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約一年越しの再会。そんな久々の再会に伏黒が思ったのは懐かしさや飯田の安否もそうだがそれ以上に『強い』、その一言だった。【
確かに伏黒の一撃はヒーロー殺しの顔面を捉えていたし、現に吹き飛びもした。だが、伏黒は先ほど放った一撃が完全に決まってないことを理解していた。それは何故か、軽かったのだ異様に殴り飛ばした際に感じたヒーロー殺しの身体が。本来ではあり得ない感触に伏黒は心当たりがあった。
「
相手の一撃をこちらの触れた接点でもって、相手と一瞬にして同化することで吸収するか、あるいはその一撃の方向性を逸らし、攻撃の軌道を変化させてやることで敵の技を無効にし反撃に繋げる高等テクニック。それだけで流しきれなかったからなのか大袈裟に後ろに飛ぶおまけ付きで完全に伏黒の一撃を殺し切った。何年か前に拳藤が使用していたのを思い出す。
「その声、ハァ…誰かと思えば伏黒か」
ユラリと幽鬼のように土煙から姿を現すヒーロー殺し。やはりというかなんというか拳がぶつかったと思わしき跡はあっても怪我らしい怪我はまるで見られなかった。
「覚えてたようで何よりだよ、ステイン」
「ごめん!遅れた伏黒君!って、飯田君!」
「ハァ…増援か。面倒な」
ヒーロー殺しが伏黒の手札を把握しているからなのか歩いてくる。それと同タイミングで緑谷が駆けつける。それを見たヒーロー殺しは警戒からか立ち止まると半歩下がって様子を見る。怪我人が2人いる以上、気をつけなければいけないことが3倍に増えていて流石にどうしたものかと迷った矢先に緑谷の登場は伏黒にとってありがたいものだった。
「それにしても『助けに来た』、か。随分とヒーローらしいセリフを吐く様になったじゃあないか。だがお前も知ってるだろ、伏黒。俺はそいつらを殺す義務がある」
「クソみたいな義務だな、オイ」
「そう言うな。一年前も教えた筈だしお前も知ってる筈だ。世の中にはヒーローを名乗ること自体が恥である存在にも関わらず嬉々として名乗ってくる害悪な存在がいる、と。だが、お前はそれでも俺の道を阻もうとする。王道なヒーロー精神大いに結構。だがな意思と意思がぶつかり合うんだ、そうなれば当然」
その一言で締めくくると同時に放たれるのは一年越しに感じるヒーロー殺しの殺気。緑谷の体から汗が吹き出し、伏黒は背筋に氷柱を突っ込まれたと錯覚するような冷たい感覚が全身を走る。変わらない。この目の前の男は過去も現在もそしてこれから様々なことが起こるであろう未来でもこの信念を捻じ曲げることはないのだろう。それを理解した伏黒と緑谷は拳を構えて迎撃の準備をする。すると後ろから飯田の声が響く。
「逃げろ!君たちにはなんの関係もない筈だ!」
「少し黙ってろ」
「そんなこと言うなよ…それにそれを言ったらヒーローは何もできないじゃないか!」
飯田の言葉に伏黒と緑谷はそれぞれの意見を発することで断る。今の伏黒と緑谷の勝利条件は後ろにヒーロー殺しの個性によって身動きが取れなくなって転がる2人をカバーしつつエンデヴァー、ナイトアイなどの戦闘能力が高く対人戦に秀でたヒーローと接触すること。欲を言えば今この瞬間でヒーロー殺しを退ける。
「それに困っている奴がいたら手を差し伸べるのは当たり前だ。俺たちはヒーローなんだから」
「伏黒君の言う通りだ。それにオールマイトも言ってた、お節介はヒーローの本質なんだって」
前傾姿勢になって構える伏黒とニッと笑いながらファイティングポーズを取る緑谷は各々の意見を述べる。それを聞いたヒーロー殺しは酷く喜ばしそうに笑うと
「ハァ……良い!」
予備動作がまるで感じられない不可思議な動きで緑谷との間合いを詰めると刀を大きく振るう。
「なぁッ!?」
「【脱兎】!緑谷を弾け!」
驚く緑谷を伏黒は【脱兎】を緑谷の足元で呼び出すことで緑谷は押し出される様な形で空へと弾き飛ばされる。何体かの【脱兎】は切り裂かれ影に戻ったものの群にして個である【脱兎】にとって痛手たり得ない。気にせずに突っ込む伏黒に緑谷へ切りつけた刀をすばやく翻して切りつけようとする。が、何かに引っ掛かったように動かなくなる目線を向けると刀にへばりつく複数体の【脱兎】がいた。ヒーロー殺しは咄嗟に武器から手放し、他の武器を取り出そうとする。
しかし、それよりも早く伏黒と空に飛ばされた緑谷が一撃を放つほうが早かった。ヒーロー殺しがニヤリと笑いながら伏黒を見つめる間に両者の攻撃がヒーロー殺しをとらえた。今度こそ直撃して仕留めたと確信する2人。
「やるじゃないか2人とも」
そんな考えを嘲笑うかの様に左手で緑谷の右手で伏黒の攻撃を受け止めるヒーロー殺しがそこにはいた。
「「は?」」
思わず呆然としてしまう2人。確信していた。個性があくまでも拘束系であって増強系ではないヒーロー殺しがこの一撃を止めることが出来ないと。喰らえば気絶、あまくても確実に身動きに制限をかけられると。だが、現実は攻撃を容易く受け止めるヒーロー殺し。何事かと伏黒は考えながら視線が足元へと向かう。そこにはバキバキに割れたアスファルトが目にうつる。そして頭をよぎる化勁の2文字。
そんな2人の生まれた隙を歴戦のヴィランであるヒーロー殺しが見逃す筈がなかった。まず左手で緑谷の腕を掴み経穴を突くと痛みで硬直する緑谷を伏黒目掛けて投げつける。伏黒は緑谷を咄嗟に受け止める。
そうして両手の塞がった伏黒目掛けて舌根と雁上を、痛みと投擲によって身動きの封じられた緑谷に目掛けて稲妻と夜光と伏兎。それぞれ急所に当たる五箇所を両手で的確に撃ち抜く。痛みが全身を駆け巡り受け身も取れないまま地面に叩きつけられた2人は悶える。とりわけ伏黒よりも一発多く急所を打ち抜かれた緑谷はその場で吐瀉物を吐き散らかす。
威力が高かったわけではない。組屋の一撃に比べれば雲泥の差だ。しかしそれでも鋭さと狙われた場所があまりにも違いすぎた。結果、個性を使わずしてヒーロー殺しは緑谷と伏黒の動きを封じるのに成功した。
「確かに悪くない一撃だった。だが、緑谷だったか?伏黒はまだしもお前の一撃は軽すぎる。それに2人ともその技を習得したのはかなり最近だな。ハァ…付け焼き刃な分、直線的で読むのは容易かったぞ」
なんて事はなさそうにそう語るヒーロー殺しに伏黒と緑谷は絶句する。そうじゃないと。
明らかに決まった一撃だった。オールマイトでもよろける程度には。にも関わらず目の前のヴィランは少し手をグッ、パーと握りを確認するだけでなんの痛手も負っていない。ここまで強くなかった筈だ。伏黒のそういう考えに気がついたのかヒーロー殺しは呆れた様に話す。
「1年間で強くなったのは自分だけだとでも?ハァ…甘いな、甘すぎる。確かに個性がバレて戦いづらくなった。だから俺が使命を投げ出すとでも思ったのか?」
ヒーロー殺しの活動は一年前の伏黒との一戦以降、半年ほどピタリと止んでいる。それはひとえに伏黒と警察、ヒーローの手によって拡散されたヒーロー殺しの情報が理由だった。ヒーロー殺しの強みはあくまでも未知という部分にあった。個性が未知であったからこそ防ぐ手立てがなくやられてしまう。そういう事例が多かったから。しかし分かって仕舞えば対策のしようがある。結果的に今まで問題なく狩れていたレベルの相手に苦戦することとなった。
故にヒーロー殺しは考えた。果たしてこのままでいいのかと。粛清すべき相手はまだまだいるのにここで折れていいのかと。否、断じて否である。しかし今の自身の力ではエンデヴァーなどには遠く及ばないどころか手の内が知られた以上、命を賭しても届かないことなど容易に想像できた。そこでもう一手増やすべくとあるものに手を伸ばした。
それが『武術』である。今の超常社会において武術を嗜む者はいてもそれを専業としてのめり込む人間は皆無だった。理由は単純だ。武術のイロハを習うよりも個性を鍛えた方が早いからだ。
武術は言ってしまえば砂で城を作るようなもの。より素晴らしく見せるには一つ一つ地道にそして繊細に学び、行動に移していく必要がある。それ故に扱えるようになるまでにそれ相応の時間を要する。それに対して個性は単純に辛いがそれだけ。鍛えれば鍛えるほど手早く、それこそ数ヶ月程度で強くなれる。それに現代社会において地味なものより華々しいものが目に映りやすいからこそ武術は個性黎明期から少しずつ廃れていった。
しかし、ヒーロー殺しはというか一部の人間は違った。知ってしまったのだ武術の奥深さを。地味だが、身につけて達人と呼ばれる人間たちの領域に入り込むほどに磨いて仕舞えば手がつけられないほどの脅威を発することを。それに気づいたヒーロー殺しはすぐさま行動に移した。
日に20時間を超える鍛錬の連続。終える条件は体が動かないと拒否反応を示した時か失神して強制終了するかの二択だった。狂気と妄執の狭間の中でヒーロー殺しの執念は花を咲かす。当時、トップ10入りを果たしていた具足系ヒーロー【ヨロイムシャ】に致命傷を与えるという形で。
そうして一度は聞かなくなったヒーロー殺しの名はまたも大きく広まる。より強く、より拭い去れぬ
「伏黒恵。お前は強くなった。力だけじゃない心もだ。あの攻防は俺を仕留めるのもあったが、注意を自身に寄せて怪我人を避難させるためのものだったとはな」
そう言いながらヒーロー殺しはいつの間にかインディアン風の装束をしていたヒーローが消えていることを指摘する。
「ハァ…あの時展開された【脱兎】の数には疑問を覚えた。何せ体育祭で見せた規模は明らかに俺達を圧死させるほどだったからな。それ故に調整していたのかと思ったらなるほど逃がすために数を割いてたとは。昨今のヒーローの殆どはエンタメに拠りつつあるからなぁ。ハァ…お前のようなヒーローがまだいる事は喜ばしいことだ。ただ」
まだ細かい調整は無理みたいだがな。そう言いながら手についた伏黒と緑谷の血を舐め取り、個性を発動させる。体を巡る虚脱感を感じながら伏黒はいまだに逃すことができなかった飯田が目に映ると歯がみをする。
全員を一気に運ばなかった理由は2人の傷の深さにあった。戦いを途中からしか見てなかった伏黒からすると目に見える傷だけが注意するものではなかった。もしかしたら頭を打っているかもしれない。そう考えると無闇に動かすのは不可能だった。しかしそれでも2人をカバーしながら戦うにはヒーロー殺しは強すぎた。だからせめて1人でも多く逃がせないかと考え飯田よりも傷が深めのヒーローを【脱兎】を用いて逃したのだ。
「確かに注意力を割く足手纏いがいない分には戦い易くなるだろうがこれならいっそのこと全能力を戦闘面に割くべきだったな。今からそこで寝転がるメガネ小僧を殺した後にゆっくりと逃したヒーローを殺させて、ッ!」
ヒーロー殺しの言葉を遮るように伏黒は爆発したような勢いと共に起き上がるとヒーロー殺しの顔面目掛けて前蹴りを叩き込む。ヒーロー殺しは突然の出来事に驚きつつも反射的に顔面の前に手を差し込んで止めて地面にダメージを逃すと後ろに跳躍する事で威力を分散させる。しかし、それでも完全に殺しきれなかったのか鼻から一筋の血が流れ出す。
ヒーロー殺しは鼻血を拭いながら伏黒を観察する。すると少しだけ様相が変わっていた。金色よりの黄色の瞳と縦に裂けた瞳孔は変わらない。しかし伏黒のガタイが良くなっていることに気がつくとヒーロー殺しは伏黒が何をしたのか察する。
「なるほど。【凝血】の効果を【玉犬】に押し付けたか、考えたな。だが、攻守走とバランスのいい【玉犬】が潰れた以上は問題なしだ。そのガタイにその瞳…おそらく【虎葬】か?一撃狙いはいいが速度で【玉犬】に劣る以上、こちらは回避に徹すればいいだけのこと。手早くお前の持つ手札全てを潰せば…ハァ、今度こそ終わりだ」
ヒーロー殺しの言っていることは事実だ。近接戦闘で劣る伏黒では例え【
「…気でも触れたか?」
「確かに俺だけだったら詰みだろうよ。だけど、お生憎様。俺には頼もしい先輩がいる」
「POOOOOOOWWWEEEEEEERRRR!!!」
勢いよく叫びながら壁をすり抜けて拳をヒーロー殺し目掛けて放つミリオ。咄嗟の不意打ちに対しても攻撃に目を向けずに当たるであろう場所に対して手を添える。流石と言うかヒーロー殺しの添えた場所はドンピシャでミリオが狙いをつけた場所だった。しかしミリオの個性は【透過】。しかも精度が下手なプロの遥か上をいくほどに高い。
ミリオの一撃は防御のみを擦り抜けると同時にヒーロー殺しの頬を捉えて吹き飛ばす。化勁でダメージを流す暇も与えられずに壁に叩きつけられたヒーロー殺しを見て伏黒はこの日初めて明確にダメージを与えられたと確信する。
「怪我は、あるっぽいけど大丈夫の許容範囲内っぽいな!後はそこの伏黒くんのお友達を助けれれば俺たちの勝ちだな」
「すみません、ルミリオン先輩。迷惑かけます」
「いや、今の君はあくまでも職場体験生だ謝る必要はどこにもない。それよりも報告頼む」
「相手はヒーロー殺し。実力は先輩並みかそれ以上です」
伏黒の言葉にミリオはマジか、とだけ言うと少しだけ効いたのかふらついたヒーロー殺しと向き合う。
「やるな。ここまで明確にダメージを貰ったのはあの
「そう言う君こそやるね。さっきから仕掛けようにも隙がない。無闇に突っ込んだところでカウンターを貰いそうだ」
会心の一撃を防がれたにも関わらずミリオは顔に笑みを浮かべると余裕綽々といった様子で構える。ヒーロー殺しはミリオの実力を察したのか目を細めてホゥとだけ呟くと所持している大ぶりのサバイバルナイフを抜き構える。
「なぜ、この状況で笑みを浮かべる。お前は強い。故にわかる筈だ。今のお前では俺には勝てんと」
「そんなこと最初の一撃を叩き込んだ段階で察してたさ。それになぜ笑うのかって?そんなの簡単さ。この場を笑い飛ばせないやつが困ってる人を前にした時に安心させることができるもんかよ」
ミリオがそう宣いながら笑みを深めるとヒーロー殺しは目を見開きそしてすぐに「良い、実に良い」と嬉しそうに目を細めて呟く。そんなヒーロー殺しを他所にミリオから仕掛ける。突っ込んできたミリオに対してサバイバルナイフを持つ腕を脱力させたかと思うと一瞬でミリオの眉間、心臓、股間目掛けてほぼ3度同時に突く。それは個性を発動させたミリオには届かず透かされる。
前からの戦闘は分が悪いと見たからかミリオは地面に潜航すると今度は左側の壁から現れてヒーロー殺しの死角目掛けて飛び出し攻撃する。しかし、初見にも関わらず見越していたのか手を軽く振い小手から何本かのメスにも似た小さなナイフを取り出すと見もせずにミリオ目掛けて投擲する。
顔面に放たれたナイフに顔パーツのみを透かすことで回避して攻撃に移るもいないことに気がつく。すると投擲と同タイミングで行動に移したヒーロー殺しが回収した日本刀を持ってミリオの肩目掛けて切り掛かる。しかしこれも気配を察知したミリオはこれも回避する。
「ハァ…口先だけではない。いや、それどころか俺が会ってきたヒーローの中でも5本の指に入るほど強いな」
「いやー、そっちこそヤバすぎでしょ。今の攻防でもうこっちの個性のタイミングを掴みかけてる」
褒めるヒーロー殺しに冷や汗を流しながらミリオは答える。伏黒は疑問に覚えながらミリオを見るとマントが半ばから断たれているのに気がつく。それを見た伏黒は戦慄し、冷や汗をかくのも無理はないと思わされる。ミリオの個性はくらい続けた伏黒だからこそ初見では上澄のプロヒーローでさえも不覚を取るものだと確信できるほどにはうまい。
にも関わらずヒーロー殺しは僅かな戦闘で長年培ってきた膨大な経験を用いてミリオの個性の解除タイミングを掴みかけているというのだ。あまりにも逸脱した実力に勝つどころかプロヒーローが来るまで生き残れるかと疑問を持ち始める伏黒。そんな伏黒の考えを察知したのか、
「シャドウシュピール、前を見ろ!そして助けてくれ!」
割と情けないことを言い出すミリオ。突然のことに伏黒もヒーロー殺しも緑谷も皆、目を白黒させる。
「うん、この人強い。それこそ俺以上に。だから助けてくれないか?」
「足手纏いになるかもしれませんよ?」
「ならないさ!だって君はシャドウシュピール。昨日、1人の少女を笑顔に変えてみせた強いヒーローなんだから!」
笑みを浮かべて全幅の信頼を口にするミリオに伏黒はポカンとした顔をすると呆れたように深くため息を吐く。少し頭を掻いて【嵌合纏】を解除して再度掛け直す。すると手がもう5本の指を持つ猛禽類のように変わり、目も瞳孔は黄色のまま白目の部分が反転して黒くなった。
「【鵺】か」
伏黒の変わりようにヒーロー殺しは何に切り替わったのか察知すると刀とナイフを構える。ヒーロー殺しの様子にこの形態が正解だと伏黒は悟る。電撃は武術で流せないからだ。変化した伏黒を見たミリオは問題なしと判断したのか軽く耳打ちをすると再度突っ込もうとする。真正面から来たミリオに周囲を警戒しながら振り下ろす。すると、伏黒を避けながら現れた氷塊に刀は防がれるだけでなく絡め取られる。
咄嗟に足を取られないように飛び退くと氷塊によって完全に見失っていたミリオが飛び出してくる。それは先ほどと同じだと考えたヒーロー殺しは迷うことなく残ったサバイバルナイフを振るう。が、突如としてミリオの影から現れた猛禽類のような手によって掴まれ、阻まれる。
目を見開くヒーロー殺し。そうしている間にダメ押しと言わんばかりに体から電気を流し、ヒーロー殺しを感電させて身動きを封じる。あの時、伏黒がミリオに耳打ちされた内容はそろそろ轟が来るという内容だった。
初めは怪我したインディアン風のヒーローの救助をしてエンデヴァーを呼んだら退避しろとミリオは命令した。しかしあまり褒められたことじゃないが会ってすぐに責任感の強い子であると察したのかミリオは駆けつけてくると判断。故にすぐに戻ってくる可能性が高いことを伏黒に告げた。結果、予想通り轟は戻ってきた。しかも轟とミリオの個性は相性がいい。透かすための障害物が多ければ多いほど撹乱やワープじみた動きに自由性が増すからだ。
後は前もってミリオの影に隠れた伏黒がヒーロー殺しの一撃を防いで感電させる。そうすれば今この場で最も強いヒーローがヒーロー殺しに攻撃を叩き込める。
「POOOOOOOWWWEEEEEEERRRR!!!」
そう叫びながら連続で放たれるミリオの拳はヒーロー殺しの体を滅多打ちにする。ヒーロー殺しは反撃しようにも体が電撃で痺れて上手く動けない。最後に放たれた大ぶりのアッパーを受けたヒーロー殺しは吹き飛んでいくが、空中で何度か回転するとその場で着地する。
「遅せぇよ」
「悪い。手間取った」
影から這い出た伏黒は笑いながらそう悪態をつくと轟は真顔で申し訳なさそうにそう答えた。