伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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期末、そして演習試験①

 

 

 期末試験前最後の週末が終わり、そしていよいよ期末試験が始まった。期末試験の内容は割と他の学校と変わらず3日間に渡る筆記試験と一回の演習試験に分かれている。初めに行われた筆記試験では飯田や八百万を筆頭に爆豪、轟、緑谷と確実に頭の良さなら5本の指に入るほどのメンツは顔色一つ変えずに解いていく。しかし当然ながら明るい者がいるということは暗い表情で解いていく者もいるということだ。それが芦戸や上鳴などの勉強が不得意な人間達だった。しばらくしてアラームが鳴る。

 

「全員手を止めろ!各列の一番後ろ、答案を集めて持って来い」

 

 アラームを聞いた相澤が手を止めるよう指示を出す。クラスメイト全員は相澤の指示通りに従い、各列の一番後ろの生徒達が答案を回収して行く。こうしてついに最後の科目の試験時間が終わった。

 

「よっしゃオラー!!」

 

「ありがとうヤオモモー!!」

 

「うっし」

 

 回収し終わって自由に動いていいと許可が降りた上鳴と芦戸は喜びの声を上げながら勉強を教えてくれた八百万に向かって飛び掛かるように感謝する。1週間前はかなり自信のなかった伏黒も手応えを感じたのか珍しくグッと拳を握ってガッツポーズを取る。そして伏黒はラインで拳藤に「手応えあり。ありがとう」と送る。他の生徒達も筆記が終わってホッとした様子だった。

 

 そうして間をおかずに行われるのが演習試験。場所は実技試験会場中央広場。そこでは万全の状態で挑む為にコスチュームを着たA組の生徒達と雄英の教師陣が相対していた。A組担当の教師が勢揃いしているのを見た伏黒は自身の予想が当たっていたことを半ば確信する。そうしている間に相澤からの説明が始まる。

 

「それじゃあ演習試験を始めていく。この試験でももちろん赤点はある。林間合宿に行きたきゃみっともねぇヘマはするなよ。諸君なら事前に情報を仕入れてると思ったんだが、何だそのテンションの低さは」

 

「いやー実は伏黒からかなーり怖いこと言われてましてね?」

 

「へぇ、どんな内容だ?」

 

「ホラ、教師陣とバトることになるんじゃないかってことらしくて…」

 

「ホウ、それはまた「大当たりなのさ!」

 

 相澤が首に巻いている特注の捕縛布の中から飛び出すようにでてきた片目に切り傷のあるネズミのような見た目をした校長が顔を出しながら伏黒の予想の当たりを告げる。

 

「これからは対人戦闘及び活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ!」

 

 試験内容の変更を告げられ、一部の人間は伏黒の前予想もあってああ、やっぱりね。といった表情をするものが大半だった。しかしそれでも受け止めきれなかったのか上鳴と芦戸あたりは煤けた顔でリアクションが取れないほど固まってしまっている。

 

「近年増加する個性犯罪を考慮した結果、ロボットを用いた試験では実践的ではないって声が集まってね。もう予想はついてるだろうけど言わせてもらうね。諸君らはこれから二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

 

 その言葉を聞いてA組のメンバーは一斉に顔を引き締める。校長曰く普段みたいにペアの組と対戦する教師は既に決定済みのようで動きの傾向や成績、親密度、諸々を踏まえて独断で組んだとのことだ。

 

「轟と八百万のチームが、俺だ」

 

「「!!」」

 

 ニヤリと不敵かつ不気味に笑いながら捕縛布を構える相澤と思わぬペアに反応する轟と驚く八百万。

 

「そんで伏黒、緑谷、爆豪チームが」

 

「私が、する!!」

 

 何処からか現れたヒグマのようなガタイを持つオールマイトが相澤の言葉を引き継いで拳を握りしめながら現れる。まさかのペアに伏黒と爆豪、緑谷は思わず顔を見合わせる。そしてこのペアに伏黒は思わずよく考えられてると悪態を吐きたくなった。少なくともこの組み合わせはA組内でも最悪の部類だからだ。

 

「3人とも協力してかかってきなさいよ!!」

 

 手を握りしめて拳をつくったNo.1ヒーローが力強くそう告げた。

 

 

 時は遡ること約5日前。ヒーロー科を担当する教員全員が一つの部屋に集まって書類と睨めっこしながら考えていた。話題の内容は言わずもがな演習試験の内容についてだ。

 

 ヒーロー殺しステインと敵連合(ヴィランれんごう)は繋がっていた。

 

 誰が言ったかは知らないが今巷では死柄木とヒーロー殺しの性格を知ってる伏黒が知れば鼻で笑うような噂が大流行していた。

 

 そして教師陣は今ネットで出されては消されてを繰り返すヒーロー殺しの最後の演説じみた動画によるヴィラン達が活性化していく恐れがあるという資料を見ながら試験内容を考えていた。

 

 初めこそ毎度お馴染みのロボを相手にした試験にすればよいのでは?という話も出たのだが、今後増加する恐れのある個性犯罪を考慮するとロボとの戦闘訓練は実戦的でないというスナイプの意見に皆が賛同した結果、急遽試験内容が生徒vs教師へと変更された。

 

「それじゃあ、芦戸と上鳴の相手は校長がするということでいいですね?」

 

「「「「異義なし」」」」

 

「次に轟。ひと通り申し分無いが、全体的に力押しのきらいがあります。そして八百万は万能ですがいかんせん咄嗟の判断力や応用力に欠ける…。よって俺が二人の個性を消し、接近戦闘で弱みを突きます」

 

「「「「異議なし!」」」」

 

「そして伏黒と爆豪、緑谷ですが…オールマイトさん頼みます」

 

「む!?何故だい!?」

 

「この3人に共通しているのは『優秀』という点にあります。どうやら緑谷は体育祭後に伏黒との特訓で感覚をつかんだっぽいですね。個性をコントロールしきれてることが見て取れます。伏黒も短気なきらいはありますが、それを除けば協調性も高く遠中近どれをとってもひどく優秀。間違いなくヒーロー科最高峰でしょう。この2人は仲が良くたまに放課後になると特訓をしているところが見て取れるため本来であれば組ませる予定はありませんでした」

 

 

 しかし、と言いながら相澤が一呼吸置くと次の資料に目を向ける。

 

 

「問題は爆豪にあります。確かに爆豪は優秀です。戦い方次第では伏黒にも勝てるほどに。故に手元の資料を見て分かる通り爆豪は挫折を味わったことがない。それが理由からか最近では伏黒に突っかかる姿が見て取れます。おまけに緑谷との仲の悪さ…俺のクラスは奇数である以上、いやでも3人になってしまうのですがオールマイトさんなら問題ないでしょう」

 

 

「えぇっと…しりとりでもする?」

 

「「「…………」」」

 

「(全くよく見てるぜ、相澤くん…)さて着いたぞ。ここが我々の戦うステージだ」

 

 オールマイトが気を使うレベルの地獄のような沈黙と空気の悪さが漂うバスが試験会場に到着する。伏黒がバスから降りるとそこには大量のビルや建物が並ぶ市街地がそこにはあった。毎度毎度、何処からこんだけの資産を捻出してるのか伏黒が疑問に思っているとオールマイトの説明が始まる。

 

 内容は30分以内にヴィラン役であるオールマイトにハンドカフスを掛ける、あるいはチームメンバーのうちの誰か1人でもステージから脱出できればクリアというものだった。一見、普通の戦闘訓練に見えるが判断力の試されるこの試験。戦って勝つか、逃げて勝つかの判断が試される。しかし相手は遙か格上。幾千幾万ものヒーローがいながら平和の象徴を名乗ることを許された全能の名を冠する怪物(オールマイト)

 

「けどこんなルール無理ゲーだし逃げの一択じゃね!?って思っちゃいますよね?そこで私たちこんなのサポート科の人に作ってもらっちゃいました」

 

 テテテテン!!と黎明期以前に流行っていたとされる青狸がポケットからアイテムを取り出す音が聞こえてきそうな取り出し方をするとリストバンドらしきものを取り出すオールマイト。

 

「超圧縮おーもーりー!!!」

 

「ドラえもんか」

 

「え、嘘、知ってんの伏黒少年…」

 

「オールマイト?」

 

「え、ああ!!ごめんね?体重の半分の重さの重りを装着する!所謂ハンデってやつさ。古典的だが動き難いし体力も削られるぞ。今回は3人相手だからね特別に三分の一にしてもらったよ」

 

 伏黒の言葉に思わず反応してしまうオールマイト。それに対して緑谷が不思議そうにしていると慌てたように説明すると手に持っていた重りを右手に装着する。

 

「あ、ヤバ。思ったより重っ…」

 

「戦闘を視野に入れさせるためか、ナメてんな」

 

「HAHA…そいつはどうかな!」

 

 それじゃあ先行って持ってるねー、と言いながらオールマイトは柵を超えて市街地のレプリカの中に消えていく。それからしばらくして金網で出来たゲートが開くと伏黒と緑谷と爆豪は中に入ると指定された位置に着く。そして皆が位置についたのかリカバリーガールが開始の合図を宣告した。それを聞いた伏黒は出し惜しみなしで【玉犬】と【鵺】を取り出すと偵察に向かわせて爆豪と緑谷に向き合う。

 

「爆豪、緑谷。道中で作戦を練れなかったことは痛手だが即興で作戦をつくるぞ」

 

「うんわかった!かっちゃんも…かっちゃん?」

 

 伏黒の言葉に大きく緑谷が頷くと爆豪の名前を呼ぶ。しかし返答がなく開始地点に爆豪がいないことに気づく。目線を前に向けるとカツカツカツと靴底を鳴らしながら爆豪は無言で歩いていた。

 

「はぁ…」

 

「ちょっ!かっちゃん!」

 

「ついてくんな!」

 

 案の定予想できていた反応に伏黒は思わずため息をこぼす。それを見た緑谷は焦ったように爆豪の元に駆け寄ると引き留めようとする。しかしそれを爆豪は声を荒げて振り払う。

 

「ブッ倒した方が早いに決まってんだろうが!!」

 

「戦闘は何があっても避けるべきだって!!」

 

「落ち着け緑谷。爆豪は普段でこそああだが、無策で突っ込むタイプじゃないのは知ってるだろ。おい、爆豪。合わせてやるからオールマイトを倒す方法を教えろよ」

 

 過去に何があったのかは知らないが緑谷は滲み出る爆豪が苦手ですオーラを漂わせながら爆豪の考えを改めさせようとする。しかしそれを逃げ一択は極端過ぎるのではと判断した伏黒が爆豪にも策があるのでは?と判断して緑谷に言い聞かせる。すると緑谷も確かにそうだと判断したのか爆豪の言葉を待つ。しかし、爆豪の口から出た策は

 

「終盤まで翻弄すればオールマイトだって疲弊する!そこを俺がぶっ潰す!!以上だ!!」

 

「へ?」「はぁ?」

 

 策というにはあまりにも烏滸がましい杜撰すぎるものだった。何かの聞き間違いだと思い今度は伏黒が改めて問うも返ってくる答えは依然変わらないものだった。あまりの無策さに緑谷は唖然とし、伏黒は目頭を揉む。

 

「じょ、冗談だよね?かっちゃん」

 

「オールマイトが疲弊する前にこっちが疲弊するわ。お前がスロースターターなのは知ってるが裏を返せば本領を発揮するのはかなり遅いってことだからな?その間に音より速く動くあの筋肉ダルマを疲弊させる?笑わせるにも程が、ッ!…お前マジでいい加減にしろよ」

 

 ただただ倒すとしか言わない爆豪を緑谷が引き留め伏黒が諌めようとした瞬間、爆豪は肩に触れた伏黒の顔面に裏拳をかました。爆破で加速させるおまけ付きで。モロに喰らった伏黒は少しだけよろけると額に青筋を浮かべるほどキレる。それを見た緑谷が顔を青くしながら伏黒に駆け寄る。

 

「伏黒君!?大丈夫!?」

 

「これ以上喋んなや。ちょっと最近調子がいいからって喋んな、ムカつくから」

 

「気にするな緑谷。俺が悪かった。お前(爆豪)がそこまで臆病者だったなんて俺の見積もりが甘かった。素直に詫びるよ」

 

 怒鳴りこそしなかったが言葉の端に苛立ちを見せながらその場を去ろうとしている爆豪に伏黒が嘲りながら臆病者と謗る。するとそれを聞いた爆豪が足を止めて怒りに声を振るわせながら振り返る。

 

「今何つった?」

 

「ああ、悪いな。暴力を優先させる蛮族に言葉が通じると思ったこと自体が間違いだったみたいだな。気をつけるよ―――腰抜け」

 

 その言葉を聞いた爆豪は怒鳴らなかった。ただただ淡々と手のひらから爆破を展開させながら伏黒目掛けて歩いていく。それに対して怒髪天を突いていた伏黒もいつでも《如意金箍》を展開できるように構える。それを見て焦るのは緑谷だった。

 

「お、落ち着いてよ、かっちゃん!!それに伏黒君も腰抜けなんて言わないで!らしくないよ!?」

 

「止めるな緑谷。それにお前に追い縋られたというだけで焦って視界が狭まる奴のことを腰抜けと言って何が悪い」

 

「え?」

 

 伏黒と爆豪の喧嘩を何としてでも止めようとする緑谷は伏黒の言葉に反応して爆豪を見る。そこには爆破と向かってくるのをやめて苦い顔をした爆豪がそこにはいた。

 

「あ?何だよその顔は?図星つかれたからって随分としおらしい顔するなぁ、おい」

 

 それを見た伏黒がかつて植蘭中学の頃に戻ったかのように鼻で嗤いながらそう言うと爆豪は再度怒りに顔を歪める。

 

「テメェ如きに、何がわかんだ伏黒ォ!!」

 

「わかってたまるか。というかわかりたくもない。幼馴染が自分に迫る力を持ち始めたことに困惑してやることと言ったら足掻くことでも無く、ただ周りに当たり散らすことしか脳の無い奴のことなんかな」

 

「オーケィ、伏黒。そんなに死にたいみてぇだなァァ!!」

 

「それ言ってお前が誰かを殺してるところを見たことがないんだが。口が達者なのはお前の人間性からの表れからなのか?幸せな人生を送ってきているようで羨ましいよ」

 

「2人とも落ち着いてよ!!こんなんじゃいつまで経っても会話が成立しないじゃないか!!!」

 

 いがみ合う爆豪と伏黒にとうとう痺れを切らした緑谷が怒鳴ってやめさせようとする。足並みが揃わないどころか足並みが逆方向に行き続け、空中分解まで秒読みとなった瞬間、

 

ゴゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

 ハリケーンが横向けで襲いかかってきた。そう言われても納得してしまうほどの轟音を響かせながら3人のはるか前方より巨大な風圧が凄まじい勢いで襲いかかる。その衝撃と風圧の凄まじさは辺り一帯が吹き飛ばされ、ビル群は半壊し、信号機や歩道橋などは抉り取られたかのような破壊跡と共に跡形も無く消し飛ばされた。その勢いは3人にも及び、伏黒と爆豪は顔を抑えて堪えるが緑谷は耐えきれずその場で尻餅をついた。

 

「さて、(脅威)が行くぞ!」

 

 これまで味わってきた苦難を上回る受難が今始まる。

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