伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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血縁、そして日常

 

 

 パシャ、パシャ、パシャ、ウィーン

 

 カメラがたかれる音や機械の駆動音が伏黒の住むアパートに響く。何の騒ぎだと出てきたお隣さんが引っ込むのを見た伏黒は無理もないと狭い通路に蔓延るマスコミ達に視線を向ける。

 

 何故こうなったのか?理由は5日前に仕留めた組屋蹂造にあった。初めこそステイン同様、今回の一件は伏黒を担当していたナイトアイが仕留めたことにしようとしていた。

 

 しかし、ここで問題が生じる。伏黒が助けた天使の個性と思しき少女が目撃者となっていたことだ。被害者でもあり本来であれば精神的に治るまでの間、様子をじっくりと見守っていく筈だった。そこで現れたのが野次馬精神をこれでもかと発動させたマスゴミが少女が1人になったタイミングで根掘り葉掘り聞きまくり、それをゴシップ風に編集すると世間へと投下。警察が介入するよりも早く世間に知れ渡る結果となった。

 

 これに困ったのは警察上層部の皆様方。もしかしたら伏黒が違反しているかも知れないのにも関わらず、何の下調べも無しに助けた事実だけをばら撒かれたからたまったもんじゃなかった。しかし、色々と調べているうちにヒーロー免許保有者が前もって伏黒の個性の使用の許可を出していたことや組屋蹂造の調査は独断ではなくナイトアイから直々に頼まれていたことが判明する。

 

 そこまでわかると皆は思う。「あれ?別に誤魔化す必要なくね?」と。そうと分かればそれが事実であると警察直々の太鼓判であると世間に公表してニュースとなって取り上げられる。タイミング的にヒーロー殺しが捕縛されたことや組屋蹂造の凶悪さ、そして罪状がヒーロー殺しを上回っていたこと、そして捕えたのが雄英体育祭で一位を取った学生ということもあって大盛り上がり。そして今に至る。

 

「おかしい。確かにニュースになってたのは知ってた。でもナイトアイと行動してた時はこんなことにならなかった筈…」

 

 伏黒はマスコミの圧に圧倒されて思わず後退りそうになる。確かに伏黒は1度か2度はインタビューに答えることはあったし、慣れておくという名目でテレビ出演も果たした。しかし、ここまで過激ではなかった。

 

 伏黒は預かり知らないことだが実はヒーロー殺しの一件から伏黒に対するインタビューや押しかけのようなことは度々あったのだ。しかし、それを事前に防いでいたのがナイトアイ事務所のみんなだった。ナイトアイが予知を伏黒に発動させて指示をとる。ある時は伏黒に巡回ルートを変えさせることでインタビューを回避し、待ち伏せする連中がいた日は伏黒に事務処理をやらせることでその日を終了させなどありとあらゆる手で良識あるマスコミは受け入れて過負荷になるようなマスゴミは避けていた。

 

 しかし、そうは問屋が卸さないのがマスゴミ共。ナイトアイの監視が無くなるや否や住所を特定して押しかけてきたのだ。

 

「すみません伏黒さん!クリエイターこと組屋蹂造の件で一言ください!」

「すみません、皆さんを相手してたら学校に間に合わないと思うので見逃してください」

 

「しかし、我々には報道の義務があるのです!」

「そして俺にも勉強して単位をとってヒーローを目指す義務が有ります。義務を持つのであれば俺の気持ちを汲み取ってくれませんか?」

 

「本当に一言でいいんです!」

「そう言って一言で済まさないのがアンタらだろうが」

 

 伏黒が頼むから道を開けてくれと優しく言っても何かにつけて言い訳して道を譲らないマスコミ達に対して伏黒の苛立ちがピークに達しようとしていた。もういっそのこと学校を休んでやろうかと思い始めた時。

 

「伏黒!ぶん投げろ!」

 

 ふと1週間ぶりに聞く懐かしい声が響き渡る。伏黒はそれを聞くや否や声のした方目掛けてバックをぶん投げる。そしてそれと同時にマスコミの群れを掻き分け、アパートの手すり部分にたどり着くとそこを足場に跳躍。着地と同時に転がることで受け身を取る。そして屈んだ伏黒に橙色の髪をサイドテールに纏めた快活な笑顔がよく似合う少女―――拳藤一佳がそこにはいた。

 

「悪い助かった」

 

「礼は後でいい!いいから走るぞ!」

 

 礼を言いながら伏黒は差し出された拳藤の手を取ると拳藤は伏黒を引っ張るように駆け出す。後ろから「待ってー!」だの「せめて一言ー!」だのと喋りながら伏黒達を追いかけるが軍人ばりに体を鍛えてるヒーローの卵に追いつけるはずもなく、伏黒と拳藤はマスコミ達を蒔くことに成功した。

 

 

「なあ、おいって。機嫌直せよ伏黒」

 

「……」

 

「ダメだ、聞いちゃいない」

 

 あの後、マスコミ達から問題なく逃げ切り電車に時間通り乗ることができた2人。しかし、ここでも問題が生じる。そう電車内の人間に絡まれ続けたのだ。組屋を捕まえたことに興味を持っているのは何もマスコミだけでなく一般人も共通のことだった。少し息切れしながら2人が電車に乗り込むと。

 

「あれ?伏黒恵じゃね?」

 

 と、誰かが言った。その言葉に一斉に周りの人間達は反応し、声のする方へと目線を向ける。そしてそこからはマスコミの二の舞。どんなヴィランだっただの大したもんだなどはまあ、良かった。しかしさらに深く根掘り葉掘りしようとした連中がいてそれが伝播し大騒ぎ。一度電車が止まって遅延する事態に。その後、次の駅で2人は降りると泣く泣く割り勘でタクシーに乗り込み今に至る。

 

 本人達の意図はないにせよ伏黒からすれば妨害に妨害、しかも自身だけならまだしも拳藤まで巻き込んだこともあって不機嫌の極みとなっていたのだ。

 

「すまない拳藤。完全に迷惑かけた…」

 

「いいって!お節介で巻き込まれにいったのは私のほうだ。お節介ってヒーローぽくて私は好きなんだ」

 

 伏黒が迷惑を詫びると拳藤はどこかで聞いたことのあるようなことを言って問題なさそうに笑う。それを見た伏黒の胸の内が少しだけ軽くなったのを感じる。拳藤のB組のクラスが見えてきたところでお互いに別々の道をいく。それでもやはり苛立ちが抜けないままA組のドアを開けると、

 

 七三分けをビシッと決めた爆豪とその周りで爆笑している切島、瀬呂がいた。

 

 朝っぱらから色々とマスコミやら民衆やらに絡まれていて機嫌が悪かったところに普段チンピラと見紛うような態度を取る爆豪がどういう訳かナイトアイ並みにキッチリとした髪型にしている光景にカウンターをくらい伏黒はその場で崩れ落ち、笑いを堪える。

 

「ッ!ッッッッッ!ッッッ!」

 

「おい見ろ!伏黒がゲラってる!」

 

「うぉー!マジだ!あいつ、母親の子宮に笑顔忘れたんじゃないかってくらい笑わねぇからメッチャレア!」

 

「ケロケロ。伏黒ちゃん凄い楽しそう」

 

「フッ、同感だな」

 

「おいコラ影野郎!何笑ってんだァ!?」

 

 蹲る伏黒に対してクラスメイトが口々にレアだ何だのと言い、それを見た爆豪がキレ散らかすという光景がA組内で繰り広げられる。そのことに顔をあげた伏黒はまたも吹き出す。伏黒は笑ってこの光景を見ながら自身がA組に戻ってきたのだと自覚した。

 

 

「そう言えばさ、クリエイターってどういうヴィランだったんだ?」

 

 伏黒が爆豪のビフォーアフターぶりにある程度してから笑い終えると、話の話題はヒーロー殺しと組屋蹂造の話に移る。初めは話すのを渋った伏黒だったがまあ、こいつらだったら迷惑だと思うタイミングで切り上げてくれるだろうと思い話す。

 

「USJに来たチンピラと本物のヴィランの違いがよくわからされた相手だったよ」

 

「なあ、その。本当だったのか?人の身体で家具とか作ってたって」

 

「まぁな。倒した後に捕まってた子供を見つけたんだが、そこが最悪でな。アイツのアトリエだったんだが、人の骨で作られたハンガーラックとか皮をつぎはぎに繋げ合わせた布団カバーとかあとは「ああ!もういい!それ以上はマジで大丈夫だからな!?」ブルーになるならあんまり深掘りすんなよ」

 

 伏黒の話す内容に想像してしまったのか顔がブルーになる上鳴や耳郎を筆頭としたクラスメイト。場が暗くなったこともあり話題を逸らす目的でそっちはどうだったのかと伏黒は問う。すると反応は様々で思っていた以上に刺激になった者もいれば、期待していたようなものではなかった者、何やらトラウマでもねじ込まれたのか爪をガジガジと噛む者と多種多様な反応が見てとれた。その後上がったヒーロー殺しの話題で伏黒を含んだ4人は無難に返すことでその場を流す。そうして時間を潰している間に相澤が来て授業が始まる。一時限目の法の授業が終わると全員がコスチュームに着替える。

 

「ハイ、私が来た。ってな感じてやっていくわけだけど。ハイ、ヒーロー基礎学ね!久しぶりだ少年少女諸君!元気だったかな!?」

 

 そして舞台はオールマイトが担当するヒーロー基礎学が行われようとしている場所に移る。ヌルッと入った出だしは普段のテンション高めなものとは違い蛙吹からネタが尽きたのか?とかなり辛辣な言葉をもらう。

 

「職場体験直後ってこともあるから今回は遊びの要素を組み込んだ救助レースさ!」

 

 尽きてないよ?無尽蔵だよ?と前振りした後に今回の授業内容を話す。それに飯田から救助訓練ならUSJで行うべきでは?という意見が出るが今回はあくまでもレースと言いながらルールを説明し始める。ルールは5人4組に分かれて1組ずつ訓練を行う。そして5組が各地点からスタート地点に待機してオールマイトが救難信号を出したらスタート。そして誰が1番に助けるのかという内容だった。

 

 因みに建物の被害は最小限にとオールマイトは爆豪に指を差しながらそう言うと爆豪が気まずそうに顔を逸らす。そうして始まった救助レース。1組目は緑谷、芦戸、飯田、瀬呂、尾白となった。それ以外のメンバーの出番があるまでの間はでかいモニター付きの待機場所で待たされることとなった。

 

「ねぇ、誰が一位を取ると思う?」

 

 きっかけは麗日の言葉だった。ただ待機してるのも退屈ということもあり、皆で誰が一位を取るかを予想してみた。切島は瀬呂を上鳴は尾白を峰田は芦戸を麗日と蛙吹は飯田に予想を立てた。それに対して緑谷の前評判は低かった。これに関しては無理もなく。戦闘訓練然りUSJ然り体育祭然り、行く先々で体のどこかをぶっ壊してることが理由だった。余談だが爆豪は緑谷を選んだ。最下位という意味で。

 

「伏黒ちゃんは誰が1番になると思うのかしら」

 

「お!クラス最強の予想かー!誰だ!?」

 

 すると1人であぐらをかきながらモニターを見る伏黒に話題が飛び火する。呼ばれた伏黒が振り返って少し考えると

 

「緑谷」

 

 とだけ告げる。その言葉に何人かは目を見開き驚くがその中でも1番顕著だったのが爆豪だった。

 

「オイオイ、影野郎。耄碌したのか?」

 

「そんな歳でもねぇよ」

 

「デクの野郎は0か100かの一発芸野郎だろうが!100で動けば明らかに飛び越しちまうから一位を取るのは無理に決まってんだろ!それとも何か?またリカバリーガールの元にお世話にでもなるのかァ?アァ!?」

 

「……どうした爆豪。以前から思ってたが緑谷を何故そこまで目の敵にする。それに何をそんなに焦ってんだ?」

 

 伏黒が至極不思議そうにそう問いかける。するとその言葉の何処に琴線が触れたのか知らないが手をダランと下げると同時に爆豪の手のあたりからパチパチという音と共に少しだけ焦げ臭い匂いがし始めた。

 

「そこから先の行動はよく考えろよ」

 

 伏黒はそれを見てそう言いながら目を細めると影が大きく揺らめき始める。あわや一触即発となりかけたところで「まぁまぁまぁまぁ!」と言いながら念のためなのか硬化した切島が割り込む。それに対して爆豪はチッと一度舌打ちをするとその場から離れ、伏黒は「悪い」と言いながら頭を下げる。空気が悪くなる中で切島は無理にテンションを上げて何で伏黒に順位予想を聞いてくる。

 

「予想だと最下位から芦戸、飯田、尾白、瀬呂、緑谷の順だな」

 

「何でその順なん?飯田くんとかもっと上の順位だと思たんやけど」

 

「怪我もあるがそれ以上に立地の悪さだな。障害物のせいで道が曲がりくねりすぎてる。最高速度を出す前に他の面子がまず到着するだろうさ。まあそれでも機動力があるから最下位は避けられてるんだが。後はまあさっきも話題に上がった機動力の差だ。尾白も瀬呂もああいう三次元的に動いてこそ真価を発揮するからな。後は直線移動では微妙に瀬呂が勝ってるから瀬呂が2位ってどころだな」

 

「おお〜、よく考えてる。じゃあデク君が一位な訳は?」

 

「見てりゃあ分かる」

 

 感心する麗日に伏黒が理由を大画面のモニターを見るようにと顎をクイッと動かして促す。麗日が伏黒から画面に目を移すのと同タイミングで「スタート!!」という音が聞こえ、待機中のメンバーが一斉に動き出す。初めに出てきたのは滞空性能の高い瀬呂で持ち前の個性を使って上を行く。前評判の通り瀬呂が一位を取ると思った矢先、緑色に輝くエネルギーを纏った緑谷が飛び出し、瀬呂をぶち抜いた。

 

「おおーー!!」「何、あの動き!?」「ッッッッッなぁッ!?」(ああ、言われてみりゃあなんだあの動き)「すごいピョンピョンと…何かまるで…」

 

「爆豪みたい、だろ?」

 

 あたりが騒がしくなり伏黒が麗日の思ったことを的中させる。すると心当たりがあると思しき伏黒に質問が殺到する。この反応にある程度予想していた伏黒は質問に答える。

 

「アイツは0か100かしか調整できないって言うと欠点だらけだった。だがそれは裏を返せばこのクラスの中で最も発展途上な存在ってわけだ。体育祭の次の日にアイツに特訓に付き合ってほしいって言われて付き合った結果、生まれたのがあれだ。アイツはあれを『フルカウル』って呼んでたな」

 

「まぁじで!?」

 

「じゃあ、骨折克服ゥ!?」

 

「1週間で…変化ありすぎでしょ…」

 

 緑谷の変化に各々が様々な言葉を出すも共通している感情は『驚愕』だった。その反応に『フルカウル』の考案に手を貸した伏黒はどこか満足気だがふともっと騒ぐと思ってた人物が黙っていることに気がつく。目線を向けるとそこには俯いて歯軋りをした爆豪がいた。

 

(これは…マズイな…)

 

 それを見た伏黒はそう思わざるを得なかった。世の中には問題なく感情を発散できる人間と出来ない人間がいる。出来ない人間は世渡りこそ上手だろうが何かのきっかけで許容量を超えるほどの出来事があると普段怒らない人間以上に恐ろしいことをすることもある。爆豪は展開的な前者。それは普段の反応を見れば明らかだった。しかしそれでも今回、爆豪は溜め込んだ。少し発散させるタイミングがないかと考え込むとゴールの合図が聞こえてくる。結果を見ると

 

「まあ、予想通りだな」

 

「凄いわ伏黒ちゃん。まさか全部当てるなんて」

 

 伏黒の予想通りの結果となった。蛙吹のように伏黒の予想通りの結果となったことに褒める者もいれば緑谷のまさかの急成長ぶりに驚く者もいた。

 

「次は俺の番だな」

 

「お手柔らかに頼むぞ、我が友よ」

 

「普段一緒に過ごすことの多い伏黒ちゃんと常闇ちゃんと一緒にレースなんて嬉しいわ」

 

 出番が来たと普段A組で一緒にいることの多い伏黒と蛙吹と常闇と切島と峰田がそれぞれ指定された場所へと移動を開始する。全員がその場に到着するといつでも出発できるように準備運動をする。

 

「お先」

 

 そしてスタートという合図とともに機動力で優れた蛙吹が先に動く。元々、蛙吹の身体能力は高い。そして特性は、カエルの身体能力をそのまま人間大にスケールアップしたものと言っても過言ではないこともあって天候的な意味での環境の変化には弱いが地理的な環境の変化には恐ろしく強い。このまま蛙吹がトップと思われた矢先、バッッ!!っと黒い影が蛙吹の横を過ぎ去っていく。そしてスタートから20秒ほど時間が経つとゴールの合図。驚愕する蛙吹が目線を向ける。するとそこには

 

「5歩半、か。5歩くらいでいけると思ったんだけどな」

 

 ゴールに辿り着いた伏黒がぶつぶつと呟きながら考え込んでいた。少し時間を空けてから蛙吹が到着し、その後ろから常闇、峰田、切島の順番で到着する。順位はやはりというか機動力が重要だったかと思わされる。オールマイトがアドバイスと共に期末テストの準備を頑張るように促すと伏黒は礼を言ってその場から去ろうとする。しかし、

 

「オイオイ!伏黒ぉ!今の何だよ!?」「とっても早かったわ」「オイラ、【玉犬】あたりの動物を展開するのを待ってたらお前一人で跳んでったからびっくりしたぞ」「驚愕を禁じ得ない」

 

 レースをしていたメンバーが一斉に伏黒を問い詰める。予想していたこともあって伏黒は振り返ると取り敢えず嵌合纏(かんごうまとい)の説明を始める。伏黒の説明が終わると一同は総じて驚愕する。

 

「オイオイ、近接ただでさえ強かったのにまた強くなったの?お前、どこを目指してんの?」

 

「辛辣だな」

 

「いやー峰田のいう通りだぜ。俺が個性ありきでもお前は俺のことを組み伏せられるんだぜ?それがさらに強化されたとなればめっちゃ厄介だろ」

 

「おまけに掌印を結ばずに発動できるからラグは無し。まさしく鎧袖一触」

 

 男メンバーの大半が反則だと言っている中で常闇は後方師匠面よろしく腕を組みながら満足気に頷いていた。すると蛙吹はおずおずと手を挙げる。

 

「なんだ?」

 

「それって【蝦蟇】ちゃんとも融合できるって訳よね。見せて欲しいわ、伏黒ちゃん」

 

「まあ、いいが」

 

 そう言いながら伏黒は影の中で【蝦蟇】を呼び出すとそのまま嵌合纏を発動させる。すると、

 

「あれ?なんか梅雨ちゃんぽいな」

 

「確かに」

 

「なんかマジでバリエーション多くて色んな方面でウケそうだな」

 

 と言われる。伏黒は気になって腰のポーチにある鏡を取り出して見てみると瞳孔が横になっていた。手もよく見てみると少しだけ大きくなっており、姿勢も少しだけ悪くなっていた。今の今まで【蝦蟇】の嵌合纏を使ったことがなかったこともあり、こういう変化があるのかと思わされる。

 

 蛙吹が伏黒に向けて手のひらを向けながら「合わせて欲しい」と言われる。不思議に思いながら言う通り手と手を合わせる。合わさると伏黒の方が蛙吹よりも手が大きい。何がしたいのか疑問に思っていると、

 

「ケロ。私、自分より大きい手の人あんまり見たことないからこういうの新鮮だわ」

 

 そう満足気に蛙吹は言う。蛙吹の手は個性の都合上、常人よりも少し大きめだ。コンプレックスでも抱いていたのかと思う反面、そろそろ恥ずかしくなってきたこともあり伏黒が離す。それは蛙吹も同じだったのか少し顔を赤くしながら「ちょっとだけ恥ずかしかったわ」と言う。それを見た切島と常闇はニヤニヤと笑い、峰田が血涙を流しながら「軟派影野郎!許羨ッ!」と言いながらどついてきた。

 

 他のグループも問題なくレースが行われ誰も怪我がないまま終了した。その後、峰田が覗き穴から女子更衣室を覗こうとして耳郎のイヤホンジャックを目に直に受けたというトラブルを除けば普通の座学が行われてその日は終わった。

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