとはいえ個性を得て間もないいわば小学生と何ら変わらないほどに個性の扱いが下手くそな人間が【玉犬】に一撃を加えるというのはあくまでも目標であって実際にできるとは思わなかった。

 

「じゃ、じゃあ!もう一回お願い!今のを忘れたくないんだ!」

 

「いいぞ。【玉犬】もやる気だしな。次は俺も参戦するがいいか?」

 

「願ってもない!」

 

 伏黒が【玉犬】と共に前に出ると先ほどよりも澱みなくエネルギーを全身に巡らせる緑谷。それを見た伏黒は伸び盛りもいいところだなと思いつつ笑うと緑谷目掛けて突っ込んだ。

 

 

「お疲れさん」

 

「伏黒君もお疲れ」

 

 あれから昼休憩や小休憩を挟みながらひたすら戦い続けTDLの使用時間が終わりを告げたこともあって雄英から出てくる2人。入る時と少し違う点があるとするならば伏黒はこれといった怪我が見当たらないが緑谷は全身に怪我が見て取れた。普段であればリカバリーガールに見てもらうところだが、今回出張ということもあって治癒を施してもらうことができなかった。

 

「今日は本当にありがとう。伏黒君がいなかったら僕は個性を無駄遣いしてたところだよ」

 

「別にいい。そういう約束だからな」

 

「あの、その、かなり厚かましい自覚はあるんだけど「明日はやらないからな」…ですよね」

 

 明日も特訓に付き合ってくれないかと頼み込む緑谷の言葉を遮って伏黒は半ば食い気味に断る。肩を落として凹む緑谷だが伏黒は何も面倒だからやらないのではない。今日は体育祭明け。本来であれば互いに消耗して体を休ませるべき期間であったのだ。1日だけならまだ良かったのだが、連日ともなれば伏黒はともかく手術するレベルの大怪我を負った緑谷には無茶があった。

 

 伏黒がオールマイトに頼まれた注文は緑谷に無茶をさせないこと。頑張りに手を貸すことはあっても無理難題や無茶には使い時でない限り決して手を貸さないと誓った。故に伏黒は緑谷の願いを断ったのだ。

 

「それじゃあ、また明後日」

 

「うん、また明後日会おう。伏黒君」

 

 そう言うと校門を出てお互いに違う道を歩む。こうして伏黒と緑谷との特訓は幕を閉じた。

 

◇ 

 

 体育祭の後の振替休日が終わり、今日から普通の学校生活が戻る。だが雄英体育祭が行われたことで伏黒にとっては普段が普段ではなくなっていた。

 

「ねぇ君って伏黒恵くんだよね」「優勝おめでとう!」「あ!雄英の一位の人だ!」「へぇ、あれが伏黒。テレビで見るより少しガタイがいいな」「チッ、個性に恵まれただけの奴だろ」「ハァハァ、ん、伏黒君かぁ…」

 

 雄英に来る道中での歩き、電車、それら全てで伏黒は声をかけられた。内容は様々で伏黒の存在に気がついてただ声をかけた者、素直に優勝を祝う者、カメラを向けて写真を撮る者、感想を述べる者、嫉妬からか悪態をつく者、……何故か興奮する者と十人十色だった。

 

 多少覚悟していたとはいえ、伏黒はあまり注目されることというか善意を当てられることに慣れていない。雨のベタつきも相まって少しだけストレスが溜まっていた。気分が下がりながら教室に入るとそこには普段よりも騒がしくもどこか嬉しそうに話し合うクラスメイトの姿があった。

 

「お!おはよう伏黒!その気怠げな様子を見るにお前も相当に相当人波に揉まれたみたいだな!」

 

「仕方ないと思うわ。私も何人かに声をかけられたけど伏黒ちゃんはその比じゃなかっただろうし」

 

「実際、我が友の烈火の如き活躍ぶりは皆の心を掴んでいた」

 

「羨ましい疲れかただな。俺に至っては子供達にドンマイコールだぜ?マジで泣けてくるわ」

 

 どうやら伏黒以外にも体育祭を機に多くの生徒が一般人に声をかけられるようになったようだ。というかそれもその筈で雄英の体育祭は唯一全国の放送を許された高校であるためその影響力は尋常じゃないくらい大きい。故にプロだけでなく一般市民たちの目にどの学校よりも早く映るためアピールすることが出来てしまう。改めて雄英のスゴさを実感する生徒達。すると少ししてから担任の相澤がクラスに入ってきた。

 

「おはよう」

 

「「「おはようございます!」」」

 

 一度示し合わせたかのようにピタリと喋る声が聞こえなくなるも相澤の挨拶に元気よく挨拶を返すA組の生徒達。

 

「早速だが今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ」

 

 その言葉にクラスに緊張が走る。伏黒としては相澤がこのセリフを吐くときが今のところ雄英体育祭かクラス委員を決める時とかなり学校ぽいことをやる時の前振りだと思ってる。後、相澤が思ってる以上にエンタメしてるとも思ってる。しかし今回は前回に引き続き意外と重要な内容で静けさの中、相澤が口を開く。

 

「コードネーム。所謂、ヒーロー名の考案だ」

 

「「「「胸膨らむヤツきたァ!!!」」」」

 

 諸手を挙げて歓喜に沸くA組だったが相澤の圧により一瞬で静かになる生徒達。静かになったことを確認した相澤が説明を続ける。

 

「というのも先日話したプロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される2~3年から。つまり今回一年のお前らに来た指名は将来性に対する興味が高い。卒業までにその興味がそがれたら一方的にキャンセルなんてことはよくある」

 

「頂いた指名がそのまま自身へのハードルになるんですね!」

 

「そう。で、その集計結果がこれだ」

 

相澤が手に持っているリモコンのスイッチを押すと、黒板に「A組指名件数」という文字が浮かび上がり、その下に各生徒への指名結果が横棒グラフで映し出された。

 

伏黒:4056

轟:3652

爆豪:3488

飯田:352

常闇:301

尾白:205

上鳴:202

八百万:108

麗日:20

切島:14

 

「例年はもっとバラけるんだがな。今回は例年よりも盛り上がった影響からか表彰に上がった三人に注目が偏った」

 

「だぁ~、白黒ついた…」「伏黒ちゃん凄いわ。3000通り越して4000を突入してる」「ふ、俺も精進せねばな」「おう…ありがとう」「ヒーロー事務所ってこんなにあんのな」「…流石ですわ伏黒さん」「ほとんど親の話題ありきだろ」「わぁ~指名来てる~!わぁ~!」「無いな!あんな無茶な戦い方すっから怖がられたんだ」「うん…」

 

 上から高い順に表示される指名結果。伏黒、轟、爆豪の大会でのスリートップが突出しているが麗日や切島を除く指名されたメンバーも3桁に突入しているあたり先ほども確認させられた雄英体育祭の影響力の凄まじさを物語っている。

 

 それ見た上鳴は上を向いて少しだけ嘆き、蛙水と常闇は伏黒を八百万は轟を流石だと賞賛し、伏黒と轟はそれに応え、麗日は飯田の肩を揺らしながら目に涙を浮かべさせて喜び、峰田は緑谷の肩を叩きながら指摘すると緑谷は微妙そうだがさもありなんといった顔をした。各自、様々な反応を示していると、再び相澤が口を開く。

 

「この結果を踏まえ、指名の有無に関係なくいわゆる職場体験に行ってもらう」

 

「職場体験?」

 

「ああ。お前らはUSJん時一足先に敵ヴィランとの戦闘を経験してしまったが、プロとの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってことだ」

 

 そこまで聞いた伏黒はこの学校の教育の力の入れ具合に改めて驚嘆する。誰が言ったかプロはいつだって命懸け。その言葉に見合うように犯罪率が低くなった昨今であってもプロヒーローの殉死率は決して低くない。

 

 そこに学生を放り込むとなるとそれ相応のリスクを背負う羽目になる。それを許しているということはよほどプロ側の実力が凄まじいか、学校側が信頼されているか、あるいはその両方か。いずれにせよ何にせよ学びきれてない一年を送り出す度胸と資産は凄まじいものである。

 

「そこで必要となるのが……」

 

「そう!ヒーロー名よ!」

 

 突然教室の扉を開き、中に入ってきたミッドナイトが相澤の言葉を横取りする。

 

「学生時代に付けたヒーロー名が世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!」

 

「…まあそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうの出来んからな。将来自分がどうなるのか。名を付けることでイメージが固まりそこに近づいていく。まさに『名は体を表す』ってことだ。いい例はオールマイトとかな」

 

 相澤の説明が終わると生徒達は配られたフリップポードに自分のヒーロー名を考え始めた。そしてそこから15分後。青山が席を立ち教卓にフリップボードを置くとヒーロー名を発表。

 

I can not stop twinking (キラメキが止められないよ☆)

 

 まさかの短文である。ありなのかとクラスメイトの誰もが思う中、ミッドナイトは「うーん、Iを取ってcan'tに短縮したほうがいい」と言っているあたりありらしい。そして次に芦戸が前に出る。嫌な予感が伏黒の中を巡るとその予感は的中する。

 

「エイリアンクイーン!」

 

「大喜利か」

 

 飛び出したネーミングに伏黒は思わずつっこむ。まさかまさかの血が強酸性のアレである。流石にミッドナイトもやめたけと待ったをかける。「ちぇー」と言いながら下がる。場を行きにくそうな空気が満ちる。するとなんて事は無さそうな顔をしながら蛙水が手を上げると発表する。

 

「小学生の頃から考えてたの。フロッピーよ」

 

 先ほどの二つ(ネタ枠)とは打って変わってとても安心感を覚えやすいヒーローネームが登場。そしてこれをきっかけに凝り固まった空気も流れが良くなり様々なヒーローネームが飛び出してくる。

 

 切島の烈怒頼雄斗(レッドライオット)、耳郎のイヤホンジャック、障子のテンタコル、瀬呂のセロファン、尾白のテイルマン、砂藤のシュガーマン、芦戸のピンキー、上鳴のチャージズマ、葉隠のインビジブルガール、八百万のクリエイティ、轟のショート、常闇のツクヨミ、峰田のグレープジュース、口田のアニマ、麗日のウラビティ。ポップだったり格好良さに寄せてたりと様々な名前が出てきた。

 

「思ったよりもスムーズ!残りはやり直しの爆豪くんに飯田くんと緑谷くん。あとは伏黒くんね!」

 

 ミッドナイトの言葉にクラスメイトの視線は4人に当てられる。それを受けた伏黒は少しだけ焦っていた。考えのある爆豪や考えの多すぎる緑谷とは異なり、伏黒はそもそもヒーローネームを考えるという概念がこの授業を受けるまでの間、一度もなかったのだ。ならば自身がヒーローを目指すきっかけを思い出すも内容が重いしあまり参考にはならないと旦那。

 

「悩んでるわね。伏黒くん」

 

 いつの間に机に肘を置いて顔が恐ろしく近い距離にいるミッドナイト。顔が近いのもそうだが服装がよく規制にかからないなと言いたくなるレベルということもあって伏黒は咄嗟に顔を横に向ける。

 

「すみません。こういうの考えるのって何気に初めてですので」

 

「え、一度もないの?ホラ、幼稚園とか小学生、或いは厨二病を患った時とか!」

 

「俺が厨二を患った前提で話を進めるのはやめてください。……憧れるようになったのは一年位前なんですよ」

 

 伏黒の言葉に「なるほど…」と言い口元に手をやり熟考するミッドナイト。そうしてしばらくしてから口元に当てていた手を伏黒に指す。

 

「伏黒くん。あなたの個性は多彩さが売りよね?」

 

「まあ、八百万には劣りますが…」

 

「だったらそれを題材にしてみたら?そこに影を織り込むのもありだしね。それでピンと来たらそれにしなさいな」

 

 そう言うとミッドナイトは伏黒の席から離れると教卓に戻る。少し考えをしている間に飯田がヒーローネームを飯田にしているのを見かける。やはり名前でいいのかと考えているうちにミッドナイトの言葉が頭を巡る。そして、

 

「あ」

 

 ふと浮かんだ言葉をそのまま書くと伏黒は教卓にフリップボードを置いて発表する。

 

「シャドウヒーロー《シャドウシュピール》で」

 

「いいわね!意味はなんて言うの?」

 

「ドイツ語で影の演劇です」

 

「うん!多彩さと影が見事にマッチしてていいと思うわ!」

 

 こうして伏黒のヒーローネーム《シャドウシュピール》が誕生した。あとからできた緑谷は《デク》にしてOKが出たが、爆豪は《爆殺卿》にしたがさっきの《爆殺王》同様にヒーローがつけていい名前ではないと却下されていた。

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